20 / 104
第20話 王と...
しおりを挟む国王エルド六世に呼び出された。
不味い事になったな。
『『無能』の筈の俺が騎士に勝てる』
この位ならまだ何とか誤魔化せたのかも知れない。
だが、今回はかなり不味いな。
無能の筈の俺が『剣聖である大河を倒した』 これは普通に考えてあり得ないだろう。
まだ、大河は強くなって無い。
そう言う言い訳も、大河が騎士を倒している事から通用しない。
本来なら悩むべきなのだろうが…
どうでも良いな。
別に『異世界で得た能力』使って倒した訳じゃない!
普通に話せば良いだけじゃ無いか。
俺には、常時発動の3つの能力がある。
絶対とまでは言えないがきっと、どうにかなるだろう。
俺は気楽に考え、謁見室へと向かった。
◆◆◆
凄いな! お城は何処も凄く豪華だが、その中でも此処は別格だ。
煌めくシャンデリアにフカフカの絨毯、正に豪華絢爛。
エルド六世を前に、俺の傍の騎士が跪いた。
俺も併せて跪いた。
仕方が無い挨拶位はするか。
「エルド六世様には」
どう挨拶すればよいんだろうか?
異世界の挨拶なんて解らないな。
「よいよい、気にする必要は無い、異世界から来たのじゃこちらの作法を知らんでも仕方ない。そう思わぬか?マリン」
「はい、お父さま」
「そう言って頂けると助かります」
思ったよりきさくだな。
「更に言うなら跪まずかないでも良いぞ」
「畏まりました」
そう伝えると俺は跪くのを止めて立った。
無理やり平和な日本から連れてきて、役に立たないと思っていた俺を僅かなお金で追い出そうとした…そう考えたら王とはいえ俺が崇める意味は無い。
それにこれはエルド六世の本心ではなく、常時発動の能力のおかげだ。
そうで無ければ、大切な剣聖大河に大怪我をさせた俺にこんな対応は可笑しい。
「率直に聞く、何故お主は『無能』なのに剣聖である大河殿を倒せたのじゃ」
聞かれると思っていた。
「それは俺が、剣を習っていたからです」
「確かにそうであろうが、お主以外にも剣を習っていた者も居たと聞くが、召喚された当初は騎士にも敵わなかったと聞く。何故、お主だけが騎士に通用しあまつさえ剣聖すら倒し得たのだ…そこを教えてくれ!」
本当の事は絶対に教えられない。
手厚くされていたなら、譲歩するが、俺を追い出そうとする存在に真面に答える必要は無い。
「これは我が家の秘伝です。そして私はこの城を追い出される身、おいそれと教える訳にはいきません」
顔が引きつっている。
恐らく、常時発動の能力が無ければ怒鳴られるのだろう。
凄いな、3人から得た能力。
「ならば取引といこう、対価を払おうでは無いか」
「それならば、城を出ていく際に平民が1年暮らせる金額と身分証明をくれませんか? あと当人が納得したなら私と仲間になる事の許可を下さい!」
恐らくこの位が限界だろう、前の部分は兎も角、後半部分は厳しいかも知れないな。
「仲間とは『大魔道』の少女の事か?」
「そうです!ただ言わして頂ければ、私達はそちらの勝手で召喚されたのですから、本来は自由な筈です。この城の人間に『誘拐』はこの世界でも犯罪だと聞きました。お金は『誘拐』に対する謝罪金です。本来なら、元の世界に責任をもって送り届けるのが正しい謝罪の筈です! それさえ出来ないのですから、慰謝料に、好きな者同士仲間を組む権利位はあると思いますが、如何でしょうか? それに先日、勇者である大樹が、彼女にどんな事をしようとしたかも、知っていますか? あれは、この国では、犯罪ではないのでしょうか?」
俺には常時発動の能力がある。
嘘は言えないだろうし、誠実な対応になる筈だ。
「確かに聞いておる。だが、お主にいう通り元の世界には戻せぬし、勇者達にはこの世界の為に戦って貰わねばならぬ以上、王であっても強くは言えぬのだ。すまない!その待遇で良いのなら、その話は飲もうと思う。それでお主のその強さの理由を教えてくれるのだな」
「そうですね!こちらの要求が飲まれるのなら、お話ししましょう。王の知っている最強の剣士は誰ですか?」
「何か意味があるのか? 剣聖ジェイクだ、その太刀筋は魔王すら斬ったと聞く、伝説の人物だ。」
「もし、その剣聖ジェイクがその剣技を誰かに伝えて使える人物が居たらどうでしょうか?今回位の事出来ませんか?」
「ジェイクの剣技が使えるなら、かなりの強者だ…まさかお主、剣聖ジェイクと何か縁があるのか?」
「ありません!ですが俺の住んでいる世界にも『剣聖』がおりました。その中でも歴代最強と言われる人物が残した剣技があり、その一部を俺は学び使える。それだけの事です。」
「異世界の剣聖の剣技を使える『それ故に勝てた』そういう事じゃな。」
「そういう事ですね」
これは嘘じゃないからな。
「じゃが、なんでそれはステータスに反映されなかったのじゃ可笑しい!」
それは俺も知らない。
確かに鍛えていた俺のステータスがあそこ迄低いのは可笑しい。
「それは私に聞かれても困ります。ですが剣道経験者や、それなりに鍛えた者も居るのに、その能力は反映されていないようですから…その辺りが何か関係があるのではないですか」
「そうじゃな!それは確かにこの世界の事、お主が解る訳ないか…それで、ちと願いがあるのじゃが」
嫌な予感がする。
「なんでしょうか?」
「今現在、勇者の大樹殿は体を壊しており、剣聖の大河殿はお主と戦って重傷じゃ、果たしてどこまで治るかは解らない!そこでだ1週間後に『大賢者殿』か『聖女殿』と試合をしてくれぬか?」
「そのメリットが俺には何もありません」
「充分な戦力と解れば…他の異世界人と同じ扱いとしよう」
それは可笑しい。
大賢者や聖女と勝ち、それ以上の力があるなら『皆と同じ』は可笑しい。
五職と同じでなければ不平等だ。
「戦う相手は『大賢者の聖人』それに勝利したのに他の皆と一緒は可笑しいでしょう?勝ったら扱いは『勇者と同等』それなら受けましょう!」
「『勇者と同等』それはちと欲張り過ぎでは無いか?」
「俺は既に『剣聖』には勝っています。五大ジョブの二人目に勝てるなら、その能力は勇者と互角と見るのが妥当では無いでしょうか? 違いますか!もし、それで納得されないなら、その後勇者と立ち会って、勝利したらという条件でも構いません」
今の大樹になら、絶対に負けるわけが無い。
「解かった、もしお主が『大賢者』に勝てたら、その望み叶えよう。」
相手は『大賢者 聖人』か?
こうして王エルド六世との話し合いは無事終わった。
45
あなたにおすすめの小説
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる