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第1話:捨てられた夜、雨が心を冷やす
しおりを挟む雨は、ほんの少しだけ遅れて痛みを連れてくる。
最初はただ、コートの肩が重くなるだけ。髪の先から水が落ちるだけ。靴の中がじわじわ冷えるだけ。
それがいつの間にか、胸の奥まで濡らしてくる。呼吸まで冷たくしてくる。
金曜の夜、都内。
ビルの谷間にネオンが滲んで、傘の列が同じ色の水たまりを踏み潰していく。
柊木あかりは、駅前の交差点で立ち止まっていた。
赤信号。歩行者用の青い人が点滅しない、ただの赤。なのに、自分だけが時間から置き去りになったみたいで、足が動かない。
スマホが震える。
画面の名前を見ただけで、心臓が一瞬、ぎゅっと縮む。
――相沢 恒一。
耳に当てる。雨音が遠くなる。街のざわめきが水の膜の向こうに押し込められる。
そして、声。
『あかり。今、大丈夫?』
この後大丈夫じゃなくなる内容のときにだけ、こういう聞き方をする人だ。
相沢はいつも、正しい言葉の箱に感情を丁寧に詰めて渡してくる。崩れないように、角が立たないように。
あかりはその丁寧さを、愛情だと勘違いしてきたのかもしれない。
「……うん。帰り道。どうしたの?」
『あのさ。話がある』
雨が強くなる。信号の赤が濃くなる。
あかりは、喉の奥に小さな石が落ちるのを感じた。
「今?」
『今がいい。いや、今じゃないと……だめだと思う』
その言い方。
逃げ道を塞ぐときの声。
「……うん。聞くよ」
『婚約の件なんだけど』
世界が、そこで一瞬だけ静かになった。
雨粒が落ちる音まで、薄いガラスの向こうに行ったみたいに。
『なかったことにしてくれないかな』
言葉は、軽かった。
軽すぎて、意味がすぐに脳に届かない。届かないまま、体のほうが先に反応してしまう。
「……え?」
『ごめん。驚かせたよね。でも、俺、考えたんだ。いろいろ』
“いろいろ”は便利だ。
何でも入る。真実も、嘘も、逃げも。
あかりは雨の匂いを吸い込んで、肺が冷たくなるのを感じた。
「なかったことって……指輪……式場……」
『式場はキャンセルできる。違約金は俺が――』
「そうじゃなくて」
声が自分のものじゃないみたいに震えた。
自分の言葉なのに、遠い。
「どうして、急に?」
『急じゃない。俺の中では……ずっと引っかかってた』
引っかかってた。
それを今まで、笑って手を繋いでいたの?
あかりの指先が冷える。傘の柄を握る手に力が入って、関節が白くなる。
「……私、何かした?」
『違う。あかりが悪いわけじゃない。ただ……』
ただ、の後に続く言葉が、全部怖い。
ただ、価値観が。
ただ、合わない。
ただ、もっとふさわしい人が。
あかりは口の中が乾いていくのを感じた。雨の中なのに、乾く。
『俺、仕事も忙しくてさ。これから先、家庭のこととか、ちゃんと考えると……』
「ちゃんと考えた結果が、捨てるってこと?」
言ってしまった。
自分の声が鋭くて、耳が痛い。
『捨てるって言い方はやめてよ。そういうの、あかりらしくない』
あかりらしくない。
その一言で、あかりの中の何かが、ぱきっと折れた。
自分を評価されるために作ってきた“あかりらしさ”が、雨に溶けていく。
「……じゃあ、どう言えばいいの」
『婚約破棄。言葉は何でもいいよ。とにかく、このまま進むのは違うと思った』
何でもいいよ。
そんなわけない。
言葉は、心の形なのに。
赤信号が青に変わった。人の流れが動き出す。
あかりだけが動けない。
流れる人たちの肩がぶつかって、謝りもせずに過ぎていく。傘が擦れて、雨が跳ねる。
「……私のこと、好きじゃなくなったってこと?」
一番聞きたくない質問を、口が勝手に吐いた。
返事が怖いのに、聞いてしまう。
電話の向こうで、相沢は少し間を置いた。
その間が、答えだった。
『嫌いになったわけじゃないよ。そういうのじゃなくて――』
「じゃあ、何?」
『……もっと、いい形があると思うんだ』
あかりの視界が、じわっと滲んだ。
雨のせいなのか、涙なのか、もうわからない。
「いい形って……私がいない形でしょ」
『あかり、落ち着いて。感情的にならないで』
感情的。
それは、彼女がいつも避けてきた言葉だった。
怒らない、泣かない、取り乱さない。
ちゃんとした大人でいる。
そうしていれば、嫌われないと思っていた。
なのに、今。
ちゃんとしていたのに、捨てられる。
「……うん。落ち着く。落ち着くから、ちゃんと教えて」
自分でも笑ってしまいそうなほど必死に、声を整える。
相沢が好きな、“あかりらしさ”を貼り直す。
『……俺、他に気になる人がいる』
世界が、音を失った。
雨も、車も、人も、全部。
ただその一言だけが、真空みたいに胸の中で膨らむ。
「……誰」
『言う必要ある?』
「あるよ」
『会社の……同じプロジェクトの人。別に、もうどうこうって話じゃない。けど、俺、気づいたんだ。あかりと一緒にいるのって、安心だけど……』
「安心だけど?」
『……俺が成長しない気がする』
成長しない。
まるで、あかりが足枷みたいに。
あかりは笑いそうになった。笑えないのに。
「私といたら、成長しない?」
『責めてるわけじゃない。俺の問題。俺が、俺の人生を――』
「あなたの人生、ね」
雨が頬を叩く。冷たい。
あかりは喉の奥が熱い。焼けるみたいに。
「私の人生は?」
『……』
沈黙。
相沢は何も言わない。
その沈黙が、あかりの人生の扱いだった。
「……わかった」
言った瞬間、自分の声が異様に落ち着いていて、怖くなる。
人は心が壊れると、こんなふうに静かになるんだろうか。
『ありがとう。あかりは分かってくれると思ってた。さすがだよ』
さすがだよ。
褒め言葉の形をした、最後のナイフ。
「……指輪、どうする?」
『郵送でいい。いや、俺が取りに――』
「郵送でいい」
早く終わらせたかった。
これ以上、声を聞くと、自分が自分じゃなくなる。
『あかり、ほんとに……ごめん』
「うん」
うん、としか言えない。
相沢は何か言い足しそうに息を吸って、それでも言葉を選んだ末に、通話が切れた。
雨の音が一気に戻ってくる。
世界が、何事もなかったみたいに動き出す。
それが、ひどく腹立たしかった。
あかりは歩き出した。
どこへ向かっているかも分からないまま。
家――帰る場所。
でも、帰ったら指輪がある。写真がある。未来の予定が詰まったカレンダーがある。
それが全部、今は凶器に見えた。
駅前を抜ける。人の波に流される。
コンビニの明かりが眩しい。店内の温かさがガラス越しに透けて見える。
でも、入れない。
何か買っても、食べても、きっと味がしない。
路地裏へ曲がった。
わざと、明るい道を避けた。
誰かの視線に触れたくなかった。
泣き顔を見られたくなかった。
――泣く資格があるのかも、分からなかった。
狭い路地は、排気ガスと濡れたコンクリの匂いが混ざっていた。
ゴミ袋が黒い影になって並び、シャッターの落ちた店の看板が雨で鈍く光る。
遠くで救急車のサイレンが鳴って、すぐに消えた。
そのとき。
段ボールが、少しだけ動いた。
あかりは立ち止まる。
心臓が、遅れて跳ねる。
段ボールはコンビニの裏手、壁際に置かれていた。
ガムテープが剥がれかけて、雨を吸ってふやけている。
その隙間から、ふっと金色が覗いた。
目。
猫の目だった。
ただの猫じゃない、みたいに、鋭い。
でも、その奥に、疲れがある。
痩せた体、濡れた毛、骨ばった背中。
雨に打たれているのに、それでも目だけが、静かに燃えていた。
「……猫?」
声がかすれる。
猫はゆっくりと段ボールから出てきた。
小さな足で水たまりを踏み、尻尾を重たそうに揺らす。
あかりの前に立って、まっすぐに見上げた。
そして。
「……まだ、終わってないよ」
あかりは、一歩も動けなかった。
雨が、背中を流れる。
猫の声は、はっきりとした低さで、耳ではなく胸に落ちた。
「……え、今、喋った?」
猫は、ため息みたいに鼻を鳴らす。
その仕草が、妙に人間くさい。
「喋った。驚くの、あと。今は寒い」
「……寒いのは、こっちも、だよ」
あかりは自分でも変な返しだと思った。
でも、猫が喋るという非現実の中で、逆にその返しだけが現実だった。
猫は目を細めた。
金色が、雨の中で柔らかく揺れる。
「きみ、捨てられた顔してる」
「……そう見える?」
「見える。匂いがする。捨てられた匂い。酸っぱい」
「失礼だな……」
あかりは笑いそうになって、喉が詰まった。
笑うと泣くがくっついている。
笑い声の代わりに、息が震えた。
「……婚約、破棄された」
言った途端、胸の奥がぎゅっと締まる。
言葉にすると、現実になる。
現実にしたくなかったのに。
猫は、しばらく黙った。
雨が二人の間を流れる。
猫のひげに水滴がぶら下がって、落ちた。
「そっか」
猫はそれだけ言った。
慰めもしない。怒りもしない。
ただ受け止める。
それが逆に、痛かった。
「私、何が悪かったんだろ」
問いかけは、誰に向けたのか自分でも分からない。
猫は首を傾げる。骨の浮いた細い首。
「悪いかどうか、今決めなくていい」
「……でも、決めないと、苦しい」
「苦しいなら、苦しいって言って」
あかりの喉が、また詰まった。
苦しい。
そんな簡単な言葉を言うのが、こんなに難しいなんて。
「……苦しい」
声が割れた。
雨の中で、涙がどこから流れているか分からない。
でも、頬が熱い。
猫は一歩近づいてきた。
濡れた毛から、野良の匂いと、土の匂いと、それでもどこか甘い体温の匂いがする。
「じゃあ、再起動しよ」
「……さいきどう?」
その単語だけが、場違いに軽い。
ゲームみたいで、アプリみたいで。
でも猫の目は、冗談じゃなかった。
「きみの運命、固まってる。今のままだと、フリーズする」
「……私、アプリじゃないんだけど」
「似たようなもんだよ。心って、脆いから」
猫は前足を上げて、あかりの手を見た。
まるで「触れろ」と言うみたいに。
あかりは躊躇した。
濡れた猫。汚れた毛。野良。
でも、それ以上に――怖かった。
触れたら何かが変わる予感がした。
変わるのが怖い。
でも、今のままも怖い。
「……名前、あるの?」
「まだない」
「じゃあ……」
言葉を探す。
喉の奥が熱くて、うまく声が出ない。
「……ルゥ、ってどう?」
猫は一瞬だけ目を丸くして、それから、ほんの少し口角を上げたように見えた。
猫のくせに。
「いい。軽い。雨に似合う」
「雨に似合う名前って何……」
あかりは小さく笑った。
その笑いは、涙で濡れていて、塩の味がした。
そして、あかりは手を伸ばした。
震える指先で、ルゥの頭に触れる。
濡れた毛は冷たかった。
でも、その下に、生きている熱があった。
弱い熱。消えそうな熱。
だからこそ、手のひらが覚えてしまう熱。
次の瞬間。
街灯の光が、ゆらりと波打った。
水面みたいに。
目の前の空気が、薄く歪む。
雨粒が一瞬、止まったように見えた。
あかりの鼓動が――一拍、遅れる。
「どくん」と鳴るはずの音が、遅れて「どくん」と追いかけてくる。
その間に、世界のどこかで、何かがクリックした。
パソコンの電源を入れたときの、あの小さな音。
ゲームのタイトル画面に戻るときの、あの感覚。
でも、もっと深い場所で鳴る音。
骨の内側に響く音。
ルゥが低く言った。
「――ほら。始まった」
「……なにが」
「運命の再起動」
あかりは目を見開いた。
路地裏の壁が遠ざかる。
ネオンが滲んで、伸びて、引きちぎられる。
雨の匂いが、急に甘く変わる。
排気ガスが消えて、代わりに知らない花の香りが混じる。
「待って、私、帰らないと――」
「帰る場所、いま、ないでしょ」
その言葉は優しくない。
でも、嘘がない。
あかりの胸に刺さって、そのまま奥まで入ってくる。
足元が抜ける。
世界が裏返る。
視界が暗くなる直前、ルゥの金色の瞳だけが、まっすぐにこちらを見ていた。
「大丈夫。猫がいる」
それが最後に聞こえた言葉だった。
次の瞬間、
あかりの世界は、真っ黒に落ちた。
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