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第38話 フルールSIDE 逃した魚は大きすぎた。
何故買って貰えたのか本当に解りませんわ。
檻に入って恐らくそのまま買われずに死んでいくそういう筋書きだった筈ですわ。
ルーラン公爵家の『汚れ仕事をする人間』それが私ですわ。
この家の男は腑抜けで、今の当主に到っては血を見ただけで気絶してしまいます。
そんな男に変わって代々、女が公爵家の裏の仕事を担っています。
暗殺から守り、逆に敵対する家の人間は潰して行く、それが私の仕事ですわ。
貴族というのは綺麗ごとでは出来ませんわ。
まして公爵家となれば尚更ですわね。
そのルーラン公爵家の裏の仕事を取り仕切っていたのが私フルールですわ。
黒騎士を率いて沢山の人間を拷問し情報を聞き出し殺しましたわね。
その為、当主、公爵夫人に告ぐ権力を与えられた人間。
ルーラン公爵家の裏の仕事を取り仕切るとトップ。
その者だけが名乗れる称号それが『黒薔薇』なのですわ。
その存在は一般人にこそ知られていませんが、王族から貴族まで権力者においては、知らない者はいません。
ルーラン公爵家の恐怖の象徴。
『拷問狂』『殺戮を楽しむ狂った女』『狂人フルール』これが私なのですわ。
◆◆◆
奴隷商に言われましたわ。
「お前は売られる事は無い。今迄の自分の立場を思えば解かるだろう? 死ぬまで此処の檻で過ごすだけだ」
貴族だった私が、いきなり奴隷…しかも一番底辺の『廃棄奴隷』
廃棄奴隷だから操を守れているのが唯一の救いですわね。
貴族だから『死刑には出来ない』そこで考えたのが『奴隷に落として生涯誰にも購入させない』そんな所ですか。
他国の王家と姉の婚姻が決まり、クリーンにしたいからこんな手の込んだ事をする。
本当に馬鹿ですわ。
『最後に一回手を汚せば禍根を断てるのに、それすらしない馬鹿』
それがどれだけ残酷なのかを知らないのでしょうね。
情けがあるのであれば、殺してくれれば良いのですわ。
『今の私の状態は死ぬ事以上に屈辱ですわ』
殺してあげる。
その優しさも必要だと思いますわ。
惨めな人生より、潔い死。
気高く生きる者なら望む事ですわ。
『死』によって救われる人生もある。
そんな事も知らない馬鹿な家族。
『復讐しないのか』
誰かに聞かれたら『しないですわね』そう答えますわ。
だってルーラン家は多分終わりますから。
『裏から守ってくれる存在『黒薔薇』と『黒騎士』を捨てた』のです。
どうやって外敵から身を守るのでしょうか?
他国の王族が態々なんで、他国の貴族から妻を娶ろうとしたか。
その理由を知るべきですわ。
その理由は『私達』です。
『あの国の第三王子が欲しかったのは、そう私、黒薔薇なのですわ』
だってそうじゃないですか?
次期王位継承権がかかった王位争奪戦。
『自分を守りつつ、敵を殺せる手駒が欲しい』
そう考えるのは当たり前の事ですわ。
幾ら表向きは清廉潔白なあの国でも裏ではドロドロしています。
だからこそ、『黒薔薇』を欲したのです。
流石に薄汚れた『黒薔薇』を妻にする事は出来ないから、その身内を妻にする事で『黒薔薇』や『黒騎士』を手にする。
多分、将来的には、他の王子の暗殺まで考えていた筈ですわ。
そうでなければ、態々他国の貴族を妻に娶るなど、ご自身が不利になる事をする筈がありませんわよね。
今頃お姉さまは青い顔をしているに違いません。
そしてお父様もそうでしょう。
だって『王子から守って欲しい』そう言われても『黒薔薇』『黒騎士』はもう、いないのですから。
普通のルーラン家の騎士じゃ無理な話です。
汚れ仕事の経験も無い騎士など、暴力には役に立ちませんわ。
だから、私は絶望なんて実はしていませんでしたわ。
困り果てたルーラン家が私を買い戻しにくる。
そういう確証がありましたからね。
その時には『大きく吹っ掛けてやろう』そう思っていましたわ。
ですが…残念でしたわね。
私『買われてしまいましたから』
『黒薔薇』が仕えるのはただ一人だけですわ。
その1人を守る為には『全てを犠牲にする』それが黒薔薇ですわ。
その忠誠は既にルーラン家にはありません。
この世にただ一人『理人様』にだけ注がれます。
黒薔薇にとって『守る人』の価値は全てに優先します。
そこには『血の繋がり』なんて物も意味はありませんわ。
理人様が殺せと言うのであれば家族だって喜んで殺します。
理人様に言われなくても理人様の敵だと思えば『殺す』
最早、私の全ては『理人』様の物です。
