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第2話 追放の馬車と、国境に眠る光
しおりを挟む王城を出たあと、リリアに与えられたのは侯爵令嬢に相応しい馬車ではなかった。
飾り気のない、実務用の箱馬車。
黒塗りの車体は傷だらけで、座面の布地も固く、揺れを吸収する気なんて最初からないらしい。荷物を運ぶついでに人も積めます、とでも言いたげな無愛想さだった。
たった一晩前まで王太子妃候補だった娘に用意されるものとしては、ずいぶん露骨だった。
けれどリリアは、もう驚かなかった。
人の扱いは、その人間をどう見ているかをよく表す。つまり王家にとってもエルフェリア家にとっても、今の自分はこの程度なのだろう。
「出発する」
馬車の外から、低い声がした。
護送役の騎士だ。年齢は三十代半ばくらいだろうか。日に焼けた肌に無精ひげ、実務一筋で生きてきたような顔をしている。礼儀がないわけじゃない。ただ、この役目に感情を乗せる気がないだけだ。
その無関心さは、今のリリアにはむしろありがたかった。
「はい」
短く返す。
扉が閉じられ、すぐに馬が動き出す。木の車輪が石畳を叩き、ガタン、と身体が跳ねた。
王都の朝はまだ薄い霧の中にある。窓の小さな隙間から覗く景色は、昨日まで知っていた街と同じはずなのに、どこかもう他人のもののように見えた。
パン屋の煙突から白い煙がのぼっている。通りでは市場の準備が始まり、荷車を引く人の声が交差していた。宿屋の前では眠そうな少年が桶で水を撒いている。
誰も彼も、いつも通りの朝を生きている。
この国のどこかで侯爵令嬢が婚約破棄され、国外追放になったことなんて、彼らの朝食の温度を一度も変えない。
それが少しだけ、救いのようにも思えた。
世界は自分の不幸だけで止まったりしない。
だからこそ、自分も止まってはいけないのだろう。
馬車はやがて王都の大通りを抜け、外縁の門へ向かった。道が荒くなるたびに、身体が上下に揺さぶられる。慣れない振動が肩や腰に細かく響く。
リリアは膝の上に手を重ね、じっと揺れに耐えた。
暇になると、嫌でも考えてしまう。
どうして十歳のあの日、水晶は光らなかったのか。
どうして父は、自分を守ってくれなかったのか。
どうしてアルベルトは六年も婚約を引き延ばしたのか。
どれも答えのない問いだった。
けれど、問いは心の中で棘みたいに引っかかって、放っておいても勝手に疼く。
十歳のあの日の記憶は、今でも鮮やかだ。
広い測定室。高い窓。白い光。中央に置かれた透明な水晶柱。順番に手をかざしていく貴族の子どもたち。魔力に反応して色を変える水晶に、歓声が上がったり、安堵の溜息が漏れたりしていた。
その日、リリアは少し緊張していたが、不安はなかった。
エルフェリア家の長女として生まれた以上、魔力があるのは当たり前だと思っていたからだ。
「リリア・エルフェリア」
名前を呼ばれ、前へ出る。
父も、家庭教師も、周囲の大人たちも、当然のように見守っていた。
手をかざした。
けれど水晶は、何も映さなかった。
青にも赤にも金にも光らず、静まり返った水面みたいに、どこまでも透明なままだった。
その瞬間の沈黙を、リリアは忘れられない。
空気から色が抜け落ちたような沈黙だった。
「……もう一度」
測定官が言った。
もう一度、もう二度、三度。
結果は変わらない。
やがて誰かが小さく言ったのだ。
「魔力、ゼロ……?」
その一言が、あの日からの人生を決めた。
リリアは目を閉じる。
たとえば、自分が途中で努力をやめたのならまだわかる。怠けたとか、勉強を嫌がったとか、婚約者としての務めを投げ出したとか。そういう分かりやすい失点があるなら、まだ納得のしようもあった。
でも実際は違う。
礼儀作法も、王妃教育も、歴史も政治も、魔法理論ですら、できる限りのことを学んだ。
