悪徳貴族になろうとしたが

石のやっさん

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油断大敵、強者との出会い

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魔王城の中に入った。

此処に居るのは魔族でも強い者ばかり。

人間でいうなら、王宮騎士団クラスが多く居るのだろう。

だが、別に問題はない。

恐れる事は無い...多分倒す気があれば今の俺なら簡単に倒せる。

だが、そんな事はもうできない。

よく考えてみれば、俺は、死霊王スカルの死霊軍団を倒した。

それなのに、魔王軍は攻撃してこない。

それ所か女まで与えてきている。


俺の前世はクズだったが...《誠意》は重んじていた。

こんな風にされたら、幾ら人類から倒す様に言われても、そう簡単にハイとは言えないな。



魔王城を歩いていると 《ぞくり》という感覚を味わった。

天使になってからこんな感覚は味わった事はない。

体の中を恐怖が走る...明らかに自分では敵わない、そんな存在がいる。


「ちょっと悪いけど、そちらの天使貸してくれない?」


「ひっ...空の女王...私は魔王様に案内...ハァハァ」


「たかがサキュバスクィーンにハイエルフが私に文句があるの?」

どう見ても力関係で、彼女達より上...ん? 空の女王って...四天王の一人、空の女王ラファエルの事か。


何だ此奴は...嘘だろう、此奴と戦って勝てる気がしない。


「がはははっ、少し話がしたいだけだ」

「解りました、トール様、ルディウス様すみません私達は此処で待っていますから」


トール? 四天王の一人、剛腕のトールじゃないか?

仕方ないついていくしか無いだろう。

この二人、恐らく俺と互角以上だ。

もしかして俺は騙されたのか? 何で自分より強い奴が魔王軍に居ない何て思っていたんだ。

勇者を越える存在に成れたからか増長しすぎた。

やばいぞ、これは本当にヤバイ。


「天使様、何もとって食おうとは思わないから安心して下さいな」


「そうそう、俺たちからもてなしだ」


嘘だ、こんな顔をしている奴が本当にもてなしなんてしてくれる筈が無い。

だが、ついていくしか俺には選択は無い。


闘技場に見える所に連れて来られた。


「それで、あんたの目的は何? もしかして私を殺すか連れ帰る為に来たのかしら」

さっき迄と違う。

力が駄々洩れしている。

駄目だ、勝てる気が全くしない。


「天使だからお前と限らんぞ、俺の方かも知れん」


ヤバイ、こっちも強い。


「何の事だ? 俺は何も知らない」


「天使が降臨したという事は、どう考えても、私を連れ戻しに来たんでしょう...貴方の実力じゃ私は殺せそうも無いからね」

「何の事?」


「ふざけないで、この堕天使ラファェルをどうにかしに来たんでしょう」

「いや、案外この武神トールと戦いに来たのであろうが」


「待てっ...堕天使に武神...普通に考えて天使と同格じゃないか?...そんなのが居るのか?」

「「...?」」


話を詳しく聞くと、本当に武神と堕天使だと言う事が解った。


「女神イストリアに仕えて居なくて良いのですか?」


「女神イストリア?女神見習いで天使より能力が低い? まさかあんた彼奴の眷属なの」

「あのガキが今の女神なのか...ご愁傷様、だから勇者があんなに弱いのか」


嘘だろう...一神教の女神がボロクソ言われているんだが、前世の知識が無ければ信じられないぞ。

更に話を進める。

ようやく解った。

ラファエルは今の女神イストリア様より6代以上前の女神に仕えていたが、天界が面白く無いから堕天したそうだ。

その後、人間界の中で4代前の女神に仕えていたトールと出会い、合流して今に至ると。

そして、彼等は自分の身分を隠している。

それは、この世界を楽しく生きる為。

天界から行方をくらまし、死んだ事にして魔王軍の幹部に成りすまし暮らしているそうだ。

「どうしてそんな面倒くさい事をしているんですか?」

「「天界は詰まらないからよ(な)」」


話で聞く限り...平和だけど本当に面白みに欠ける世界の様だ。


「それでね、貴方に魔王を倒されると困るのよ」

「だから、此処で死んでくれ」


今、ルディウス最大の戦いが始まろうとしていた。





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