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第82話 木崎君と緑川さん
しおりを挟む「久しぶりですね木崎君に緑川さん」
今日、教団本部に二人が捕らえられて来た。
2人ともジョブの力があるので冒険者として暮らしていたが、物価の上昇した為生活が苦しくなり、家族共々、王国から帝国に移動中にフルールの配下の黒騎士に捕らえられたのだそうだ。
フルール曰く『片方は兎も角、片方は聖騎士でしたので処分する予定でしたが、理人様のお名前が出たので連れて来ました』との事だ。
「「ふぐぅうううううっ」」
「あっゴメン」
俺は2人の縄を解かせ、猿轡を外させた。
「これはどう言う事なんだい? 神代君、まさか君は女神様を裏切ったのかい」
緑川さんが避難がましい声で言ってきた。
「緑川さん、俺は女神から何も受け取っていない。俺は神道、神社の家系です。女神なんか信じないのは当たり前じゃないですか? それに女神は犯罪者で誘拐犯なんですよ…木崎君も聞いて欲しい」
「「解かった」」
俺は、テラス教団の活動と女神が如何に酷い神であるかを二人に伝えた。
此処から先は2人が決める事だ。
もし2人がこちらに来なくても今回は見逃す。
だけど、立ち去ったら、次に会った時は敵だ。
「以上が、俺が2人に伝えたい事だ…それでどうする?」
「僕には守るべき仲間が居る。ユウナにユウだ…三人して幸せに暮らす方法はテラス教団に入るしかない。入信を認めてもらえるかい」
願っても無い事だ。
「勿論、歓迎するよ、ただ聖騎士と言うのはテラス教的に良くないんだ、だからジョブチェンジをさせて貰うよ…それで良ければだけど」
「仕方ないよ、それに今現在、女神の影響かどうか解らないけど、力が弱まった気がするんだ、だから、問題無い。今の僕は2人が大切だから、2人の為になるなら他はどうでも良い」
木崎君…本当に変わったな。
凄く強くなった気がする。
なんだか『家族を守る』そんな強い意思を感じる。
今の俺は『道真』の力を使っているから…嘘偽りがないのは解る。
「それじゃ金貨三人分で30枚…はいっ誰か1人案内をさせるから、観光するもよし、大好きなガ…いや恋人とデートを楽しんでも良いよ…暫く休んで慣れたら色々手伝って貰うよ」
「解かった、神代君、色々ありがとう」
◆◆◆
木崎君はこれで良い。
多分、これから先は皆と打ち解けて普通に生活をする事が出来るだろう。
問題は緑川さんだ。
心の中に揺らぎがある。
「それで緑川さんはどうしますか?」
道真の力で俺には嘘はつけない。
「私は少し迷いがある。この世界の平和を守ろうとしていた女神イシュタス様が悪い神にはどうしても思えないんだ」
俺は酷い扱いをされていたが、他の皆は違う。
甘い言葉を囁かれていて。チートを貰い救世主である様に言われていたのだろう。
「信じられないのなら、仕方がありません。それでどうしますか? 帝国は既に帝王も含みテラス教徒です。もし否定されるならこの国には住めませんよ?」
「どちらが正しいか解らないんだ」
「緑川さん、他人が育てた子供を勝手に攫えば幾ら理由があっても犯罪ですよ? それを行い、無理やり戦争に駆り出すのは悪い事では無いんですか?」
「それは…だが、もし自分が大切な世界が大変な事になれば藁をもつかむ気持ちで縋る事もあるだろう。そう言った事に寛大さは無いのですか?」
もしかしたら緑川さんは駄目かも知れないな。
「それなら緑川さんは此処を出ていく事をお勧めします。此処に居たら手順を踏んで、それでも入信しない物に人権はありません。今なら追手をかけませんよ」
「待ってくれないか? しばらく考えたいんだ」
「待てないんですよ! 此処に居たら手順を踏んでそれで入信しないなら『異教徒狩り』にあいます。そしてそれは合法です。貴方の大切な仲間や貴方自身も奴隷にされる可能性があります」
「そんな考える時間も貰えないのか? 酷いじゃ無いか?」
「ならば、立ち去る事をお勧めします」
結局、緑川さんはパーティメンバーに説得されて入信した。
だが、木崎君と違いまだ、女神に未練があるようだ。
暫くは監視しないと駄目だな。
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