できないなら、別の形で埋めようとした。
魔力がないなら、知識で。
教養で。
立ち居振る舞いで。
婚約者として恥ずかしくないように、ずっと自分を磨いてきた。
なのに最後に残った評価は、“無能”。
その二文字だけだった。
馬車が大きく揺れて、リリアは窓枠に肩を打ちそうになった。
外から騎士の声がする。
「悪いな。道が荒れてる」
「大丈夫です」
「酔ってないか」
「少しだけ」
本当は少しどころではなかった。揺れに慣れていない身体はじわじわ熱を持ち、胃の奥が鈍く波打っている。
だが弱音を吐いたところで、何かが良くなるとも思えなかった。
しばらくして馬車が止まる。
「休憩だ」
扉が開き、外の空気が流れ込んできた。
草と土と朝露の匂い。
城の中にはない、生きた匂いだった。
リリアはゆっくり馬車を降りる。
そこは街道沿いの小さな休憩所で、木造の簡素な小屋と井戸があるだけの場所だった。
護送の騎士は二人。
王城を出たときから同じ顔ぶれだ。
年長の男と、もう少し若い青年。
青年の方は、リリアと目が合うたびに微妙に気まずそうな顔をする。
たぶん彼なりに、気の毒だとは思っているのだろう。
でも気の毒だと思うだけでは、何も変わらない。
「水だ」
年長の騎士が木の杯を差し出した。
「ありがとうございます」
受け取って口をつける。冷たい水が喉を落ちていくと、ようやく頭の熱が少し下がった。
青年騎士が、おそるおそる口を開く。
「あの……」
「何でしょう」
「……いえ」
言いかけてやめる。
リリアは杯を見下ろしたまま、静かに言った。
「聞きたいことがあるなら、どうぞ」
「その、失礼かもしれませんが……本当に、何もお持ちでないんですか」
「何も、とは?」
「魔力、です。王都では、そういう噂だったので」
ずいぶん率直だな、と少しだけ思う。
けれど、好奇心に悪意が混じっていないだけまだましだった。
「ええ。測定では、ずっとゼロでした」
「……そうですか」
「がっかりしましたか?」 「え?」
「皆さん、そういう顔をなさるので」
青年騎士は慌てた。
「い、いや、そんなつもりじゃ……!」
「分かっています」
リリアはほんの少しだけ唇を緩めた。
「ただ、慣れているだけです」
その言葉に、青年の表情が痛そうに歪む。
たぶん優しいのだろう。こういう職務につく人間にしては珍しく。
だがその優しさも、彼女の今の立場を変える力はない。
年長の騎士が青年を軽く睨んだ。
「余計なことを聞くな」
「すみません」
「……構いません」
リリアはそう言ったが、内心では少しだけ疲れていた。
何度同じ説明をすればいいのだろう。
魔力はない。使えない。だから無能。
人はそこだけ聞けば満足して、それ以外を見ようとしない。
休憩を終えて再び馬車が動き出す。
窓の向こうで景色が流れる。王都から離れるにつれて、人の気配はまばらになり、代わりに草原と林が増えていく。遠くに見える山は青く霞み、空はやけに広かった。
もう戻れないのだと、景色が教えてくる。
昼を過ぎる頃、馬車の速度が少し落ちた。前方で検問でもあるのか、騎士たちの声が低く交わされる。
その間、リリアは窓にもたれて、ぼんやりと指先を見つめていた。
細い指だ、と他人事みたいに思う。
この手で何を掴みたかったのだろう。
父の承認。
婚約者の信頼。
王妃になる未来。
家族のぬくもり。
どれも、最初から手の中にはなかったのかもしれない。
——家の名誉のためだ。
昨夜、父が言った言葉が蘇る。
たった一言。
でもあの短い言葉の中には、自分を切り捨てるのに十分な冷たさが詰まっていた。
昔、ほんの一度だけ熱を出した夜があった。
母を早くに亡くし、まだ屋敷の空気にも孤独にも慣れていなかった幼い頃。高熱でぼんやりする中、扉が開いて、父が部屋を覗いたことがある。ほんの数分、額に手を当てて、「薬は飲んだか」と聞いただけ。それなのにその時の自分は、胸がいっぱいになるほど嬉しかった。
