友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん

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ブレーブキラーVS竜王

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『覚醒』

此の世界では稀に勇者や聖女が居ない時代がある。

そんな時に一般人に後天的に『ジョブ』が現れる時がある。

それを覚醒と呼ぶ。

◆◆◆

遠くからセレス達の戦いを見る存在が居る。

王国騎士団情報伝達部隊だ。

彼等は街に居る時は見張っていないが、街から出た勇者の様子を伝える部隊だ。

その仕事は戦況報告から、勇者の保護迄多岐にわたる。

最も、勇者の危機に騎士なんて役に立たないから、ほぼ意味をなさない。

リヒトは『告げ口部隊』と嫌っていた。

今回セレスが『準勇者』になったので、今迄と違いセレスにもついていた。

「セレス様が…変わられた」

彼等は驚きを隠せない。

だからこそすぐに報告をした。

◆◆◆

凄い、これが勇者や剣聖の世界なのか?

今迄の動きが嘘の様に躱せる。

そして、幾らでも攻撃が出来る。

「それがお前の正体なのだな、凄いぞ、さぁ儂を楽しませてくれ」

「ああっいくぞ」

俺はただダイレクトに飛び蹴りをした。

ただそれだけの事で強大なドラゴンがふっとぶ。

こんなのは一般の人間がどんなに努力しても出来ない。

出来るわけが無い。

「この巨体を吹き飛ばすとはな、だが体格の理はこちらにあるのだ」

そう言いながらドラムキングは俺を踏みつぶしにきた。

走り避けようとしたが…思ったより速い。

かわし切れずに踏まれてしまった。

だが、この鎧は強大なドラゴンに踏まれてもビクともしない。

まるで地団駄を踏む様に俺を踏みつけるが、俺はビクともしない。

前世の子供の時に親に買ってもらった『超〇金のマ〇〇ガー〇』をうっかり踏んづけてしまった事がある、その時は俺の方が足の裏を怪我して、人形は無傷だった。

正に今がその状態だ。

だが、この状態ではそのままでいるしかない。

数倍の力に跳ねあがっている俺の力でも、この巨大なドラゴンの体を勢いをつけない状態では跳ねのけられない。

「そろそろ死んだか? いかにお前が凄かろうがこれが種族の差だ」

「確かに効いたがただそれだけだ、今なら出来るかもしれないな、これが奥義『光の翼』だーーっ」

誰もが憧れる『勇者の技の中でも美しく強い技』。

リヒトだけじゃない、物語の主人公が使っている技だ。

劣化版じゃない…これがオリジナルだ。

だが、これすらもドラムキングは受けて見せた。

「見事、まるで始まりの勇者のようなその技、素晴らしい」

何故、此奴は敵である俺を褒める。

戦えば戦う程、戦いが楽しく思えてくる。

これ程までに楽しい戦いを俺は知らない。

だが、お互いに決定打に欠ける。

俺の高周波ブレードはいとも簡単に竜王の鱗すら引き裂き斬る。

だが、サイズの差でそれだけだ終わる。

臓器迄届かない。

人間で言うなら薄皮一枚切られ続けているだけ。

激痛ではあるが死に至る様な事は無い。

逆に俺は踏むつけられたり飛ばされたり散々だが全く致命傷は貰ってない。


やがて月が出て朝日が昇ったが、戦いは終わらない。

可笑しな話だ。

これは戦いだと言うのに…息を併せてダンスを踊っているような物だ。

先に音を上げたのは俺だ。

スタミナがブレーブキラーの力を借りても、ドラゴンには及ばなかったようだ。

「駄目だ、もう立てない」

「ほう、ならばこの勝負は儂の勝ちだ..これは褒美じゃ食すが良い」

そう言うと竜王は自分の体を爪で切り裂くと臓器を取り出した。

俺は手加減されていたのか?

いや、多分あの爪でもブレーブキラーは耐えるだろう。

「それは?」

「竜王の肝だ、食べれば不老不死になれるのだろう?」

俺はブレーブキラーを解くとその肝を手にした。

そこに竜王の爪が飛んできて手前で止まった。

「甘い奴め、これで殺される事もあるのだぞ」

「お前はしないだろう」

俺はドラムキングの好意に甘え、肝を食べた。

「なんで、負けた俺を殺さない、そればかりか何故こんな物をくれる」

「儂はもうすぐ死ぬからのう、その前に夢を叶えてくれた駄賃じゃ」

「お前が死ぬのか? そんな元気なのに」

「古代竜として生まれて数千年生きてきた、不老不死と言うが本当に不老では無い、気が遠くなる程生きれる、それだけじゃ…自分の事は良く解っておる、儂の寿命は後50年も持たぬよ」

「人からしたら50年は下手したら一生だぞ」

「そうか、だが古代竜の儂にとっては一瞬だ、儂は死ぬ前にもう一度『真』の勇者ともう一度戦ってみたかったのじゃ、それで魔王軍に下り四天王になった」

「そうか」

「ああっ、だが誰もが大昔に戦った『勇者達』とは違った」

「だから殺したのか?」

「儂は殺さんよ! たかが虫けら殺すに値せぬ」

「それじゃ生きているのか?」

「多分な、その証拠にお主は聖剣を持っていないだろうが、あれは儂でも溶かせない、あの場に無かったのだから生きておる」

「ならば、俺は謝った方が良いか? 敵と言ってしまった」

「そのおかげで戦えたのだ良い、気にするな…名を聞こう」

「セレスだ」

「それでは『勇者セレス』もう儂は会う事も無い、戦いに満足した、竜の里にて静かに死ぬとしよう…さらばじゃ」


竜王ドラムキングは大きな翼を羽ばたかせ何処かに飛んでいった。

そして、俺は竜王を見送った後、その場に崩れ落ちた。


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