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13話「『利用されていた』事実と、黒豹の怒り」
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第
焚き火の炎が、ぱちぱちと乾いた音を立てていた。
夕刻の森は、昼よりも音がよく響く。
鳥の声は減り、代わりに遠くの風と、木々が擦れ合うざわめきが大きくなる。
その真ん中で、王都と森という、あまりにも違う空気がぶつかり合っていた。
「ルシア」
デュルクが、少しだけ距離を詰めた。
鎧の金具が、きぃ、と微かに鳴る。
青いマントの裾が、焚き火の風で揺れた。
「君が戻れば、大公家も救われる」
その言葉は、やけに滑らかだった。
「……救われる?」
反射的に問い返している自分がいた。
「今、王都では、アルセイド大公家への批判が強まっている。
“令嬢一人守れない家が、王国の柱を名乗るのか”と。
王宮にも、貴族たちから圧力が来ている」
淡々とした説明。
でも、その中に“焦り”が混ざっているのが分かる。
「君がいないと、家はずっと攻撃され続ける。
大公家の名誉も、父君の立場も、これから先ずっと傷つきっぱなしだ。
――君が戻れば、それが一気に覆る」
(出た)
胸の奥が、冷静にその言葉を分類する。
“君が戻れば”。
“家が救われる”。
“父の立場”。
私に向けているようでいて、実際には全部“家と王宮の都合”の話だ。
でも、かつての私だったら――。
(これだけで、戻ってたかもしれない)
頭を下げて、「ご迷惑をおかけしました」と言って、大人しく馬車に乗り込んでいたかもしれない。
私がいないことで家に迷惑がかかっている。
父が批判されている。
王宮の空気が乱れている。
その事実だけで、自分を責め尽くして。
「……私が戻れば、全部丸く収まる、ってことですか」
口の中に、苦い味が広がる。
「そうじゃない」
デュルクは首を振った。
「君自身のためでもある。
この森で、どんな暮らしをしていたかは知らない。
だが、ここにいる限り、君はずっと“行方不明の令嬢”のままだ」
「“行方不明”」
「王都の記録上はな」
彼の声は変わらず冷静だった。
「だが、君が戻れば、“一時的な事故”として処理できる。
君は改めて大公家の娘として、その立場を取り戻せる」
――“立場”。
それが、彼の口から出てくると、妙に重く響いた。
私は、しばらく黙ってデュルクの顔を見ていた。
昔は、その横顔が好きだった。
いつも先を見ていて、冷静で、周りより一歩先のことを考えていると思っていた。
でも今は、そこに貼り付いている“王宮のマスク”が、はっきり見える。
言葉の一つひとつが、計算されている。
私の「責任感」をくすぐるように、綿密に選ばれている。
家。
名誉。
立場。
批判。
救済。
全部、“私が弱いところ”だ。
森に来る前なら、その通りに心が動いていた。
でも——今の私は、違う場所も知ってしまった。
焚き火を囲みながら、焦げたスープを笑い合った夜。
火の起こし方を何十回も失敗して、指を擦りむいた日。
リュナに保存食を教わって、初めて「うまくできた」と褒められた夕暮れ。
そして——
「飯が楽しみになった」と、ぽつりと言った黒豹の背中。
その全部が、私の中に根を張っている。
「……私がいないと、アルセイドは批判され続けるんですね」
ゆっくりと口を開く。
「父が、責められる。
大公家の名誉が傷つく。
王宮の人たちは、“失踪した娘を何とか回収しろ”って言う」
「そうだ」
デュルクははっきり頷いた。
「……君は、大公家の令嬢だから」
「でも」
その言葉を遮るように、続けた。
「じゃあ、私は?」
「え?」
「私は、また“駒”として戻るの?」
自分でも驚くくらい、静かな声だった。
怒鳴りたいわけじゃない。
泣きたいわけでもない。
ただ、本当のことを知りたいだけ。
「大公家の令嬢として。
“問題を片付けるための存在”として。
“王宮と大公家の橋渡しになる便利なピース”として。
それを、またやれって言うんですか?」
デュルクの喉が、ぴくりと動いた。
焚き火の火が、ぱちっと弾ける。
騎士たちの視線が、遠巻きにこちらを窺っているのが分かる。
「……違う。君は“駒”なんかじゃ——」
「じゃあ、聞かせてください」
遮る声が少し強くなった。
「デュルク様は、今、ここに立っている“私”を見ていますか?
それとも、“アルセイドの令嬢”を見ていますか?」
数秒間、完全な沈黙が落ちた。
デュルクの表情に、一瞬だけ迷いが走る。
視線が揺れ、言葉を探すように唇が動いた。
そして——
「……君には、大公家の名も教養もある」
彼は、選ぶべきでない言葉を選んでしまった。
「王宮としては、それを使わない手はないだろう?」
“名”と“教養”。
それが、彼の口から出た瞬間、胸の奥で何かが冷たく砕けた。
(ああ)
はっきり分かってしまった。
私のことを“ルシア”として見ていないわけじゃない。
きっと、彼なりに心配もしているし、罪悪感もある。
それでも——
(“使えるもの”として見ている)
それが、彼の本音だ。
大公家の名。
教養。
宮廷で磨いてきた礼儀と笑顔と立ち振る舞い。
それらを「使わない手はない」と言ってしまえるくらいには、彼は“王宮”の人間なんだ。
焚き火の匂いの向こうから、別の匂いが漂ってきた。
湿った土。
野生の毛皮。
焦げた木。
——獣人の匂い。
振り返るまでもなく、誰かが木陰に立っているのが分かった。
黒い耳。
黒い尾。
黄金色の瞳。
さっきの言葉を、きっと全部聞いてしまった。
カリオンの視線が、デュルクに向けられている。
その瞳は、いつもの無関心な光ではなかった。
深い、底冷えのする怒りが、静かに燃えている。
(やば……)
背筋が冷える。
カリオンは、基本的に何事にも淡々としている。
人間の世界のゴタゴタなんて、本当はどうでもいいと思っているはずだ。
でも、“食べ物”と“仲間”に関することだけは違う。
そして今——
“森で一緒に飯を食ってきた女”が、“使える駒”扱いされている。
それを聞いて、怒らないはずがない。
「……つまり」
カリオンは、一歩、木陰から出てきた。
鎧の音が止まる。
騎士たちの手が、反射的に剣の柄に伸びる。
黒い耳が、わずかに後ろに倒れている。
尻尾は低く、しかし緊張で膨らんでいた。
「お前ら人間は、“名”とか“教養”とかいうものを、
“使える道具”って呼ぶのか」
低く、抑えた声。
デュルクがわずかに目を細める。
「……君は」
「黒豹の獣人、カリオン」
名乗るつもりなんてなかったのに、口が勝手に言った。
私の方が先に言っていた。
「この森で、私を助けてくれた人。
火の起こし方も、料理の仕方も、生き方も教えてくれた人です」
口に出した瞬間、自分で少し震えた。
自分の中でのカリオンの位置が、はっきりしたみたいで。
デュルクの表情が、ほんのわずかに強張る。
「……獣人、か」
その単語には、警戒と敵意と、好奇心が混ざっていた。
カリオンは、そんな視線を一切気にしていないようだった。
ただ、歩く。
私の前に一歩出て、半分だけ庇うような位置に立つ。
「お前」
不意に、こちらを見下ろした。
「さっきの話、聞いたか」
「……聞いた」
喉がひりつく。
“使わない手はない”。
その言葉の棘が、まだ胸の中に残っている。
「お前の“名”と“教養”とやらを、“使う手がある”んだとよ。
戻れば、また“都合よく切り分けられたお前”を使うつもりらしい」
「カリオン」
止めようとした。
でも、止まらなかった。
カリオンの黄金色の瞳は、デュルクに向けた瞬間、さらに鋭くなっていた。
「お前」
呼び方に一切の敬意はない。
「この女が森で何をしてきたか、想像もしてないんだな」
「……何を、とは?」
「火を起こして。薪を担いで。手を切って。焦げたスープをすすって。
うまい飯を作るために、何度も味を外して、舌を馬鹿にされながら、それでも挑戦して」
「誰が馬鹿にした」
「俺だ」
こっちはこっちで、いつもの調子で返してくる。
「そうやって、こいつは“飾りじゃない自分”を手に入れようとしてた。
それを聞いたうえで、“名と教養が使える”って言葉が出るなら……」
一拍置いて。
「俺は、かなりお前が気に入らねえ」
静かな怒り。
怒鳴りもしないし、威嚇の唸り声も出さない。
けれど、体の周りにまとわりつく空気だけが、目に見えるほど冷たくなっていく。
騎士たちが、完全に武器に手をかけた。
何人かは魔術の詠唱に入ろうとしている。
デュルクが片手を上げて、それを制した。
「下がれ」
短く命じる。
彼は、カリオンをじっと見た。
「……俺の言い方が悪かったと認めよう」
「言い方?」
カリオンの耳が、ぴくりと動く。
