無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト

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第3話 『胸奥で蘇る太古の脈動』

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 世界が、心臓の鼓動と一緒にぐらりと揺れた気がした。

 婚約破棄、という言葉を突きつけられた瞬間の衝撃は、もうさっき味わったはずなのに──
 今、胸の奥で鳴っているこれのほうが、よっぽど現実離れしている。

 ドン──。

 自分の鼓動とはまるで違う重さで、何かが中から扉を叩いているみたいな感覚。
 薄い胸骨では到底受け止めきれないほどの、太古の何か。

「……っ、は……」

 息がうまく吸えない。
 喉がひゅっと鳴る。

 魔石灯の光が一斉に明滅し、ぱちぱちと不穏な音を立てた。
 中庭を飾る白いテーブルクロスが、風もないのにふわりと揺れる。

「今の、なに……?」 「魔力の暴走か? 誰の……」

 貴族たちがざわめき始める。
 けれどその声も、エリーナには遠かった。

(胸が、熱い……)

 燃えるみたい、という表現では足りない。
 もっと重くて、深くて、赤黒い熱。

 内側から炎じゃなく、溶岩を流し込まれているみたいな、そんな熱さ。

「エリーナ様!? お顔が真っ青です!」

 駆け寄ってきたミナの声が、かろうじて耳に届く。
 視界の端で、侍女服の白と黒が揺れているのが見えた。

「だ、大丈夫……よ」

 全然大丈夫なんかじゃない。
 でも、そう言うしかない。

 ここで膝から崩れ落ちたら、きっと本当に“終わり”になる。
 さっきの言葉の続きとして、「やっぱりね」と笑われる未来が想像できてしまうから。

 エリーナは爪が食い込むほどドレスの生地を握りしめ、立っていることだけに意識を集中させた。

「エリーナ」

 低い声が目の前から降ってくる。
 アレクシオンだ。

 彼の顔は、先ほどまでの冷徹な王太子の仮面をかろうじて保っていたが、その瞳の奥に一瞬だけ不安がちらりと浮かんでいた。

「体調が悪いのか」

「殿下のご決定を前に、気分を悪くする権利など、わたくしにございますでしょうか」

 皮肉混じりの言葉が口をついて出る。
 自分でも驚くほど、舌は滑らかに動いた。

 心のほうは本当に壊れそうなのに、口だけはいつも通りに動く。
 身体って、残酷にできている。

「エリーナ様、無理をなさらないで──」

 ミナが悲鳴の混じった声で呼ぶ。
 彼女の手が、震える指でエリーナの腕を支える。

 それでも、胸の奥の鼓動は収まらない。

 ドン、ドン、ドン──。

 そのたびに、魔石灯の光がぴくりと揺れる。
 噴水の水面に、細かいさざ波が立つ。

「お、おい……明らかにおかしいぞ」 「誰か、魔法を暴走させているのでは……」

 騎士たちがざわつき、宮廷魔導師らしき老人が杖を握りしめて空気を探るように目を閉じた。
 だが、彼の額に浮かぶ冷や汗は、なにも掴めていないことを物語っている。

「魔力の波動……いや、これは……なにか違う」

 老人が絞り出すような声で呟いた。

 エリーナの視界の端で、セレスが怯えたように膝を折りそうになっているのが見える。
 アレクシオンは彼女を庇うように抱き寄せ、周囲を警戒する視線を走らせていた。

(どうして、そんな顔をするの……)

 守るような、優しい目。
 かつて自分に向けられていたそれを、今は別の誰かが受け取っている。

 胸の奥の熱は、嫉妬の色も混ぜてさらに濃くなった。

 そして──

 ふいに、別の光景が、視界の上からかぶさってきた。

 今いる王宮中庭の風景が、手で紙を剥がしたみたいに薄く透けて、その下からまったく違う“場面”がのぞいている。

「……森?」

 自分の口から、聞き覚えのない幼い声がこぼれた。

 いや、今のは──

 ――わたしの声。



 緑が、どこまでも続いていた。

 高くそびえる木々。
 葉の隙間から差し込む光。
 土の匂いと、湿った苔の感触。

 背丈の低い少女が、ひとりで泣きながら森の中を歩いていた。

 白いワンピースの裾は泥で汚れ、片方の靴はどこかで脱げてしまったのか、片足は裸足で、棘を踏んで小さな血の跡を残している。

『……おかあ、さま……』

 泣き声交じりに、少女がかすれた声を漏らす。
 目の前で見ているはずなのに、その声が耳の奥でダイレクトに響いてくる。

(これ……私?)

