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僕らのイノセントゲーム 1

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-空との激突-
「おい!間宮ァどこ見てんだ!」おい、これで何回目だよと、心の中で毒づいた。ギラギラ煌めく炎天下の下クラクラしながら捕球をしていた間宮慎二は野球部顧問兼コーチである年齢は40代ほどで小太りな、野田孝にこれでもかと怒鳴られていた。「はいっ!すみません!」と心にも無い言葉を返しつつ、気持ちをカタツムリのようにゆっくりと切り替えた。俺の守備位置はマウンドなんだと、言いたいがその言葉は言わずにおく。「相変わらず慎二は容量が悪いな」と、俺と同い年で少し細身の木村空がベンチから笑っていた。明らかに校則違反だろと言わんばかりの長い髪をなびかせ、にやけている彼に俺はイライラしつつも彼に目をやっているとまたコーチに怒鳴られることは十分承知しているので、練習に打ち込んだ。なぜ空がベンチで休んでいられるのかと端的に言えば肩を故障しているからである。こんな見た目の彼でも一応、昨年までは俺より上手く投手を担っていた俺が今、投手をやれているのも究極的に言えば彼のおかげとなる。その件もあり俺は少しでも多く球を投げたいのだ。それなのに「おい!捕球もまともに出来ないようじゃライナーもさばけないだろ!」と叱責を受ける。それを空が笑うの繰り返しだった。結局今日俺がした事と言えば捕球練習ぐらいだ。「よし。今日の練習はこれまで!」とコーチが叫べば、仲間達は早々と片付けをしだすが、俺は校舎裏でピッチング練習を続けた。俺は球を投げていると、嫌な事も忘れてしまう体質のようだ。すると空が「そんな投げ方だからいつまでたっても110㎞台しか出せねーんじゃねーのか。」と、嘲笑った。俺は今日の練習の件もありつい「お前は怪我してんだから投げれねーだろ!投げれねー癖に偉そうに言うな!」と、言ってしまった。しかし空は何食わぬ顔で「そんな事言うなら投げてやるぜ。」と、告げ俺のグローブの中からボールを奪うと大きく振りかぶり投げてみせた。怪我しているとは思わせないほど綺麗なフォームだった。手から離れた球はビームレーザーのようにドシンと、音を立て壁に激突した。「見たか慎二俺は怪我してるけどこれくらい出来るんだぜ。」と言い何事も無かったかのようにその場を去った。俺はあまりの衝撃にすぐにはその場から動けずに突っ立っていた。
~空との激突、完~

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