あれをずっと勘違いしていたのだ。
少しは愛されているのだと。
大事に思われているのだと。
違った。ただの義務だったのだろう。家の長女が病に倒れて困るから、確認しに来ただけ。そこに父親としての情が何割あったのか、今となってはもう分からない。
場面は変わる。
馬車は夕方前に、王都の一角へ入っていった。
いや、王都ではない。王城だ。
王城の執務室では、アルベルト・アストレイアが書類の山を前に立っていた。
窓から射す光はまだ明るいが、部屋の空気はどこか重い。机の上には辺境防備、税収報告、結界管理に関する報告書が積まれ、その端に昨夜の夜会の記録まで置かれている。
アルベルトは一枚の報告書を読み、眉を寄せた。
「……結界塔第四基の出力低下?」
「はい、殿下」
答えたのは宮廷魔導師メルディウスだった。
灰色の長衣を纏った細身の男で、癖の強い銀髪を後ろで束ねている。顔立ちは悪くないのに、口元に常に他人を見下すような薄い笑みが貼りついているせいで、印象は冷たかった。
「ですが、軽微なものです。季節変動の範囲内でしょう」
「軽微、か」
アルベルトは紙に目を落とす。
「辺境の観測所からは、魔物の出現数増加も上がっている」
「よくある連鎖です。おそらく結界の揺らぎを大袈裟に捉えた現場の不安でしょう」
「断言できるのか」
「私がいますので」
自信満々に言い切るメルディウスに、アルベルトは無言になる。
本来なら安心すべき言葉なのだろう。宮廷魔導師が問題ないと言うのだから。
なのに胸の奥に、小さなざらつきが残る。
昨夜からずっと、そのざらつきは消えない。
自分は正しい判断をした。
そう、何度も言い聞かせている。
魔力を持たない婚約者を妃に迎えることはできない。アストレイア王国は強い結界と魔法体系で成り立つ国だ。王族の婚姻は恋愛ではなく、国家運営の一部。そこに不確定要素を抱える余裕はない。
リリアを切る判断は、感情ではなく責務だ。
それでいい。間違っていない。
——なのに。
昨夜最後に見たリリアの顔が、妙に脳裏に残っていた。
泣きもしない。縋りもしない。ただ静かに「そうですか」と言ったあの声音。
責めるようでもなく、悲鳴のようでもないのに、なぜか胸の奥に棘として残る声だった。
「殿下?」
メルディウスの声で、アルベルトは我に返る。
「……いや。引き続き監視を強化しろ」
「承知しました。ですがご安心を。王国結界に深刻な問題はありません」
「そうか」
アルベルトは短く返した。
安心しろと言われるほど、逆に不安が濃くなるのはなぜだろう。
その頃、エルフェリア侯爵家の私室では、セレナが鏡の前に座っていた。
侍女たちが髪を梳かし、昨日から届き始めた祝福の贈り物を部屋の隅へ運び込んでいる。
宝飾品。
香水。
高級織物。
どれも“次期王太子妃候補”への媚びと期待が詰まった品ばかりだ。
「お嬢様、本当におめでとうございます」
「王子殿下も、昨夜はずっとお嬢様を見ていらっしゃいましたわ」
「お似合いでございました」
侍女たちの言葉に、セレナは満足げに微笑んだ。
「ありがとう。ふふ、でもまだ正式に決まったわけではないのよ」 「それでも時間の問題ですわ!」
その言葉に気をよくしつつも、セレナは鏡越しに自分の顔を見る。
今日の自分はとても綺麗だった。頬の色も、唇の艶も、瞳の光も、全部が勝者のものに見える。
昨夜まで、自分の前にはいつだってリリアがいた。
無表情で、静かで、涼しい顔をして、何もかも当然みたいに持っていた姉。王子の婚約者という立場も、侯爵家の長女としての優位も、周囲が“本来ならあの人こそ”と見る空気も。
だから、やっとだと思った。
やっと自分の番が来たのだと。
なのに。
「……っ」
ふいに背筋に冷たいものが走った。
耳のすぐそばで、誰かが囁いた気がしたのだ。
——もっと、欲しいでしょう?