 理解した瞬間、心臓がきゅっと縮んだ。

 覚えている。
 覚えていないはずがない。

 まだ七歳だった、あの日。
 馬車から少し目を離した隙に、森の外れで迷子になって。

 怖くて、心細くて、泣きながら歩き回っていたあの日。

 少女──幼いエリーナは、ふらふらと木々の間をすり抜け、突然、目の前がひらけた場所に出た。

 小さな泉。
 水は澄んでいて、覗き込めば自分の顔が映るほど。
 そこだけ、森の中とは思えないほど静かで、空気が凍っているみたいだった。

『……なに、これ』

 泉のほとりに、それはあった。

 大人でも抱えきれなさそうなほど大きな、ひとつの卵。
 真珠色の殻に深い亀裂が走り、その隙間から赤いものがじわりと染み出している。

 血。

 卵が、血を流していた。

 普通なら、ありえない光景。
 けれど子どもの理解は、世界のルールより先に感情で動く。

『いたい、の……?』

 幼いエリーナはおそるおそる近づき、ぺたりとその卵に両手を添えた。
 ひんやりと冷たい表面。
 震える指先。

 掌にぬるりとした感触がまとわりつく。
 赤い。
 生臭い匂いがした。

『しんじゃう、の……?』

 唇が震え、視界が滲む。
 返事がないのが、逆に怖い。

 誰もいない森の中で、血を流している巨大な卵。

 大人なら離れる。
 危険だと判断する。

 でも、そのときのエリーナにとって、それは“ひとりぼっちで苦しんでいる何か”にしか見えなかった。

『……ひとりは、やだよ……』

 ぽとん、と涙がこぼれる。
 卵の表面に、小さな水の跡ができる。

『ねえ、がんばって……』

 幼い手が、ぎゅうっと卵を抱きしめる。
 白いワンピースが、赤く染まるのも気にせずに。

『しなないで……わたし、ひとりにしないで……』

 願いは、あまりにも幼く、あまりにも真っ直ぐだった。

 そこに打算も計算もない。
 ただ、ひとりで泣いている自分と同じように、“ひとりで苦しんでいる何か”を放っておけなかっただけ。

 森の空気が、一瞬ぴんと張り詰める。

 風が止み、葉のざわめきが消える。
 泉の水面がぴたりと静まり返る。

 そして──

 卵の内側から、うっすらと光が灯った。

『……え?』

 幼いエリーナが目を見開く。
 ひび割れた殻の隙間から漏れ出す光は、やがて血の赤を押し返すように強くなっていく。

 ドクン。

 そのとき、初めて胸の奥で、今と同じような重い脈動が鳴った。

 驚きと、恐怖と、なぜか涙がこみあげるような懐かしさが、いっぺんに押し寄せる。

『……だれか、いるの?』

 震える声で問いかけた瞬間、卵の中から、はっきりとした“視線”を感じた。

 言葉ではない。
 音でもない。
 ただまっすぐに、魂を覗き込まれたような感覚。

 冷たくて、大きくて、深い。
 だけど、その奥のさらに奥に、かすかなぬくもりがある。

 エリーナは子どもなりに、それを理解した。

『さみしい、の?』

 問いかけに答えるみたいに、殻がミシミシと音を立てて割れていく。

 光の中から、白銀色の……なにかが、ゆっくりと姿を現し──



「──っ!」

 目の前の光景が、乱暴に引き剥がされた。

 王宮の中庭。
 崩れていないはずの現実。

 エリーナは荒く息を吐きながら、胸を押さえた。
 心臓が暴れ馬みたいに暴れ、肋骨から飛び出しそうな勢いだ。

「エリーナ様、本当に……!」

「触らないで、ミナ」

 かすれた声でそう言うと、ミナの手がびくっと引っ込む。
 侍女の顔が、泣きそうに歪んだ。

「ですが、そんな……お顔が真っ青で、それに胸を押さえて……」

「大丈夫。……立っていられるわ」

 本当は、全然大丈夫なんかじゃない。
 でも、ここで倒れたらさっきの記憶を、全部「ただの体調不良」として自分で死なせてしまう気がした。

(あれは……夢じゃない。あの日の記憶……)

