捨てられた宝石の逆襲~あなたの幸福を、ルビーの炎で焼き尽くす~

タマ マコト

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第11話 帰還、紅の影

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 二年は、森では季節四つの重なりで数える。
 王都では噂の回数で数える。
 ――そして私は、炎の拍で数えた。

 城門が見える。白い壁は昔より白く、しかし目地に入った髪のような亀裂は増えていた。私――今夜の名はルビア・ヴァレンティーナ。金のウィッグは蜂蜜の糸みたいに陽を拾い、肌は粉で薄く冷やされ、ドレスは白薔薇の房を模した新作。香は控えめ、柑橘と白檀の間。胸元の紅玉は、薄絹の下に沈めた。炎の色は、今は隠す。

「御身分を」

 衛兵の目は私の靴から裾へ、裾から髪へ、髪から指先へと、礼儀正しく貪欲に走る。私は扇を一度だけ開く。白。笑いは、扇の縁で切り取る。

「ヴァレンティーナ家、ルビア。南連邦からの連客よ。王太子殿下の御婚礼に献上品を」

 書状の封。金の印。紋章はヘマタイトが整えてくれた“合法”。彼の鼠たちは二年のうちに増え、王都の壁の隙間に家を持った。
 衛兵は目を細め、舌打ちを飲み込み、通行を許す。車輪の音が白い廊へ吸い込まれ、藍色の天蓋の影がゆっくりと私の肩に降りる。

 城内は祭の準備で忙しかった。銀器の列、布の山、花の匂い。新しい聖歌の練習が遠くから反復で流れてくる。
 ――鐘は八つ。観衆は万。
 私は歩きながら、床の大理石の継ぎ目を数える。十歩ごとに、視線だけで“刻む場所”を決めていく。白は燃えやすい。薄い幸福は、もっと燃えやすい。

「ルビア様、ようこそ。献上品はこちらでお預かりを」

 侍女の笑顔が近づき、私の指にさっと目を落とす。黒曜の輪が細く光り、私は指先で扇をひと撫で。笑顔は礼儀。礼儀は刃。刃は鞘の中でこそ美しい。

「後ほどで良くて? 本日はまず、礼拝堂の祝福を受けたいの」

「まあ、真面目でいらっしゃる。ご案内しますわ」

 “聖女の匂い”は城の南翼から流れている。ミルラに夜泣草を薄めた香。涙の場所へ導く匂いだ。
 礼拝堂の扉は新しい。白木の肌に薄い油膜が光る。私の指先が汗ばむほど、炎は喜びを思い出す――が、今は黙らせる。黙る火は、呼吸に似る。吸って、吐いて、薄くなる。私は扉の柱と壁の隙間に扇の骨を差し込み、扇の先に仕込んだ微かな炭を“ちょん”と触れた。
 ――第一符、一刻。
 ルビアの書が告げた“観衆の円”の外周。印は目に見えず、匂いもない。けれど、幸福だけを吸う薄い口が石に開く。

「こちらにどうぞ、ルビア様」

 侍女の導きで奥へ進む。女神像の足元、床は白。祈りは多すぎ、足跡は層になって光る。私は膝をつき、両手を組む。
 ――二符、女神の足。
 手の中で紅玉が一度だけ脈を打つ。黙れ。燃えろ。還れ。選べ。
 私は祈るふりで、歌う。喉の奥だけで。古い鍵の第一句。
 床下の水路が、わずかに息をする。開く音は人には聞こえない。火には聞こえる。火は笑う。私は笑わない。

「素敵な髪色ですこと」

 背後で声がした。柔らかく、よく通る。
 振り向くと、白いドレスに青いガウンを重ねた女が立っている。聖女サファイア。二年の間に化粧は巧くなり、涙の造作は自然になった。
 彼女は私を知らない。私の髪は金。肌は白。発音は南連邦仕込み。立ち姿は“学んだ貴婦人”。
 知らない目は、美しい。

「聖女様。お目にかかれて光栄だわ」

「遠方からの巡礼者に神の恵みがあらんことを。……あら、指輪が黒いのね。珍しい」

「亡き祖母の形見ですの。火の側で磨くと艶が出るの」

 サファイアの瞳が一瞬だけ揺れた。火、という音はこの女にとって“不吉”の鍵なのだろう。
 彼女は笑みを深めた。「婚礼の日、ぜひ最前列に。女神の祝福は遠路を厭わない方々にこそふさわしいの」

「胸が震えますわ」

 ――震えているのは胸ではなく、床。幸福が呼吸する音。印がゆっくりと広がる音。
 私は扇を閉じ、礼をし、背を向ける。サファイアの瞳がわずかに私の髪を追う。金は人を安心させる。赤は人を怯えさせる。私は今、金だ。