セレナは勢いよく振り返る。
「……誰?」
侍女たちが驚いたように目を瞬く。
「え?」
「どうかなさいましたか、お嬢様」
「今、誰か……」
部屋には侍女しかいない。扉も窓も閉まっている。
気のせい、だろうか。
セレナは自分の肩を抱いた。胸の奥が妙にざわつく。
「なんでもないわ」
「お疲れなのでは?」
「そうかもしれないわね」
笑ってみせるが、指先は少しだけ冷たかった。
その夜、セレナは眠れなかった。
勝ったはずなのに、胸の内側に薄い不安が巣を作っている。暗闇の中で目を閉じるたび、耳元に何かが近づいてくる気がする。
——奪っただけじゃ足りない。
——選ばれ続けなきゃ。
——姉より、もっと、もっと。
「やめて……」
小さく呟く。
でも声は消えない。
自分の中から聞こえてくるようでもあり、部屋の隅から滑り込んでくるようでもある。
セレナは布団を握りしめた。勝利の甘さはまだ舌に残っているのに、その裏で得体の知れない苦みがじわじわ広がっていく。
同じ頃、リリアの馬車は王国の外縁へ向かっていた。
日が傾き、窓の外は茜色に染まり始めている。山並みの影は長く伸び、街道の先には国境に続く関所の塔が、針みたいに細く空を刺していた。
「もうすぐだ」
外から年長の騎士の声がする。
もうすぐ。
その言葉がひどく軽くて、残酷だった。
もうすぐこの国の外に出る。
もうすぐ本当に、戻れない場所へ行く。
リリアは膝の上の手を見下ろした。
不思議と震えてはいない。
怖くないわけではない。ただ恐怖より先に、何もかも削られたあとの空白が広がっている。心が真冬の湖みたいに静まり返っていて、自分でも底が見えない。
馬車が関所の手前で止まる。
扉が開かれ、騎士が言った。
「降りろ。ここから先は確認が必要だ」
「はい」
外へ出ると、風が強かった。
王都の中では感じなかった、土と草の匂いを含んだ風。遠くで木々が揺れ、空は群青へ沈みかけている。
国境の石碑が立っていた。アストレイア王国の紋章が刻まれた白い石。その向こうは、もう王国の外だ。
関所の兵が書類を確認し、形式的なやり取りを交わしている。
「リリア・エルフェリア。国外追放の執行を確認」
「確認済み」
「身分証の剥奪も完了しているな」
「ああ」
自分の存在が、紙の上の処分として処理されていく音を、リリアは黙って聞いていた。
すると青年騎士が、少しためらってから小声で言った。
「……ここを越えたら、もう戻れません」
「そうでしょうね」
「その、気をつけて」
「ありがとうございます」
その一言だけでも、この旅で初めて向けられた人間らしい温度だった。
リリアは小さく頭を下げる。
そして、石碑の方へ歩き出した。
一歩、また一歩。
靴底が砂利を踏む音がする。
王国の空気と外の空気に、違いなんてないはずだった。なのに、境界へ近づくほど、肌の上を撫でる風が変わっていく気がする。見えない膜が張られているみたいに、空気がわずかに粘る。
胸の奥が、妙にざわついた。
何だろう、これ。
不安とも違う。
既視感に似ている。
でも知っているはずのない感覚だった。
石碑の横を通り過ぎ、王国の領土を示す最後の線を越えた、その瞬間。
世界が、ひっくり返った。
「……っ!」
唐突に、胸の奥で何かが爆ぜた。
熱い。
