悪役令嬢?ええ、喜んで地獄の底から幸せを掴みますけど何か?

タマ マコト

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第11話 紅の商人、仮面を買う

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 王都は、冬の光で上塗りされた装飾画のようだった。石の縁は白く乾き、塔の先には薄い霜が鳴る。帰還の挨拶はしない。私は一台の荷車で城門を抜け、「紅の商人(ルージュ・マルシャン)」の名で領収書を切る。露店の布は上等に、だが糸は見えないところで粗く。近づけばほどける——そう見せかける衣装は、油断を誘うのに向いている。

 まずは金。私は宮廷劇場付属サロンの管理人に、蜂蜜より甘い書面を差し出した。
「主催権を買う。仮面舞踏会、今季最大規模」
 管理人は目を細める。「保証は?」
「《保護》基金。ギルドの手形三十枚、王都の商家十七、ルヴァン五。赤字は出さない。出たら私が飲み込む」
 男は私の手首の太さを測り、笑う。「君が飲み込むには大きすぎる」
「だから、こぼさない設計を持ってきたわ」

 設計——舞台図。会場装花、照明、演目、導線、給仕の歩数、楽師の休憩の刻限、厨房の火加減。私は紙束を広げ、灯りの位置に赤い点、香の流れに薄金の線、告白と忘却の“波”に沿って矢印を描く。
「照明は蜂の巣配置、六十灯。わずかな瞬きが全体に伝播するように連結。合図は一度。二度目は要らない」
「演目は?」
「古い仮面劇《二つの口》。台詞は軽く、踊りは重く。観客の足元が浮くように、床の鳴りを残す」
「香りは?」
「《告白》と《忘却》。持続は四刻、最高潮は二刻目と三刻目の間。入り口のクロークに香りの“針”を縫い付ける。自ら選んだ香りだと錯覚する導線に」

 管理人は舌の奥で唸り、書面を裏返して金額を小さく書き、私へ押しやった。「馬鹿げているが、やりたくなる。そういう数字だ」
「やりたくさせるのが、商いの数字」

 承認の印が落ちる音を背に、私は次の扉を叩く。《ノワール》のヌール、アルマン、パスカール、ジル——影の名が短く並ぶ。
「花は?」
「倉庫から“奇跡”の部屋を経て舞台へ。だが高さを一尺、低く」私は指で示した。「視線の角度が、告白を引き出す」
 ジルが指を舐め、印章のケースを開く。「招待状は“王の祝福”の金線、だが本物と一筋だけ違える。ずっと見ている者にしか気づかない違い。気づく者は噂にする。噂は入場券だ」
 アルマンは帳簿を軽く叩く。「酒の出荷は段階制。一次は軽く、二次で甘く、三次で水を。忘却は、誰にでもは飲ませない。必要としている者の呼気には粉の匂いが混ざる。注ぎ手に嗅ぎ分けさせる」
 パスカールは十字を切りかけ、やめた。「神の名は出すな。出すなら、演目のなかで。台詞に“赦し”を混ぜると、正面の男はわざとらしく笑う。そこに《告白》が入りやすい」
 ヌールは片目を細めて笑う。「落ちる音、綺麗にしな。腐らせるなら、花の水替えを忘れるな」

 準備は五日で終わらせた。終わらせるために、毎夜、柱の影で息を数える。十で景色を見る。母の書簡を枕元に置き、紙に短く触れて眠る。銀糸のハンカチは枕の下、境界の守衛。

 当日。王都最大の仮面舞踏会。石段に赤い布が流れ、仮面の下にそれぞれの欲が笑う。鳥の翼、花の唇、獣の耳、涙の滴。王侯貴族、聖職者、学者、成り上がりの商人。あらゆる“正しさ”が仮面をかぶる夜。
 私は——紅の商人。緋のマント、黒手袋、仮面は細い蔦の彫金。口元だけが素顔で、笑いが刃に見える形。
 ダミアンが裾をさりげなく踏んで、耳の高さで低く囁いた。
「王太子、入場は二刻の終わり。聖女は遅れて同道。側近ラザールは舞台袖の裏の通路を使う」
「灯りの連結は?」
「蜂の巣、全部生きてる。瞬きは合図一度。合図の前に君は呼吸を二つ深く」
「銀糸は?」
「ここに」彼は胸元に指を差し、おどけたふりで手巾を一枚見せた。
「似合わない」
「似合うものしか持たない」
 私たちは視線で笑い、離れた。

 会場装花は控えめに見えて、背後に仕掛けを持っている。水に溶いた《告白》が茎からわずかに上がり、花弁へ至る前に止まる。揮発はしない。客が近づいて鼻を鳴らす、その瞬間にだけ、薄く漂う。テーブルの高さは少し低く、座った時の眼差しが正面より下へ落ちる設計。人は下へ落ちる視線で、少しだけ正直になる。
 楽師の調律は低め。弦が床を撫でる音が、胸骨に触れる。弦は心臓の鏡だ。
 給仕の歩数は一定。利き手と反対側に小さな針——《忘却》の目印。必要とする口の呼気は、粉砂糖と汗の匂い。嗅ぎ分けは、訓練済み。

