社畜OLが異世界転生したら、冷酷騎士団長の最愛になっていた

タマ マコト

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第1話 天蓋と喉の渇き、知らない私の名前

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 最初に感じたのは、甘い匂いだった。花蜜を温めて湯に落としたみたいなやわらかさが鼻の奥をくすぐり、次に、喉の奥が砂利みたいに乾いているのに気づく。口を開いたら、砂がこぼれそうだ。

 まぶたを持ち上げる。視界の上半分を、薄い金色の布が占めている。天蓋。レースが揺れて、光をほどいている。蛍光灯じゃない。オフィスの白い、神経を削る光じゃない。柔らかい、油の炎の色。

 ゆっくりと、頭の中のファイルを開く。深夜オフィス。総務宛の緊急案件。上司の「頼むよ、神谷くんだけが頼りだよ」の笑顔。印刷機の不機嫌な唸り。帰れないチャット。背中に貼りつく椅子の合皮。……それから、胸の重さ。床が斜めになって、視界が端から黒く塗られて――。

 そこで記憶は途切れている。

 手の甲に冷たい感触。シーツは光を呑むような白。指先に触れる縫い目が、やけに丁寧だ。喉が乾いてどうしようもなくて、声にならない音が漏れる。

「…………」

 近くで、水の入ったグラスが小さく打ち鳴らされたみたいな音がした。

「お目覚め、ですか? エレナ様」

 女の子の声。ふわふわと柔らかくて、でも芯がある。私は反射で身体を起こしかけ――肩で重さに負ける。自分の身体が自分のものじゃない違和感に、心拍が早まる。

「……だれ?」

 喉が乾いて、掠れて、言葉が棘だらけに出ていく。自分でも驚くほど高い声だった。慌てて咳き込むと、すぐに唇に水が触れる。冷たさが舌から喉へ、喉から胸へと滑り落ちる。身体が吸い込む音まで聞こえそうだ。

「お水、少しずつ。……よかった。本当に、目を開けてくださって」

 目の前には、栗色の髪をきゅっと低い位置で結んだ女の子がいた。十代の終わりか、二十歳になるかならないか。黒目がちの瞳がこぼれ落ちそうで、でもこちらを観察する距離感は正確だ。エプロンドレス。白い襟のアイロンの跡が新品みたいに鋭い。

 彼女はまた言った。「エレナ様」

 その名前が、私の咽喉の内側で滑って、引っかかった。

「……待って。ごめん、私、神谷……」

 そこで、鏡に視線が吸い寄せられた。天蓋の柱の向こう、木枠に嵌められた鏡。映っているのは、知らない女の子。銀色の髪がさらりと肩を落ち、瞳はガラスみたいに青い。肌は冬のミルク。頬の形は子どもっぽいのに、目の奥の焦げ跡だけが大人だ。

 鏡の女の子が、私の口の動きに合わせて言う。「誰?」

 自分の声なのに、少しだけ、音の輪郭が違う。私は、ゆるく首を横に振った。喉が抗議する。

「申し遅れました。ミレイユと申します。わたしは、あなた様の侍女です。……記憶が、やはり」

 侍女。天蓋。レース。油灯。銀の髪、青い眼。脳内の常識がばらばらに落ちて、床に散らばる。ハイヒールの踵で踏み抜いてしまいそうな危うさ。息を吸って、吐く。社畜の呼吸。ルーティン。パニックに飲まれる前に、現状を箇条書きにする――。

「紙と、ペンを。できれば、インクの濃い、乾きの早いもの」

 ミレイユは一瞬、ぽかんとして、すぐに笑った。笑い方が上手い。笑顔で場を動かす術を知っている笑顔。

「はい。ただいま」

 彼女が動くたび、スカートが小さく波打って、布が擦れる音がやさしい。部屋の隅の小机から、上質の羊皮紙と羽ペンを持ってきて、私の枕元に差し出す。

 羽ペン。冗談みたい。けれど、手に持つと、意外と軽くて指に馴染む。癖で、左手首を撫でる。そこにあるはずの黒いサポーターはない。腱鞘炎の痺れも、薄くなっている。代わりに、細い手首。しなやかな腱。知らない身体。

 私は深呼吸して、紙の上に書く。文字が、自分でも驚くほど整っている。

 ①状況把握
 ②味方
 ③生き延びる

 手が震えて、インクが一滴、ぽたりと落ちる。丸い黒。染みが紙の繊維にじわっと広がるのを眺めていると、不思議と落ち着いた。見える。タスクが、見える。見えるなら、順番をつけられる。

「ミレイユ」

「はい」

「ここはどこ?」

「アルセリア王国、首都フェルマの北側にございます、アイリス伯爵家の館です。……エレナ様、あなた様のおうちです」

 アルセリア。フェルマ。アイリス伯爵家。音が、知らない形で舌に乗る。響きは綺麗だ。意味はついてこない。でも、私の仕事は意味をあとから付けることだ。総務はそうやって世界を回してきた。

「私の名前は……」

「エレナ・アイリス様。お生まれはこの館。ご両親は王都での公務に忙しくて、しばらくお戻りではありません。弟君のリオン様は、二階の東の部屋に。お加減は、落ち着いておられます」

 弟。家族。ここに、私の家族がいる? 胸の奥が不意にざわついた。前世の母のLINE、「たまには帰っておいでよ」の緑色の吹き出しが、遠くで揺れる。

「……ありがとう。あと、私を“エレナ様”って呼ぶのは、今は、そうね……続けて」

 自分でも驚くほど、実務的な声が出た。名乗りを否定して、混乱を増やすことに意味はない。現実のフレームに一度乗る。そのうえで、降りるタイミングを選ぶ。交差点での車線変更と同じ。

「承知いたしました」

 ミレイユは私の顔をじっと見て、小さく息を飲んだ。「目の色が……少し、違う気がします」

「違う?」

「いつもより、強い青。……すみません、無礼を」

「いいの。観察は大事」

 口が勝手に、前職の口調で走る。自分で苦笑して、ミレイユもつられて笑った。笑うと、彼女の頬にえくぼが出る。愛らしい。こういう人はきっと、子どもたちに好かれる。

 扉が、重たい音を立てて開いた。金具が深く噛み合う音。私の背筋が伸びる。空気の密度が少し変わる。冷たい金属を、舌で触ったみたいな感じ。

 黒が、入ってきた。

 黒い軍服。装飾は最小限。銀の紋章が静かに光る。長身。歩くたびに、鞘の金具が澄んだ音を一つ置いていく。色の薄い灰の髪。目は、冬の湖。よく凍って、底が深い。

 彼は、私を見るなり、表情を変えなかった。変えないことを選んだ顔。けれど一歩、私のベッドのそばに寄って、そこでほんのわずかに、肩の力が落ちた。

「目が覚めたか、エレナ」

 声が低い。乾いているのに、芯が温かい。喉の奥で、煙がゆらぐ。

「……あなたは?」

「王国騎士団長、ルーカス・グレイヴ。君の護衛を預かっている」

 君の。護衛。単語が、蜂蜜に沈んだスプーンみたいに重い。私は身を起こそうとして、肩を支えられた。掌が熱い。軍手のような固さじゃない、生身の体温。

「無茶をするな」

 言い方が、棘。だけど、棘の中に棉が詰まってる。私の喉が、少しだけ楽になる。言われ慣れている言葉だ。上司の「無茶はするな」とは全然違う。これは、ちゃんと見て言っている声。

「大丈夫。起き上がるくらい、仕事のうち」

 仕事、という単語に、彼は短く眉を動かした。すぐに戻る。表情筋は訓練されている。でも、無ではない。彼の無表情は空っぽではなく、満ちすぎて蓋をしているのだと思う。

「記憶は?」

「少し。断片が、飛んでる。名前や場所は、ミレイユから聞いた。……あなたのことは、今、覚えた」

 ルーカス・グレイヴ。その音が、舌の上に剣の冷たさで乗る。私は彼の名を心の中で三回なぞる。輪郭が固定される。

 ルーカスは視線を落とし、私の手元の紙に気づいた。書いたばかりのToDoが露わになる。恥ずかしい。けれど、隠す理由もない。

「①状況把握②味方③生き延びる」

 彼は、ほんの少し、口元を動かした。笑った、のかもしれない。霜が解ける音が、一瞬だけした気がする。

「順当だ」

「でしょ」

 会話が、氷の上を滑るスケートみたいに慎重に進む。滑り落ちないように、でも止まらないように。彼の隣に立つに足る言葉の足取りを探す。

「君の容体は医師が診た。安静だ。屋敷の外には出ないこと。何かあれば、ミレイユか俺を呼べ」

「忙しいんじゃないの?」

「俺は忙しいが、呼べ」

 即答。ほとんど睫毛が動かない。私は小さく笑った。「命令形、似合うね」

「職業柄だ」

「職業病だ」

 ミレイユが、ベッドの足元で目を丸くしているのが見えた。普段のエレナはこんな口を利かないのだろう。ごめん。もう少しで、空気を覚える。

 ルーカスは少し視線を巡らせ、部屋の隅の油灯を一つ、自分の指で少しだけ絞った。炎が小さくなり、光が柔らかくなる。彼は説明しない。けれど、眩しさで目が疲れるのを見ていたのだと分かる。観察。護衛。その手つきが、仕事の達人のそれで、私の胸の奥の社畜センサーが妙に共感してしまう。

「それと」

 彼が少しだけ身を屈める。距離が近い。呼吸の相が触れ合う。

「君を心配している者は多い。だが、噂も多い。扉の向こうの声に耳を貸すな」

 噂。魔女の血。紙の匂い。インクの濃さ。私は頷く。

「分かった。じゃあ、必要な情報は、私が取りに行く」

「……俺に取りに来い」

 噛み合いそうで、ズレる。どちらも正しい。私は目を細める。「交渉しよう。私が集める。あなたが精査する。共同作業」

 彼は短く考え、頷いた。「共同作業」

 その言葉が、私の身体のどこか古傷に薬みたいに染みた。誰かと仕事を分け合うこと。責任を半分こすること。私は、それをずっと欲しかった。夜中に一人で残って、フロアのエアコンの音とだけ一緒にいた私に。

「ルーカス様、エレナ様。お薬の時間です」

 ミレイユが気配を整えて、銀の小皿を差し出す。乾いた草の匂い。私は薬を舌に乗せ、水で流し込む。苦みが喉の奥で、少し懐かしい感情を呼ぶ。風邪薬。深夜のコンビニ。レジの蛍光灯。

 私は紙に視線を落とし、二行、追記する。

 ④体調管理
 ⑤情報ソースの選定(ミレイユ/ルーカス)

 ペン先が乾く音が、小さな雨みたいだ。ルーカスは紙を見て、また口の端をわずかに動かす。彼の微笑は、灯台の灯りみたいに短くて確かだ。長い間隔で、でも戻ってくる。

「休め」

「うん。……行くの?」

「すぐ外にいる」

 彼は振り返らずに答えて、扉へ向かう。一歩、二歩。三歩目で、ほんの少しだけ足を止める。迷いというより、確認のための停止。彼は振り向き、私の目を見る。冬湖の色。底に火が灯っている。

「エレナ」

「なに」

「無茶をするな」

 私は笑う。今度はちゃんと、声を添えて。

「努力します」

 扉が閉まる。重たい音が、部屋の空気を一度だけ震わせて、落ち着く。私は、身体の力を抜いた。天蓋の裾が、小さく呼吸するみたいに揺れる。

「……ミレイユ」

「はい」

「私が倒れたとき、あなた、そばにいた?」

「はい。……怖かったです。でも、戻ってきてくださって、よかった」

 彼女は言葉の最後を少しだけ震わせた。私は手を伸ばし、彼女の手を握る。温かい。指先が少し荒れている。働く人の手。私の知っている温度。

「ありがとう。あなたは、私の大事な味方」

 ミレイユの目が潤んで、すぐ強くなる。「はい。どこまでも」

 私は笑って、ベッドに身を沈めた。枕が体温をゆっくりと吸い取っていく。天井の模様を辿りながら、呼吸を整える。左手は、紙の端に触れている。紙のわずかなざらつきが、現実の輪郭だ。私はそれを指で撫でながら、目を閉じる。

 外の廊下で、革靴が一度だけ床を鳴らした。ルーカスの歩幅。規則正しい。昼と夜の間に置かれたメトロノーム。守られている、という実感が、まだ形にならないまま胸の内側でころころ転がる。甘くて、怖い。怖いけれど、悪くない。

 瞼の裏に、深夜のオフィスの白が一瞬だけ刺さって、それから、油灯のやわらかい金色が塗りつぶす。私は、紙の一行目を心の中でそっと読み上げる。

 ①状況把握。

 心臓が、こくん、と頷いた。次に二行目。

 ②味方。

 ミレイユの手の温度。廊下の革靴の音。天蓋の布の匂い。蜂蜜。新しい名前。古い私。

 ③生き延びる。

 そう。生き延びる。生き延びて、働いて、ちゃんと休む。休むことを、罪にしない。私の中の古い上司が「休むな」と喚く。私はその顔にメモを貼る。「要件定義未完了」。ペン先で、うるさい吹き出しをぐい、と押し出す。

 息を吐く。吸う。吐く。社畜の呼吸。今はもう、私の呼吸。

 目を閉じたまま、私は小さく微笑んだ。天蓋の向こうで、朝がまだ遠いのを感じる。夜の底にいるのに、ここは真っ暗じゃない。油灯の金色と、紙の白と、誰かの歩幅が、私の世界を薄明るくしている。

 異世界最初の夜を、私は震えながら、でも、紙とToDoと少しの体温に包まれて迎える。胸の鼓動が、規則を覚え始めている。リズムに名前をつけるなら、そう――

 「大丈夫、大丈夫、大丈夫」。

 呪文みたいに、胸が唱えている。
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