泣き虫王女、異世界で推し騎士に拾われて人生チート化しました

タマ マコト

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第13話:推しを追う姫

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朝の端っこは灰色に濡れていた。
メルヴァの城門はまだ半分眠っていて、見張りの兵は欠伸の節を数え、屋台は布の口を結び直している。私は手ぶらに見える小さな荷だけを背負い、門の影に溶けた。

「一人で行くのか」
見張りの老人が言った。
「うん。――一人で、追いつく」
「追いついて、どうする」
「“おかえり”を言う」
「……無茶を言うな」
「無茶じゃない。約束の運動」

言ってしまってから、喉が乾いた。約束は水分を連れていく。私は水袋の口を噛み、ぬるい水をひと口だけ飲んで、森へ足を踏み入れた。

道は薄く、けれど、胸の内側に細い針がたしかに立っている。
導の針。昨夜の涙で目盛りをずらした、それ。
ティグは連れていかない。彼は“見張り”の役。街に残してきた。尻尾を二回叩いて「待つ」を合図してくれた小さな番人。私の足首は今、軽い。

靴底で拾う音が変わる。石→土→落ち葉→砂。
香りも変わる。蜂蜜の残り香→湿った苔→錆びた祈り。
(祈り?)
鼻の奥のどこかがきゅっと縮んだ。森の奥へ進むほど、風の向きが一定になる。どこかへ吸い込まれていく。空気の流れが“施設”を示すときの触感だ。

やがて、木々が均等な間隔で人為の名残を見せ始めた。枝が同じ高さで切られ、根元の石が四角く並ぶ。道は道に変わる。
黒い鳥が一羽、私の頭上を横切り、囀りの代わりに金属音を落としていった。

丘の向こうに、石。
神殿――教団のものはどれも似ている。正面から見れば虚飾が少なく、横から見れば影が多い。泣く雫の徽章がいくつも並び、中央の扉の上には針が刻まれている。北ではない。東西でもない。針は“内側”を指していた。

私は吸って、止めて、吐いた。三拍子。
扉は押せば開く、という設計の顔をしている。私は押さなかった。代わりに、両手をそっと当て、耳を近づける。
中の音。
靴の擦れる音、衣の摺れる音、淡い詠唱、遠い水音、そして――規則正しい、金属越しの心音。

(いる)
言葉より先に、体のどこかが頷いた。
私は扉を押した。石が咳払いをするみたいに重く鳴り、冷たい空気が頬を撫でる。
神殿の内部は、光が節約されていた。
柱と柱の間に垂らされた布。涙の形に切られた隙間。床は磨かれており、私の影が底の浅い湖みたいに長く伸びる。

「来たのか」

声がした。
正面ではない。左右のどちらでもない。上――耳の一番遠い場所。
見上げると、内陣の梁の上に設けられた通路。そこに、黒。
鎧の黒。
私の世界の“推し”の、現実。
ノア=ヴァレンティア。

階段は儀礼用にわざと遠回りに作られている。私は一段一段、息を合わせて上る。
近づくほどに、彼の輪郭が細かくなる。
鎧継ぎ目の微擦痕。肩の包帯は新しく巻き直され、結び目は簡潔で綺麗。
視線は、私を通過する。
見ているのに、見ていない。
薄い氷の下に、深い湖。

「ノア」
私は呼ぶ。
返答は刃だった。

シャラ、と低い音。
剣が鞘を離れる音は、いつも空気の温度を半度下げる。
刃は私に向く。角度は完璧。身体の中心線に対して最も短い距離で届く軌道。
目は――目は、私の顔を意味にしない。

「同行を拒む対象、接近」
彼は言った。
誰に向けたでもない報告の声。
「排除の必要性、判定中。――危険判定、外部入力優先」

「外部入力?」
私が問うと、内陣の陰から二人の黒衣が出てきた。
銀糸の針。涙。徽章。
一人は円盤、もう一人は細い鎖で繋がれた短杖を持っている。
短杖の先に、眠る封印符。
彼らは私を見るというより、私の後ろの空間を計測している目をしていた。

「泣き虫姫」
円盤の男が嫌に甘い発音で呼ぶ。
「会いに来たのか。人形の騎士に」
私は足を半歩開き、重心を落とす。
逃げる準備にも見える姿勢。立つための構え。
「会いに来た。彼は人形じゃない」
「ならば証明しろ。彼が“顔を持つこと”を」
男の指が滑り、円盤が白く点滅を始める。
ノアのこめかみに符が浮き、呼吸が数値になる。
私は一歩、前へ出た。
剣先が、私の喉元で止まる。
冷たい。ほんの少しだけ震える。
震えは風ではない。命令の摩擦。