 廊下。
 壁のタペストリーの裏に、三符。
 階段の踊り場の石の継ぎ目に、四符。
 宴の間のピラーの陰に、五符。
 筆は不要。火は目に見えない墨で書く。視線で、息で、歩幅で“描く”。
 侍女の視線が離れた瞬間、私の扇の骨が“コッ”と石に当たり、そこで火がひと呼吸分、座る。
 印は一晩で九つ。二年の間に数百の“黙る火”を練習した。どんな雨でも消えない、どんな光でも見えない、どんな祈りでも触れない。
 私は歩きながら微笑み、心の中では数える。九でいったん止める。火は奇数を好む。幸福は偶数で数えられる。ずれは火の口になる。

 給仕廊は、王都でいちばん正直な場所だ。皿の音、湯の泡、パンの香、下品な冗談。私はそこに“昔の私”を置いていった。
 小柄な厨房女が、鍋をかき混ぜながら私に目を上げる。「南のお方?」

「ええ。塩を少し、いただける?」

「まぁ、綺麗なお嬢さん。手、細いねぇ。塩なら裏の樽」

 塩は白。白は燃料。私は指先でひとつまみ取り、指の腹に擦り込む。ざらり。皮膚が覚える。
 ロードライトが現れたのは、その時だった。
 背丈は伸び、骨は少し太くなり、目の赤は相変わらず澄んでいる。鼠の足音、風の使い方、肩の角度――ヘマタイトの“学校”で育った骨格。

「遅れた」

「間に合ってる。歌は?」

「第一句、第二句。鐘の前に一度鳴らす」

「合図は四。振り返らない」

「知ってる」

 彼は私の手を見る。黒曜の輪。指の塩。
「その指、怖い」

「怖いものは、きちんと怖がれる子が好きよ」

「だからいる」

 短いやり取りに、二年の間の信頼が滲む。
 私は彼の袖に小さな布包みを滑り込ませる。蜂蜜と生姜の糖。喉が鍵になる子には、鍵を磨く甘さを。
「お前、甘やかすと駄目になるって言われなかった?」

「何度も」

「その人、正しいね」

「でも甘くする」

「知ってる」

 ロードライトは廊の影に溶け、私は再び白の中心へ歩く。
 大広間の装飾は過剰だった。天井からはガラスの雨、壁には金。小姓が布を運び、音楽家が席を確かめ、花が過労で匂いを失っている。
 王太子アメジストを、一度だけ遠目に見た。
 二年で彼は“王太子の形”に磨かれ、影は伸び、目は疲れていた。
 私の胸は――何も騒がなかった。
 火は、静かに。
 感情は、鞘に。
 刃は、式のあと。

「ルビア様、献上品の目録を」

 執事の声に扇を返す。目録の末尾に、ごく小さく、目には見えない火の点。「祝祭の粉」。この城が愛する白い粉の影に、私の粉を混ぜる。混ぜる、ではない。隣に置く。選ばせる。
 ――幸福は感染する。だから、私は隔離する。

 午後、雨がみぞれに変わった。
 私は南の回廊の外へ出て、空気を肺に入れる。冷たい。火の輪郭が内側でくっきりする温度。
 黒い外套の影が、屋根の斜面でかすかに揺れた。
 オブシディアン。
 彼は雨を嫌わない。雨は足音を消すから。彼の黒い瞳が一拍だけこちらを測り、私の肩の角度と呼吸の深さを確認して、すぐ消える。
 言葉はいらない。雨と火と石で、私たちは会話した。

 夜。
 城の明かりは増え続け、星は押し出され、雲は低くなる。
 私は与えられた客間に戻り、扉の鍵を半分だけかけた。半分は退路。半分は餌。
 鏡の前。
 金の髪を一度、全部ほどく。蜂蜜の川が肩に落ちる。髪の下から、赤い気配が顔を出す。紅玉が薄く灯り、黒曜の輪がわずかに鳴る。
 私は髪を撫で、鏡越しに自分へ囁く。

「――帰還、よ。紅の影」

 扉が小さく鳴った。
 ヘマタイト。灰色の影。帽子の縁から落ちる雨粒。
「三つ、報せ。ひとつ、婚礼の式次第が変わった。聖女が“泣きの部屋”へ入る時間が五呼吸延長。二つ、王太子の馬車は鐘楼の影に一度止まる。護衛長が新任で段取りを固め直してる。三つ、貴族連盟が“奇跡の粉”の卸元を変えた。供給が遅れ、今日の配布は半分」