 森。
 泉。
 血を流す卵。

 そして、中から確かに感じた“視線”。

 胸の中の熱が、形を持ち始めている気がする。

 正体のわからない何かが、ゆっくりと目を開けようとしている。

「おい、空を見ろ!」

 誰かの叫びが、中庭のざわめきを一気に塗り替えた。

 貴族も騎士も侍女も、全員が反射的に夜空を仰ぐ。
 エリーナもそれにならうように顔を上げた。

 そこには、星空なんて、もうなかった。

 かわりに──
 夜空の真ん中に、巨大な“裂け目”が走っていた。

 真っ黒な空を引き裂くように開いた、眩しいほどの光。
 そこから溢れ出す何かが、空気をびりびりと震わせている。

「な、なんだあれは……」 「誰か結界を張れ! 宮廷魔導師は何をしている!」

 騎士たちが慌てて剣を抜き、魔導師たちが杖を高く掲げる。
 でも、彼らの呪文は途中で喉に張り付くように止まった。

 圧。

 明確な“格”の違いが、空から降ってくる。
 人間の魔力なんて、砂粒みたいなものだと言わんばかりの、巨大な気配。

 エリーナの胸の奥の脈動が、それに共鳴するみたいにさらに激しさを増した。

(やめて、やめて、やめて……!)

 心のどこかが恐怖で叫ぶ。
 でも、同時に別のどこかが、必死にその光を見つめようとしている。

 ──会いたい、と。

 狂ったみたいな感情が、胸の底から突き上げてくる。

(……誰に?)