「本音を誤魔化す言葉はいくつもある。
だが、“使わない手はない”というのは、たしかに“駒として見ている”と言われても仕方がない言い方だった」
認めた。
意外なほどあっさりと。
「俺は王宮の人間だ。
王家の下にいる限り、人を“役目”や“立場”で見ることを完全にやめることはできない」
その言葉は、言い訳でもあり、告白でもある。
「だが、それは“ルシアに感情がない”という意味じゃない」
「ふうん」
カリオンは、あからさまに興味なさそうな声を出した。
「お前が何を思っていようが、お前の中で“俺の女”が“使える駒”と並列に扱われている時点で、俺には十分だ」
「お前の女?」
「カリオン」
思わず素っ頓狂な声が出た。
「誰がいつ“そう”なったのよ!」
「違うのか」
「違わない……けど……今その言い方する!?」
顔が一気に熱くなる。
デュルクの視線が、一瞬だけ私に向いた。
その目の奥で、何かがきしむ音がした気がした。
沈黙。
焚き火の火が、やけに大きく揺れる。
それ以上何か言えば、本当に刃が抜かれるかもしれない。
そういう危うさが場を満たしていた。
だから、私は深く息を吸い込んだ。
「もう、やめて」
声が震えないように、必死で抑える。
「今ここで争っても、何もいいことにならない」
カリオンの方を見て、目で訴える。
デュルクの方にも向き直って、言葉を選んだ。
「デュルク様」
「……ああ」
「“私がどうするか”の答えは、今ここでは出せません」
はっきりと言った。
「大公家のことも、王宮のことも、父のことも。
そして、森での暮らしも。
どれも、簡単に天秤にかけられるものじゃないから」
「だが——」
「戻るべきかどうか、ちゃんと考えます」
胸が痛い。
「でも、その前に。
“私が利用されていた”事実から、目を逸らさないようにします」
“名”や“教養”を、“使えるから使う”。
その考え方に、自分も乗っかっていた。
“飾りでも、誰かの役に立てるならいい”って自分に言い聞かせていた。
それが、どれだけ自分をすり減らしていたか。
今なら、はっきり分かる。
「……そうか」
デュルクは、苦い顔をして頷いた。
「時間を置くのが、今は正しいのかもしれないな」
彼の声も、どこか疲れていた。
エリセは、そのやりとりを少し離れたところから眺めていた。
口元にうっすらと笑みを浮かべながらも、その瞳は鋭い。
(“利用されていた”って、自分で言うのね)
そんな声が聞こえてきそうだった。
*
その夜。
森は、王都の軍の焚き火の光から少し離れた場所で、いつも通り暗かった。
カリオンの住処。
洞窟の中には、いつもの焚き火がある。
鍋の中では、今日も何かが静かに煮えていた。
でも、空気はいつもと違った。
「……で」
カリオンが、焚き火を見つめたまま口を開いた。
「戻るつもりなのか」
真正面から来た。
私は、膝の上で組んだ指をぎゅっと握った。
焚き火の光が、指の関節を赤く染める。
「もしかしたら」
やっと出た声は、自分でも頼りなかった。
「私は、戻るべきなのかもしれない」
言った瞬間、胸の奥がきゅっと痛んだ。
カリオンの耳が、ぴくりと動く。
「“べき”ね」
「家のことも。
父のことも。
王宮のことも。
全部放り出して、ここで楽しく生きてます、なんて——」
「誰も言ってない」
カリオンの声が、少しだけ低くなる。
「“楽しく生きてる”って自分で思ったなら、それはそれでいいことだろうが」
「でも」
焚き火の火が、視界の中で揺れる。
「私がいなくなったことで、誰かが責められてる。
私が逃げたことで、誰かの立場が危うくなってる。
その事実を知ってしまって、それでもここにいるのは——」
「逃げか」
短く言い捨てられる。
照り返しのような言葉だった。
彼が“逃げることを恥じていない”のは知っている。
でも、今のそれは、私の中の言葉をそのまま反復しただけだ。
「逃げてばかりいたくないって言ったのは、お前だ」
「うん」
「森に来てから、“逃げずに向き合いたい”って言ったのも、お前だ」
「うん……」
「だったら、“戻るべきだから戻る”って考え方も、結局は“逃げ”じゃねえのか」
焚き火の火が、パン、と小さく弾けた。
その音に合わせるみたいに、胸の中で何かが跳ねる。
「どういう意味」
「“大公家のため”“王宮のため”“父のため”——」
