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第54話 【過去】塔子SIDE これだから面白い

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ハァ~このパーティに私がいる意味があるの?

私の名前は南条塔子。

南条財閥の一人娘で、なんでもできる存在。

別に盛っている訳じゃないのよ。

『なんでも出来る娘』というのは周りが言っている事だわ。

お金持ちだから?

確かに、それもあるかも知れないわ。

天下の南条財閥の娘だから…….それは認めるわ。

だけど、お金があるだけでなんでも一番にはなれないと思わない。

私は、それが出来る。

家にも学校にもトロフィーやカップ、盾なんかが山ほどある。

だから、つまらない。

だって、ちょっと頑張れば、大抵の事ができるんだから。

南条の家は代々、小学6年生になると300万円貰ってそれで成人まで生活する。

そういう決まりがあります。

それで学費を賄いながら成人まで生活します。

家はあり食事はでるけど、その他の事は全部それで賄います。

だから、投資がまともに出来ないと生活が出来なくなります。

その300万円を投資で増やし、気がついたら12億円。

だから、もう何もしないでも生活が出来ます。

1人暮らしをしたかったのですが、お父様が許してくれなかったので、南条の豪邸がある敷地から120坪ほど土地を買って家を建てて過ごしています。

そんな訳で、元の世界でも凄く恵まれて生活していましたの。

ですが……そんな生活、楽しくも何ともありません。

だって、夢は簡単にかなってしまうのですから。

なんでも出来るからこそ詰らない。

それが、私の人生です。

ですが……

そんな私に『異世界転移』という全く解らないものが紛れ込んできました。

今の世界で全てが面白くなかったから、これは私にとってのチャンスです。

ワクワクがとまりません。

ですが、王宮での測定の時です。

「すごい、塔子様のジョブは聖女です!」

「そうですか……」

此処でもまた退屈な日々の始まりそう思っていました。

財力こそありませんが、私の能力は健在。

この世の中はまるでイージーゲームみたいです。

『詰らない』

また、それがこの異世界でも繰り返される毎日。

そう思っていましたが……

平城さんが理人くんが『強奪』という特殊なスキルを持っている。

そう、私達に言ってきました。

熱くその事を語る彼女の姿はいつもの彼女の姿では無く、本当に焦っているのが解りました。

結局、大樹や大河、聖人までもが、彼女の説得を聞き届け、私達は王や王女に彼の……処分をお願いしました。

王や王女は『勇者パーティ』からの緊急要件だからとすぐに動き彼は……処刑されてしまいました。

だが、これが大きな間違いだったのです。

◆◆◆

理人くんの処刑が終わり。

王や王女に再び会った時です。

「『強奪』のスキルの何処が問題なのじゃ?」

急に王が言い出しました。
「はっ?!スキルを奪えるスキルですよ? しかも盗賊…危ないに…」

「そうだ!仲間にそんなスキルを使われたらどうなった物か、不安です」

「俺も大樹に同感だ!」

「僕も同じです」

4人が王様に抗議しています。

私も平城さんから聞いた話では、かなり物騒な物だと聞いていました。だから、勿論同意しました。

「私も同じですわ」

マリン王女が顔をかしげながら答えます。

「あの…何を言っているのか解りませんが『強奪』のスキルは使う時に目が緋色に変わりますから顔を隠してなければ使っているのが解ります! それに、持っていると解れば、鑑定をこまめにしますから、そこ迄怖いスキルじゃありません…それに貴方達の6人目のパーティメンバーになるのが『強奪』持ちでした…」

えっ! 平城さんから聞いた話と全然違います。

「あの…どういう事でしょうか?」

嘘ですよね。

もし、そうなら私達は無実の人間を殺した事になります。

此処は、黙って話を聞きましょう。

「「「「…」」」」

「盗賊のジョブ持ちは、斥候として必要です! 強奪のスキル持ちは貴方達が旅で快適に暮らせるように必要なスキルを囚人から奪わせます…例えば家事を獲らせて生活の向上などをはからせます…それに貴方達が戦う強敵にはやっかいなスキル持ちがいます…そういう相手への切り札です」

「ちょっと待て!いないと問題になるのか!」

大河が慌てだしました。

魔王討伐の切り札になる人物……それが理人だったのです。

「例えば、魔族の幹部に『切断』のスキル持ちがいます…これを使われたら、最後、四肢の何処かが切断されます。彼が居れば先にスキルを奪う事ができます…ですがいない現状誰かが手足を失う可能性が高いです…他にも魔王が使う『黒のカーテン』や四天王の使う『失明』恐ろしいスキルが沢山あるのです!それに対抗するのが『強奪』です」

「大樹、不味い事になったんじゃないか?」

「大樹ヤバいよ」

「ヤバいわ」

平城さんは顔を真っ青にして話しません。

どう考えても、この先大変な事になる。

それだけは良くわかりました。

可能なら……魔王討伐じたいを辞退する。

それが出来るなら、それに越した事はありません。

「そんな悪い条件で俺達は戦いたくない!」

「そうよ…無理だわ」

マリン王女の目つきが変わりました。

同じ女だからわかります。

これは、そうネズミやカエルを見る蛇の目。

『逃がさない』そういう目です。

「貴方達の先生の赤川殿から聞きましたよ? 貴方達の世界でも罪の無い者を殺せば重罪だそうですね? この世界も同じです!貴方達は勝手な判断で罪の無い者を殺しました…しかも緊急案件として『王権』まで発動させて…勇者パーティとして戦うなら不問にしますが…戦わないならギロチン送りです」

「そうじゃな……無罪の者を手にかけたのだ、死刑も仕方なかろう」

「「「「「そんな」」」」」

取り敢えず驚いたふりをしておきましたが……

無実の人間を自分達の馬鹿な考えで殺してしまったのですから、その対価を求められるのは当たり前の事です。

前の世界なら、未成年とは言え刑務所案件です。

「お好きな方をお選び下さい! 勇者パーティとして戦うか……それとも処刑かを」

ほらね……

「殺人は重罪じゃ、だが勇者パーティは特別な存在、その罪を許そう…但し、その生涯は魔王討伐に捧げる覚悟があればじゃ」

権力者なんてこんな者。

私のお父様やおじい様もきっと同じ状況なら、同じように追い込むはずです。

「解りました…皆もそれで良いよな?」

「「「「はい」」」」

自分達が選んだように見せかけて、実は選択が無い。

流石王族、狸と女狐と言った所ですか。

ですが『面白い事』になりましたね。



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