友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん

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ブレーブキラー

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探す事3週間。

ドラムキングを見つけた。

百の竜の中心にいる老人。

あれが『竜王 ドラムキング』

事前情報が無ければ『侮るのが解る』

確かに老人に見える。

あの姿からなら一番頭に浮かぶのは術師。

なんだかの方法で竜を操る事が出来たような人間や魔族と思う事だろう。

百の竜…恐らくこれを倒すだけで騎士団など全滅だ。

そして、その中心に更に強い竜王が居る。

どう突破する?

俺は、1人だ。

ヤバイ、ドラムキングと目が合った。

口をパクパクしている。

あの口の動きは…『見えているぞ』だ。

この位置は相手から見える位置じゃない。

強い癖に..感覚迄研ぎ澄まされているのか?

『強いな』

どうするか…出て行くしかないな。

「いけねー見つかっちまったか」

俺はおどけてみせた。

俺に敵意は無い、そう見せかけて虚をつければ…

「ふははははっ、お主、殺気が抑えられておらんよ? 儂を殺す気満々じゃな? どうじゃ今戦うなら、一騎打ちとして受けてやろうぞ、他の竜には手を出させぬ…だが逃げるのであれば百の竜がお前を襲う」

これは願っても無いチャンスだ。

このチャンスを逃すのは馬鹿だ。

「ドラムキング、仲間の敵、今此処で打たせて貰う」

「ほう、敵とな? 沢山相手がいすぎて誰か解らぬが掛かって参れ」

「行くぞ」

俺はマリ特製『高周波ブレード』を構えて斬りかかる。

此の武器がブレーブキラー(勇者殺し)と言うならドラムキングにも通じるかも知れない。

「掛かって参れ」

俺は黙って剣を振りかぶる。

確立は1/2 避けるか受けるか。

もし受けてくれるなら、念願の一太刀を浴びせる事が出来る。

「ふん、こんな剣等儂には通じぬ」

(とんでも)科学VS異世界の竜…勝ったのは..科学だった。

「貴様、その剣は一体なんだーーっ聖剣でも無ければ儂を傷つける事など出来ぬわ」

「聖剣では無い、この剣は俺の仲間が作ってくれた剣だ」

「ほぉ~なかなかの業物と見た、良き友人を得た物だな、この腕を斬り落としたのは、勇者ロゼを含み3人しかおらぬ」

リヒトよリタ、ケイト、ソニア…やったぞ。

だが、此処からは期待するなよ。

「そうか、俺は勇者ですら無い、褒めて頂き有難う」

流石は竜の王という所か? 