いや、熱いなんて言葉では足りない。太陽をそのまま飲み込んだみたいな灼熱が身体の中心で膨れ上がり、血管という血管を焼くように駆け巡る。
視界が白く弾けた。
膝が崩れ落ちる。
「おい!」
「何だ!?」
騎士たちの声が遠くで聞こえる。なのに現実感がない。
リリアは地面に手をついた。砂利の感触があるのに、それすら薄い。身体の内側を走るものの方が圧倒的だった。
痛い。
苦しい。
けれどそれ以上に、膨大だった。
何かが、戻ってくる。
いや、押し寄せてくる。
「う、あ……っ」
喉の奥から、かすれた声が漏れる。
銀の髪が風もないのにふわりと浮き上がった。周囲の空気が唸りを上げる。地面の上に見たこともない光の線が走り、複雑な紋様を描き始める。
古代文字。
そう思ったのは、知らないはずなのに知っていたからだ。
視界の奥で、無数の文字列が火花みたいに弾ける。
星辰運行式、外殻結界、封理術、第七層記述、反転構文、崩壊防止補助陣——
意味が分かる。
なぜ分かるのか分からないのに、全部が読めた。
「離れろ!」
誰かが叫んだ。
騎士たちが後退する気配がする。馬がいななき、関所の兵たちが恐慌に似た声を上げる。
でもリリアには、それどころではなかった。
頭の奥で扉が開く。
ひとつ、またひとつ。
深く沈められていた記憶が、光の魚の群れみたいに浮かび上がってくる。
高い塔。
星の地図。
巨大な魔法陣。
世界の理に触れる指先。
白い手袋に滲む血。
泣きながら術式を組み直す自分。
壊れかけた空。
崩れる大地。
そして、誰かの声。
——この力は、次の生で封じなさい。
——さもないと、お前はまた世界を壊す。
「……な、に……」
息がうまくできない。
でも、分かってしまう。
これは初めての感覚じゃない。
ずっと前に知っていたものだ。
ずっと遠い昔、自分のものだった力だ。
胸の中心で、膨大な魔力が渦を巻いている。
それは王国で“ゼロ”だと言われ続けた空虚なんかじゃない。
むしろ逆だ。
封じられていただけだ。
押さえつけられていただけだ。
見えなくされていただけだ。
熱が、光が、記憶が、容赦なく流れ込んでくる。
リリアは震える指で地面を掴んだ。
視界の先で、夜空が近い。
星が、やけに鮮明に見える。
その配置すら、なぜか知っている。
「そんな……ありえない……」
誰かが呟いた。
ありえないのは、自分だ。
十年間、空っぽだと思っていた身体の中に、世界を塗り替えるような奔流が眠っていたなんて。
視界の奥で、最後の鍵が音を立てて外れる。
その瞬間、ひとつの確信が、静かに胸へ落ちた。
——私は。
息を呑む。
まだ全部は戻っていない。
記憶は断片で、感覚は暴風で、理解は遅れてやってくる。
それでも、ひとつだけ分かった。
自分の前世は、ただの誰かじゃない。
途方もない魔法を扱い、世界の深淵に手を伸ばし、そして何かを封じた者。
最強の賢者。
その言葉が、焼けた空気の中に浮かび上がる。
「わたし、は……」
リリアの唇が、震えながらその輪郭をなぞろうとしたところで、再び閃光が弾けた。
白い光が夜の境界を裂き、彼女の周囲で荒れ狂う。
誰も動けなかった。
国境の石碑の前で、追放されたはずの無能令嬢は、まるで星そのものが落ちてきたみたいな光に包まれていた。
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