PBJ プロフェッショナルバンディットジン

SHUN

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第4話「真夜中の双六ゲーム」

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ディセは再び殴りかかる。しかしジンは余裕の表情を見せながら避ける。
「よっと!仕掛けが解ればこっちのもんよ!」
「だけど、貴方に決定的な弱点があるわジン…それは、モノを奪う事が出来ない事よ!」
「…!何でその事を!」
「風の噂で聞いたと言うことは、その能力も知っているも同然…銃で簡単に留めを刺そうと思ったけどそんな事もあろうかと私は勘付いて、あえて何も武器は持って行かなかった…そして貴方が仮に骰子を奪っても、骰子(ダイス)の能力を使えなければどうにもならないからねェッ!!」
戸惑っていたジンを横殴りする。
「ぐぅッ!!」
「アーハッハッハッ!!馬鹿みたい!それで、PBでも目指すつもり?笑わせるなァ!!」
ジンは僅かな隙を見せ、バカルディの瓶を右手に持つ。
「なっ…!」
「もう酒なんて十分だ!」
ジンは酒瓶でディセを殴るが、ディセは腕を顔の前に交差させガードする。
「うっ…!!」
「ボディがガラ空きなんだよ!」
ジンはディセを思い切り殴る。
「あああぁぁぁ!!」
ディセは激痛でその場にもがく。
「どうだ。まだやるか?」
ジンはディセの顔色を伺う。
「女だからって手加減しないなんて…許さないわッ!!」
「俺に同等のレベルで攻撃した癖に…よく言うもんだなッ!!」
「…!」
ディセは悲しい表情になる。
「お前も盗族を名乗るなら、きっちり盗族として生きやがれッ!女だの手加減だのなんて下らない事言うなら…盗族なんてやめちまえッ!!」
「うっ…」
ディセは泣き始める。
「私の負けよ…ジン…」
ディセは床に跪き大粒の涙を流しながら、自分の負けを認めた。
「ディセ…お前が盗族になった理由はなんなんだ?盗族になったからには理由があるはずだ。」
ジンは泣いているディセに対して真剣な表情で聞いた。
「今よりもっと綺麗に…美貌を手にしたかったの。」
「美貌を手にするだと?」
「私が誰よりも美貌を手にする事で、男が寄ってくる…たかが美貌に金を出してくる男だって世の中には沢山居るわ。だから私が誰よりも世界で一番美貌な人間になって、男から金を根こそぎ奪って幸せな生活を送りたかった。その願いを叶えるために私は盗族になったの…」
「美貌で金儲け…か。」
「だけどジン、貴方に負けたのならそれももうおしまい…私はその願いのために今まで何人もの女性の盗族を相手にしてきたけど、貴方に初めて負けた今、上には上がいることを知ったわ。」
虚ろになり話すディセにジンはある提案をする。その提案とは、ディセを旅の仲間にさせる事だった。
「ディセ、俺さっき旅をしているって言ったよな。」
「?」
「俺達と、旅をしないか?」
「ジン達と…?」
「そうだ。お前、強かったぜ。」
「今度こそ、上手くいくかしら。」
「大丈夫だ。でもディセ、あんたの人生を変えるのは俺達じゃない。」

「自分自身だ。」

ディセはジンに泣きながら抱きついて離さなかった。そして、騒音を聞きつけたルテロとドゥースが個室の扉を開け、押し寄せてきた。
「ジン!」
「お前、凄まじい騒音を出してどうしたんだ!酒場中がパニックになっているぞ!『あの個室で何が起こっているんだ』って!」
「実はこのディセっていう女、盗族なんだ。」
「えっ!」
ルテロは目を大きくさせ驚く。
「ジン、もう一回言ってみろ!盗族だとっ!?」
ドゥースが大口を開け驚きながら話す。
「ああ。骰子(ダイス)を使う盗族だ。」
「驚いたぜ!」
ドゥースがジンの頭をポンポンと叩きながら笑い出す。
「ディセ、結構手強かったぜ。」
「マジかよ!」

「まさかディセ、貴女が盗族だったなんてね。」
酒場の女性の店長が酒場の外に店員全員を呼び寄せ旅に出るディセ達を見送る。
「ごめんなさい…店長…」
「いいのよ。いつでも私達は待っているから。帰りたくなったらいつでも帰ってきなさい。」
「店長…!」
ディセは店長に抱きつき、別れを惜しむ。

「お別れね。ルテロ。」
ルカはルテロに話す。
「しばしのお別れだけどね。また10年後来るよ!」
ルテロは悲しまずに答えた。
「おっ?ルテロ。お前なんで10年後にまた来るんだ?」
ドゥースはルテロに対し、質問した。
「へへっ!内緒!」
「教えろよ!このケチが!」
ドゥースは微笑みを浮かべながらルテロの頭を撫でた。
「内緒と言ったら内緒!」
ルテロとドゥースのやり取りを見ていたルカも笑い始めた。
「じゃあねルテロ!」
「ルカちゃんも元気でね!」

「ルテロ、ドゥース、ディセ。挨拶したならそろそろ行くぜ。」
「僕はもう大丈夫だよ!」
「酒も飲めて楽しかったぜ!」
「女だから役には立てないかもしれないけど、手助けになれば…!」
「よぉし!じゃあ、出発だ!」
ジンの掛け声で出発しようとした時、酒場の店員全員がディセに向かい手を振る。

「さようなら!ディセ!」

ディセは振り向いて涙を流しながら挨拶をした。

「さようならみんな!さようなら!!」

ディセは大粒の涙を流した。その大粒の涙はまるで真夜中に灯る流星のように美しく輝いている、綺麗な涙だった。

続く
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