油断を誘い先手を取って切断した腕がもう生えている。

俺は懸命に斬りかかるしかない。

恐らくこの相手には『必殺技』など通じない。

それで勝てるなら…リヒトが勝っていた筈だ。

リヒトが使う『光の翼』それすら避けたと騎士が言っていた。

だから、俺は手数で勝負だ。

「成程、力を抜き自然な動きで素早く斬りかかる。人間の限界に近い、よくぞ鍛えたものだ」

「そりゃどうも」

嘘だろう、全くかすりもしない。

この方法なら、ケイトやリヒトにだって傷は負わせられる。

「だがな、その様な戦い方は、剣聖ジークも行った、残念だな人間、お前のそのスピードは剣聖ジークには遠く及ばぬ、何故お前は笑う!」

糞っ、高周波ブレードなら斬れるのに..かすりもしないなんて。

これが四天王のレベル。

勇者パーティで無ければ太刀打ちできない相手。

そして、その戦いの世界は魔法戦士には届かない。

「そうか、俺は四職ですらない、それが伝説の剣聖と比べられたんだ、嬉しくてたまらんよ」

あははっ笑ってしまう。

俺の事を利用するのではなく『認めてくれた最初の男』それが敵だとはな。

この俺が『伝説の剣聖』と比べられたんだ。

それ、俺にとっては最高評価だよ。

「お前は四職で無いだと? 小僧、お前は最高だ、ならば儂は手加減せぬ、ただの人間がそこ迄鍛え上げて挑んできたその事に対する礼だ..竜化!」

俺は本当に弱っちいんだ、老人の姿のお前にすら勝てないんだから、止めてくれ。

「どうだ、これが儂の本当の姿だ! この姿には敬意を示した者にしかならぬ、四職以外でこの姿で戦った人間はおらぬ…さぁ来るが良い」

「怖くて仕方ない、だがお前は俺の幼馴染を殺した、だからいく」

今迄の自分の最高の踏み込みで、最速のスピードで、更に最高の魔法を伴い斬りかかった。

俺が憧れた技…勇者しか出来ないという『光の翼』、それに似せたまがい物。

だが、そんなまがい物でも、俺なりの奥義だ『サンダーウィング』

竜王は避けもしなかった。

「見事である、只の人間が竜化した状態の竜王の儂を傷つけた」

何だよ、確かに斬った、だが巨大な体だから、人間で言うなら小さなひっかき傷を作っただけだ。

これは俺に対する哀れみか何かか。

「その栄誉を持って死ぬが良い、ファイヤーバースト」

炎に包まれ、俺は意識を手放した。


◆◆◆

「私って凄く貧相ね」

研究ばかりしていたから外見に気を付けていなかったわぁ~

私ってオバサンだし、胸も無いし女として終わっていそうな気がする。

良く、こんなチビのオバサンを愛してくれたもんね。

私はきっと多分、他の女性の様に愛せない。

もし、セレスが困っていてもアイシャやマリアの様に一緒に戦えない。

だから『マリちゃんはこの頭脳』をセレスに捧げるわ。

この頭脳でセレスを守ってあげる。

それがマリちゃんの愛だ。

私の本のブレーブキラーは『何でも斬れる剣』セレスいわく『高周波ブレード』だけじゃない。

昆虫からヒントを得たという外骨格の鎧がある。

『何でも斬れる剣』『どんな物からも守る鎧』この二つを持ってブレーブキラーとなる。

この鎧の方が剣より遙かに難しかったわ。

だって此の武器や防具は『魔王が勇者を殺す為』の武器なのよ。

そのままじゃ人間には使い勝手が悪いのよ。

これをセレスが使えるように設定するのにどれだけ大変だったか。

だけど、どうにか完成させたの、私だから出来る事だ。

この鎧を身に着けたら『等身大のキラービー(異世界のスズメバチ)並みの防御力』は手に入る、しかも羽の様に軽い。

小さくても固いのにそれの等身大なのよ、凄いわよ。

オリハルコンからミスリルまで混ぜて作った超合金その名もM、それで作った。この鎧がきっとセレスを守ってくれる。

だけど、これだけじゃマリちゃんは凄く心配。

ようやく旦那様が手に入ったのにマリちゃんは『未亡人』なんて絶対に嫌。

だから『ホルムニクス』を作ろうと思ったの。

マリアとアイシャのホルムニクスを作って守らせればいいんじゃない。

それでね、2人の髪の毛とか卵子とか涎から培養してみたけど、駄目。

化け物にしかならないの。

流石にセレスでも化け物を連れてあるくのは嫌だよね。

何か無いか考えていたら『寄生虫』にヒントがあったのよ。

『ある種の寄生虫は自分が死にたく無いから宿っている体を守るらしいの』

だから、マリアとアイシャのホルムニクスから必要な能力を形を変えてセレスに与える虫を作る研究をしたのよ。

勿論殖能力は無しです。

まぁ恐ろしくグロイけど仕方ない、仕方ない。

沢山の失敗を繰り返し出来たのは…

脊髄寄生型生物マリアちゃん
脊髄に針状の器官を刺して寄生。寄生している人間が危なくなるとエルクサーの様な分泌液を出し、主人の回復を図る。

脳下垂体寄生型生物 勇者くん
脳下垂体に寄生。
脳の指令の電気信号を操り通常の8倍のスピードで動けるようにする。
勇者しか使えない技も使えるように脳のリミッターを外す。(但し記憶は無いので技は自分で覚える必要がある)

ちなみにアイシャの細胞は駄目だったわ、四職でないからかな、セレスに入れても何も意味が無いの、だから死滅処分したの。

いやぁ、化学的には聖女と勇者が近い生物で『勇者くん』が出来たのは行幸だね。

しかも、剣聖と勇者はほぼ同じ様な物らしいのよ『勇者くん』は『剣聖』も兼ねるのよ。

ただね…『賢者』は駄目。

どうしてもマリアの細胞からじゃヒントすら解らなかった。

何処かに死んだ賢者さん居ないかな?

居たら作れるかも知れないのに…

これが私の『愛』なの…受け取ってねセレス。


※ マリのやっている事は『とんでも科学』なのでかなり可笑しな理論でも突っ込みは許して下さい。

◆◆◆

私のラボから音が響き渡る。

これはセレスが危ない目にあっている証拠。

私は通信水晶を除きました。

セレスに渡したバッジにも小さな通信水晶を取り付け、更にセレスの心拍に異常があるとこちらのラボに知らせが来るようにしていたから良かったわ。

「セレス、セレス、しっかりして」

「マリちゃんの声が聞こえる気がする」

意識はまだあるようだ。

「しっかりして!」

水晶が破損しているのか画像が見えないよ。

危ないのは確かね。


「良い、セレス、私を信じて!大きな声で『キラー発動』って言いなさい」

「…解った」

心配で仕方が無い。

だけど、バッジが壊れたのか、それからセレスと連絡がつかなくなった。

大丈夫ブレーブキラーが絶対にセレスを守ってくれる。


◆◆◆

マリの声が聞こえた。

多分今の俺の体は焼けているに違いない。

目も見えないし、体も動かない。

「お前は強かった、勇者でも剣聖でも無いお前だが、まるで昔戦った強敵の様な目で儂を見つめてきおったな…久々に熱い戦いであった。お前はまさしく強敵(とも)であった。
故に虫けらと違い、葬った。」

ドラムキングの声が聞こえる。

もう、俺は終わりなのだろうな…

だけど、なんで死の間際の声がマリなんだろうか?

皆でなく一人の声なのか…

こんなのは夢だ…だが必死な声に聞こえた。

ならば答えなくちゃな…「…キラー発動」

何だろう、背中から腰に掛けて痛みが走った。

頭にも痛みが走った。

動けないし、最早悲鳴も上げられないが体の火傷より遙かに痛く、何かが体の中を巡っているような気持ち悪さも感じた。

だが、その痛みは次の瞬間には無くなっていた。

そして、目が見える様になり、手が体が動く。

まるで、ソニアに掛けて貰った回復魔法、それを何倍、何十倍にして掛けて貰った様な気がする。

しかも、もう体が熱さを感じない。

何が起きたんだ!

自分の体を見た。

これは、まるで特撮ヒーロをより虫に近くして、ややグロくした感じの鎧を着ている。

某有名な特撮ヒーローで1作だけ大人向けに作られた物があった。

余りにリアルな虫に近くて子供に人気がなった。

正にそれの蜂版だ。

そうか。マリだ..完成していたんだな『ブレーブキラー』ありがとう、これで戦える。

「ドラムキング、俺を認めてくれてありがとう、今なら少しはましな戦いが出来そうだ」

「貴様、覚醒したのか…望む所だ、再戦だ」

俺はその声を聞き突っ込んでいった。



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