「観衆の機嫌は?」

「芳しくない。パンは薄い。銀は薄い。笑いも薄い」

「良いわ」

 薄いほど、火は早く回る。
 私は扇を閉じ、ヘマタイトに短い封筒を渡す。中身は銀貨と、黒曜の欠片。「二日後、城外の宿で。鼠に蜂蜜」

「甘やかすと駄目になるって言われないか」

「何度も」

 彼は笑い、影に戻った。
 部屋に静けさ。
 私の胸には、静かな音楽。火と骨の合奏。
 指先に熱を落とし、床の絨毯の縁に小さな輪を描く。
 ――十符、客間。
 私の寝床は、“観衆の円”の外側であり、中心へ続く“糸”の結び目。
 明日、私は白を歩いて黒を書き、黒に白を置く。
 婚礼の日、鐘が鳴る。
 鳴った瞬間、円は回る。
 幸福は剥がれ、真実は露出し、誰かが泣き、誰かが笑い、誰かが祈り、誰かが叫ぶ。
 その全部が、演目。

 窓の外に、雪混じりの雨が斜めに降る。
 私は灯りを落とし、ベッドの端に腰を下ろす。
 外套の内側の秘密のポケットから、薄い黒革の冊子を取り出す。『ルビアの書』の抜書き。稽古のために私が自分の手で写した、火のメモ。
 指で余白を撫でる。
 祖母の声は遠のいた。代わりに、私自身の声がよく聞こえる。
 ――黙れ。
 ――燃えろ。
 ――還れ。
 ――選べ。

 扉の隙間から、廊下の足音が流れる。小姓、侍女、護衛、修道士。音の層で私は建物の体温を測る。
 城は熱い。
 幸福で熱せられた場所の熱は、火とは違う、蒸し風呂の熱。酔いの熱。
 私はその熱の表面に薄く指を滑らせる。
 ――割れる。
 明後日、必ず。

 寝台へ身を伸ばし、天蓋の布の縁を見つめる。
 思い出すのは、あの夜の雨。黒曜の契り。
 オブシディアンの言葉が指輪に残り、私の骨に沈み、眠りの前に静かに浮かぶ。
 もしお前が闇に堕ちても、俺が引き戻す。
 その手が血に濡れても、離さないで。
 ――離さない。
 私は輪を唇に触れ、目を閉じる。

 翌朝。
 城はさらに白く、街はさらに薄い。
 私はルビア・ヴァレンティーナとして、今日も優雅に歩く。微笑む。祝意を述べる。香を褒める。生地を撫でる。
 指先では、印を刻む。
 階段の下に一つ。
 王太子の控えの間の柱に一つ。
 厨房の煙道に一つ。
 鐘楼下の扉に一つ。
 “泣きの部屋”の床板の継ぎ目に――ひとつ。
 サファイアは祈り、私は黙る。黙る火は、祈りの下でよく育つ。
 私は部屋を辞し、扉の前で一度だけ振り返る。
 白い室内。空の箱。
 あの箱は、もう満ちない。私が空っぽの証明を用意したから。

 昼過ぎ、王太子の馬車が城内を試走する。
 私は窓辺で扇を開き、ひとかけらの金の笑顔を落とす。
 目と目が、偶然に交わる。
 アメジストは私を知らない。
 でも、私の中の火は彼を知っている。
 燃料に、名前はいらない。

 夕刻。
 九つの印は十二になり、十五になり、十八で止める。
 数字は跳ねる。拍は整う。
 ロードライトは鐘楼の影で笛を試し、歌は嘘のない高さで鳴る。オブシディアンは屋根の端で風を測り、私は廊で空気を飲み、白の中央で黒を書く。
 王都は真珠の碗から溢れそうだ。
 明日、碗はひっくり返る。
 私は、手を添えるだけ。

 夜。
 私は客間の灯を落とし、窓の隙を開けて冷気を吸う。
 紅玉の灯が胸に、ひとつ。
 黒曜の輪が指に、ひとつ。
 扇の骨が袖に、ひとつ。
 歌の鍵が喉に、ひとつ。
 退路が二つ。
 合図が三つ。
 印が十八。
 観衆が万。
 ――十分だ。

「おやすみなさい、王都」

 私は誰にともなく囁き、薄い寝台に身を沈めた。
 眠りは浅い。意図して浅くする。夢は短い。必要な分だけ見る。
 夢の中で、城は白く、火は黒く、私は金で、笑いは赤い。
 帰還は完了。
 次は、開演。
 紅の影は、もう、王都の芯に落ちている。

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