話しはそれましたね。
私が何もしなくてもルーラン家は、もう終わりですわね。
第三王子は、第一王子、第二王子の暗殺をして欲しいからルーラン家から妻を娶った。
なのに…その力は今のルーラン家には無い。
そして自身を守る事も出来ない。
『最悪のパターンはお姉様と王子が暗殺される』
『助かるパターンはどちらかの派閥に入り負けを認める』
そんな事態になった原因のお姉さまはきっと死ぬまで針のむしろですわね。
そして『怖さ』を捨てたルーラン家はそのうち食い物にされていきますわ。
まぁ、もう縁が切れ存在ですから…関係ない話ですわ。
理人様に敵対するような存在がいるなら、暗殺を視野にいれて、まずはエルド六世とマリン王女から、→理人様に都合の良い、好条件を引き出す。
この辺りからコツコツとはじめますかね。
◆◆◆
「そんな、フルール様を売ってしまっただと! 売らないで生涯飼い殺す約束だったではないか?」
ルーラン家執事長セバス事私は、顔を真っ青にして震えていた。
ルーラン公爵より買い戻す様に言われて奴隷商に来たら、もう売られた後だったのだ。
『誰にも売られない筈の奴隷が売られていた』
「それは約束が違うでは無いか! 売らない約束で別に金も払った筈だ」
「確かに受け取りましたよ! 私も『破棄奴隷』の場所に置いて一般人に目が届かない場所に置いていました。しかもはっきりと犯罪奴隷と先方に伝えて『貴族に嫌われる』そこまで言いました」
この話なら確かに普通は買われる事はない。
だが売れてしまったのは紛れも無い事実だ。
「だが、理由は兎も角『居ない』じゃないか」
「ハァ~ 私は奴隷商人ですよ、奴隷商の資格は王宮が管理する厳しい資格なんです。『欲しいという買い手がいる奴隷を売らないで死ぬまでおいて置く』なんて奴隷法違反です。下手すれば資格停止になりかねません。今回の件は『売れない様にする』その状況でこちらは、『売れにくい場所に置いて置く』『そして奴隷の評価を下げる』この2つを約束しました。私は廃棄奴隷置き場に置いて一般客が買わない様にしていました。まぁ見ての通り臭いし汚い場所ですから『此処にはお客がまず来ません』その上で『みすぼらしい服を与えて、風呂にも余り入れずに置きました』そしてお客には『犯罪奴隷の説明』『貴族に嫌われる』その『リスク説明』をしていたのです。約束は果たしていると思いますが如何でしょうか』
「そんな…」
そこまでしていて売れてしまったのか?
だから、私はこの件に反対したのだ。
どうにかしたいのなら子爵家にでも縁組して外に出せばそれで終わった筈だ。
「こちらからしたら『売れない様にはしていました』そちらが失敗したのではないですか?としか言えませんな」
「買った人間を教えて貰えぬか」
「それは出来ません、私は『奴隷商』に御座います」
「だが、それは奴隷法違反にはならないだろう」
そう言って私は金貨3枚こっそりと渡しました。
「このお金は別の謝礼と言う事で受け取りましょう。ですが、もうフルール様を取り戻すのは無理ですな。引き取った相手は理人様。異世界人です。そして情報では『王のお気に入りで聖女パーティーのメンバー』です」
「それでは、もうどうしようも無いでは無いか」
「そうです。もう諦めて関わらない事です。私はもうルーラン家には関わりません」
「何故だ!」
理に目ざとい商人が公爵家を切るというのか。
「私とて異世界人は怖い。あの様子では、あの異世界人はかなりフルール様を気に入っていられた。ルーラン家よりそちらの方が怖いのです。王や王女に気にいられた異世界人、その怖さは貴方でも知っているでしょう?」
本当に困った。
これでは、理人という異世界人に言った所でフルール様は帰ってこない可能性が高い。
返して貰えないと嫁いだルーラ様の立場が不味くなる。
最悪、離婚と言う事すらあり得る。
だが、それ以前に私はどうなるのだろうか?
『関わらない』奴隷商の言葉が頭に響く。
フルール様が戻らない…それを伝えたら、相当の罰が与えられる。
場合によっては殺されるかも知れない。
ルーラン家に帰らずに逃げ出した方が良い…絶対に逃げるべきだ。
幸いなことに私には家族は居ない。
フルール様を買い戻す際に交渉が拗れた場合に備え、多めの金貨30枚も渡された。
これがあれば、当座の生活には困らない。
良い職場だったが凄く残念だ。
私はそのまま帝国に逃げる事を決めた。
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