11 / 20
第11話 紅の商人、仮面を買う
しおりを挟む王都は、冬の光で上塗りされた装飾画のようだった。石の縁は白く乾き、塔の先には薄い霜が鳴る。帰還の挨拶はしない。私は一台の荷車で城門を抜け、「紅の商人(ルージュ・マルシャン)」の名で領収書を切る。露店の布は上等に、だが糸は見えないところで粗く。近づけばほどける——そう見せかける衣装は、油断を誘うのに向いている。
まずは金。私は宮廷劇場付属サロンの管理人に、蜂蜜より甘い書面を差し出した。
「主催権を買う。仮面舞踏会、今季最大規模」
管理人は目を細める。「保証は?」
「《保護》基金。ギルドの手形三十枚、王都の商家十七、ルヴァン五。赤字は出さない。出たら私が飲み込む」
男は私の手首の太さを測り、笑う。「君が飲み込むには大きすぎる」
「だから、こぼさない設計を持ってきたわ」
設計——舞台図。会場装花、照明、演目、導線、給仕の歩数、楽師の休憩の刻限、厨房の火加減。私は紙束を広げ、灯りの位置に赤い点、香の流れに薄金の線、告白と忘却の“波”に沿って矢印を描く。
「照明は蜂の巣配置、六十灯。わずかな瞬きが全体に伝播するように連結。合図は一度。二度目は要らない」
「演目は?」
「古い仮面劇《二つの口》。台詞は軽く、踊りは重く。観客の足元が浮くように、床の鳴りを残す」
「香りは?」
「《告白》と《忘却》。持続は四刻、最高潮は二刻目と三刻目の間。入り口のクロークに香りの“針”を縫い付ける。自ら選んだ香りだと錯覚する導線に」
管理人は舌の奥で唸り、書面を裏返して金額を小さく書き、私へ押しやった。「馬鹿げているが、やりたくなる。そういう数字だ」
「やりたくさせるのが、商いの数字」
承認の印が落ちる音を背に、私は次の扉を叩く。《ノワール》のヌール、アルマン、パスカール、ジル——影の名が短く並ぶ。
「花は?」
「倉庫から“奇跡”の部屋を経て舞台へ。だが高さを一尺、低く」私は指で示した。「視線の角度が、告白を引き出す」
ジルが指を舐め、印章のケースを開く。「招待状は“王の祝福”の金線、だが本物と一筋だけ違える。ずっと見ている者にしか気づかない違い。気づく者は噂にする。噂は入場券だ」
アルマンは帳簿を軽く叩く。「酒の出荷は段階制。一次は軽く、二次で甘く、三次で水を。忘却は、誰にでもは飲ませない。必要としている者の呼気には粉の匂いが混ざる。注ぎ手に嗅ぎ分けさせる」
パスカールは十字を切りかけ、やめた。「神の名は出すな。出すなら、演目のなかで。台詞に“赦し”を混ぜると、正面の男はわざとらしく笑う。そこに《告白》が入りやすい」
ヌールは片目を細めて笑う。「落ちる音、綺麗にしな。腐らせるなら、花の水替えを忘れるな」
準備は五日で終わらせた。終わらせるために、毎夜、柱の影で息を数える。十で景色を見る。母の書簡を枕元に置き、紙に短く触れて眠る。銀糸のハンカチは枕の下、境界の守衛。
当日。王都最大の仮面舞踏会。石段に赤い布が流れ、仮面の下にそれぞれの欲が笑う。鳥の翼、花の唇、獣の耳、涙の滴。王侯貴族、聖職者、学者、成り上がりの商人。あらゆる“正しさ”が仮面をかぶる夜。
私は——紅の商人。緋のマント、黒手袋、仮面は細い蔦の彫金。口元だけが素顔で、笑いが刃に見える形。
ダミアンが裾をさりげなく踏んで、耳の高さで低く囁いた。
「王太子、入場は二刻の終わり。聖女は遅れて同道。側近ラザールは舞台袖の裏の通路を使う」
「灯りの連結は?」
「蜂の巣、全部生きてる。瞬きは合図一度。合図の前に君は呼吸を二つ深く」
「銀糸は?」
「ここに」彼は胸元に指を差し、おどけたふりで手巾を一枚見せた。
「似合わない」
「似合うものしか持たない」
私たちは視線で笑い、離れた。
