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【閑話】異端審問
しおりを挟む「良いですか皆さん、皆さんには二つの道があります」
沢山の人間が男女問わず縛られて転がされている。
共通しているのは…皆が礼拝用の服を着ている事だ。
その先には間仕切りされた二つの部屋が見えるようになっていた。
その一つは幸せの部屋。
美男美女が幸せそうにご馳走を食べ、お酒を飲みながら楽しそうに談笑している部屋。
もう一つは不幸の部屋。
三角木馬に鞭、そしてアイアンメイデンがある拷問部屋だ。
「貴方達は此処に連れて来られて10日目です…そろそろ決めて下さい。今迄かなりの方が改宗して人生を謳歌しています…邪教の女神を信じ拷問の末死ぬか? それとも尊いテラス様の元幸せに暮らすか選んで下さいな…好きな方を選んで頂いて構いませんよ、騎士の皆さん、1人ずつ放してあげてくださいな」
「まず、最初は貴方ね…好きな方をどうぞ」
「私は..私は、幸せの部屋を選びます…ううっ」
「そうね、でもイシュタスは良いんですか? あの詐欺女を信じていたんじゃないの?」
「ううっ、もう良いんです…あの女神様は私達を救ってくれなかった」
「賢明ね、それじゃこれを踏んで幸せの部屋に行きなさい」
そう言って床に放り出されたのはイシュタスの顔が刻印された板だった。
「はい」
「そうそう、良いわよ…それで良いのよ。あと女神様と呼ぶのは禁止、馬鹿女とかで充分だからね。貴方は本当に正しい選択をしたのよ…もし今、そちらを選ばなければ、お腹の子が流産するまで腹を殴った後に、貴方は生涯性奴隷として死ぬまで解放されなかったわ」
「解りました」
ふふっ顔が青くなったわね。
「それが、そこでご馳走を食べてから金貨10枚貰って解放されるのよ…最後の最後に良い選択をしたわね、旦那が居なくて困っていたんでしょう? もう貴方もその子も幸せになれるわよ」
「本当ですか?」
「本当よ…テラス様の名前で約束するわ」
「有難うございます」
「さぁ次はどなたですか?」
「俺は、ダル。クルセイダーだ。女神に選ばれた戦士…此処には同胞を救いに来た」
「ふっ、馬鹿なテラス教徒、私を誰だと思っているの? 私はアークプリーストのクアラ。観念なさい、イシュタス様から授かった、この力で浄化してあげるわ」
「同じく、アークウイザードのミンティアよ!観念なさい」
あらあら、ようやく聖属性の人間に会えましたね。
此奴らが『最大の敵』だわ。
改宗すら無理な存在…
勇者達の次に女神に愛された存在。
「態々、そちらから乗り込んでくるとはね、ですが貴方達は…まぁ良いでしょう、騎士達、此奴らを取り押さえなさい」
「ふっ、たかが騎士風情に僕が負けるとでも…行くぞホリーソード…えっ」
「何をしているのダル。見ていなさいこれが女神の代理人の使う最強の力、ゴッドネスアローっ。女神イシュタス様から届く力を光の槍にして打ち込む技。この技の前にはどんな相手でも…死ぬ…あれっ」
「むっ、ならばこれでどうですか、全て吹き飛べゴッドネスブロー…嘘風が出ない」
馬鹿じゃないだろうか?
此処はテラス教の本部。
こう言う場合に備えて理人様がテラス様に頼んで結界が張られている。
それに理人様がテラス様から受けた神託では、女神は暫くこの世界に関与できない。
それなのに女神由来の力なんて使える訳は無いわ。
「もう気が済んだかしら? さぁ騎士、こいつ等を取り押さえなさい…貴方達の未来は地獄しかありません」
「待った、改宗する…改宗する」
「私も改宗するわ」
「私も…えへへ」
馬鹿ね、貴方達は無理。
だってイシュタスそのものの力を使うんだから。
「貴方達は女神の手下その者、改宗する必要はありません…手足切断をして舌を切って、鎖につなぎます。無料開放すれば、娼婦不足の代わりにはなるでしょう」
「「「そんな」」」
大勢の人間が彼等を利用したから…あっと言う間に彼らは使い物にならなくなった。
鎖に繋がれた彼等からはうめき声を昼夜出していた。
多分喋れたなら…『助けて』…そして最後には『殺して』そういう言葉が聞こえて来ただろう。
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