71 / 104
第71話 テラス教団 初めての布教
俺達は、皆で話し合った結果『北の大地』を目指す事にした。
此の世界はほぼ一神教で『女神教』が主流だが、ここから先には、違う民族が住んでおり、女神イシュタスを信仰しない者も多くいる。
特にルブランド帝国を境に北に進めば他の神を信仰する民族が居る。
一旦、その境界にあたる北の大地まで進み、そこからアレフロードに再度向かいながら布教していく。
それが俺の考えだ。
『宗教とは相手の信仰をこちらに塗り替えていく事だ。この世界の人間がテラスちゃんの敵ならやり方はある』
普通ならこんな汚い事はしない。
だが、長年歴史のある『女神教』に勝つにはこの方法しか思いつかなかった。
多分、これから俺がする事は、卑劣な事だし、歴史的にも悪人扱いされるかも知れない。
だが、相手が完全な敵なら『何をしても良い筈だ』
俺は自分の意見をテラスちゃん、いやテラス様に相談する事にした。
今迄は『テラスちゃん』と呼んだ事もある。
だが、これからは『テラス様』と呼ぶ癖をつけないといけない。
祭主と神なのだから、幾らテラス様が『テラスちゃん』で良いと言ってもけじめをつけないといけない。
俺は1人、身を清めてから夜中に森にいった。
『呼ばれましたか』
やはり、テラス様も何時もとは違う。
『はい』
『それで今回はどの様な話でしょうか?』
『実は…布教をするにあたり『テラス教団は現世利益をうたおう』と思うのです。ただこれには特殊な加護が必要です。また、やり方はかなり汚いやり方になるので、やって良い事かどうかのご相談です』
『それはどの様な方法なのでしょうか?』
俺は自分の考えをテラス様に話した。
『成程、それは日本でやるなら最悪ですね、私は絶対に止めました。ですがこの世界で行うなら何の問題もありません、それで困るのは『全て敵ですから』思う存分やりなさい。そうですね。今回の貴方の布教に必要な加護は大国主命(大黒様の神道での名前)の加護だと思います。その力を授けて貰える様に致しましょう』
大国主命様とは仏教で言う所の大黒天様だ。
そのご利益や加護が貰えるなら、この布教は確実に成功する筈だ。
『有難うございます』
『良いのです。確かに良いやり方とは言えませんが、効果は抜群だと思います』
『お許し頂きありがとうございました』
俺は…森を後にした。
◆◆◆
俺は今後の布教活動について三人に話した。
最初はフルールにだけ話すつもりだったが、これから一緒に頑張っていく仲間だ…全員に話す事にした。
「こんな感じで布教をしていこうと思う」
「流石は理人様ですわ。それなら確実に成功しますわ。やはり最初はスラムからスタートですの?」
「そうだな、最初はスラムから、そして商人がターゲットだ。そこからは様子見だな」
「理人は凄い事考えるのね、それなら確実に上手くいく、かなり悪どいけどね」
「私もそれで良いと思います、失敗は無いとおもいます」
「三人とも賛成してくれて嬉しい。正直言えば、2人が賛成してくれると思わなかった。特に綾子には絶対に反対されると思っていたんだ」
「私は反対何かしないよ!だって私の為に頑張ってくれるんだもん」
「綾子違うわ、私の為よ」
「2人とも見苦しいですわ。3人の為ですわ」
全員が賛成してくれると思わなかった。
この布教は絶対にうまくいく。
俺は確証した。
◆◆ 1か月後 北の大地◆◆
「ようやく着いたな」
「それでどうしますの?ルブランド帝国からやりますの?」
「そうだな、そこから行くか。 今日は休んで明日からスタートしよう。まずは俺が1人でやってみる。それで上手く行きそうなら1週間後から皆でやろう。 この1週間は3人で教団に出来そうな場所を探して欲しい。資金は幾らでもある。フルールお願いできるかな」
「任されましたわ」
「私達はフルールと一緒に活動すれば良いのね」
