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2巻
2-3
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◇◆◇◆◇
おかしいですね……頭にたんこぶはできているけど、特に大きな問題はなさそうです。
あたし――メルルは風呂場に運ばれたケイトを見ながら首を傾げます。
こんな怪我ならヒールの魔法もいりません。
なのに、あの剣聖のケイトが鼻血を出しながら気絶しています。
しかも、結構な汗を流しており、鼓動が速い。なぜか、顔はニヤニヤしていますが。
あたしはケイトの頬をぺちぺちと叩きます。
「ほら、ケイト、起きてください」
「ううん……ケイン、駄目だってばぁ……」
うん、ただいい夢を見ているだけのようです。
水でもかけて起こせば大丈夫。
バケツで水を汲んで、ケイトの顔にぶっかけます。
「冷た!? 何なにどうしたの? あれ……僕、ケインと木刀で練習していて……」
あたしはため息をついて尋ねます。
「何が起きたらこうなるのですか? 剣聖ケイトが気絶するなんて」
「おかしいんだよ! ケインに見つめられたり、触られたりすると体が火照っちゃうんだ」
ケイトはまくし立てます。でも、信じられない。
「まさか、そんな事ないと思います」
「そうかな?」
「確かにケインはかっこいいけど、それで体に異常が起こるなんて……」
「まあ、僕の勘違いならいいんだけど……」
ひとまずケイトに体を拭かせて、あたしは一足先に皆の待つリビングへと戻りました。
しかし、確かに妙ですね。
さすがに見られただけで体に異常が出るのは勘違いだとしても、剣聖であるケイトがあの程度の怪我で気絶するわけがありません。
そもそも彼女が木刀でたんこぶを作るのもありえない話です。
「メルル、どうだった? ケイトは大丈夫だったかな」
「ケイン、大丈夫……って」
嘘でしょう。
ケイトが言っていた事は本当だったのですか?
ケインがもの凄く凛々しく見えます。
元から好きだから、なんてものじゃない。まるで超強力な惚れ薬を呑まされた気分です。
「メルル、どうしたんだ? ケイトは大丈夫だったのか」
もう一度同じ事を尋ねてくるケインに、あたしは慌てて答えます。
「あ、ああ。あははっ、ケイトですね。彼女なら大丈夫。少し打ちどころが悪かったんじゃないですか? すぐに目覚めました。今は部屋に戻っていると思います」
「そうか、よかった。メルル、ありがとう!」
そう言うとケインは私の手を強く握りしめてきました。
「ひゃぁい……あっ、ごめんなさい!」
思わず変な声が出てしまいました。
「あっ、俺こそごめん。いきなり手を握るなんて」
「べ、別に嫌じゃないからいいですよ」
いったい、何が起きているというのですか?
ケインと目が合うだけで顔が熱くなるし、汗が止まりません。
「どうしたんだ、メルル。顔が赤いけど熱でもあるのか?」
「な、なんでもないです! 本当になんでもありません」
「そう、ならいいんだけど……」
あたしはなんとか笑顔を作って頷きます。
「はい、あたしは大丈夫ですから。平気です」
いったいあたしはどうなってしまったのでしょう?
ケインを見ているだけで、さっきから胸はドキドキして、汗が噴き出てきます。
ケインの事は大好きだし、頼りがいもあるし、素敵だと思ってるけど、ここまで体に反応が出た事はないです。
とりあえず、ケインから離れないと……
「ケイン、大丈夫だとは思いますが、一応ケイトの部屋に様子を見に行ってきます」
「ああ、わかった」
ケイトが言った事は間違いではありませんでした。
これからどういう顔でケインを見ればいいのでしょう?