「ノア。――ただいま」
言った途端、男が笑った。
「それは鍵だろう。だから我々が持つ」
短杖の封印符が点く。薄い膜が空間に張られ、音がわずかに遅れる。
世界が腕を組む音。命令に道を譲るささやき。

「泣くな」
ノアが言った。

凍った。
語尾に感情はない。命令でもない。
ただ、習慣のように、それは口から出た。
「泣くな。俺は――もうお前を知らない」

胸がひび割れる音が、内側から聞こえた。
涙は勝手に喉へ上がってくる。
でも、泣かない。泣いたら、今は視界が狭くなる。
泣くときは守るため。
私は決めた。だから――まだ。

「知らないって言い方、ひどい」
私は笑った。ひどい笑い方だったと思う。
「だって、わたしはあなたを知ってる。甘いものが好き。苔を褒める。火を粗末にしない。水に礼を言う。眠りが浅い。『適切だ』って言う。『ただいま』に『おかえり』を返す」

「記録の羅列」
ノアの返答は冷たい。
「それは顔ではない。仕様だ」
「じゃあ仕様に、好きって書き足す」
「好き」
彼は反芻する。
「曖昧で、最適ではない語」

円盤の男が短杖の男に顎をしゃくる。封印の膜が一層厚くなる。
私は膜の向こう側からノアを見る。
彼の皮膚の下の筋肉は迷いなく、刃筋は美しく、足の置き方は常に最短の逃げ道を潰す。
“人を守る”ための、完璧。
“私を忘れる”ための、完璧。

「ノア。あなたは、誰の騎士?」
問う。
彼の瞳に、小さな揺れ。
「命令の騎士」
「違う。あなたは“約束の騎士”」
「約束は、危険だ」
「そう。だから、素敵」

短杖が床を打つ。
弧を描く光が走り、私の足元に小さな網が現れた。
逃げ道を縛る、静かな罠。
私は網を踏む。踏んだ瞬間、共鳴器の感覚が戻ってくる。
圧をかけ、苔で逃がし、熱を別の層へ渡す。
――この網、逃げられる。
でも、逃げない。
逃げたら、彼は追う。その追い方は、“守るために斬る”だ。

「泣くな」と言われたけれど、涙は勝手に生成される。
喉の奥に溜めて、私はそれを飲んだ。
やがて、飲み込める量を超えたら、使う。
鍵として。
その時まで、言葉で行く。

「ねえ、ノア。初めて会った日、あなたは言った。――『涙は命の証だ』」
彼の睫毛が一度だけ動いた。
「今のあなたが言った『泣くな』は、命の否定に手を貸してる。命令の味方をしてる。あなたの初日と矛盾してる」
沈黙。
剣先が紙一枚ぶんだけ下がる。
短杖の男が舌打ちし、封印符を増やす。
ノアのこめかみに数字が増え、揺れが見えなくなる。
(だめ、戻ってきて。――戻ってきて)

私は一歩、剣に近づいた。
刃の腹に頬が映る。赤い目、乾いていない唇。
「泣いてもいい?」
囁くと、ノアの声は、風の音に混ざったみたいに薄くなった。
「泣くな」
「うん。今は泣かない」
私は笑った。
「だって、泣いたら、あなたの封印が少し解ける。――最後にとっておく」

円盤の男が耐えかねたように前へ出た。
「滑稽だ。愛だの約束だの。世界はそんな柔らかいもので持ちこたえない。君が持つのは“導の針”。それは神の領域に侵入する鍵だ。鍵は管理する。それだけでいい」
「鍵は――」私は首を振る。「鍵は“開ける相手”のためにある」

「相手?」
「『ただいま』って言う人」
「またそれか」
「またそれ。繰り返しで強くなる言葉だから」

短杖が振り下ろされる気配で、私は目を閉じた。
刹那、床の網が光り、足首が痺れる。
剣が動いた。
速い。
美しい。
――そして、止まった。

「……なぜ止めた」
円盤の男の声が揺れる。
ノアは答えない。
代わりに、小さく、ほとんど音にならないほど小さく、何かを呟いた。
私は耳で拾えなかった。けれど、胸の琥珀が拾った。
“ただいま”。
違う。欠片。“ただ”。
――足りない。足りないけれど、そこにある。

「ねえ、ノア」
私は目を開け、笑う代わりに、呼吸を整えた。
吸って。止めて。吐く。
涙は目のふちで揺れている。
「わたしがあなたの名前を呼ぶとき、あなたの中の“最適化”が一瞬だけ揺れる。それは故障じゃない。人になる練習」
「人になる必要はない」
「ある。――わたしが好きになったのは、人のあなた」

剣先が震えた。
人差し指一本ぶん。
彼の呼吸の節が、半拍遅れる。
封印符の光が強くなり、短杖の男が苛立って符を叩く。
「話を終わらせろ、騎士。命令を履行しろ」
「封印命令、受理」
ノアの声が乾く。
「対象、――」

(今だ)

私は一歩、前へ跳ねた。
剣の懐へ。
刃の角度が変わる前に、彼の胸甲に頬を押し当てる。
金属は冷たい。
内側は温かい。
心音。
トン、トン、トン――。
人間と、同じ。

「ただいま」
耳元で言った。
刃が私の背中のさらに後ろを切り、空気が泣く。
こめかみの符が明滅し、彼の喉が鳴る。
「……おかえり」

封印が、ひと目盛り、遅れた。
短杖の男が叫ぶ。
円盤が赤く、白く、めちゃくちゃに点滅する。
私は腕を回さない。抱きしめたら、剣が私を抱き返すから。
ただ、額を彼の鎧に押しつけ、涙を――落とした。

一滴。
琥珀に触れ、熱が針を押す。
導の針が、神殿の中のどこかの目盛りをずらす。
音がずれる。
計算がずれる。
封印が、僅かに――“遅れる”。

ノアの瞳に、私の顔が“図形”から“顔”に戻る、その一瞬。
彼は痛みのような顔で、低く呟いた。
「……リシェル」
名が、合図になる。
私はその合図を逃さない。

「わたしはあなたのリシェル。泣き虫で、灯りを戻して、苔をかわいいと言う。――推しが生きてる世界で、推しを愛してる人間」

短杖が再び振り下ろされる。
私は泣く。
泣きながら笑う。
涙は鍵。
笑いは油。
封印は、ギギ、と音を立てる。
その隙間に、彼の声が滑り込む。

「……俺は、――」
言葉はそこで切れた。
切ったのは円盤の光。
教団は神殿そのものに封印を回した。床から壁、壁から天井へ、見えない縫い目が一斉に縮む。
空気の密度が上がり、私の足首の網が再び強く締まる。
ノアの腕に、命令という名の重石が積まれていく。

「終わりだ」
円盤の男が言った。
「君の涙は確かに鍵だ。しかし、鍵穴は増やした。ひとつじゃ足りない」

私は頷いた。
「ひとつじゃ足りない。だから、明日も泣く」
男がわずかに眉をひそめる。
「明後日も泣く。――いつか、あなた達が増やす鍵穴の数より、わたしの涙の鍵の方が多くなる」
「妄言だ」
「妄言は、未来の初稿」

床下で、鐘が鳴った。
メルヴァの塔の鐘ではない。
神殿の奥の、古い鐘。
時間の帳尻を合わせるための装置。
導の針が、それに触れたのだ。
封印の一系統が一瞬だけ同期を外し、網の張力がほどける。

「ノア」
私は離れて、彼の目を見た。
「帰ろう」
「……帰れない」
「帰る」
「俺は、今は」
「じゃあ、わたしが帰る道を覚える。その道はあなたの足元から延びてる。だから、あなたは――そこにいて」

黒衣の二人が同時に動いた。
私は網を踏み、苔の逃げ道を信じて跳ねる。
剣が風を裂く。
床が光る。
涙が落ちる。
琥珀が鳴る。
導の針がひと目盛りずれ、私の体は網の隙間からはじき出されるように通路の影へ滑り込んだ。

「追え!」
円盤の声。
ノアは動かない。
封印の重石の下、彼は、ただ一言だけ落とした。
「……ただいま」

聞こえた。
私の背に突風が当たり、視界が跳ねる。
鼻の奥が甘く痛む。
泣いてる。笑ってる。走ってる。
私は振り返らない。
振り返ったら、剣の美しさに負ける。
だから、前だけを見る。
神殿の影を縫い、柱の間をくぐり、扉へ。
扉は重い。けれど、開く。
外の光は薄く、朝の端っこが私を迎えに来ていた。

足が地面を取る音。
肺が焦げる。
心臓が鐘を真似る。
私は一度だけ、空へ言った。

「ただいま」
風が、薄く答えた。
「おかえり」

神殿の内側で、黒衣の足音が増える。
封印の命令は、まだ彼を縛っている。
けれど、彼は言った。
たったひとつ、言葉を。
初稿は書かれた。
この先の長い章を、どうにかして――私が書く。

泣き虫の姫は走る。
推しを追う姫は走る。
涙は鍵で、涙は燃料。
封印の隙間に指をかけて、世界の目盛りを、ほんの少しずつ、私たち側へ。
そのための“泣く準備”を胸にしまいながら、私は朝の匂いへ飛び込んだ。

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