「解かった、私も頑張る」
「頼んだよ。それじゃ今日は、レストランで食事して景色の良いホテルにでも泊まるか」
「良いですわね。私温泉付きが良いですわ」
「そうね、良いわねそれ」
「和食が食べたいから旅館が良いです」
すっかり3人とも『日本の生活』を楽しんでいる。
だが、これは布教をするという義務に対するご利益だ。
しっかりと頑張らなくてはいけない。
◆◆◆
朝がきた。
今日から布教の始まりだ。
「行ってきます」
「「「行ってらっしゃい」」」
さぁ今日から布教のスタートだ。
向かうはこの国のスラム、それも貧民街だ。
「貴方は神を信じますか?」
「あんた司祭ですか!どの神か知らんが誰が信じるか!」
「それは何故ですか?」
「神が居るなら、何故俺たちはこんな貧しいんだーーっ。妻は貧しさの為病気で死んだ!娘が娼婦になって俺は...俺は…」
「それは女神イシュタスが悪いのです。正しい神を信じれば救われます!貴方は神テラス様を信じますか!」
「どうせお前達も綺麗ごとばかりで、助けてくれねーんだろう…」
「いいえ、テラス様は必ず貴方達を救います!女神イシュタスは邪神なのです。だから貧乏な恵まれない人が生まれるのです」
「はんっ!それじゃお前達はどうやって俺を救うって言うんだ。もし娘が娼婦なんかしない未来があるならよ、幾らでも信じてやるよ…綺麗ごとばかり言うな!」
これなら絶対上手くいく。
「邪神イシュタスこそが、魔王や邪神を越える悪なのです…唯一無二の神はテラス様なのです。あるかどうか解らない『来世』の事ばかり言ってごまかす『女神教』も本当は詐欺であり敵なのです」
「何が言いたいんだ」
「良いですか? 貴方の娘が体を売らなければ生きていけない。それなのにシスターは清らかなまま生きています。そんな人間信じちゃ駄目です。 まずは貴方の娘をそんな辛い現実から救い出す。それが正しいのです。テラス教は貴方達を絶対に救います」
「なんだ!それじゃアンタたちを信じれば、助けてくれるのか?」
「はい、テラス様は来世の保証は勿論、現世利益も保証するのです!貴方達が救いを求めるなら必ずやテラス様は救いの手を伸ばしますよ」
「なら、救ってみろよ…もし救ってくれたら…何でもするし…悪魔だって信仰してやる」
「貴方はたった今救われました。もうこの先の事は心配する必要はありません」
「何も変わらないじゃーねーか」
俺は金貨10枚を渡した。
「金貨だと!なっ、あんた…」
「テラス様を信じ入信するなら、支度金として金貨10枚差し上げます。そして貴方が誰か1人入信者を連れてきたらその都度金貨1枚差し上げます。 体を売るより健全で、お金になる筈です。金貨10枚これで貴方は救われませんか? まだ、直ぐに全部は出来ませんが、やがて神社、まぁ教会みたいな物を作ります。そこでは入信者には他にも沢山支援するつもりです。具体的には教団としてスタートしたら1日金貨1枚の仕事を斡旋します。入信してテラス様を信じるだけで、その金貨もこれからの生活も救われるのです。貴方はテラス様を『信じますか』」
この世界は貧しい者が多い。
汚いと言われるかも知れないが『お金を与える』だけで救える存在ばかりだ。
「今迄俺の事を助けようとしてくれた人は居なかった…本当にあんたは、こんな大金を見知らぬ俺にくれるのか?」
「はい、現世利益、救済が『テラス教団』の使命です。さぁどうですか?貴方はテラス様を信じますか!」
「信じる…これなら娘も救われる」
「それでは神社が出来たら、通って来て下さい。それじゃこの氏子名簿に名前を書いて下さい」
「解った…疑って済まなかったな」
まずは1人信者を獲得出来た。
此処から、布教のスタートだ。
あなたにおすすめの小説
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。