悪徳貴族になろうとしたが

石のやっさん

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奴隷と屋敷

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支払った代金は2人合わせて銀貨60枚。

金貨1枚以下なのに驚かされた。

この世界で俺は貴族に産まれたから今迄解らなかった。

生まれによっては人の価値なんて物凄く軽かったんだな。

彼女達の人生はそれぞれ銀貨30枚。

これは前世で言うなら、その気になればサラリーマンでも稼げるお金だ。

日本に生まれたら、どんなドブスだってお金で売られる事は無い。

万が一どんなクズであっても殺してしまえばその状況に応じて高額なお金を払わなければならない。

そう考えたらやはり命の軽い世界だったんだ。

しかし、この二人は俺から見たらやはりとんでもない美女だ..だが...


「ルディウス様、幾ら醜女を選ぶ予定だったとはいえ、あれは無いですな、あれはまるで化け物ではないですか?」

「そうか、歳は喰っているが、そこ迄酷くもないだろう?」

「これは...無礼は承知でお聞きしますが、アマンダ様の外見はどう思われますか?」

「まぁ関係を知っているからな、子供を産んだとは思えないプロポーション、風になびく髪、凛とした顔、クールビューティーと言うのかな美人だと思うが」

「そうですか」

【ルドル】

何と、言われて見れば、ルディウス様は屋敷から殆ど出たことは無い。

しかも、あの屋敷はアマンダ様やその先妻様が嫉妬深く、美少女を雇っていなかった。

そこで育ち、小さい頃から母の愛の無い生活を送っていたから、母性を求めていた節がある。

アマンダ様は主人の事を余り悪く言いたく無いが《決して美人》ではない。

幼馴染のアベル様が求めたのはアマンダ様の《癒しの性格》であって外見では無い。

外見と言うならルディウス様の母上の方が数倍美しかった。

家柄があってもアマンダ様には婚姻の話に置いて良い話は無かった。

だからこそ《待つ》と言う事も出来たのだ。

小さい頃から虐待を受けていたルディウス様なら...性格が良いとは思わないだろう。

その性格の悪いアマンダ様を好きになる、普通なら信じられない事だ。

これでようやく解った。

母親の愛情欲しさに、歪んでしまったのだ。

母親の愛が欲しかったから、アマンダが美化されてしまった。

手に入らない義母の愛、その思慕の想いがアマンダを美女と思う様になった。

元から美しい女と扱って貰えない、そして女として終わってしまったアマンダ。

それを最高の女として扱われたら...ああもなるだろう。

あの憎悪の篭った様な目でルディウスを見ていた面影は全く無い。

それこそ、愛しの恋人を愛おしそうに見つける目だ。


つまり、母性によって歪んだルディウス様には行き遅れの女が美しく見えているのではないか?

もし、あの女達の外見が普通に見えているとしたら...ババ専のブス専、男として余りに不憫だ。

歪むと言うのはこういう事なのか?

美少年に生まれただけに凄く不憫だ。


【ルドルSIDE終わり】



「お買い上げいただき有難うございます、ミルカと申します、これから宜しくお願い致しますご主人様」

「ご主人様、私はレイラです。宜しくお願い致します」

黒髪の方がミルカで銀髪の方がレイラか...前の世界ならとんでもない美女だ。

だが、この世界ではどちらも忌み嫌われる容姿なんだよな。

挨拶も早々に寮についた。

寮と言っても男爵家以上の貴族の寮は一戸建てだ。

本来は偉い者順に大きな屋敷に住むのだが、王族や公爵家や侯爵家の子息、令嬢が今は入っていないからかなり大きな屋敷になる。

本来は更に大きな屋敷もあるが、そこには去年まで一番の家柄の子爵家の子息が住んでいる。

本来は変わるのが正しいが、我が家はそのままで良いとやんわりと交代を断った。

この屋敷でも部屋が8つもあり充分だ。

ちなみに勇者や剣聖は二部屋続きだが通常の寮に入っている。

勇者や剣聖とはいえ、まだ何も手柄を立てて居ないから、貴族より身分は下だ。

ただ、本格的に活躍すれば、将来が約束されているので貴族でも文句が言えない...何とも言えない微妙な立場だ。

それをかさにやりたい放題している。

本当に頭が痛くなる。

「それで、ルディウス様、私達はいったい何をすれば良いのでしょうか?」

「どんな事をすれば良いのでしょうか?」


「この屋敷でメイドとして働いてくれれば良いよ、基本仕事はこの屋敷の掃除と稀に給仕があるだけだ、その他頼み事が無ければゆっくり寛いでいれば良い...まずは、お風呂に入ってゆっくりと休んでくれ、働くのは明日からで良いよ」

「...それだけで良いんですか?」

「重労働はとか、体を売ったりしなくて良いの?」


「まぁ此処には粗暴な人間も居るから、危ない目に遭うかも知れないが、基本は無い」

「やはり何かあるのですね」

「そうですよね」

「ルディウス様はこう言っているが、無いから安心して良い」

「ルドル?」

「いや彼女達は大丈夫でしょう?」

言い切れる位醜いそういう事なのか?

「そうか、ルドルがそう言うなら安心だな」

「それじゃ、さっき言った様にまずはお風呂に入って寛いで、食事が届いたら声を掛けるからね、ただ一応メイド服には着替えておいて」

「「解りました」」


「明日からはルドルについて、メイドとしての言葉使いと振舞いを教わってくれ...以上だ」

一応は此処は《寮》なのだ、使用人の分も含めて食事は学園から用意される、最もその分もしっかり請求される。

風呂は源泉かけ流し、つまり温泉だ。

しかも清掃も週に一度、学園側の使用人がしてくれる。

ベッドメイクは毎日。

そうで無ければ通常の寮住まいが困る。

だから、使用人を連れて来なくても殆ど困らない。

だが、こんな大きな屋敷にルドルと二人で住まうのは少し悲しいから奴隷を買って良かった。

何より女が2人も居るのは華やかで良い。

「そうだ、部屋割を忘れていたな、1階の奥の広い部屋はルドルが使う、2階の部屋は俺の部屋と客間にする予定だ、1階の部屋で奥から3番目と四番目の部屋をそれぞれ1部屋個室として使ってくれ」

「あのルディウス様、それは個室を貰える、そう言う事ですか?」

「本当に個室が貰えるんですか」

「部屋が沢山あるからな...後は食事の時にでも話そう」

「「はい」」


まぁ取り敢えずこんな物で良いだろう。


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