43 / 51
第43話 新しい家
しおりを挟む「地下室つきの家に住みたいのですか? 悪いことは言いません、やめた方が良いですよっ!」
お金の心配が全く無くなったので俺達は帝都の冒険者ギルドに部屋の斡旋をお願いしに来た。
その部屋探しの条件の一つが、可能なら地下室がある部屋だった。
これは霊子とメリッサの希望だ。
霊子は死霊憑きだからか、暗いジメジメした場所の方が好ましいそうだ。
メリッサは霊子程の拘りはないが、そういう場所があるなら嬉しい。
そういう話しだった。
2人が好ましいと言うのなら、出来るだけ要望は叶えてあげたい。
「何故ですか?」
「地下室付きの部屋は、凄く寒いですし、湿気が多くカビやすいんですよ……あるか無いかと言えばありますが、お勧めできません」
「ちなみに、その部屋は獣人と一緒でも借りれますか?」
「お貸しできると思いますよ! 何しろ2年以上借り手がつかなくて大家さんも困っていましたから」
「それで、その部屋にはお風呂とかついていますか?」
「ええっついていますが、それも失敗みたいで、お風呂や台所、洗濯場を室内につけた事で湿気が凄いと聞いています。前に住んでいた人を『体を壊すまえに引っ越す』といって引っ越してしまいました。その後は何人もこの家を見たのですが、誰も住む人間はいませんでした」
確かに……前の世界の地下室が快適なのは技術が進んでいるからだ。
昔の地下室はジメジメしていて場合によっては水たまりすらある。
確か、そんな話を聞いた事がある。
だが、その部屋こそが、霊子やメリッサの理想の家なのだろう。
「それじゃ、借りるかどうか別にして、見させて貰って良いですか?」
「それは構いませんよ……地図とカギを渡しますから見て来て下さい」
前のギルドでは案内をしてくれたが、どうやら違うらしい。
「案内とかはしてくれないのですか?」
一瞬、受付嬢は嫌な顔になった。
「その物件の家賃は一か月銀貨1枚と銅貨5枚なんです! それでも決めてくれるなら良いのですが、沢山の方をお世話して決まらなかったので……多分リヒト様も見たらすぐに帰ってくると思いますよ」
相当ひどい物件のようだな。
◆◆◆
ついてみたら、言っていた意味が解った。
思ったよりも家は大きい。
部屋では無く一軒家。
それもかなり大きい。
豪邸と言ってもおかしくはないレベルだ。
だが、この見た目……
「リヒト様、アリスにはお化け屋敷に見えます」
だよな……廃墟に見える。
「確かに……」
「リヒト様、此処凄く良さそうですわ。早速入って見ましょう」
「これはそそられますね」
メリッサと霊子は気にったのか嬉しそうだ。
幽霊に死霊憑き……お化け屋敷が良く似合う。
まぁこの二人が住んだ時点で、今は違っていても、もうお化け屋敷だ。
2人はドアを開けて先に入っていってしまった。
「リヒト様ぁ~」
「アリス、入ろうか? 今現在でも俺達の仲間には幽霊みたいな存在が2人もいるんだ。ここが本物の幽霊屋敷でも問題無いだろう?」
「アリス、すっかり忘れていました! あはははっそうでしたね」
アリスが汗をかいているのは気のせいだろうか?