 自分で自分に問いかける。
 答えはまだ、言葉にならない。

「あ、あれは……竜の、気配……?」

 宮廷魔導師の老人が、震える声で呟いた。
 普段は厳格な彼の表情が、今は子どものように怯えている。

「馬鹿な、竜は何百年も姿を現していないはずだ……!」

「でも、この魔力の圧……人間のものでは……」

「竜だとしたら、なぜ今ここに──」

 騒然とする中庭。
 アレクシオンもセレスを庇いながら、空を睨みつけている。

「竜が……? そんなことが……」

 彼の表情には、王太子としての責任感と、どうしようもない恐怖とが入り混じっていた。

 セレスはその腕の中で震えながら、か細い声で祈りの言葉を紡ぐ。

「おお、偉大なる主よ……どうか、わたしたちを守り──」

 その祈りを、空の“裂け目”が聞き届ける前に。

 エリーナの視界が、またぐにゃりと歪んだ。



 森。
 泉。
 血と光。

 ひび割れた殻の中から、白銀色の何かが姿を現しつつある。

 それは、ぬるりと、でも確かな意思を持って、生まれ出ようとしていた。

『っ、こわ……』

 幼いエリーナは一歩だけ後ずさった。
 でも、手は卵から離さない。

 怖い。
 でも、離したくない。

 ここで手を放せば、この“なにか”が本当に死んでしまう気がしたから。

 殻が大きく割れ、光が、少女を包む。

 眩しくて、涙が出る。
 でも、その光は、さっきまでの血の赤とは違う、やさしい温度だった。

 光の中から、金色の瞳が、ぱちりと開く。

『──』

 ことばにならない声が、少女の頭に直接響いた。

 冷たくて、大きくて、深い。
 でも、たしかにそこに“興味”のような感情が混ざっている。

『……こんにちは』

 幼いエリーナは、笑った。
 怖さよりも先に、うれしさが勝った。

 ひとりじゃなかった。
 ここには、自分以外の“なにか”がいる。

『いきて、くれた……』

 ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
 光の中の白銀の影が、その涙をじっと見ていた。

『……なまえ、ないの?』

 問いかけても、返事はない。
 ただ、金色の瞳が瞬きをするだけ。

 でも、それは充分だった。
 返事がなくても、“聞いている”のは分かる。

『じゃあね──』

 幼いエリーナは、自分の知っている中でいちばん綺麗な響きを、ひとつ思い浮かべた。

『あなたの名前は、アーク……そう、アーク……ヴァン。光みたいで、かっこいいでしょ』

 その瞬間。

 世界が、ぴしりと音を立てて繋がった。

 幼い胸の奥に、熱が流れ込む。
 さっきまでとは比べ物にならないほど強い脈動。

 ドクン。

 ドクン。

 ドクン。

 胸骨の裏側に、もうひとつの心臓が生まれたみたいだった。

 光の中の白銀の影が、ゆっくりと首をもたげる。
 まだ身体は完全には形を成していないのに、その瞳だけは、はっきりとした意思を宿していた。

『……エ、リ……』

 ささやきにもならない音が、頭の中に響く。

『エリ……ナ』

 自分の名前を呼ばれているのだと理解した瞬間、全身がぶわっと粟立った。

『そなた』

 さらに、ひとつだけはっきりと聞き取れる言葉が紡がれる。

『そなたが、主か』



 現在──王宮中庭。

「っ、あ……!」

 エリーナは肺にようやく空気を押し込んだ。
 視界が戻る。
 目の前には、恐怖に染まった貴族たちの顔。
 頭上には、裂け目を広げていく光の空。

(今のは……夢じゃない。あの日、私が──)

 アークヴァン。
 白銀の影。
 金色の瞳。

 胸の奥で暴れている脈動の正体が、はっきりした。

(竜……)

 信じがたい結論。
 でも、身体はそれを既に受け入れてしまっている。

 胸に当てた手の下で、熱がさらに高まる。
 皮膚の下を何かが走り、脈拍に合わせて光が漏れ出しているような錯覚。

「エリーナ様、本当に、顔色が──」

「ミナ、下がって」

 今度の声は、自分でも驚くほど低くて、震えていなかった。

 ミナはぎょっとした顔で見つめ、それでも主の言葉に従って一歩下がる。

 その瞬間、中庭の中心から、繊細な音が聞こえた。

 ぽとん。

 自分の足元を見下ろす。
 白い石畳の上に、小さな水のしみがひとつ。

(……あ)

 ようやく落ちた、最初の涙だった。

 それは、婚約破棄の悲しみでもあり。
 裏切られた悔しさでもあり。
 そしてなにより、七年前の森で流した涙の続きでもあった。

 ぽとり、と二滴目が落ちる。

 その瞬間──

 遠い天から、世界の底を震わせるような咆哮が響き渡った。

 グォオオオオオオオオオオオ──ッ!!

 空気が震えた。
 魔石灯の炎が一斉に消え、代わりに空の裂け目から溢れる光が、夜会の会場を白く塗り潰す。

「な、なんだ!?」 「み、耳が……っ!」

 貴族たちが耳を押さえ、しゃがみ込む。
 騎士のひとりが悲鳴を上げ、その場に剣を落とした。

 それでも、エリーナにはその咆哮が、不思議と痛くなかった。

 むしろ、胸の奥で鳴っていたもうひとつの鼓動が、その声に合わせて嬉しそうに跳ねているのが分かる。

(……呼んでる)

 誰が、誰を。
 問いかけるまでもない。

 竜が──アークヴァンが。
 “主”を呼んでいる。

 アレクシオンが、唇をかみしめて空を睨んだ。

「本物の……竜、か」

 腕の中で震えるセレスを抱きしめながら。
 その表情には、王太子としての恐怖と焦り、そしてほんの少しの嫉妬にも似た色が浮かんでいた。

 彼は知らない。
 その竜が、守ろうとしている“主”が誰なのか。

 エリーナは、もう一度夜空を仰いだ。

 裂け目はさらに広がり、その向こう側から白銀の何かが、ゆっくりと姿を現そうとしている。

 胸の奥で、確かな確信が形になる。

(……迎えに、来たんだ)

 七年前、森の泉で名を与えた存在が。
 婚約破棄の夜に、涙で呼び起こされた絆が。

 太古の脈動となって、今ここに蘇っている。

 夜会の静寂は、もうとっくに壊れていた。
 今、代わりに満ちていくのは──竜の咆哮と、ひとりの少女の運命が巻き込まれていく音。
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