 「紅の商人ですって。仮面の下は誰?」
 「王都に戻ったばかりなのに、この規模。背景は?」
 「“保護”。慈善と契約の噂」
 囁きは、金の糸で編まれた網の音だ。私は微笑み、扇子の骨に指を滑らせる。骨は固い。骨は私の。
 最初の演目が終わり、第二の曲に入る前、私はシャンデリアの真下で立ち止まった。蜂の巣は、よく光る。
 私の呼吸が二つ、深くなる。
 一歩だけ、広場の中心へ。
 左手で仮面の縁を直すふりをして、指先で上部の引き鎖を弾く。
 チ、チ、と二度、瞬き。
 合図。

 光がわずかに波打ち、影が柔らかく動く。床の鳴りが一つ、二つ、深くなる。楽師の弓が毛の一本ぶんだけ圧を増す。クロークから戻る羽織の裏地に《告白》の針がさやさや響く。
 最初に反応したのは、衣装係の男だった。袖の糸を指で探りながら、隣の女にささやく。「今日は、聖女様、白すぎる。いつもはもっと、香りが厚い」
 隣の女は笑って扇で口を隠す。「香り? 奇跡の」
「奇跡に香りは、要る」
 言葉は軽く、しかし重心に届く。
 別の場所では、財務官がワイングラスを傾けて、「“祝福”の予備費、二度目は難しい」とぼやく。
 「一度目で味をしめるのに?」と伯爵夫人。目の下に薄い影。昨夜の涙は乾いている。
 「検察卿は神の沈黙を信じ始めた」
 「神は便利」
 「そう」
 ——拾う。
 私は静かに歩き、壁際の柱に背をつける。耳は舞台の裏の通路へ。ラザールの靴が床を数える音。三歩、止まって、二歩、戻る。緊張の足。
 舞台袖で、司祭崩れが楽師に囁く。「次の曲、半音下げろ。心の蓋が浮く」
 「曲の名は?」
 「《二つの口》」
 蓋が浮く。
 ——開けるのは、持ち主の手。

 殿上の扉が開き、王太子が入る。仮面は薄羽、きちんとした線。彼の目が台本を追う癖は、今夜も舞踏の手の中で小さく暴れる。隣に遅れて、聖女リリアーヌ。白、薄金、そして透明な笑い。奇跡の予感の匂いはしない。代わりに、新しい花瓶の水の匂いが微かに。
 観客の体が、祈る姿勢のまま踊りに入る。祈りながら踊ると、人の脇は甘くなる。甘さは、告白の入口。

 私はダミアンの影とすれ違い、視線で二つの指を立てる。
——二箇所、漏れた。
 彼は顎で合図を返す。
——あと一箇所、開く。
 演目《二つの口》の主人公が、仮面を半分外して言う。「ぼくは二枚舌、きみは二枚の心。合わせれば四枚の真実」
 笑いが起こり、ワインがゆっくり減る。忘却の輪郭は、まだ遠い。告白の波が先に立つ。

 伯爵夫人の席で、扇が閉じられる。「ねえ、聞いて。倉庫の番号、あなたの書類で、“三八”に見せかけて“二六”だったの。印章の尻尾が短いのよ」
 財務官の眉が動く。「誰が見た」
 「紙が見たわ」
 彼は笑い、肩をすくめ、「神の御心だ」と言ってから小声で、「検察卿の机の左から二番目の引き出し、鍵が壊れている」と零した。
 ——ありがとう。
 私は背の内側で息をつき、合図を次段へ渡す。給仕の女がトレイの上に“水”をのせる。忘却の縁は薄い。必要とする口だけが、その水を選ぶ。指が粉砂糖の匂いを持つ者、汗に鉄の匂いを溶かした者。
 「喉が渇いた」
 「今夜は喋りすぎ」
 「明日の朝には、覚えていない」
 笑い。

 その時だ。
 高座の上の一角で、僅かなざわめき。照明の陰に誰かが立ち、仮面の下の視線が鋭くなった。ラザール。側近は舞台袖の通路のほうを一度だけ見た。
 「瞬きは、一度だけ」
 口の形で、私は彼に教える。
 彼は気づかない。合図は観客へのものだと信じている。
 蜂の巣の光が、二度、ほんのわずかにかすれた。
 ——違う。
 私の合図ではない。
 刹那、銀糸のハンカチが、胸の中で微かに冷えた。
 無臭の境界が、風の筋を渡ってきたのだ。
 私は仮面の下で目を細め、息を浅くする。
 舞踏会は、今夜、二つの舞台を重ねている。私の舞台と、心臓部の舞台。
 なら、重ねて踊る。

 私は中央へ一歩進み、紅のマントの裾を広げ、主催者の乾杯を告げた。
「今夜の仮面に、祝福を」
 グラスが鳴る。その音の波が広がる間に、私はささやきを放つ。
「——選んだ香りが、あなたの言葉を選ぶ」
 席で、夫人が笑った。「それなら、良い言葉を選ばないと」
 財務官が合わせる。「神の御心にかなう言葉を」
 「御心は、紙の心」
 彼は噴き出しそうになって堪え、喉に“水”を流し込んだ。忘却の縁が、彼の舌に触れる。

