地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト

文字の大きさ
15 / 20

第15話 膝と赦し

しおりを挟む


 朝の王都は、昨夜より静かだった。静けさは勝利の飾りではなく、掃除の前の呼吸だ。広場に人が円を作り、真ん中に布告板、脇に壊れた偽印章の片端。露店は半分開き、子どもはまだ走らない。鍋は洗う音を忘れたみたいに口を閉ざし、石畳は濡れて黒い。
 私は輪を出さない。主式も、封螺も、禁術も、今日の朝には要らない。必要なのは、重さを測る秤だけ。目に見えない秤。胸の内側で皿を釣り合わせるための、息の回数。

 兵列が左右に開き、人の背丈ほどの空白が中央に生まれた。そこへ、紺。
 アルトゥール・ヴァレンが歩いてくる。背筋は伸び、顎は引かれ、肩には過剰な力がない。彼は立ち止まり、何も持たない両手を垂らす。剣は腰にあるが、今朝の彼は武器ではなく“余白”を帯びている。
 ざわめきが薄く還流する。「来た」「どうする」「土下座か」「いや、あれは——」

 彼は、膝をついた。
 土下座ではない。両膝ではなく、片膝。額は地につけず、目線は下げるが落とし切らない。王都の空気が、その分だけ沈む。
 石畳の湿りが彼のズボンに黒い花を咲かせ、露の粒が膝裏から踵までの線を濃くする。
「王都に生まれ、王都で育ち、王都を信じる者として」
 彼は、誰にも向けず、全員に向けて言った。
「国が誤った。私も誤った。見ないことで、秤の片側を軽くした。便利な『言い換え』の皿に、正しさの皮を盛り、腹の空いた家の匂いから目を逸らした。——私は、誤った」
 声は張らない。届く。届くのは、声量ではなく、角度だ。
 人の円が、ひと呼吸だけ広がる。罵声は出ない。拍手も出ない。出るのは、鍋の蓋が微かに鳴る音。誰かが手を震わせ、誰かが息を詰め、誰かが歯を食いしばる音。音は小さいのに、重い。

 私は彼の前に進む。足音が濡れた石に吸い込まれる。
 彼の膝の位置は、悔いの高さ。額を地に捧げないのは、矜持と——再起の余白。折らないための角度。
 私は彼の視線より少し上に立ち、喉を乾かした。
「アルトゥール・ヴァレン」
「……イザベラ」
 彼の名に呼吸が絡む。私は一息だけ長く吸って、吐いた。
「あなたに『ざまぁ』をすることはできる。昨日までの力なら、今ここで、あなたの膝を地に縫い付ける呪がある。——でも、やらない」
 ざわめきが小さく跳ねる。彼の肩に、わずかな緩み。緩みは救いではない。聞く準備の合図だ。
「あなたは、これから毎日、同じ重さの悔いを抱いて働きなさい。今日の膝の重さを、明日の机に、明後日の紙に、夜の鍋に、一枚ずつ載せる。抱えた重さは、人に渡さない。軽くもしない。——それが、あなたへの『ざまぁ』よ」
 私は語尾まで刃を混ぜなかった。刃を混ぜると、拍手が来る。拍手は軽い。今必要なのは、沈黙と重さ。
 彼は顔を上げないまま頷いた。
「約束する。私の『働く』は、今日から重さの運搬だ。……君が決めた鍋で、焦げを剥がす仕事をする」
「焦げは古い。爪で落ちない。時間と湯と、繰り返し。指がふやけるまで」
「指がふやけるまで」
 彼の声は低く沈み、膝の下の石に吸い込まれた。

 私はひと足退き、輪を出さない指で彼の背に短い印を結ぶ。見えない印。「忘れるな」。印は赦しではない。結び目だ。人は結ばれていると、落ちにくい。
 群衆の円が波のように揺れ、誰かが短く嗚咽し、誰かが口を引き結び、誰かが深く息を吸った。息は重さを分ける。重さを分け合えない群衆は、すぐに刃になる。今日は、刃でなく重り。重りは、長く効く。

 そのとき、鈴がひとつ。
 ローデリクの杖の鈴が、朝の光をひとかけら撫で上げるみたいに鳴った。椅子の上の彼は、背凭れから体を起こし、私に目を向ける。瞼は薄く、瞳は濃い。
「……来い」
 彼は手で、私を呼ぶ。
 私は駆け寄り、膝をつき、彼の手を取った。掌は乾き、骨ばって、温い。長い距離を歩いた靴の底みたいな温度。
「守ったぞ、聖域を」
 声は、砂漠の井戸の底みたいに低く深い。
「家具に、戻さなかった。君が、『家具』に戻しそうになったとき、鈴を鳴らせた。間に合った。——守った」
 私は唇を噛む。血の味は、もう匂いとしてわかる。嗅覚は戻った。でも、涙の塩気のほうが先に舌に触れた。
「ローデリク。守り人。あなたの輪がなかったら、私は主式を“見世物”にしてた。あなたが鈴を鳴らしたから、帰ってこれた」
「帰ったなら、また行ける。聖域は、行って戻るための……」
 言葉が、途切れた。肺の奥に、ひとつ分だけ余った息。
 私は彼の手を更に強く握る。骨が当たる。指が痺れるほど、握る。
「行って、戻る。あなたの分まで行って、戻る。——約束」
 ローデリクは、目尻を少し上げた。笑う、というより、嬉しがる、というほうが正確な角度だ。
「君は、言葉の糸が上手い。結び目を見せない。……それでいい。見せるのは、皿の重さ、だけでいい」
 彼の胸が一度だけ大きく上下し、吐息が私の指の甲に落ちた。温い。次の息は来ない。
 鈴は鳴らなかった。鳴らさない、という最後の護り方。
 私の涙が頬を伝い、彼の手の甲へ、鏡の面へ落ちる。
 鏡は、小さな光を跳ね返し、広場の地面に、針のような一点の輝きを作った。
 その輝きは、主式の輪よりも、封螺の螺旋よりも、禁術の印よりも、正しい位置にあった。
 私は額を彼の指にそっと当て、息で「ありがとう」と結ぶ。祈りではない。祈りよりも古い、生活の言葉。
 セレナが瞼に手を置き、短い聖句を彼の額に落とす。「帰る道、灯りあり。待つ人、あり」
 エーレンは槍の石突で軽く地を打ち、「守り人、交代」と低く言った。ミラは帳を閉め、帳場の灯を落とし、「店は今日、葬式割」と手書きの札を結ぶ。泣き笑いの字。

 広場の空は、まだ午前。
 アルトゥールは膝を立てずに立ち上がらず、片膝の高さをそのまま保って、ローデリクの方へ顔を向けた。
「守り人。——ありがとう」
 彼なりの祈りの言葉だ。彼は宗派に属さない。属さないまま、言葉を借りる。借り方に、矜持がある。
 私は目を拭い、立ち上がる。膝が震える。震えは弱さではなく、歩いた距離の証拠だ。
「アルトゥール」
「……ああ」
「立って。仕事の時間」
 彼は頷き、片膝から静かに立ち上がる。立ち上がるとき、私は彼の肘を取らない。彼自身の筋肉で、重さを持ち上げさせる。それが、今日の訓練。

 布告板の前へ進むと、人々は自然と左右に割れた。
 私は指で簡素な段取りを書き、読み上げる。
「一、印影の差分を全公示。二、徴税場の常時開放の実施。三、偽印の回収と型の破砕——公開で。四、塩と油の流れの透明化。五、聖域の使用は申請制、許可は“皿の音”で決める」
 議長が「承」と短く言い、書記が記す。紙の端が風で鳴る。鳴りは、鐘よりも生活に近い。

 私は輪を、やっと一枚だけ取り出した。最小の第一式。ローデリクの椅子の前に置く。
「今日は、見送りの鏡」
 セレナが短く頷き、祈りの拍を入れる。エーレンが槍を横に、ミラが帳簿を閉じて胸に抱く。アルトゥールが帽子に手を添え、私が輪の縁を撫でる。
 鏡は、人の顔を映さない。影だけ、地に薄く映す。
 ——守り人の影。
 焼き跡は作らない。焼かない鏡。
 でも、残る。
 影は薄く、けれど確かに、王都の地の色に重なった。
 誰かが小さくすすり泣き、誰かが掌を胸に当て、誰かが空を見た。
 鈴は鳴らない。鳴らさない、という護り方。二回鳴らす約束は、いずれ私が引き継ぐ。

 昼前、私はやっとアルトゥールと向き合う時間を作った。広場の隅、偽印の欠片を納めた箱の横。
「今朝の膝、見た?」
「見た。角度は悪くなかった」
「褒められたのは初めてだ」
「褒めてない。続けろって言ってるの」
「続ける」
 彼は短く笑い、すぐ真顔に戻る。
「今日、君は赦したのか」
「違う」
「違う?」
「赦しは、私の仕事じゃない。私がしたのは『課す』こと。赦すのは、その重さを君が毎日運んだ先で、君の“みんな”が決める」
「“みんな”」
「鍋の持ち手の数。君は今日から、鍋の重さを一人で持たない。けれど、手を離した日は、膝をつく。その繰り返し」
 彼はゆっくり頷いた。
「……君は、僕に“毎日ざまぁ”を課したんだな」
「うん。日割りのざまぁ。割賦のざまぁ。利息はつかないけど、延滞は許さない」
 ミラが遠くから親指を立てる。商家の娘は、支払いについての比喩に敏感だ。
 私は息を吐き、胸の欠片を押さえる。印は静かだ。封螺の詩は今日、歌にしない。歌にすると華やぎが混ざる。今日は地味でいい。
 地味は、便利。——でも、今日はいつもと違って、地味が慰めだった。
 騒ぎの後の掃除は、地味でなければできない。

 夕刻、空の色が灰から蜜柑に変わる頃、礼拝堂に戻った。石は冷え、木は香り、蝋はやさしい。
 鏡を磨く。涙で曇った点が一つ、指の腹で消える。
 セレナが腰掛け、膝でリズムをとる。「今日の祈りは、短く」
「うん。長い祈りは、疲れで嘘になる」
「そう。だから短く、深く」
 私は目を閉じ、短く祈る。「守り人、道、灯り」
 言いながら、胸の奥で第三式の譜面が遠くに下がるのを感じた。禁術は私の手の中では眠らない。けれど、眠らせておける深さに今はいる。戻せる。戻る。
 耳の鈴鳴りは、時々ふっと息をするだけの微音になった。指の震えは、針を通す前の甘い緊張になった。代償は、確かに残っている。けれど、使える形で残っている。
 力も、残っている。
 どちらも持って、歩く。倒れないように、抱え過ぎないように。抱え過ぎた日は、誰かが鈴を鳴らす。鳴らしてくれる、と信じる。

 礼拝堂を出ると、王都の西に薄い一番星。
 広場では、子どもがやっと走り始め、露店が甘い匂いを混ぜている。ミラが蜂蜜の皿を掲げ、エーレンが「少しだけ」と言ってから二度おかわりし、セレナが笑って匙を奪う。
 アルトゥールは人混みの端で、紙の束を抱え、誰かと短く話し、返事をきちんと聞く顔をしている。彼の膝はもう地についていない。でも、膝の重さは、歩き方に残っている。
 私はその姿を横目で見て、前を向く。
 ローデリクの椅子は空だ。杖は礼拝堂の扉に立てかけられ、鈴は風で鳴らない。鳴らないが、わたしたちの胸で鳴る。
 「守ったぞ、聖域を」——あの言葉が、今夜の枕の高さを決める。
 私は裾を少し持ち上げ、石畳の継ぎ目を避けて歩く。継ぎ目は好きだ。噂も、言葉も、涙も、継ぎ目を通る。
 終わり。
 けれど、終わりを選ぶとき、始まりはいつも足首に寄ってくる。
 力は残った。代償も残った。
 その両方を抱えて、明日も秤を運ぶ。
 “ざまぁ”は日割り、“赦し”は総会計。
 鏡は壁にも、家具にも、舞台にも戻さない。
 聖域は、生活の真ん中に置く。
 そのための針と糸は、まだ、握れている。
 私は胸の上で指を一度だけ結び、ほどいた。
 ——行こう。鍋を洗いに。
 王都の夜が、蜂蜜の匂いで静かに始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?

神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。  カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。   (※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m 

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

最優秀な双子の妹に婚約者を奪われました。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 第2章、後日談と悪女の陰謀反撃を書くことにしました。

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

幼馴染に夢中の夫を捨てた貴婦人は、王太子に熱愛される

Narian
恋愛
アイリスの夫ロイは、新婚の頃から金髪の愛らしい幼馴染・フローラに夢中で、妻には見向きもしなかった。 夫からは蔑ろにされ、夫の両親からは罵られ、フローラからは見下される日々。そしてアイリスは、ついに決意する。 「それほど幼馴染が大切なら、どうぞご自由に。私は出て行って差し上げます」 これは、虐げられた主人公が、過去を断ち切り幸せを掴む物語。 ※19話完結。 毎日夜9時ごろに投稿予定です。朝に投稿することも。お気に入り登録していただけたら嬉しいです♪

「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。 その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。 フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。 フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。 ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。 セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。 彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。

出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」 広間に高らかに響く声。 私の婚約者であり、この国の王子である。 「そうですか」 「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」 「… … …」 「よって、婚約は破棄だ!」 私は、周りを見渡す。 私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。 「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」 私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。 なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。

処理中です...