カリオンは指で折りながら、言葉を並べる。
「それを全部並べて、“だから戻るべき”って言えば、“自分”で考えなくて済む。
“責任”って言葉に丸ごと押しつけて、自分の心を見なくて済む」
「そんなつもりじゃ——」
「ないのは分かってる」
ぴしゃりと遮られる。
「分かってるから、余計に腹が立つ」
その一言に、息が止まりそうになった。
腹が立つ。
それは、彼があまり口にしない感情だ。
カリオンは、焚き火を挟んで向かい合う位置に座り直した。
黄金色の瞳が、炎越しにこちらを射抜く。
「お前はこの森で、やっと“自分の飯を、自分で作る味”を覚えた。
火の熱さも、包丁の重さも、薪の湿り気も、全部自分の手で確かめてきた」
「……うん」
「それを、“名誉のため”“体裁のため”“責任のため”って言葉で、
簡単に上書きしてほしくない」
声が、少しだけ震えていた。
歯を食いしばっているのが分かる。
「お前の決めることだ」
ぽつりと、言う。
「お前がどこにいるかは、お前が決めるべきだ。
戻るにしても、残るにしても、最後に選ぶのはお前だ」
「……」
「俺はそこに口を出す権利なんかない。
黒豹の獣人に、“人間の女の行き先”を決める資格なんかない」
拳を握る音が、ぎゅっと聞こえた気がした。
「だから——」
言葉を区切る。
「“戻るな”って言えないことが、腹が立つ」
やっと、出てきた本音だった。
胸の奥が、じん、と痛くなる。
「……言っていいのに」
思わず漏らしていた。
「“戻るな”って言ってくれたら、私、きっとそれを理由にして、ここにいるって言えるのに」
「だからだ」
カリオンの声が少し強くなる。
「それを言った瞬間、お前はまた“誰かの言葉”のせいにする。
“カリオンが戻るなって言ったから”って。
“黒豹のせいで戻れなかった”って」
「そんな——」
「今はそう思ってなくても、いつかそうなる。
人間の世界は、そうやって責任を押しつけ合う場所なんだろ」
彼の中にある“人間への不信”が、静かに顔を出す。
ここに来るまでの間に、獣人たちが人間に何をされたか。
私はまだ全部を知らない。
でも、その一端は聞いた。
城を建てようとした貴族たち。
森を削ろうとした人間たち。
「共に生きる」と言いながら、最後には支配しようとした奴ら。
カリオンの怒りは、その記憶も全部背負っている。
「……ごめん」
気づいたら、そう言っていた。
「私、たぶん、まだちゃんと“自分で選ぶ”ってことが怖いんだと思う」
大公家の娘として。
王宮の駒として。
誰かの期待に応えることばかり考えてきた。
自分の心を優先したことなんて、ほとんどなかった。
「“戻るべき”って言葉の方が、ずっと楽だから」
「楽じゃねえよ」
カリオンは即答した。
「戻ったら戻ったで、お前はまた“正しさ”の中で息を止める。
森に残ったら残ったで、“捨ててきたもの”の重さに押しつぶされる。
どっちも楽じゃねえ」
「……じゃあ、どうしたらいいの」
情けない声が出た。
「私は、どこにいたらいいの」
焚き火の光が、涙で滲む。
カリオンは、しばらく黙っていた。
炎の揺れが、黄金色の瞳の奥を照らす。
「知らねえよ」
やっと絞り出した声は、驚くほど正直だった。
「俺は、お前の父親でも王でも神でもねえ。
“ここにいろ”“あっちに行け”って指図する役目じゃない」
「でも——」
「一つだけ言えるのは」
言葉が重ねられた。
「どこにいても、“お前が自分で選んだ場所”なら、俺は納得する。
“誰かの都合に押し流されて決めた場所”なら、どっちでも腹が立つ」
胸の奥が、きゅっと締め付けられる。
優しさと不器用さと怒りが、全部ごちゃ混ぜになった言葉。
「……カリオンは」
震える声で問いかけた。
「私に、どこにいてほしいの?」
焚き火の音だけがしばらく続いた。
カリオンは、ゆっくりと目を伏せる。
歯を食いしばる音が、かすかに聞こえた。
やがて——
「言ったら、俺の負けだろ」
ぽつりと落ちた。
「お前に“責任を押しつけない”って決めたから、敢えて言わない」
その言い方が、妙に悔しそうで。
私の胸の奥に、じわりと熱いものが広がっていく。
心と心が、少しだけすれ違ったようになる。
“戻るべき”と思う私と、
“戻るな”と言えないカリオン。
どちらも、相手を縛りたくなくて、逆に互いの心に爪を立てている。
焚き火の炎が、もう一段低くなる。
森の外では、王家の旗が夜風にはためいているはずだ。
古い世界の影と、新しい世界の匂い。
その狭間で、私たちは黙り込んだまま、ただ火を見つめていた。
焚き火の炎が、ぱちぱちと乾いた音を立てていた。
夕刻の森は、昼よりも音がよく響く。
鳥の声は減り、代わりに遠くの風と、木々が擦れ合うざわめきが大きくなる。
その真ん中で、王都と森という、あまりにも違う空気がぶつかり合っていた。
「ルシア」
デュルクが、少しだけ距離を詰めた。
鎧の金具が、きぃ、と微かに鳴る。
青いマントの裾が、焚き火の風で揺れた。
「君が戻れば、大公家も救われる」
その言葉は、やけに滑らかだった。
「……救われる?」
反射的に問い返している自分がいた。
「今、王都では、アルセイド大公家への批判が強まっている。
“令嬢一人守れない家が、王国の柱を名乗るのか”と。
王宮にも、貴族たちから圧力が来ている」
淡々とした説明。
でも、その中に“焦り”が混ざっているのが分かる。
「君がいないと、家はずっと攻撃され続ける。
大公家の名誉も、父君の立場も、これから先ずっと傷つきっぱなしだ。
――君が戻れば、それが一気に覆る」
(出た)
胸の奥が、冷静にその言葉を分類する。
“君が戻れば”。
“家が救われる”。
“父の立場”。
私に向けているようでいて、実際には全部“家と王宮の都合”の話だ。
でも、かつての私だったら――。
(これだけで、戻ってたかもしれない)
頭を下げて、「ご迷惑をおかけしました」と言って、大人しく馬車に乗り込んでいたかもしれない。
私がいないことで家に迷惑がかかっている。
父が批判されている。
王宮の空気が乱れている。
その事実だけで、自分を責め尽くして。
「……私が戻れば、全部丸く収まる、ってことですか」
口の中に、苦い味が広がる。
「そうじゃない」
デュルクは首を振った。
「君自身のためでもある。
この森で、どんな暮らしをしていたかは知らない。
だが、ここにいる限り、君はずっと“行方不明の令嬢”のままだ」
「“行方不明”」
「王都の記録上はな」
彼の声は変わらず冷静だった。
「だが、君が戻れば、“一時的な事故”として処理できる。
君は改めて大公家の娘として、その立場を取り戻せる」
――“立場”。
それが、彼の口から出てくると、妙に重く響いた。
私は、しばらく黙ってデュルクの顔を見ていた。
昔は、その横顔が好きだった。
いつも先を見ていて、冷静で、周りより一歩先のことを考えていると思っていた。
でも今は、そこに貼り付いている“王宮のマスク”が、はっきり見える。
言葉の一つひとつが、計算されている。
私の「責任感」をくすぐるように、綿密に選ばれている。
家。
名誉。
立場。
批判。
救済。
全部、“私が弱いところ”だ。
森に来る前なら、その通りに心が動いていた。
でも——今の私は、違う場所も知ってしまった。
焚き火を囲みながら、焦げたスープを笑い合った夜。
火の起こし方を何十回も失敗して、指を擦りむいた日。
リュナに保存食を教わって、初めて「うまくできた」と褒められた夕暮れ。
そして——
「飯が楽しみになった」と、ぽつりと言った黒豹の背中。
その全部が、私の中に根を張っている。
「……私がいないと、アルセイドは批判され続けるんですね」
ゆっくりと口を開く。
「父が、責められる。
大公家の名誉が傷つく。
王宮の人たちは、“失踪した娘を何とか回収しろ”って言う」
「そうだ」
デュルクははっきり頷いた。
「……君は、大公家の令嬢だから」
「でも」
その言葉を遮るように、続けた。
「じゃあ、私は?」
「え?」
「私は、また“駒”として戻るの?」
自分でも驚くくらい、静かな声だった。
怒鳴りたいわけじゃない。
泣きたいわけでもない。
ただ、本当のことを知りたいだけ。
「大公家の令嬢として。
“問題を片付けるための存在”として。
“王宮と大公家の橋渡しになる便利なピース”として。
それを、またやれって言うんですか?」
デュルクの喉が、ぴくりと動いた。
焚き火の火が、ぱちっと弾ける。
騎士たちの視線が、遠巻きにこちらを窺っているのが分かる。
「……違う。君は“駒”なんかじゃ——」
「じゃあ、聞かせてください」
遮る声が少し強くなった。
「デュルク様は、今、ここに立っている“私”を見ていますか?
それとも、“アルセイドの令嬢”を見ていますか?」
数秒間、完全な沈黙が落ちた。
デュルクの表情に、一瞬だけ迷いが走る。
視線が揺れ、言葉を探すように唇が動いた。
そして——
「……君には、大公家の名も教養もある」
彼は、選ぶべきでない言葉を選んでしまった。
「王宮としては、それを使わない手はないだろう?」
“名”と“教養”。
それが、彼の口から出た瞬間、胸の奥で何かが冷たく砕けた。
(ああ)
はっきり分かってしまった。
私のことを“ルシア”として見ていないわけじゃない。
きっと、彼なりに心配もしているし、罪悪感もある。
それでも——
(“使えるもの”として見ている)
それが、彼の本音だ。
大公家の名。
教養。
宮廷で磨いてきた礼儀と笑顔と立ち振る舞い。
それらを「使わない手はない」と言ってしまえるくらいには、彼は“王宮”の人間なんだ。
焚き火の匂いの向こうから、別の匂いが漂ってきた。
湿った土。
野生の毛皮。
焦げた木。
——獣人の匂い。
振り返るまでもなく、誰かが木陰に立っているのが分かった。
黒い耳。
黒い尾。
黄金色の瞳。
さっきの言葉を、きっと全部聞いてしまった。
カリオンの視線が、デュルクに向けられている。
その瞳は、いつもの無関心な光ではなかった。
深い、底冷えのする怒りが、静かに燃えている。
(やば……)
背筋が冷える。
カリオンは、基本的に何事にも淡々としている。
人間の世界のゴタゴタなんて、本当はどうでもいいと思っているはずだ。
でも、“食べ物”と“仲間”に関することだけは違う。
そして今——
“森で一緒に飯を食ってきた女”が、“使える駒”扱いされている。
それを聞いて、怒らないはずがない。
「……つまり」
カリオンは、一歩、木陰から出てきた。
鎧の音が止まる。
騎士たちの手が、反射的に剣の柄に伸びる。
黒い耳が、わずかに後ろに倒れている。
尻尾は低く、しかし緊張で膨らんでいた。
「お前ら人間は、“名”とか“教養”とかいうものを、
“使える道具”って呼ぶのか」
低く、抑えた声。
デュルクがわずかに目を細める。
「……君は」
「黒豹の獣人、カリオン」
名乗るつもりなんてなかったのに、口が勝手に言った。
私の方が先に言っていた。
「この森で、私を助けてくれた人。
火の起こし方も、料理の仕方も、生き方も教えてくれた人です」
口に出した瞬間、自分で少し震えた。
自分の中でのカリオンの位置が、はっきりしたみたいで。
デュルクの表情が、ほんのわずかに強張る。
「……獣人、か」
その単語には、警戒と敵意と、好奇心が混ざっていた。
カリオンは、そんな視線を一切気にしていないようだった。
ただ、歩く。
私の前に一歩出て、半分だけ庇うような位置に立つ。
「お前」
不意に、こちらを見下ろした。
「さっきの話、聞いたか」
「……聞いた」
喉がひりつく。
“使わない手はない”。
その言葉の棘が、まだ胸の中に残っている。
「お前の“名”と“教養”とやらを、“使う手がある”んだとよ。
戻れば、また“都合よく切り分けられたお前”を使うつもりらしい」
「カリオン」
止めようとした。
でも、止まらなかった。
カリオンの黄金色の瞳は、デュルクに向けた瞬間、さらに鋭くなっていた。
「お前」
呼び方に一切の敬意はない。
「この女が森で何をしてきたか、想像もしてないんだな」
「……何を、とは?」
「火を起こして。薪を担いで。手を切って。焦げたスープをすすって。
うまい飯を作るために、何度も味を外して、舌を馬鹿にされながら、それでも挑戦して」
「誰が馬鹿にした」
「俺だ」
こっちはこっちで、いつもの調子で返してくる。
「そうやって、こいつは“飾りじゃない自分”を手に入れようとしてた。
それを聞いたうえで、“名と教養が使える”って言葉が出るなら……」
一拍置いて。
「俺は、かなりお前が気に入らねえ」
静かな怒り。
怒鳴りもしないし、威嚇の唸り声も出さない。
けれど、体の周りにまとわりつく空気だけが、目に見えるほど冷たくなっていく。
騎士たちが、完全に武器に手をかけた。
何人かは魔術の詠唱に入ろうとしている。
デュルクが片手を上げて、それを制した。
「下がれ」
短く命じる。
彼は、カリオンをじっと見た。
「……俺の言い方が悪かったと認めよう」
「言い方?」
カリオンの耳が、ぴくりと動く。
「本音を誤魔化す言葉はいくつもある。
だが、“使わない手はない”というのは、たしかに“駒として見ている”と言われても仕方がない言い方だった」
認めた。
意外なほどあっさりと。
「俺は王宮の人間だ。
王家の下にいる限り、人を“役目”や“立場”で見ることを完全にやめることはできない」
その言葉は、言い訳でもあり、告白でもある。
「だが、それは“ルシアに感情がない”という意味じゃない」
「ふうん」
カリオンは、あからさまに興味なさそうな声を出した。
「お前が何を思っていようが、お前の中で“俺の女”が“使える駒”と並列に扱われている時点で、俺には十分だ」
「お前の女?」
「カリオン」
思わず素っ頓狂な声が出た。
「誰がいつ“そう”なったのよ!」
「違うのか」
「違わない……けど……今その言い方する!?」
顔が一気に熱くなる。
デュルクの視線が、一瞬だけ私に向いた。
その目の奥で、何かがきしむ音がした気がした。
沈黙。
焚き火の火が、やけに大きく揺れる。
それ以上何か言えば、本当に刃が抜かれるかもしれない。
そういう危うさが場を満たしていた。
だから、私は深く息を吸い込んだ。
「もう、やめて」
声が震えないように、必死で抑える。
「今ここで争っても、何もいいことにならない」
カリオンの方を見て、目で訴える。
デュルクの方にも向き直って、言葉を選んだ。
「デュルク様」
「……ああ」
「“私がどうするか”の答えは、今ここでは出せません」
はっきりと言った。
「大公家のことも、王宮のことも、父のことも。
そして、森での暮らしも。
どれも、簡単に天秤にかけられるものじゃないから」
「だが——」
「戻るべきかどうか、ちゃんと考えます」
胸が痛い。
「でも、その前に。
“私が利用されていた”事実から、目を逸らさないようにします」
“名”や“教養”を、“使えるから使う”。
その考え方に、自分も乗っかっていた。
“飾りでも、誰かの役に立てるならいい”って自分に言い聞かせていた。
それが、どれだけ自分をすり減らしていたか。
今なら、はっきり分かる。
「……そうか」
デュルクは、苦い顔をして頷いた。
「時間を置くのが、今は正しいのかもしれないな」
彼の声も、どこか疲れていた。
エリセは、そのやりとりを少し離れたところから眺めていた。
口元にうっすらと笑みを浮かべながらも、その瞳は鋭い。
(“利用されていた”って、自分で言うのね)
そんな声が聞こえてきそうだった。
*
その夜。
森は、王都の軍の焚き火の光から少し離れた場所で、いつも通り暗かった。
カリオンの住処。
洞窟の中には、いつもの焚き火がある。
鍋の中では、今日も何かが静かに煮えていた。
でも、空気はいつもと違った。
「……で」
カリオンが、焚き火を見つめたまま口を開いた。
「戻るつもりなのか」
真正面から来た。
私は、膝の上で組んだ指をぎゅっと握った。
焚き火の光が、指の関節を赤く染める。
「もしかしたら」
やっと出た声は、自分でも頼りなかった。
「私は、戻るべきなのかもしれない」
言った瞬間、胸の奥がきゅっと痛んだ。
カリオンの耳が、ぴくりと動く。
「“べき”ね」
「家のことも。
父のことも。
王宮のことも。
全部放り出して、ここで楽しく生きてます、なんて——」
「誰も言ってない」
カリオンの声が、少しだけ低くなる。
「“楽しく生きてる”って自分で思ったなら、それはそれでいいことだろうが」
「でも」
焚き火の火が、視界の中で揺れる。
「私がいなくなったことで、誰かが責められてる。
私が逃げたことで、誰かの立場が危うくなってる。
その事実を知ってしまって、それでもここにいるのは——」
「逃げか」
短く言い捨てられる。
照り返しのような言葉だった。
彼が“逃げることを恥じていない”のは知っている。
でも、今のそれは、私の中の言葉をそのまま反復しただけだ。
「逃げてばかりいたくないって言ったのは、お前だ」
「うん」
「森に来てから、“逃げずに向き合いたい”って言ったのも、お前だ」
「うん……」
「だったら、“戻るべきだから戻る”って考え方も、結局は“逃げ”じゃねえのか」
焚き火の火が、パン、と小さく弾けた。
その音に合わせるみたいに、胸の中で何かが跳ねる。
「どういう意味」
「“大公家のため”“王宮のため”“父のため”——」
カリオンは指で折りながら、言葉を並べる。
「それを全部並べて、“だから戻るべき”って言えば、“自分”で考えなくて済む。
“責任”って言葉に丸ごと押しつけて、自分の心を見なくて済む」
「そんなつもりじゃ——」
「ないのは分かってる」
ぴしゃりと遮られる。
「分かってるから、余計に腹が立つ」
その一言に、息が止まりそうになった。
腹が立つ。
それは、彼があまり口にしない感情だ。
カリオンは、焚き火を挟んで向かい合う位置に座り直した。
黄金色の瞳が、炎越しにこちらを射抜く。
「お前はこの森で、やっと“自分の飯を、自分で作る味”を覚えた。
火の熱さも、包丁の重さも、薪の湿り気も、全部自分の手で確かめてきた」
「……うん」
「それを、“名誉のため”“体裁のため”“責任のため”って言葉で、
簡単に上書きしてほしくない」
声が、少しだけ震えていた。
歯を食いしばっているのが分かる。
「お前の決めることだ」
ぽつりと、言う。
「お前がどこにいるかは、お前が決めるべきだ。
戻るにしても、残るにしても、最後に選ぶのはお前だ」
「……」
「俺はそこに口を出す権利なんかない。
黒豹の獣人に、“人間の女の行き先”を決める資格なんかない」
拳を握る音が、ぎゅっと聞こえた気がした。
「だから——」
言葉を区切る。
「“戻るな”って言えないことが、腹が立つ」
やっと、出てきた本音だった。
胸の奥が、じん、と痛くなる。
「……言っていいのに」
思わず漏らしていた。
「“戻るな”って言ってくれたら、私、きっとそれを理由にして、ここにいるって言えるのに」
「だからだ」
カリオンの声が少し強くなる。
「それを言った瞬間、お前はまた“誰かの言葉”のせいにする。
“カリオンが戻るなって言ったから”って。
“黒豹のせいで戻れなかった”って」
「そんな——」
「今はそう思ってなくても、いつかそうなる。
人間の世界は、そうやって責任を押しつけ合う場所なんだろ」
彼の中にある“人間への不信”が、静かに顔を出す。
ここに来るまでの間に、獣人たちが人間に何をされたか。
私はまだ全部を知らない。
でも、その一端は聞いた。
城を建てようとした貴族たち。
森を削ろうとした人間たち。
「共に生きる」と言いながら、最後には支配しようとした奴ら。
カリオンの怒りは、その記憶も全部背負っている。
「……ごめん」
気づいたら、そう言っていた。
「私、たぶん、まだちゃんと“自分で選ぶ”ってことが怖いんだと思う」
大公家の娘として。
王宮の駒として。
誰かの期待に応えることばかり考えてきた。
自分の心を優先したことなんて、ほとんどなかった。
「“戻るべき”って言葉の方が、ずっと楽だから」
「楽じゃねえよ」
カリオンは即答した。
「戻ったら戻ったで、お前はまた“正しさ”の中で息を止める。
森に残ったら残ったで、“捨ててきたもの”の重さに押しつぶされる。
どっちも楽じゃねえ」
「……じゃあ、どうしたらいいの」
情けない声が出た。
「私は、どこにいたらいいの」
焚き火の光が、涙で滲む。
カリオンは、しばらく黙っていた。
炎の揺れが、黄金色の瞳の奥を照らす。
「知らねえよ」
やっと絞り出した声は、驚くほど正直だった。
「俺は、お前の父親でも王でも神でもねえ。
“ここにいろ”“あっちに行け”って指図する役目じゃない」
「でも——」
「一つだけ言えるのは」
言葉が重ねられた。
「どこにいても、“お前が自分で選んだ場所”なら、俺は納得する。
“誰かの都合に押し流されて決めた場所”なら、どっちでも腹が立つ」
胸の奥が、きゅっと締め付けられる。
優しさと不器用さと怒りが、全部ごちゃ混ぜになった言葉。
「……カリオンは」
震える声で問いかけた。
「私に、どこにいてほしいの?」
焚き火の音だけがしばらく続いた。
カリオンは、ゆっくりと目を伏せる。
歯を食いしばる音が、かすかに聞こえた。
やがて——
「言ったら、俺の負けだろ」
ぽつりと落ちた。
「お前に“責任を押しつけない”って決めたから、敢えて言わない」
その言い方が、妙に悔しそうで。
私の胸の奥に、じわりと熱いものが広がっていく。
心と心が、少しだけすれ違ったようになる。
“戻るべき”と思う私と、
“戻るな”と言えないカリオン。
どちらも、相手を縛りたくなくて、逆に互いの心に爪を立てている。
焚き火の炎が、もう一段低くなる。
森の外では、王家の旗が夜風にはためいているはずだ。
古い世界の影と、新しい世界の匂い。
その狭間で、私たちは黙り込んだまま、ただ火を見つめていた。
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