アリスと一緒に中に入ると……カビ臭く、埃だらけだが、思ったよりは綺麗だ。
だが、何故か謎の霧の様な白いもやがたっていて、入った瞬間からひんやりとする。
日当たりは悪く、床下からも冷気が漂ってくる。
受付嬢が言っていた事が何となく解る気がした。
確かに、何故か此処を借りたいという気が削げる。
だが、それでも俺にはこの家が当たりの様に思えた。
「思ったよりは良いじゃないか? 部屋数も多そうだしな」
「確かに大きいですが、日当たりも良くありませんよ!」
その点に関しては確かに前に住んでいた家の方が良いな。
「此処は1階だから2階に行ってみよう」
アリスと一緒に2階に上がってみたら……特に日当たりが悪いと言うことは無さそうだ。
別に床が抜ける様な事も無い。
「アリス、2人はジメジメした部屋が好みみたいだから、2階の好きな部屋をアリスが選んで良いよ? どうかな?」
「アリスは屋根があって雨がしのげれば何処でも構いませんよ?」
なんだか凄く不憫だ。
今日の夜は良い肉を奮発してやろう。
「いや、沢山部屋があるんだから、好きな部屋を選んで良いんだ」
「本当ですか?」
「ああっ、好きな部屋を選んでくれ……俺は下の方を見て来る」
正直、俺は部屋に拘りがないから余りもので良い。
アリスは尻尾を振りながら部屋のドアを開けて入っていった。
俺も多分2階だな。
「はい」
アリスから返事が来たのでそのまま1階に降りていった。
1階に降りていくと……
『ウォォォォォォォ―――ン』
大きな恨み深い男の声が下から聞こえてきた。
「どうした?」
「地下に行ったら、変な奴がいましたので霊子と一緒に退治したのですわ」
「なんか青白い親父が人生を儚んで文句を言ってきたから問答無用で消滅させました」
「消滅?」
祓ったとかじゃなくて消滅?
跡形も無く消し去った……そう言う事か?
「大した恨みがあるわけでないのに『世の中全部が恨めしい』とか『俺のテリトリーに入ってくるな!』とか偉そうに言ってきましたわ。だから、私が取り押さえて、霊子が魂を消滅させてしまいましたわ」
「私、死人憑きですから、ただの幽霊なんて相手になりませんから……」
メリッサが少し震えたように見えたのは気のせいか?
「あの、霊子さん……」
「メリッサさんは仲間ですから何もしませんよ?」
「そ……そうですわよね」
気のせいか白いもやのような靄が晴れた気がする。
多分、これで住みやすい家になった筈だが、ギルドには黙っておこう。
「リヒト様ぁ、今声が聞こえた気がするのですが」
「アリス、ああっ、なんでもないよ……ちょっと出たみたいだけど、メリッサと霊子がやっつけちゃったから」
「そうですか? アリスは2階の一番奥の部屋が良いのでそこを選んでも良いですか?」
「別に構わないよ! 二人は何処が良いか決まった?」
「私はも霊子も地下が気に入ったので地下の部屋が希望ですわ」
「地下に2つ部屋があったから、メリッサと私で分けて良いかな?」
地下は無い。
「勿論、良いよ。 それじゃ俺はアリスが奥なら俺は2階の手前を選ぼうかな! それじゃ、この家を冒険者ギルドに頼んで借りるから、明日は買い出しに行こう」
「はい!」
アリスが返事すると二人も横で頷いた。
すぐに冒険者ギルドに顔を出し、この家を借りる契約をした。
流石に前の家と違い、この家は買い揃える物が多いな。
買い揃えられるまで暫くは宿屋だな。
30
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
【リクエスト作品】邪神のしもべ 異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!
石のやっさん
ファンタジー
主人公の黒木瞳(男)は小さい頃に事故に遭い精神障害をおこす。
その障害は『美醜逆転』ではなく『美恐逆転』という物。
一般人から見て恐怖するものや、悍ましいものが美しく見え、美しいものが醜く見えるという物だった。
幼い頃には通院をしていたが、結局それは治らず…今では周りに言わずに、1人で抱えて生活していた。
そんな辛い日々の中教室が光り輝き、クラス全員が異世界転移に巻き込まれた。
白い空間に声が流れる。
『我が名はティオス…別世界に置いて創造神と呼ばれる存在である。お前達は、異世界ブリエールの者の召喚呪文によって呼ばれた者である』
話を聞けば、異世界に召喚された俺達に神々が祝福をくれると言う。
幾つもの神を見ていくなか、黒木は、誰もが近寄りさえしない女神に目がいった。
金髪の美しくまるで誰も彼女の魅力には敵わない。
そう言い切れるほど美しい存在…
彼女こそが邪神エグソーダス。
災いと不幸をもたらす女神だった。
今回の作品は『邪神』『美醜逆転』その二つのリクエストから書き始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる