王太子に裏切られたので、溺愛されてる魔王の嫁になります

タマ マコト

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第18話 あなたの名を呼ぶ

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 落ちる、という感覚に、風はなかった。
 白が爆ぜて世界の輪郭が裏返り、音は塩に溶けて、味だけが舌に残る。心の底で鳴るはずの“自己保存の鈴”は、鳴らない。鈴が静かな世界は、ひどく平坦で、どこにも棘がない。棘がないから痛みもなく、痛みがないから、歩幅という概念が遠のく。

 胸の刻印はかすかに熱を持っているのに、熱は生温い湖に沈められ、上下の区別を失った。縫い目は閉じた。私は知っている。世界の悲鳴はほどけ、歌へ戻りつつある。だからだろうか、私の身体は糸の役目を終えた針のように、布から抜け落ちていった。

 身体が地面を見失ったところで、硬いはずの現実が柔らかく変形し、私を受け止めた。冬の泉の匂い。中心に、小さな火。

「リュシア!」

 遠雷。
 そして、その残響の形で何度も繰り返される、私の名。
 音は白に吸われ、白は骨に沁みる。沁みた音は骨の裏側でふくらみ、鈴の代わりに、ゆっくりと脈を打つ。

 額に触れるものがある。硬くも柔らかくもない、骨の確かさ。額どうしが合わさると、失われていた上下が戻った。天井と床の距離が、現実へ接続される。香は薄く、血の匂いは温い。指が私の背に差し入れられ、落下の速度がゼロに戻される。

「戻ってこい」

 彼は命令をしない。命令ではなく、呼びかけだ。呼びかけにはあたたかい重さがある。重さは、布石だ。声の置き石を辿っていけば、帰り道になる。

 白の中に、光点がひとつ、ふたつと灯る。最初に見えたのは、古い楽譜。紙の端が指の脂で柔らかくなり、譜面の黒はまだ躍ることを知らない。次に、侍女の笑顔。彼女の笑いは廊下の影を薄くし、私の背中を押した。幼い日の月光。寝台の天蓋を透かして落ちる、薄い銀色の粉。粉の降る音はしないのに、耳が洗われる。

「リュシア、リュシア」

 名は錨。
 愛はロープ。
 遠雷のように続く呼びかけが、白の中で複数の方向から重なって、ひとつの“帰る”を指し示す。私は錨の方角を探るために、目を閉じた。閉じた目の裏で、白が少し黒へ傾く。黒は怖くない。今の私は、恐れの上澄みを世界に分けた。鈴は鳴らない。けれど、鈴の代わりに――彼の声が、鳴る。

「……遅い」

 自分でも驚くほど、軽い冗談が喉の奥で転がった。声にはまだ実体がない。泡だ。泡はすぐに弾けるけれど、どこに弾ければいいか知っている。私はその泡を、錨へ向けて投げた。

「ここにいる」

 泡は音になり、音は呼吸になり、呼吸は重さを取り戻す。指が手を探す。見つかる。手の甲には新しい傷。腕は硬く、しかし震えていない。彼の震えは、いつも内側だ。内側で風の速度を調整し、外側を静かに保つ。ずるい番。私のずるい夜。

「……よく戻った」

「呼ぶ声が、うるさいから」

「もっと、うるさくできる」

「それはたぶん、迷惑」

 額があたる場所で、彼の息がわずかに笑う。笑いの波が頭蓋の内側に反響し、白を撫でて押し戻す。世界の輪郭が徐々に戻り、聖堂の天井の黄金はまだ酔っているが、石の柱は二本の足で立っている。灰の輪は薄く、ほとんど消えつつある。ただ、地下の奥で“誰か”のまばたきの気配――古い神が、目を閉じたり開けたりしている。

「大丈夫?」

 エリナの声。彼女は泣いていない。泣き疲れて、涙の器をいったん空にした顔。膝を地につき、指を胸の前で組んでいるけれど、それは祈りの形ではなく、体勢を支えるための工夫。

「うん……いや、わかんない。鈴が、鳴らない」

 正直に言った瞬間、ヴァルトの腕に少しだけ力が増した。抱き締めるわけではない。零れないように、形を整えるための圧。私はその圧に身を委ねて、視線を横にずらす。ラザロが輪の残滓を刃の背で撫で、計測を続けている。セラは扇を半分閉じたまま、私の目の色を確かめていた。

「瞳孔、反応あり。呼吸も戻ってる。……自己保存の鈴が沈黙してるのは、配分の副作用。上澄みを渡したもの。戻るには時間と、外的な“呼び声”が要る」

「呼ぶ。ずっと呼ぶ」

 ヴァルトが言葉を被せる。即答。迷いがない。彼が迷わないとき、世界はひどくシンプルになる。

「ガルド、広場は?」

「吠え疲れたが、吠え足りねぇ! 暴れる奴ぁ、膝だけ折って寝かした!」

「ロラン」

「致命傷なし、拘束完了。……彼女は?」

「生きてる」

 ロランはほんの一瞬、目を伏せて、それからこちらを真っすぐ見た。躊躇の震えは、今は刃の外に置かれている。彼の震えは、彼自身の背中のほうへ移動して、汗に混じって蒸発している。

「信徒たちは?」

 エリナが自分の呼吸を整えながら答える。「泣く人は、泣く場所を見つけた。帰れる人は、手を繋いで帰ってる。立てない人は、床に座ってる。……私の祈りは、いまは毛布」

「充分」

 セラの扇が小さく鳴った。扇の骨の鳴きは、今夜ずっと聖具より役に立っている。ラザロが短く息を吐き、私に視線を向けた。

「封印陣は停止。回路は“窓”により縫合済み。余波として、地下の何かが目覚めましたが、敵意は確認できません。……“観察者”。いまはそれだけ」

「観察は、疲れるのよ」

 私はかすかに笑い、身体を起こしかけて、ヴァルトの手で止められた。視界が二重に揺れ、頭の奥で砂がさらさらと落ちる音がする。鈴が鳴らない代わりに、砂時計が回った。砂はまだ上にある。急ぐな、と砂が言う。

「わたし、少し、怖がれない」

「俺が怖がっておく」

「代行?」

「委任状なしで」

「横暴」

「番は、ずるい」

 返事の力加減が、さっきより戻っている。私の声は白の中から半分ほど抜け出し、聖堂の空気に馴染んでいった。外では、風が方向を変え、倒れた幕の布が地面を滑る音がする。金の葉は色を取り戻し、光は過剰でない明るさになった。人の熱が、街路の石に薄く残る。

 私は片手を伸ばし、ヴァルトの頬に触れる。皮膚は冷たく、内部は温かい。彼は目を細め、額をもう一度私の額へ重ねた。骨が骨に、確かに触れる。

「ねえ、ヴァルト」

「ん」

「呼んでくれて、ありがとう」

「礼は要らない」

「言わせて」

「聞くだけ聞く」

 呼吸の間に、言葉を落とす。言葉は重さを持って、胸骨の上で静かに鳴った。

「あなたが呼んだ“リュシア”は、私の名前の中でも、大事なほうの発音だった」

「発音があるのか」

「あるの。脅すときの“リュシア”、命令の“リュシア”、皮肉の“リュシア”、別れの“リュシア”。今のは、“帰る先の”リュシア」

「覚える」

「覚えなくていい。忘れたら、また呼んで」

「何度でも」

 短い約束は、長い誓約より信頼できる。私は頷き、上体を彼の腕の中でゆっくり起こした。立とうとしたとき、足首が自分の重さを忘れていて、ふら、と傾く。ヴァルトの手が腰に回り、転ばせない。支えは“持ち上げる”のではなく、“落ちない場所を作る”ことだ。彼はそれが上手い。

「殿下」

 ラザロが近づき、袖の裏に隠していた粘土板を差し出す。そこには印影の写し――王家百合の左が短く、聖鍵の歯が一本多い――が整然と並んでいる。彼の顔に、静かな満足があった。数字は裏切らない。けれど、数字は人間を守らない。守るのは、数字で支えられた声だ。

「これで“物語”を剥がせます」

「剥がした後に、貼るものがいる」

 セラが言う。扇の先で、聖堂の天井を指す。「真空は、うそを呼ぶ。正しさだけでは、空腹は満たせない。……毛布を一枚、増やしましょ」

 エリナが頷き、祈りの手をほどく。「私、できる。泣きかたを、みんなに分けられる」

「泣き方を?」

「うん。泣いていい場所で泣く練習。泣いた後に水を飲む練習。泣いてる人の背中を叩かない練習」

「それは、たしかに奇跡だ」

 ロランの口元がわずかに緩む。彼の刃は鞘に収まり、代わりに肩の力が降りた。躊躇の震えも、今は休む。

 視界の端で、瓦礫の陰に白い影が立っていた。アレクシス。彼は剣を握ったまま、剣先は下がり、こちらを見ているようで見ていない。彼の瞳は若い。若すぎる。私は彼に完全に背を向けない角度で立ち、視線の端だけで挨拶をする。彼は応えない。応えられないのかもしれない。世界は彼に、別のやり直しを要求している。

「行ける?」

 ヴァルトの問いに、私は自分の足首を意識して、小さくステップを踏んでみせた。鈴は鳴らない。けれど、呼び声がある。呼び声は内側からも外側からも届く。私はそれを頼りに、歩く。

「ちょっと、ふらふらする」

「寄りかかれ」

「ずっとだと、甘える」

「甘やかす」

「あなた、それ得意すぎる」

「今夜だけは、特に」

 外の空気は冷たく、しかし痛くはない。城壁の向こうから風が戻り、焦げた布の匂いと、湿った石の匂いと、安堵の汗の匂いが混ざる。夜は長い。長い夜は、途中で深呼吸を必要とする。私は胸を開き、息を入れ、吐いた。鈴は鳴らないままだけれど、息の通り道は広がった。

「リュシア」

 もう一度、名が落ちる。遠雷ではなく、近い雨の気配。私は顔を上げ、彼の青をまっすぐに受けた。額が自然に近づき、触れる。骨が触れるたび、私は“戻る”の意味を思い出す。戻るのは出発点ではない。戻るのは、いまの自分に合う椅子へだ。

「ここにいる」

 そして私は、はっきりと、言った。

 その言葉は私の喉で生まれ、彼の額でひとつ呼吸し、聖堂の天井で柔らかく反響した。黄金はそれを飲み込み、灰の輪の残りはそれを“認証”として受け取り、地下で見ている“誰か”は、目を細め、瞼を閉じた。

 世界が、ようやく呼吸を取り戻す。
 角笛は鳴らず、太鼓は沈黙し、代わりに人の息が街路を満たす。
 泣く声、笑う声、頼る声、謝る声。
 それらが混ざり合い、秩序ではなく、生活の拍を作っていく。

「殿下」

 ラザロが控えめに咳払いをし、現実に線を引き直す。「残務が多々。告示、証の保全、民の移送。……そして、王都の“呼び鈴”の調律」

「鈴、ね」

 私は苦笑し、胸の中の鈴にそっと触れる。まだ鳴らない。鳴らないけれど、そこにある。私が戻したのは、鈴そのものではなく、鳴らす手だ。鳴らせる手があれば、鈴は音を思い出す。

「調律は、あとで。まず――」

 私はヴァルトの手を握り、エリナの肩に視線をやり、ガルドとロランの立ち姿を確認し、セラとラザロの扇と刃の角度を整える。

「水を飲もう。全員」

「最高司令の命令だ」

 ヴァルトがきっぱり言う。ガルドが吠える代わりに笑い、ロランが肩で息をして頷き、エリナが「はい」と素直に答える。セラは扇で小さく“乾杯”の真似をし、ラザロは水袋の数を数え始めた。

 私は最後にもう一度、聖堂の奥の影――瓦礫にもたれる白の姿に視線を寄越した。アレクシスは動かない。動けない。彼の物語の鈴は、いまは鳴らないのだろう。いつか鳴るかどうかは、彼の手次第だ。私は彼の代わりに鳴らすことはしない。均衡は、そういうことだ。

 夜気が頬を撫でた。
 黒薔薇の蕾が、耳のそばでひとつだけほどける。
 香りは淡く、冷たく、甘さは薄い。
 私はその香りで、目を閉じた。

 名前を呼ばれることが、私の生き方の半分になる夜もある。
 呼び返すことが、残りの半分になる朝もある。

 額を離し、彼の指と指を絡め、最初の一歩を踏んだ。
 鈴は――まだ鳴らない。
 けれど、錨は確かで、ロープは強い。
 だから、歩ける。
 だから、選べる。
 そしてまた、呼べる。

 「リュシア」
 「うん。ここにいる」

 その短い応答が、今夜の一番長い祈りだった。
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