不安で仕方ないです。
◇◆◇◆◇
結局、ケイトの騒動は俺――ケインの不注意が生んだアクシデントだった。
俺はロードになった事で、異性に触れると性的な快感を与えてしまう不便な体になったのを忘れていた。
ともあれ、なんとか騒ぎが収まってから数日後――俺はいつもの軽い訓練を終え、午後はパーティハウスでゆっくりする予定だった。しかし、そんな時に限って、王城から呼び出しがかかった。
ハウスの前に王家の馬車、それもユニコーンに引かせる王家の特殊馬車だ。
こんな豪華な馬車は貴族どころか、王族でもそうそう乗らない。
そんな王家の馬車の周りを白馬に乗った騎士二十名が固めていた。
これが特別な待遇である事は誰が見ても明らかだ。
「英雄王ケイン様、お城でハービア様がお待ちです」
そうか、俺は英雄王……王より上の存在なんだ。
だからこその待遇か。
今はっきりと自覚した。
騎士達はしっかりと跪き頭を垂れている。
ただ、俺はあまりこういうのは好きではない。
「あの、やめてもらえる?」
俺がそう伝えると、代表の騎士が首を横に振って言う。
「何をおっしゃいますか? あなたこそ王の中の王、天使長が認めた偉大なるお方なのです。跪くのは当たり前でございます」
「俺は、王でも剣を取り、君達と共に戦い共に酒を飲む。そういう王になりたいんだ。だから正式な場所以外での儀礼は不要だよ。今日は受け取っておくけど」
「はっ、ありがたき幸せ」
まだ、堅いけど仕方ないな。
さて、問題は王城に俺一人で行くか、誰かを連れて行くかだ。
リビングに皆を集めて見回すが、やっぱり誰も目を合わせない。
絶対に行きたくない、そんな思いが滲み出ている。
俺だってそう言いたいところだけど、相手はハービアだ。問題を起こしてもまずい。
ここはいつでも付き添ってくれるシエスタだけにしておくか。
彼女は腰が低いし、安心してハービアに会わせられる。
「シエスタ、今日は頼むよ」
「はい、ケイン様」
返事はいいが、顔は青ざめているな。
まあ、天使長に会うっていうのに怯えない方がおかしいか。
俺がシエスタを連れて外に出ると、先ほどの騎士が歩み寄ってきた。
「それでは、ケイン様、シエスタ様、馬車へどうぞ」
シエスタはおどおどしているが、一応君は侯爵なんだから、もう少し堂々としよう。
かく言う俺もハービアに会うとなると憂鬱だけどな。
「これはこれは、ケイン殿にシエスタ殿、よくぞ来てくださった」
王城に到着すると、ハービアの傀儡、国王アレフド四世が迎えてくれた。
それにしても、国王はやつれているな。ハービアにいびられているのかもしれない。
ふと横を見れば、シエスタはシエスタで大変な事になっている。
王様に直々に挨拶なんて経験、そうはないよな。
「ア、アレフド王……こ、こ、こんにちは」
がちがちのシエスタに、国王も思わずといったように苦笑いしている。
「よいよい。あなたはこの国の真の王であるケイン殿の腹心。肩書きこそ侯爵だが、実質上の権力は私より上ですからな。気さくに話してくだされ……それに」
「それに……なんでしょうか?」
「戦メイドが本気で暴れたら、ケイン殿以外止められません」
「わ、わたしはそんな事はしませんよ!」
確かにここにいる騎士じゃもう止められないな。
国王は明るい表情を浮かべる。
「ただの冗談ですから、気になさらないでください。さあ、ハービア様がお待ちですので、すぐに向かった方がよいかと」
俺は頷いて礼を言い、王城内にあるハービアの部屋に急いだ。
きらびやかな装飾が施された部屋で、ハービアは俺達を待っていた。
「久しぶりね、ケイン」
「ハービア様、お久しぶりでございます。ご機嫌はいかがでしょうか」
俺が少し硬くなりながら応えると、ハービアは長く美しい銀髪を揺らして不満げに言う。
「堅苦しいのはいいわよ。それよりもあなたは私の下僕なんだから、もう少し頻繁に顔を出しなさい」
「かしこまりました」
「ふん……あらっ、そちらはケインのお仲間?」
ハービアはシエスタの方を見て尋ねた。シエスタがぎこちなく頭を下げる。
「初めまして。シエスタと申します」
「よろしく。あなた、ちょっといいかしら」
「はい?」
ハービアはいきなりシエスタの頭に手を置くと、確認するように言う。
「なるほど。あなたは自分のジョブにコンプレックスを感じているのね?」
シエスタはハービアに図星を指されたみたいだ。
「!? さ、さすがは天使長様です。簡単にわたしの意識が読み取れるのですね」
「そうね。さて、それじゃあ、あなたのジョブを変えてあげましょう」
ジョブは生まれた時に決まる職業のようなものだが、ハービアはそれさえも変える事ができる。
かつて、俺のジョブを魔法戦士からロードにしたように。
ハービアが〝ジョブ交換〟と唱えると、淡い光がシエスタを包み、そして収まった。
こんな事ができるなら、人の人生なんて簡単に変えられてしまうな。
俺は恐る恐る尋ねる。
「あの、ハービア様。シエスタのジョブは何になったのですか?」
「その娘の二つ名、戦メイドなんでしょう? だから〝戦乙女〟のジョブをあげたわ」
「初めて聞きますね……戦乙女とはどんなジョブなんでしょう?」
「確かに最近はあまりいないわね。剣や槍でなく杖で戦うのに特化したジョブ、といったところかしら」
するとシエスタが、がばっと頭を下げた。
「ありがとうございます、ハービア様! 本当にありがとうございます!」
ハービアは笑顔で手をひらひらと振る。
「いいのよ。その分ケインに頑張ってもらうから」
ちょっと待て、聞いてないぞ。
俺の事はお構いなしにハービアは続ける。
「今度、剛腕があなたに会いに来るらしいからその時はよろしく」
俺は首を傾げて尋ねる。
「剛腕? 魔族の四天王がなぜ……」
「あなたがロードになったってつい口を滑らせたら、戦ってみたいって」
「剛腕が戦いに? ハービア様、それはいくらなんでも」
マジか? このままじゃ俺は死ぬぞ?
