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長い夜が始まる。

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「それで、セレ坊、大切なお金、こんなオバサンに使って良かったのかい?」

「今の俺はそこそこ稼いでいるので全然大丈夫ですよ」

あの後、俺は代金を払って奴隷紋を刻んで貰って二人で散歩している。

『奴隷紋を刻まない』という選択も考えたが、リューズに会った時に相手が妻だと主張した場合、負ける可能性もあるので刻んで貰った。

本来は奴隷販売した時点で、特別な契約を結ばなければ自動的に『離婚』になる。

だが、奴隷商なら『買い付け契約書』があるが、俺にはそう言った書類が無いのでこうした方が無難だ。

しかし、久々に見た『初恋の相手』は未だに美貌は衰えていない。

前世で言うなら、ジーンズとTシャツが似合う、綺麗なお姉さんだ。

「何だいジロジロみて、そう言えばセレ坊は昔から、私をよく見ていたね」

「まぁ初恋だったしね(こっちの世界の)」

「あはははっ可笑しいね、セレ坊が5歳の時に私は21歳だよ? そんなオバサンが初恋だったの?」

「母親が居なかったからね」

「そうかい、そうかいだったらあんな亭主とっとと見切りつけてセレ坊の嫁さんになってやれば良かったよ」

そう言いながら、マリベルさんは悲しそうな顔をしていた。

旦那に奴隷にされて売り飛ばされた挙句、息子の友達に買われたら『元気な訳』ないな。

◆◆◆

「マリベルさん、今日は嫌な事忘れて、ぱぁっと買い物しちゃおう? なんなら、お酒も付き合っちゃうよ?」

「セレ坊、ありがとう..」

「セレ坊は止めて、ちゃんとセレスと呼んで」

「そうだね、大人になったんだから失礼だね、解った」

まず最初に寝具店に行った。

「セレス、こんな高い寝具で良いの?」

「他の仲間と一緒だから大丈夫、もうじきパーティハウスに移るから色々準備しているんだ」

「そう、それなら良いけど…」

最近金銭感覚がマヒしているけど、本当はこんな感じだよな。

ついでに服屋に行って、数着服の仕立てを頼んだ。

「マリベルさんに任せるから」

そう言うと、てきぱきと生地から選んでいた。

結構安そうな物ばかり選ぶから…

「こっちにしよう」

「えっ、だけど、それ高いじゃない? 私にはこっちで充分だって」

まぁ、本人が良いなら良いだろう。

しかし、意見を言いながら出来るショッピングは楽しいな。

あの三人もこうなってくれると嬉しいな。

そして、最後は古着屋にきた。

仕立てに数日掛るので、その間着る服を買った。

「セレス、本当に良いの? 私みたいなオバサンじゃなくてさぁ、若い子にお金を使うべきだよ」

「あっ、付き合っているって言えば、一応パーティメンバーが居て、そういう関係かも知れない」

「まぁセレスもそういう年頃だね、だったら、外で飲むんじゃなくて久々に料理するから家で飲まない? セレスのお付き合いしている人をオバサンが見てあげるよ?」

「そうだね、久々にマリベルさんの料理食べてみたいな」

「それじゃ決まりだね!」

食材とエールを買って帰った。

◆◆◆

「セレス、これはどういう事なの? 私に近い歳に見えるんだけど?」

長い夜が始まる
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