会場装花は控えめに見えて、背後に仕掛けを持っている。水に溶いた《告白》が茎からわずかに上がり、花弁へ至る前に止まる。揮発はしない。客が近づいて鼻を鳴らす、その瞬間にだけ、薄く漂う。テーブルの高さは少し低く、座った時の眼差しが正面より下へ落ちる設計。人は下へ落ちる視線で、少しだけ正直になる。
楽師の調律は低め。弦が床を撫でる音が、胸骨に触れる。弦は心臓の鏡だ。
給仕の歩数は一定。利き手と反対側に小さな針——《忘却》の目印。必要とする口の呼気は、粉砂糖と汗の匂い。嗅ぎ分けは、訓練済み。
「紅の商人ですって。仮面の下は誰?」
「王都に戻ったばかりなのに、この規模。背景は?」
「“保護”。慈善と契約の噂」
囁きは、金の糸で編まれた網の音だ。私は微笑み、扇子の骨に指を滑らせる。骨は固い。骨は私の。
最初の演目が終わり、第二の曲に入る前、私はシャンデリアの真下で立ち止まった。蜂の巣は、よく光る。
私の呼吸が二つ、深くなる。
一歩だけ、広場の中心へ。
左手で仮面の縁を直すふりをして、指先で上部の引き鎖を弾く。
チ、チ、と二度、瞬き。
合図。
光がわずかに波打ち、影が柔らかく動く。床の鳴りが一つ、二つ、深くなる。楽師の弓が毛の一本ぶんだけ圧を増す。クロークから戻る羽織の裏地に《告白》の針がさやさや響く。
最初に反応したのは、衣装係の男だった。袖の糸を指で探りながら、隣の女にささやく。「今日は、聖女様、白すぎる。いつもはもっと、香りが厚い」
隣の女は笑って扇で口を隠す。「香り? 奇跡の」
「奇跡に香りは、要る」
言葉は軽く、しかし重心に届く。
別の場所では、財務官がワイングラスを傾けて、「“祝福”の予備費、二度目は難しい」とぼやく。
「一度目で味をしめるのに?」と伯爵夫人。目の下に薄い影。昨夜の涙は乾いている。
「検察卿は神の沈黙を信じ始めた」
「神は便利」
「そう」
——拾う。
私は静かに歩き、壁際の柱に背をつける。耳は舞台の裏の通路へ。ラザールの靴が床を数える音。三歩、止まって、二歩、戻る。緊張の足。
舞台袖で、司祭崩れが楽師に囁く。「次の曲、半音下げろ。心の蓋が浮く」
「曲の名は?」
「《二つの口》」
蓋が浮く。
——開けるのは、持ち主の手。
殿上の扉が開き、王太子が入る。仮面は薄羽、きちんとした線。彼の目が台本を追う癖は、今夜も舞踏の手の中で小さく暴れる。隣に遅れて、聖女リリアーヌ。白、薄金、そして透明な笑い。奇跡の予感の匂いはしない。代わりに、新しい花瓶の水の匂いが微かに。
観客の体が、祈る姿勢のまま踊りに入る。祈りながら踊ると、人の脇は甘くなる。甘さは、告白の入口。
私はダミアンの影とすれ違い、視線で二つの指を立てる。
——二箇所、漏れた。
彼は顎で合図を返す。
——あと一箇所、開く。
演目《二つの口》の主人公が、仮面を半分外して言う。「ぼくは二枚舌、きみは二枚の心。合わせれば四枚の真実」
笑いが起こり、ワインがゆっくり減る。忘却の輪郭は、まだ遠い。告白の波が先に立つ。
伯爵夫人の席で、扇が閉じられる。「ねえ、聞いて。倉庫の番号、あなたの書類で、“三八”に見せかけて“二六”だったの。印章の尻尾が短いのよ」
財務官の眉が動く。「誰が見た」
「紙が見たわ」
彼は笑い、肩をすくめ、「神の御心だ」と言ってから小声で、「検察卿の机の左から二番目の引き出し、鍵が壊れている」と零した。
——ありがとう。
私は背の内側で息をつき、合図を次段へ渡す。給仕の女がトレイの上に“水”をのせる。忘却の縁は薄い。必要とする口だけが、その水を選ぶ。指が粉砂糖の匂いを持つ者、汗に鉄の匂いを溶かした者。
「喉が渇いた」
「今夜は喋りすぎ」
「明日の朝には、覚えていない」
笑い。
その時だ。
高座の上の一角で、僅かなざわめき。照明の陰に誰かが立ち、仮面の下の視線が鋭くなった。ラザール。側近は舞台袖の通路のほうを一度だけ見た。
「瞬きは、一度だけ」
口の形で、私は彼に教える。
彼は気づかない。合図は観客へのものだと信じている。
蜂の巣の光が、二度、ほんのわずかにかすれた。
——違う。
私の合図ではない。
刹那、銀糸のハンカチが、胸の中で微かに冷えた。
無臭の境界が、風の筋を渡ってきたのだ。
私は仮面の下で目を細め、息を浅くする。
舞踏会は、今夜、二つの舞台を重ねている。私の舞台と、心臓部の舞台。
なら、重ねて踊る。
私は中央へ一歩進み、紅のマントの裾を広げ、主催者の乾杯を告げた。
「今夜の仮面に、祝福を」
グラスが鳴る。その音の波が広がる間に、私はささやきを放つ。
「——選んだ香りが、あなたの言葉を選ぶ」
席で、夫人が笑った。「それなら、良い言葉を選ばないと」
財務官が合わせる。「神の御心にかなう言葉を」
「御心は、紙の心」
彼は噴き出しそうになって堪え、喉に“水”を流し込んだ。忘却の縁が、彼の舌に触れる。
王太子が一段高いところから言葉を落とす。「今宵の……ええと……」
台本の綴りを追う目。
聖女が穏やかに微笑み、扇で軽く風を起こす。白い花弁が一枚、彼女の肩に落ちる。肩は花瓶の水の匂い。
「花は、祈りのなかで咲くわ」
彼女がそう言った瞬間、舞台袖でラザールの手が合図を間違え、控えの間の扉から花の籠が早く出る。
時間が、一歩、滑った。
私は逃さない。
給仕の一人が、わざとトレイを低く構え、花の行列の下を横切る。花に水が揺れ、わずかに滴が落ち、床板のわずかな隙間へ。そこが“鳴る”場所だ。足音が変わる。
変わった足音は、正直な言葉を呼ぶ。
「王太子殿下、倉庫は——」
「静かに」
「祝福は、予備費から」
「黙れ」
声が絡まり、笑いと拍手の音が上書きする。
私は扇子を胸で打ち、一度だけ、目を閉じた。
光が一筋、変わる。
蜂の巣のうち、私の仕込んだ“針”の灯りだけが、ほんの刹那、震えを見せる。
告白は波になる。忘却は縁を丸くする。
波と縁のあわいで、人は喋る。
「検察卿の机、鍵が——」
「明日、わたしは覚えていない」
「覚えていなくても、紙は覚えている」
舞台にいるのは、役者ではない。
観客だ。
観客が、知らないまま、台詞を言う。
私は主催者として、拍手を誘う。
「すばらしい夜です」
口当たりの良い毒を、言葉に混ぜる。
「みなさまの“善良さ”に、乾杯を」
善良。
誰もが笑い、誰もが頷き、誰もが「善良」と言われると、少しだけ油断する。
油断は、記憶が薄くなる隙間。
隙間から、紙を差し込む。
合間に、私は銀糸の気配が再び冷えるのを感じた。
口笛は鳴らない。
今夜、ギヨームは吹かない。
彼は見ている。
私と、彼らと、そして殿下と聖女を。
心臓部の目。
ならば、見せる。
“紅の商人”の仮面の下にある刃先を。
踊りが三巡したころ、私はダミアンと背中合わせになった。
「漏れは三。倉庫、予備費、台本。——十分だ」
「足りない」
「強欲だな」
「落ちる音を、選びたいの」
彼は小さく笑い、帽子のつばを指で触れた。「次の演目は早めに切れ。聖女の奇跡の合図が前倒しになる」
「私の合図は、一度だけ」
「君の合図は、もう届いてる」
《二つの口》が終わり、次の演目に入る前、私は階段に向き直った。
薄いヴェールが、はらり、と落ちるように、時間が変わる。
聖女が軽く手を上げ、花弁が舞う。
花の香りは、倉庫の水の匂い。
私は拍手をしない。
代わりに、グラスを鳴らした。
カン。
シャンデリアの針が、共鳴する。
誰もが一瞬だけ、天井を見る。
その隙に、言葉がこぼれる。
「王は——」
「私は——」
「誰かが——」
そして次の瞬間、忘却が縁を丸くする。
「まあいいか」
誰もが言う。
「今夜は、良い夜だ」
良い夜だ。
だから、壊れる。
壊れ方を、私が選ぶ。
私は扇を閉じ、仮面の下で笑う。
紅の商人の笑いは、金でできている。
金は音を持つ。
冷たく、長く、よく響く音。
落ちる音に、よく似ている。
幕間、私は舞台裏の狭い廊下でヌールから小さな紙片を受け取った。
《新聞社の下働き、裏口に。祝福の紙面、今夜仕上げ。——角を折れ》
了解。
私は紙の角をひと折り、香のない空気にひとつ息を混ぜ、再び客の海へ戻る。
王太子は台本を持たない手で、仮面を押さえている。仮面がずれると、目が泳ぐ。
聖女は笑う。
視線の置き方を知っている女の笑い。
私は扇で風を起こし、蜂の巣の灯りをほんの刹那だけ泳がせる。
告白と忘却の波が、重なって、ほどける。
夜が終わるころ、私は合図を解いた。光は均一、香は薄く、音は遠く。
観客は満ち足りた顔で帰っていく。
口々に言う。
「良い夜だった」
「明朝になれば、すべてが昨日になる」
「そうね。昨日は、遠い」
——遠くなんてない。
紙は、近い。
私は胸の内で笑い、銀糸のハンカチに指をかける。
無臭の境界は、今夜、歌わなかった。
だから、次は私が歌う。
えんどう豆、二つ、鞘のなか。
子どもの歌を、大人の劇に重ねる。
紅の商人の仮面は、光を集めて、ゆっくり、引き出しに仕舞われる。
次に出す時には、もっと鋭い笑いで。
落ちる音が、もっと美しく響くように。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。
潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。
【完結】王都に咲く黒薔薇、断罪は静かに舞う
なみゆき
ファンタジー
名門薬草家の伯爵令嬢エリスは、姉の陰謀により冤罪で断罪され、地獄の収容所へ送られる。 火灼の刑に耐えながらも薬草の知識で生き延び、誇りを失わず再誕を果たす。
3年後、整形と記録抹消を経て“外交商人ロゼ”として王都に舞い戻り、裏では「黒薔薇商会」を設立。
かつて自分を陥れた者たち
――元婚約者、姉、王族、貴族――に、静かに、美しく、冷酷な裁きを下していく。
これは、冤罪や迫害により追い詰められた弱者を守り、誇り高く王都を裂く断罪の物語。
【本編は完結していますが、番外編を投稿していきます(>ω<)】
*お読みくださりありがとうございます。
ブクマや評価くださった方、大変励みになります。ありがとうございますm(_ _)m
婚約破棄された公爵令嬢は数理魔法の天才
希羽
ファンタジー
この世界では、魔法は神への祈りとされる神聖な詠唱によって発動する。しかし、数学者だった前世の記憶を持つ公爵令嬢のリディアは、魔法の本質が「数式による世界の法則への干渉」であることを見抜いてしまう。
彼女が編み出した、微分積分や幾何学を応用した「数理魔法」は、従来の魔法を遥かに凌駕する威力と効率を誇った。しかし、その革新的な理論は神への冒涜とされ、彼女を妬む宮廷魔術師と婚約者の王子によって「異端の悪女」の烙印を押され、婚約破棄と国外追放を宣告される。
追放されたリディアは、魔物が蔓延る未開の地へ。しかし、そこは彼女にとって理想の研究場所だった。放物線を描く最適な角度で岩を射出する攻撃魔法、最小の魔力で最大範囲をカバーする結界術など、前世の数学・物理知識を駆使して、あっという間に安全な拠点と豊かな生活を確立する。
そんな中、彼女の「数理魔法」に唯一興味を示した、一人の傭兵が現れる。感覚で魔法を操る天才だった彼は、リディアの理論に触れることで、自身の能力を飛躍的に開花させていく。
やがて、リディアを追放した王国が、前例のない規模の魔物の大群に襲われる。神聖な祈りの魔法では全く歯が立たず、国が滅亡の危機に瀕した時、彼らが頼れるのは追放したはずの「異端の魔女」ただ一人だった。
叶えられた前世の願い
レクフル
ファンタジー
「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる