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第17話 過去との決別
しおりを挟む午前五時。病院の廊下はまだ眠っていて、自販機だけが小さな光をこぼしていた。面会時間前。看護師に「三分だけ」と頼み、母の病室に入る。モニターは静かで、呼吸の波が一定に上下している。額の汗をティッシュでそっと拭って、低い声で話しかける。
「お母さん。朝になったよ。今日は終わらせに来た」
返事はない。でも、言葉は耳のどこかに届くと信じている。ベッド脇に小さな封筒を置く。中身は、偽造写真の原版と照合レポートのコピー、それから私と真白のツーショットを一枚。
「嘘は返した。残すのは、これだけ」
病室を出て廊下のベンチに座ると、久遠からメッセージが入った。
『E、午前中に“善行リスト”を投下。便箋「桜・月・雨」で正当化を図るつもり』 『翻訳で潰す。善は善、免罪符は免罪符』 『了解。——君の“過去”はどうする』 『今日、切る』
返信してスマホを伏せる。背中の真ん中に糸を意識して、4吸って7止めて8吐く。落ち着きは道具だ。道具は使い方で結果が変わる。
別邸に戻ると、玄関に西園寺が立っていた。朝の光が廊下を細長く切り、埃がふわっと舞う。
「小書斎、準備できています」 「ありがとう」
扉を開ける。祖父の机。底板は昨日のまま閉じてある。きれいな家具だ。けど、その“きれい”に甘えて私たちは長く目を逸らしてきた。机の天板に手袋を置くと、真白が背後から顔を出した。パーカー、素足、寝癖のまま。
「起きちゃった」 「起こした」 「今日は?」 「終わらせる」 真白は頷いて、私の隣に並ぶ。短い沈黙。彼女が小さな声で言った。 「“王国”やめるって言ってたやつ、かっこよかった」 「やめたら、楽になった」 「じゃあ、次は“家の神話”やめよう」 「そうだね」
久遠が扉の外から一歩だけ入ってきた。黒のスーツ、節電モードの目。彼は工具箱を置いたが、蓋は開けない。
「第三者の立会い、準備済み。録画は二系統。——君が“開ける”か」 「開けない」
三人の視線がこちらに来る。私は首を横に振った。
「わたしの手で開けたら、たぶん、過去の手つきが混ざる。今日は“切り分ける”日。開けるのは、第三者」 西園寺が静かに頷く。「承知しました」。電話で呼んでおいた弁護士と外部のアーキビストが入ってくる。白手袋、無駄がない動き。底板が持ち上がる音は、想像よりも軽かった。
中から出てきたのは、古い便箋の束、メモリ、封筒、そして家紋入りの小箱。私は一歩だけ下がる。手は出さない。アーキビストが光の角度を調整し、写真を切るように撮っていく。弁護士がチェーン・オブ・カストディの記録を書き付ける。久遠が時計を見て、短く言う。
「Eの“善行リスト”、公開。院への寄付、奨学、地域行事。予想通り」 「翻訳する」
私はスマホに短いテキストを打った。
『“善い支出”は確かに善い。だから残す。だが、善い支出は悪い支出の免罪符にはならない。帳簿上は隣に並ぶが、倫理上は混ざらない。混ぜない方法が“統制”だ』
投稿。すぐに賛否が泡立つ。久遠が横目でタイムラインを見て、「効いてる」とだけ言った。言葉は少ないほうが、速度が出る。
「——これを、どうする?」 アーキビストが机の中身を指す。祖父の筆跡、父の走り書き、Eの黒いインク。私は一呼吸置いて答えた。
「全部、外に出す。白崎家の管理を外して、公共のアーカイブに移す。閲覧は申請制。アクセスログは公開。家の鍵じゃなく、制度の鍵で管理する」 「寄贈という形で?」 「寄贈。名義は“白崎家”じゃない。個人の“白崎莉桜”でもない。“白紙の街”って任意団体をつくる。運営は第三者。資金はクラウドで透明化する」
真白がこちらを見た。「かっこいい。けど、名前ださい」
「わざと。目立たないほうが長持ちする」
「“白紙”は好き。やり直せるから」
弁護士が小さく咳払いした。「ご家族の了承は」
「父には連絡する。反対なら理由を公開する。——隠す理由がもう、家にはない」
ちょうどそのとき、父から電話。スピーカーにする。
「——小書斎か」 「うん。底板、中身は第三者に渡す。家の手から離す」 短い沈黙。父は息を整えてから言った。 「やれ」 それだけ。通話は切れた。言葉の短さが、背中を押すことがある。今日はそれだ。
「次。机じたい」 私は天板を撫でる。木目の筋が指に伝わる。幼いころ、ここでひらがなを練習したことを思い出す。母が「えらいね」と笑った声。えらい、は危険なワード。けど、あの時の“えらい”は単なる親の甘さで、刃を鈍らせる種類じゃなかった。
「この机、どうする」 真白が聞く。私は迷わず答えた。
「ここから出す。博物館に寄託する。『底板という文化の教材』として展示してもらう。説明板は、私が書く。“家具は道具。道具は使い方で善にも悪にもなる。底板は隠すためじゃなく、教えるために使おう”」
西園寺が目だけで笑った。「搬出の手配、すぐに」
「ありがとう」
作業は淡々と進む。私はその間、もうひとつの決別を終わらせる準備をする。廊下の突き当たり、私の旧い部屋。クローゼットの上段に、リボンとコサージュと名札の箱がある。白崎家の行事用に整えられた一式。蓋を開ける。布は綺麗だ。綺麗だけど、呼吸が浅くなる。
「これ、どうする?」 真白が覗き込む。 「寄付。劇団の衣装庫に。——ただしラベルは全部剥がす」 「“白崎家”ラベル、ね」 「うん。ラベルは便利で危険」
西園寺がそっと剥がし方を教える。「布を傷めないように、蒸気を当ててから」
「やり方を知ってるの、さすが」 「昔から“跡を残さない”のが仕事でしたから」
ラベルが剥がれていく。布は布に戻る。名札は名札じゃなく、ただの紙に戻る。戻るのを見届ける行為が、胸の奥を軽くした。
午前十時。Eがメディアに寄稿を出した。「伝統は共同体の背骨」。予想どおりのレトリック。私はキーボードに指を置く。返信は短く。
『背骨は必要。でも背骨を理由に重しを乗せてはいけない。背骨を守るのは筋肉と習慣。筋肉=統制、習慣=透明』
その投稿の終わりに、一行だけ入れる。
『わたしは今日、白崎の“長女”をやめます。法的な手続きは時間がかかるけど、呼び名を自分で決める。これからは“莉桜”でいきます』
打ってから、少しだけ手が震えた。恐怖じゃない。空気が入れ替わる感覚。真白が通知を見て、すぐこちらを向いた。
「“お姉ちゃん”は続けていい?」 「当然」 「よかった」
久遠から「了解」が届く。そのあとで、珍しく長めのメッセージ。
『名を軽くするのは、重い決断。——午後、Eが“家名”で殴るかもしれない。君の父上の署名を持ち出す、とか』 『署名は署名。文脈と手順で読む。耐える』 『守る』
昼。搬出業者が入り、祖父の机に毛布が巻かれていく。玄関で、西園寺が最後に一礼した。「長い勤務でした」。家具に挨拶する人、好きだなと思う。机が運び出されると、部屋が広くなった。空白。空白は怖いときもあるけど、今日はきれいだった。
午後は手続きのラッシュ。寄贈書類、任意団体の設立書、アクセスログの仕様、開示のルール。事務は呼吸を整える。数字は背骨を支える筋肉。私に向いている仕事だ。
途中、父からテキスト。「机、出たな」。
「うん。展示に回す」
「見に行く」
一拍置いてもう一行。「母さんが起きた。笑った」
その行を見て、ようやく顔が緩んだ。私の中の“家”は、完全には死んでいない。死なせない。形だけ変える。
夕方。小書斎は空っぽで、床に陽が四角に落ちていた。真白がその中に体育座りして、上を見ている。
「変なの。家具がないと、音がよく響く」 「響く音は、嘘が混ざりにくい」 「うん」 彼女が立ち上がって、私の横に来る。「お姉ちゃん、名前、ほんとに“莉桜”だけでいいの?」 「いい。肩書きは便利だけど、呼吸を奪うから」 「わたし、学校の名簿“白崎”のままでもいい?」 「もちろん。選べばいい。選んだ理由を自分で持っていれば、それでいい」 真白は「了解」と言って、背中の真ん中を指でトンと押す。「糸、まだある?」
「ある。結び直した」
夜。録音ブースで短い音声を一本録る。顔は出さない。声ははっきり。
『今日、祖父の机を家から出しました。底板の中身は第三者に寄贈します。家具は道具。道具は教育にもなる。“伝統”は翻訳して運用に落とし、透明にします。——それから、家の神話は今日で終わり。私は“白崎の長女”を降ります。名前は“莉桜”。家は生活。生活は選べる。選べないものは、できるだけ減らす』
保存。公開は夜のニュースの直後に設定して、台所に降りる。西園寺が固めのプリンを二つ。真白がスプーンを二本持ってくる。
「決別パーティ」 「地味」 「地味がいい」
三人でプリンを食べる。塩を少し。コーヒーを一口。甘さと苦さで現実の輪郭が戻る。久遠から「お疲れ」とだけ届く。珍しく絵文字がついていた。びっくりする。返事はあえてテキストだけ。「了解」。
ニュースが終わる時間に合わせて、音声を公開。通知は山になるけど、コメントは閉じる。届くべき人に届けばいい。覆面ブロガーがすぐに長文で補助線を引く。「“家名”と“統制”の切り分け」。翻訳が広がる。広がる音は、静かだ。
夜風を入れた廊下を歩いて、小書斎をもう一度覗く。空の部屋に、私の足音だけが跳ね返る。王国はやっぱり崩れた。でも、響き方は悪くない。音は前よりまっすぐだ。
スマホが震える。非通知。取る。
「——君は、家を捨てた」 Eだ。砂利の声。私は窓枠に手を置く。 「家は捨てない。神話を捨てただけ」 「神話は、団結のために要る」 「団結が神話頼りなら、それは弱い」 「弱い?」 「筋肉で立つ。統制で歩く。透明で呼吸する」 Eは短く笑った。「君は“家名”を捨て、名前を残した。——いつか後悔する」 「後悔したら、また選ぶ」 「軽い」 「重さは、背骨のほうへ戻した」 通話が切れる。窓の外の音が一段下がる。私は、4-7-8で息をする。
部屋に戻ると、真白がノートの余白に小さく書いていた。「白紙の街」。よく見ると、その下に細い線で「生活を描く」とある。
「団体名、これで本当にいくの?」 「いく。ださいから覚えられる」 「ださいの最強理論」 「長持ちするから」
父から最後のメッセージ。「机、写真で見た。——母さん、プリン食べたいと言った」。
『固めの正義、明日持ってく』
返すと、すぐに「頼む」。短い行が、今日いちばん効いた。
眠る前、ノートに書く。
——過去は敵じゃない。過去を神話にするのが敵。神話は便利で、呼吸を奪う。便利を一度外して、道具に直す。家具は展示へ、紙はアーカイブへ、ラベルは蒸気で剥がす。家名は肩から降ろす。残るのは、“選ぶ”という動作だけ。私は“白崎の長女”を降り、“莉桜”として、街の地図を描く側に立つ。Eはきっとまた殴る。でも骨董は骨董。善は善。混ぜない。——決別は、破壊じゃなく、配置換え。
灯りを落としてベッドに横になる。背中の糸を結び直し、4で吸って7止めて8吐く。胸の真ん中に、今日の空白がそのまま入ってくる。空白は怖くない。線を引けるから。線を引けるなら、歩ける。歩けるなら、選べる。選べることが、生きるってことだと思う。目を閉じる。遠くで工事の音が途切れ、街がひとつ息を合わせる。静かな夜。過去はもう、背中のほうに下がった。前は、自由だ。明日、母に固めのプリンを持っていく。生活は続く。告発も続く。でも、私はもう、家の神話では呼吸しない。名前は一つでいい。莉桜。これで行く。
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