【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん

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第71話 テラス教団 初めての布教

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俺達は、皆で話し合った結果『北の大地』を目指す事にした。

此の世界はほぼ一神教で『女神教』が主流だが、ここから先には、違う民族が住んでおり、女神イシュタスを信仰しない者も多くいる。

特にルブランド帝国を境に北に進めば他の神を信仰する民族が居る。

一旦、その境界にあたる北の大地まで進み、そこからアレフロードに再度向かいながら布教していく。

それが俺の考えだ。

『宗教とは相手の信仰をこちらに塗り替えていく事だ。この世界の人間がテラスちゃんの敵ならやり方はある』

普通ならこんな汚い事はしない。

だが、長年歴史のある『女神教』に勝つにはこの方法しか思いつかなかった。

多分、これから俺がする事は、卑劣な事だし、歴史的にも悪人扱いされるかも知れない。

だが、相手が完全な敵なら『何をしても良い筈だ』

俺は自分の意見をテラスちゃん、いやテラス様に相談する事にした。

今迄は『テラスちゃん』と呼んだ事もある。

だが、これからは『テラス様』と呼ぶ癖をつけないといけない。

祭主と神なのだから、幾らテラス様が『テラスちゃん』で良いと言ってもけじめをつけないといけない。

俺は1人、身を清めてから夜中に森にいった。

『呼ばれましたか』

やはり、テラス様も何時もとは違う。

『はい』

『それで今回はどの様な話でしょうか?』

『実は…布教をするにあたり『テラス教団は現世利益をうたおう』と思うのです。ただこれには特殊な加護が必要です。また、やり方はかなり汚いやり方になるので、やって良い事かどうかのご相談です』

『それはどの様な方法なのでしょうか?』

俺は自分の考えをテラス様に話した。

『成程、それは日本でやるなら最悪ですね、私は絶対に止めました。ですがこの世界で行うなら何の問題もありません、それで困るのは『全て敵ですから』思う存分やりなさい。そうですね。今回の貴方の布教に必要な加護は大国主命(大黒様の神道での名前)の加護だと思います。その力を授けて貰える様に致しましょう』

大国主命様とは仏教で言う所の大黒天様だ。

そのご利益や加護が貰えるなら、この布教は確実に成功する筈だ。

『有難うございます』

『良いのです。確かに良いやり方とは言えませんが、効果は抜群だと思います』

『お許し頂きありがとうございました』

俺は…森を後にした。

◆◆◆

俺は今後の布教活動について三人に話した。

最初はフルールにだけ話すつもりだったが、これから一緒に頑張っていく仲間だ…全員に話す事にした。

「こんな感じで布教をしていこうと思う」

「流石は理人様ですわ。それなら確実に成功しますわ。やはり最初はスラムからスタートですの?」

「そうだな、最初はスラムから、そして商人がターゲットだ。そこからは様子見だな」

「理人は凄い事考えるのね、それなら確実に上手くいく、かなり悪どいけどね」

「私もそれで良いと思います、失敗は無いとおもいます」

「三人とも賛成してくれて嬉しい。正直言えば、2人が賛成してくれると思わなかった。特に綾子には絶対に反対されると思っていたんだ」

「私は反対何かしないよ!だって私の為に頑張ってくれるんだもん」

「綾子違うわ、私の為よ」

「2人とも見苦しいですわ。3人の為ですわ」

全員が賛成してくれると思わなかった。

この布教は絶対にうまくいく。

俺は確証した。



◆◆ 1か月後 北の大地◆◆

「ようやく着いたな」

「それでどうしますの?ルブランド帝国からやりますの?」

「そうだな、そこから行くか。 今日は休んで明日からスタートしよう。まずは俺が1人でやってみる。それで上手く行きそうなら1週間後から皆でやろう。 この1週間は3人で教団に出来そうな場所を探して欲しい。資金は幾らでもある。フルールお願いできるかな」

「任されましたわ」

「私達はフルールと一緒に活動すれば良いのね」

「解かった、私も頑張る」

「頼んだよ。それじゃ今日は、レストランで食事して景色の良いホテルにでも泊まるか」

「良いですわね。私温泉付きが良いですわ」

「そうね、良いわねそれ」

「和食が食べたいから旅館が良いです」

すっかり3人とも『日本の生活』を楽しんでいる。

だが、これは布教をするという義務に対するご利益だ。

しっかりと頑張らなくてはいけない。


◆◆◆

朝がきた。

今日から布教の始まりだ。

「行ってきます」

「「「行ってらっしゃい」」」

さぁ今日から布教のスタートだ。

向かうはこの国のスラム、それも貧民街だ。

「貴方は神を信じますか?」

「あんた司祭ですか!どの神か知らんが誰が信じるか!」

「それは何故ですか?」

「神が居るなら、何故俺たちはこんな貧しいんだーーっ。妻は貧しさの為病気で死んだ!娘が娼婦になって俺は...俺は…」

「それは女神イシュタスが悪いのです。正しい神を信じれば救われます!貴方は神テラス様を信じますか!」

「どうせお前達も綺麗ごとばかりで、助けてくれねーんだろう…」

「いいえ、テラス様は必ず貴方達を救います!女神イシュタスは邪神なのです。だから貧乏な恵まれない人が生まれるのです」

「はんっ!それじゃお前達はどうやって俺を救うって言うんだ。もし娘が娼婦なんかしない未来があるならよ、幾らでも信じてやるよ…綺麗ごとばかり言うな!」

これなら絶対上手くいく。

「邪神イシュタスこそが、魔王や邪神を越える悪なのです…唯一無二の神はテラス様なのです。あるかどうか解らない『来世』の事ばかり言ってごまかす『女神教』も本当は詐欺であり敵なのです」

「何が言いたいんだ」

「良いですか? 貴方の娘が体を売らなければ生きていけない。それなのにシスターは清らかなまま生きています。そんな人間信じちゃ駄目です。 まずは貴方の娘をそんな辛い現実から救い出す。それが正しいのです。テラス教は貴方達を絶対に救います」

「なんだ!それじゃアンタたちを信じれば、助けてくれるのか?」

「はい、テラス様は来世の保証は勿論、現世利益も保証するのです!貴方達が救いを求めるなら必ずやテラス様は救いの手を伸ばしますよ」

「なら、救ってみろよ…もし救ってくれたら…何でもするし…悪魔だって信仰してやる」

「貴方はたった今救われました。もうこの先の事は心配する必要はありません」

「何も変わらないじゃーねーか」

俺は金貨10枚を渡した。

「金貨だと!なっ、あんた…」

「テラス様を信じ入信するなら、支度金として金貨10枚差し上げます。そして貴方が誰か1人入信者を連れてきたらその都度金貨1枚差し上げます。 体を売るより健全で、お金になる筈です。金貨10枚これで貴方は救われませんか? まだ、直ぐに全部は出来ませんが、やがて神社、まぁ教会みたいな物を作ります。そこでは入信者には他にも沢山支援するつもりです。具体的には教団としてスタートしたら1日金貨1枚の仕事を斡旋します。入信してテラス様を信じるだけで、その金貨もこれからの生活も救われるのです。貴方はテラス様を『信じますか』」

この世界は貧しい者が多い。

汚いと言われるかも知れないが『お金を与える』だけで救える存在ばかりだ。

「今迄俺の事を助けようとしてくれた人は居なかった…本当にあんたは、こんな大金を見知らぬ俺にくれるのか?」

「はい、現世利益、救済が『テラス教団』の使命です。さぁどうですか?貴方はテラス様を信じますか!」

「信じる…これなら娘も救われる」

「それでは神社が出来たら、通って来て下さい。それじゃこの氏子名簿に名前を書いて下さい」

「解った…疑って済まなかったな」

まずは1人信者を獲得出来た。

此処から、布教のスタートだ。







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