 王太子が一段高いところから言葉を落とす。「今宵の……ええと……」
 台本の綴りを追う目。
 聖女が穏やかに微笑み、扇で軽く風を起こす。白い花弁が一枚、彼女の肩に落ちる。肩は花瓶の水の匂い。
 「花は、祈りのなかで咲くわ」
 彼女がそう言った瞬間、舞台袖でラザールの手が合図を間違え、控えの間の扉から花の籠が早く出る。
 時間が、一歩、滑った。
 私は逃さない。
 給仕の一人が、わざとトレイを低く構え、花の行列の下を横切る。花に水が揺れ、わずかに滴が落ち、床板のわずかな隙間へ。そこが“鳴る”場所だ。足音が変わる。
 変わった足音は、正直な言葉を呼ぶ。

 「王太子殿下、倉庫は——」
 「静かに」
 「祝福は、予備費から」
 「黙れ」
 声が絡まり、笑いと拍手の音が上書きする。
 私は扇子を胸で打ち、一度だけ、目を閉じた。
 光が一筋、変わる。
 蜂の巣のうち、私の仕込んだ“針”の灯りだけが、ほんの刹那、震えを見せる。
 告白は波になる。忘却は縁を丸くする。
 波と縁のあわいで、人は喋る。

 「検察卿の机、鍵が——」
 「明日、わたしは覚えていない」
 「覚えていなくても、紙は覚えている」

 舞台にいるのは、役者ではない。
 観客だ。
 観客が、知らないまま、台詞を言う。
 私は主催者として、拍手を誘う。
「すばらしい夜です」
 口当たりの良い毒を、言葉に混ぜる。
「みなさまの“善良さ”に、乾杯を」
 善良。
 誰もが笑い、誰もが頷き、誰もが「善良」と言われると、少しだけ油断する。
 油断は、記憶が薄くなる隙間。
 隙間から、紙を差し込む。

 合間に、私は銀糸の気配が再び冷えるのを感じた。
 口笛は鳴らない。
 今夜、ギヨームは吹かない。
 彼は見ている。
 私と、彼らと、そして殿下と聖女を。
 心臓部の目。
 ならば、見せる。
 “紅の商人”の仮面の下にある刃先を。

 踊りが三巡したころ、私はダミアンと背中合わせになった。
「漏れは三。倉庫、予備費、台本。——十分だ」
「足りない」
「強欲だな」
「落ちる音を、選びたいの」
 彼は小さく笑い、帽子のつばを指で触れた。「次の演目は早めに切れ。聖女の奇跡の合図が前倒しになる」
「私の合図は、一度だけ」
「君の合図は、もう届いてる」

 《二つの口》が終わり、次の演目に入る前、私は階段に向き直った。
 薄いヴェールが、はらり、と落ちるように、時間が変わる。
 聖女が軽く手を上げ、花弁が舞う。
 花の香りは、倉庫の水の匂い。
 私は拍手をしない。
 代わりに、グラスを鳴らした。
 カン。
 シャンデリアの針が、共鳴する。
 誰もが一瞬だけ、天井を見る。
 その隙に、言葉がこぼれる。
 「王は——」
 「私は——」
 「誰かが——」
 そして次の瞬間、忘却が縁を丸くする。
 「まあいいか」
 誰もが言う。
 「今夜は、良い夜だ」

 良い夜だ。
 だから、壊れる。
 壊れ方を、私が選ぶ。
 私は扇を閉じ、仮面の下で笑う。
 紅の商人の笑いは、金でできている。
 金は音を持つ。
 冷たく、長く、よく響く音。
 落ちる音に、よく似ている。

 幕間、私は舞台裏の狭い廊下でヌールから小さな紙片を受け取った。
《新聞社の下働き、裏口に。祝福の紙面、今夜仕上げ。——角を折れ》
 了解。
 私は紙の角をひと折り、香のない空気にひとつ息を混ぜ、再び客の海へ戻る。
 王太子は台本を持たない手で、仮面を押さえている。仮面がずれると、目が泳ぐ。
 聖女は笑う。
 視線の置き方を知っている女の笑い。
 私は扇で風を起こし、蜂の巣の灯りをほんの刹那だけ泳がせる。
 告白と忘却の波が、重なって、ほどける。

 夜が終わるころ、私は合図を解いた。光は均一、香は薄く、音は遠く。
 観客は満ち足りた顔で帰っていく。
 口々に言う。
 「良い夜だった」
 「明朝になれば、すべてが昨日になる」
 「そうね。昨日は、遠い」
 ——遠くなんてない。
 紙は、近い。
 私は胸の内で笑い、銀糸のハンカチに指をかける。
 無臭の境界は、今夜、歌わなかった。
 だから、次は私が歌う。
 えんどう豆、二つ、鞘のなか。
 子どもの歌を、大人の劇に重ねる。
 紅の商人の仮面は、光を集めて、ゆっくり、引き出しに仕舞われる。
 次に出す時には、もっと鋭い笑いで。
 落ちる音が、もっと美しく響くように。
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