剛腕は魔族の四天王の一角だが、その実、ハービアと同じく天界の住人だ。
天使長であるハービアと武神である剛腕は魔王討伐に挑んだものの、魔の軍門に下った。
だが、魔王に負けたとはいえ、剛腕は武神と呼ばれる武力を司る神。
そんなものと戦って無事に済むはずがない。
「申し訳ないわね」
ハービアは言葉とは裏腹に、微塵も謝る気がない表情でこちらを見ている。
俺はため息をついて尋ねる。
「あの……確かハービア様は以前、剛腕の攻撃が三回俺に当たったら死ぬって言ってましたよね」
「ええ、たぶん一分も持たないんじゃないかしら?」
「それなら、なんで剛腕は俺と戦いたいんですか?」
どう考えても俺が惨めに倒されるだけで、剛腕は何も得るものがないと思うが。
ハービアは答える。
「あなたが人類最強だから」
「強い人が好きなら、また魔王とかと戦えばいいのでは……」
「それは無理よ。ドラゴンとトカゲじゃ勝負にならないわ」
そんな……武神である剛腕がトカゲ。なら魔王はいったいどれほどの強さなんだ。
「あなたくらいがちょうどいいのよ。それに、その子にジョブをあげたのは、私を楽しませる駄賃。先に報酬をあげたのだから断るなんて言わないわよね?」
なんだかとんでもない事に巻き込まれた。
今までで最強クラスの悪寒が、俺の背筋を走った。
それから、数時間後――
屋敷に戻った俺は頭を抱えていた。
いつからこうなってしまったのか。
四天王のスカルを倒し、その後は悠々自適な人生を歩むはずだった。
リヒト達の事を忘れ、幸せな人生を始めるつもりだった。
確かに酷い追い出され方だったが、あいつら勇者パーティと俺には大きな違いがある。
奴らは名誉と引き換えに、死の運命に縛られている。そしてそこからは絶対に逃れられない。
対して俺は名誉こそないが、縛られず自由に暮らせる。
どちらがいいかは誰だってわかる。
誰もが俺の方がいいと、そう言うだろう?
だが、俺はどこかで選択を間違えたのか、英雄王という名誉を手に入れてしまった。
そのせいで俺はまた、運命に縛られた。
いや、理由はわかっている。ハービアを攻略しなければよかったのだ。
それこそ、腰を抜かして逃げ出し国王に泣きつけば、貴族の地位はなくなるかもしれないが、こんな事にはならずに済んだ。
俺が中途半端にハービアと取引した結果、彼女が実質的にこの国の王になってしまった。
あの後、剛腕とどのように戦うのか、ハービアと少し話した。
簡単に言うと、剛腕は四天王の一人としてこの国に攻めてくる。
そして、俺がハービアの加護を受けながら一人で戦う。
ここがミソだ。
誰も巻き込まずに一人で戦わないといけない。
武神である剛腕は俺と心おきなく戦いたいらしい。そのため、他の人間を交えず俺が一人で戦場に来る事をご所望だそうだ。
パーティの仲間には力を借りられない。
ハービアがいるからたぶん死なない。彼女は死者をも蘇生させる術を持っているからだ。
だけど、皆の目の前で死ぬほど痛めつけられるのは確実。
絶望しかないな……剛腕にとって俺は蟻も同然だ。
しかし、ハービアには〝私を楽しませろ〟と言われている。
一瞬で倒されてはまずいだろう。
だが、いい考えが何も思いつかない。
「ケイン様、難しい顔をしていますね」
シエスタが心配そうに声をかけてきた。
「ああ、さっきの話を聞いただろう?」
「はい。ですが、わたしも戦乙女のジョブを身につけましたし、少しは役に立てるかもしれません」
「それは無理だよ。これは俺一人でやらなくちゃいけないんだ。ハービア様もそう言っていた」
「そうでした……命は保障するとハービア様はおっしゃっていましたが……」
「まあ、死なないだけましかな。まだ日にちはあるから、少しは戦えるように頑張るさ」
俺はなるべく明るく聞こえるように声に力を込めた。
シエスタもうんうんと頷く。
「はい! 一緒に戦えないなら、せめてバックアップさせてください」
「そうだな、戦いには参加させられないけど、これからの訓練は皆に手伝ってもらおうかな」
たぶん、これが本当の意味でのパーティ自由の翼の最終戦だ。
これさえ乗り切れば、もう大丈夫。大丈夫……だよな?
それに普通なら武神なんていう雲の上の存在と戦う機会なんてない。
魔王より弱いとはいえ、武の神が相手をしてくれるのだ。
人間でありながら神が稽古をつけてくれる。
それは凄く幸せな事……そうとでも思わなければやってられない。
だけど、ただやられるのではなく、少しくらいは食い下がりたい。
そのためにもメンバーに教えを乞おう。
剣聖のケイト。
クルセイダーのアイシャ。
アークウィザードのアリス。
アークプリーストのメルル。
ポーターのクルダ。
戦乙女のシエスタ。
ジョブが違えば戦い方が違う。
武神はその特性上、あらゆる戦い方を窮めていると考えられる。
俺が使える技や魔法だけでは本当に秒殺されかねない。
足りない分は皆との訓練で埋める。
人生を楽しむためにパーティを作ったのに、こんなハードモードになるなんて思わなかったよ。
俺はメンバー全員をリビングに集めて事情を説明した。
すると、ケイトが呆れたように言う。
「あのさあ、ケイン。君は僕一人にすら勝てないんだよ? この前はたまたま僕が不覚を取ったけど、剛腕相手なんて敵うわけがない」
「私も同意だわ。なんでそんな事を引き受けちゃったのよ」
アリスも同意見のようだ。まあ当然の反応ではある。
「理由は話しただろ。もうどうしようもないんだ。ひとまず最初はケイトと一対一でやらせてくれ」
「はあ……わかった。一発入れられた借りもあるし、いいよ。胸を貸してあげる」
「ああ、頼む」
その後、俺達はいつも訓練に使っているパーティハウスの庭に移動し、ケイトと向かい合った。
「よし! それじゃ、先手を譲ってあげるからかかってきなよ!」
ケイトがそう言うので、俺は遠慮なくやらせてもらう事にした。
「それじゃ行くぞ」
特別な事はせず、手に持った木刀で上段から斬りかかる。
一瞬の後、ケイトがなんとか俺の剣を受け止めた。
「は、は……ははっ! これは剣聖の僕も驚きだ」
俺はにやりと笑って返す。
「そうか? だが、これはまだ小手調べだ。行くぞ……奥義、光の翼!」
勇者の奥義、光の翼。ハービアの加護とジョブがロードになった事で、俺は勇者パーティメンバーの技全てを使えるようになったのだ。
聖魔法の光を纏いながら猛スピードでケイトに斬りかかる。
これならどうだ!
「な、なんで魔法戦士のケインがその技を使えるんだ!? だけど残念! 僕は剣聖だ、スピードでかわす!」
光を纏いながら突っ込むも、ケイトはぎりぎりかわしてみせた。
技は同じでも、経験が浅い分リヒトほど使いこなせていないのかもしれない。
それに、ケイトはリヒトの技を何回も見ているから、既に攻略法を身につけているのかも。
それなら……
「今度はこれだ! ソニックブレード!」
「うわぁぁぁぁ、ずっこいよ、ケイン! リヒトの技の次は僕の技じゃないか! だけど……その技は僕の方に分がある。ソニックブレード!」
ケイトも同じ技を繰り出してきた。
音速を超える剣戟がぶつかり合う。
「さすがに剣聖だな……このままじゃじり貧だ。ならば……ホーリーウォール」
「って、今度は聖女の結界!? いくらなんでも、それはずるすぎるよ!」
聖女の結界で身を守りながら、剣聖の技ソニックブレードで攻撃。
ケイトが防御できない分、俺の方が優勢だ。
結局、その差が徐々に出てきて、ケイトは追い詰められ決着した。
「どうやら、俺の勝ちだな」
ケイトは素直に負けを認めつつも不満顔だ。
「確かにケインの勝ちだけどずるいよ。何それ? 一人で勇者パーティ全員の魔法や技を使えるなんてさあ……どうすればそんな事ができるようになるんだ」
他の皆も戦闘中は呆然としていたが、そこは気になっていたらしく顔をずずいと近づけてくる。
俺はケイトや仲間達に正直に話した。
「ロード? それって、三職を超える伝説のジョブじゃない? ハービア様に頼ってそんなこすい真似していたんだ。見損なったよ、ケイン」
そう言ってケイトが詰め寄ってきたので、俺は反論する。
「いや、それを言うなら、今までは剣聖っていう俺よりいいジョブだったケイトがずるしていた事になるんじゃないか?」
「いいじゃん! 僕は女の子だよ。か弱いんだから、そのくらいのハンデがあって当たり前じゃないか」
「そうですね……」
思わず敬語になってしまった。
か弱い……か弱いね。俺からしたら、勇ましく残念な女の子なんだが。何しろこいつは下手な男より女にモテるほどだ。
「何か言いたい事があるのかな? ケイン」
俺はため息をついて、首を横に振る。
おかしいですね……頭にたんこぶはできているけど、特に大きな問題はなさそうです。
あたし――メルルは風呂場に運ばれたケイトを見ながら首を傾げます。
こんな怪我ならヒールの魔法もいりません。
なのに、あの剣聖のケイトが鼻血を出しながら気絶しています。
しかも、結構な汗を流しており、鼓動が速い。なぜか、顔はニヤニヤしていますが。
あたしはケイトの頬をぺちぺちと叩きます。
「ほら、ケイト、起きてください」
「ううん……ケイン、駄目だってばぁ……」
うん、ただいい夢を見ているだけのようです。
水でもかけて起こせば大丈夫。
バケツで水を汲んで、ケイトの顔にぶっかけます。
「冷た!? 何なにどうしたの? あれ……僕、ケインと木刀で練習していて……」
あたしはため息をついて尋ねます。
「何が起きたらこうなるのですか? 剣聖ケイトが気絶するなんて」
「おかしいんだよ! ケインに見つめられたり、触られたりすると体が火照っちゃうんだ」
ケイトはまくし立てます。でも、信じられない。
「まさか、そんな事ないと思います」
「そうかな?」
「確かにケインはかっこいいけど、それで体に異常が起こるなんて……」
「まあ、僕の勘違いならいいんだけど……」
ひとまずケイトに体を拭かせて、あたしは一足先に皆の待つリビングへと戻りました。
しかし、確かに妙ですね。
さすがに見られただけで体に異常が出るのは勘違いだとしても、剣聖であるケイトがあの程度の怪我で気絶するわけがありません。
そもそも彼女が木刀でたんこぶを作るのもありえない話です。
「メルル、どうだった? ケイトは大丈夫だったかな」
「ケイン、大丈夫……って」
嘘でしょう。
ケイトが言っていた事は本当だったのですか?
ケインがもの凄く凛々しく見えます。
元から好きだから、なんてものじゃない。まるで超強力な惚れ薬を呑まされた気分です。
「メルル、どうしたんだ? ケイトは大丈夫だったのか」
もう一度同じ事を尋ねてくるケインに、あたしは慌てて答えます。
「あ、ああ。あははっ、ケイトですね。彼女なら大丈夫。少し打ちどころが悪かったんじゃないですか? すぐに目覚めました。今は部屋に戻っていると思います」
「そうか、よかった。メルル、ありがとう!」
そう言うとケインは私の手を強く握りしめてきました。
「ひゃぁい……あっ、ごめんなさい!」
思わず変な声が出てしまいました。
「あっ、俺こそごめん。いきなり手を握るなんて」
「べ、別に嫌じゃないからいいですよ」
いったい、何が起きているというのですか?
ケインと目が合うだけで顔が熱くなるし、汗が止まりません。
「どうしたんだ、メルル。顔が赤いけど熱でもあるのか?」
「な、なんでもないです! 本当になんでもありません」
「そう、ならいいんだけど……」
あたしはなんとか笑顔を作って頷きます。
「はい、あたしは大丈夫ですから。平気です」
いったいあたしはどうなってしまったのでしょう?
ケインを見ているだけで、さっきから胸はドキドキして、汗が噴き出てきます。
ケインの事は大好きだし、頼りがいもあるし、素敵だと思ってるけど、ここまで体に反応が出た事はないです。
とりあえず、ケインから離れないと……
「ケイン、大丈夫だとは思いますが、一応ケイトの部屋に様子を見に行ってきます」
「ああ、わかった」
ケイトが言った事は間違いではありませんでした。
これからどういう顔でケインを見ればいいのでしょう?
不安で仕方ないです。
◇◆◇◆◇
結局、ケイトの騒動は俺――ケインの不注意が生んだアクシデントだった。
俺はロードになった事で、異性に触れると性的な快感を与えてしまう不便な体になったのを忘れていた。
ともあれ、なんとか騒ぎが収まってから数日後――俺はいつもの軽い訓練を終え、午後はパーティハウスでゆっくりする予定だった。しかし、そんな時に限って、王城から呼び出しがかかった。
ハウスの前に王家の馬車、それもユニコーンに引かせる王家の特殊馬車だ。
こんな豪華な馬車は貴族どころか、王族でもそうそう乗らない。
そんな王家の馬車の周りを白馬に乗った騎士二十名が固めていた。
これが特別な待遇である事は誰が見ても明らかだ。
「英雄王ケイン様、お城でハービア様がお待ちです」
そうか、俺は英雄王……王より上の存在なんだ。
だからこその待遇か。
今はっきりと自覚した。
騎士達はしっかりと跪き頭を垂れている。
ただ、俺はあまりこういうのは好きではない。
「あの、やめてもらえる?」
俺がそう伝えると、代表の騎士が首を横に振って言う。
「何をおっしゃいますか? あなたこそ王の中の王、天使長が認めた偉大なるお方なのです。跪くのは当たり前でございます」
「俺は、王でも剣を取り、君達と共に戦い共に酒を飲む。そういう王になりたいんだ。だから正式な場所以外での儀礼は不要だよ。今日は受け取っておくけど」
「はっ、ありがたき幸せ」
まだ、堅いけど仕方ないな。
さて、問題は王城に俺一人で行くか、誰かを連れて行くかだ。
リビングに皆を集めて見回すが、やっぱり誰も目を合わせない。
絶対に行きたくない、そんな思いが滲み出ている。
俺だってそう言いたいところだけど、相手はハービアだ。問題を起こしてもまずい。
ここはいつでも付き添ってくれるシエスタだけにしておくか。
彼女は腰が低いし、安心してハービアに会わせられる。
「シエスタ、今日は頼むよ」
「はい、ケイン様」
返事はいいが、顔は青ざめているな。
まあ、天使長に会うっていうのに怯えない方がおかしいか。
俺がシエスタを連れて外に出ると、先ほどの騎士が歩み寄ってきた。
「それでは、ケイン様、シエスタ様、馬車へどうぞ」
シエスタはおどおどしているが、一応君は侯爵なんだから、もう少し堂々としよう。
かく言う俺もハービアに会うとなると憂鬱だけどな。
「これはこれは、ケイン殿にシエスタ殿、よくぞ来てくださった」
王城に到着すると、ハービアの傀儡、国王アレフド四世が迎えてくれた。
それにしても、国王はやつれているな。ハービアにいびられているのかもしれない。
ふと横を見れば、シエスタはシエスタで大変な事になっている。
王様に直々に挨拶なんて経験、そうはないよな。
「ア、アレフド王……こ、こ、こんにちは」
がちがちのシエスタに、国王も思わずといったように苦笑いしている。
「よいよい。あなたはこの国の真の王であるケイン殿の腹心。肩書きこそ侯爵だが、実質上の権力は私より上ですからな。気さくに話してくだされ……それに」
「それに……なんでしょうか?」
「戦メイドが本気で暴れたら、ケイン殿以外止められません」
「わ、わたしはそんな事はしませんよ!」
確かにここにいる騎士じゃもう止められないな。
国王は明るい表情を浮かべる。
「ただの冗談ですから、気になさらないでください。さあ、ハービア様がお待ちですので、すぐに向かった方がよいかと」
俺は頷いて礼を言い、王城内にあるハービアの部屋に急いだ。
きらびやかな装飾が施された部屋で、ハービアは俺達を待っていた。
「久しぶりね、ケイン」
「ハービア様、お久しぶりでございます。ご機嫌はいかがでしょうか」
俺が少し硬くなりながら応えると、ハービアは長く美しい銀髪を揺らして不満げに言う。
「堅苦しいのはいいわよ。それよりもあなたは私の下僕なんだから、もう少し頻繁に顔を出しなさい」
「かしこまりました」
「ふん……あらっ、そちらはケインのお仲間?」
ハービアはシエスタの方を見て尋ねた。シエスタがぎこちなく頭を下げる。
「初めまして。シエスタと申します」
「よろしく。あなた、ちょっといいかしら」
「はい?」
ハービアはいきなりシエスタの頭に手を置くと、確認するように言う。
「なるほど。あなたは自分のジョブにコンプレックスを感じているのね?」
シエスタはハービアに図星を指されたみたいだ。
「!? さ、さすがは天使長様です。簡単にわたしの意識が読み取れるのですね」
「そうね。さて、それじゃあ、あなたのジョブを変えてあげましょう」
ジョブは生まれた時に決まる職業のようなものだが、ハービアはそれさえも変える事ができる。
かつて、俺のジョブを魔法戦士からロードにしたように。
ハービアが〝ジョブ交換〟と唱えると、淡い光がシエスタを包み、そして収まった。
こんな事ができるなら、人の人生なんて簡単に変えられてしまうな。
俺は恐る恐る尋ねる。
「あの、ハービア様。シエスタのジョブは何になったのですか?」
「その娘の二つ名、戦メイドなんでしょう? だから〝戦乙女〟のジョブをあげたわ」
「初めて聞きますね……戦乙女とはどんなジョブなんでしょう?」
「確かに最近はあまりいないわね。剣や槍でなく杖で戦うのに特化したジョブ、といったところかしら」
するとシエスタが、がばっと頭を下げた。
「ありがとうございます、ハービア様! 本当にありがとうございます!」
ハービアは笑顔で手をひらひらと振る。
「いいのよ。その分ケインに頑張ってもらうから」
ちょっと待て、聞いてないぞ。
俺の事はお構いなしにハービアは続ける。
「今度、剛腕があなたに会いに来るらしいからその時はよろしく」
俺は首を傾げて尋ねる。
「剛腕? 魔族の四天王がなぜ……」
「あなたがロードになったってつい口を滑らせたら、戦ってみたいって」
「剛腕が戦いに? ハービア様、それはいくらなんでも」
マジか? このままじゃ俺は死ぬぞ?
剛腕は魔族の四天王の一角だが、その実、ハービアと同じく天界の住人だ。
天使長であるハービアと武神である剛腕は魔王討伐に挑んだものの、魔の軍門に下った。
だが、魔王に負けたとはいえ、剛腕は武神と呼ばれる武力を司る神。
そんなものと戦って無事に済むはずがない。
「申し訳ないわね」
ハービアは言葉とは裏腹に、微塵も謝る気がない表情でこちらを見ている。
俺はため息をついて尋ねる。
「あの……確かハービア様は以前、剛腕の攻撃が三回俺に当たったら死ぬって言ってましたよね」
「ええ、たぶん一分も持たないんじゃないかしら?」
「それなら、なんで剛腕は俺と戦いたいんですか?」
どう考えても俺が惨めに倒されるだけで、剛腕は何も得るものがないと思うが。
ハービアは答える。
「あなたが人類最強だから」
「強い人が好きなら、また魔王とかと戦えばいいのでは……」
「それは無理よ。ドラゴンとトカゲじゃ勝負にならないわ」
そんな……武神である剛腕がトカゲ。なら魔王はいったいどれほどの強さなんだ。
「あなたくらいがちょうどいいのよ。それに、その子にジョブをあげたのは、私を楽しませる駄賃。先に報酬をあげたのだから断るなんて言わないわよね?」
なんだかとんでもない事に巻き込まれた。
今までで最強クラスの悪寒が、俺の背筋を走った。
それから、数時間後――
屋敷に戻った俺は頭を抱えていた。
いつからこうなってしまったのか。
四天王のスカルを倒し、その後は悠々自適な人生を歩むはずだった。
リヒト達の事を忘れ、幸せな人生を始めるつもりだった。
確かに酷い追い出され方だったが、あいつら勇者パーティと俺には大きな違いがある。
奴らは名誉と引き換えに、死の運命に縛られている。そしてそこからは絶対に逃れられない。
対して俺は名誉こそないが、縛られず自由に暮らせる。
どちらがいいかは誰だってわかる。
誰もが俺の方がいいと、そう言うだろう?
だが、俺はどこかで選択を間違えたのか、英雄王という名誉を手に入れてしまった。
そのせいで俺はまた、運命に縛られた。
いや、理由はわかっている。ハービアを攻略しなければよかったのだ。
それこそ、腰を抜かして逃げ出し国王に泣きつけば、貴族の地位はなくなるかもしれないが、こんな事にはならずに済んだ。
俺が中途半端にハービアと取引した結果、彼女が実質的にこの国の王になってしまった。
あの後、剛腕とどのように戦うのか、ハービアと少し話した。
簡単に言うと、剛腕は四天王の一人としてこの国に攻めてくる。
そして、俺がハービアの加護を受けながら一人で戦う。
ここがミソだ。
誰も巻き込まずに一人で戦わないといけない。
武神である剛腕は俺と心おきなく戦いたいらしい。そのため、他の人間を交えず俺が一人で戦場に来る事をご所望だそうだ。
パーティの仲間には力を借りられない。
ハービアがいるからたぶん死なない。彼女は死者をも蘇生させる術を持っているからだ。
だけど、皆の目の前で死ぬほど痛めつけられるのは確実。
絶望しかないな……剛腕にとって俺は蟻も同然だ。
しかし、ハービアには〝私を楽しませろ〟と言われている。
一瞬で倒されてはまずいだろう。
だが、いい考えが何も思いつかない。
「ケイン様、難しい顔をしていますね」
シエスタが心配そうに声をかけてきた。
「ああ、さっきの話を聞いただろう?」
「はい。ですが、わたしも戦乙女のジョブを身につけましたし、少しは役に立てるかもしれません」
「それは無理だよ。これは俺一人でやらなくちゃいけないんだ。ハービア様もそう言っていた」
「そうでした……命は保障するとハービア様はおっしゃっていましたが……」
「まあ、死なないだけましかな。まだ日にちはあるから、少しは戦えるように頑張るさ」
俺はなるべく明るく聞こえるように声に力を込めた。
シエスタもうんうんと頷く。
「はい! 一緒に戦えないなら、せめてバックアップさせてください」
「そうだな、戦いには参加させられないけど、これからの訓練は皆に手伝ってもらおうかな」
たぶん、これが本当の意味でのパーティ自由の翼の最終戦だ。
これさえ乗り切れば、もう大丈夫。大丈夫……だよな?
それに普通なら武神なんていう雲の上の存在と戦う機会なんてない。
魔王より弱いとはいえ、武の神が相手をしてくれるのだ。
人間でありながら神が稽古をつけてくれる。
それは凄く幸せな事……そうとでも思わなければやってられない。
だけど、ただやられるのではなく、少しくらいは食い下がりたい。
そのためにもメンバーに教えを乞おう。
剣聖のケイト。
クルセイダーのアイシャ。
アークウィザードのアリス。
アークプリーストのメルル。
ポーターのクルダ。
戦乙女のシエスタ。
ジョブが違えば戦い方が違う。
武神はその特性上、あらゆる戦い方を窮めていると考えられる。
俺が使える技や魔法だけでは本当に秒殺されかねない。
足りない分は皆との訓練で埋める。
人生を楽しむためにパーティを作ったのに、こんなハードモードになるなんて思わなかったよ。
俺はメンバー全員をリビングに集めて事情を説明した。
すると、ケイトが呆れたように言う。
「あのさあ、ケイン。君は僕一人にすら勝てないんだよ? この前はたまたま僕が不覚を取ったけど、剛腕相手なんて敵うわけがない」
「私も同意だわ。なんでそんな事を引き受けちゃったのよ」
アリスも同意見のようだ。まあ当然の反応ではある。
「理由は話しただろ。もうどうしようもないんだ。ひとまず最初はケイトと一対一でやらせてくれ」
「はあ……わかった。一発入れられた借りもあるし、いいよ。胸を貸してあげる」
「ああ、頼む」
その後、俺達はいつも訓練に使っているパーティハウスの庭に移動し、ケイトと向かい合った。
「よし! それじゃ、先手を譲ってあげるからかかってきなよ!」
ケイトがそう言うので、俺は遠慮なくやらせてもらう事にした。
「それじゃ行くぞ」
特別な事はせず、手に持った木刀で上段から斬りかかる。
一瞬の後、ケイトがなんとか俺の剣を受け止めた。
「は、は……ははっ! これは剣聖の僕も驚きだ」
俺はにやりと笑って返す。
「そうか? だが、これはまだ小手調べだ。行くぞ……奥義、光の翼!」
勇者の奥義、光の翼。ハービアの加護とジョブがロードになった事で、俺は勇者パーティメンバーの技全てを使えるようになったのだ。
聖魔法の光を纏いながら猛スピードでケイトに斬りかかる。
これならどうだ!
「な、なんで魔法戦士のケインがその技を使えるんだ!? だけど残念! 僕は剣聖だ、スピードでかわす!」
光を纏いながら突っ込むも、ケイトはぎりぎりかわしてみせた。
技は同じでも、経験が浅い分リヒトほど使いこなせていないのかもしれない。
それに、ケイトはリヒトの技を何回も見ているから、既に攻略法を身につけているのかも。
それなら……
「今度はこれだ! ソニックブレード!」
「うわぁぁぁぁ、ずっこいよ、ケイン! リヒトの技の次は僕の技じゃないか! だけど……その技は僕の方に分がある。ソニックブレード!」
ケイトも同じ技を繰り出してきた。
音速を超える剣戟がぶつかり合う。
「さすがに剣聖だな……このままじゃじり貧だ。ならば……ホーリーウォール」
「って、今度は聖女の結界!? いくらなんでも、それはずるすぎるよ!」
聖女の結界で身を守りながら、剣聖の技ソニックブレードで攻撃。
ケイトが防御できない分、俺の方が優勢だ。
結局、その差が徐々に出てきて、ケイトは追い詰められ決着した。
「どうやら、俺の勝ちだな」
ケイトは素直に負けを認めつつも不満顔だ。
「確かにケインの勝ちだけどずるいよ。何それ? 一人で勇者パーティ全員の魔法や技を使えるなんてさあ……どうすればそんな事ができるようになるんだ」
他の皆も戦闘中は呆然としていたが、そこは気になっていたらしく顔をずずいと近づけてくる。
俺はケイトや仲間達に正直に話した。
「ロード? それって、三職を超える伝説のジョブじゃない? ハービア様に頼ってそんなこすい真似していたんだ。見損なったよ、ケイン」
そう言ってケイトが詰め寄ってきたので、俺は反論する。
「いや、それを言うなら、今までは剣聖っていう俺よりいいジョブだったケイトがずるしていた事になるんじゃないか?」
「いいじゃん! 僕は女の子だよ。か弱いんだから、そのくらいのハンデがあって当たり前じゃないか」
「そうですね……」
思わず敬語になってしまった。
か弱い……か弱いね。俺からしたら、勇ましく残念な女の子なんだが。何しろこいつは下手な男より女にモテるほどだ。
「何か言いたい事があるのかな? ケイン」
俺はため息をついて、首を横に振る。
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