5時から俺は！ 地獄の様な異世界から帰ってきた俺が更に地獄の様な生活を送りながら希望を見出す物語。

第55話 【過去】 勇者SIDE 地獄の始まり

最早、このパーティは終わっている。

聖剣が使えない勇者。

聖魔法が使えない聖女。

硬いものが斬れない剣聖。

闇魔法が使えない大魔道。

唯一真面なのは大賢者の聖人だけ……

俺と大河がまつもに戦えない。

これは実際に詰んだ状態だ。

魔王討伐の最大の武器は聖剣なのに、その聖剣が使えない。

騎士の人たちから聞いた情報だと、聖剣を持った勇者は魔王相手の切り札だが、使えないという事は、余程実力をつけないと殺される未来しかないみたいだ。

事実、俺は勇者なのに、聖剣を手にしても光り輝かないで、凄く重く感じた。

結局、聖剣では無く他の剣を使わざるしか無かった。

だから、俺は『ひたすら頑張り努力するしかない』

それは大河も同じだ。

俺が魔王相手の切り札なら、大河は魔王幹部やドラゴン族、巨人族ようの切り札だった。

硬い物が斬れる。

それが剣聖の特徴。

つまり、大河がレベルが上がっていけば、ドラゴンだろうが巨人だろうがなんでも真っ二つにしてしまう凄い男になる筈なのだが、その元になる『斬鉄』が無い。

だから、普通の剣士と変わらない。

そして回復の肝は塔子だが、塔子は聖魔法がつかえず、回復が出来ない。
そればかりか、敵の攻撃から仲間を守るウオール系の魔法が出来ない。

これは、命に係わるような大怪我をした場合、そのまま死ぬかも知れない。

まだ、人間の領地で戦っている分には良いが、魔族領から先支援を受けられなくなってからは地獄だ。

回復がままならない。

そして平城が失った闇魔法。

これは目くらましや、状態異常を防いだり、色々と有用な魔法だ。

馬鹿な事をしたばかりにこんな状態で戦わないとならない。

だが……相手は殺してしまったんだ。

無実の罪で殺した人間に恨み事なんて言えない。

理人からしたら『殺されそうになったから反撃した』それだけの事だ。

誰だって殺されそうになったら反撃位はする。

手を出した俺達が悪い。

それに、万が一責任という話をしたところで、相手は死んでしまっている。

なんにも取れない。

現状、ひたすら頑張るしかない。

その頑張りも届かない。

普通なら三年でどうにかなる魔王討伐も、力をつけないとならないから十年計画に伸びた。

それでも勝てるかどうかは半分半分。

だからと言って人を殺してしまった罪から、魔王討伐からは逃げられない。

『もうヤルしかないんだ』

平城さんには多分、俺は優しく出来ない。

きっとこの旅で大切な物を失う。

それは、手や足かもしれないし、場合によっては幼馴染かも知れない。

俺自身、流されてしまった責任はある。

だからと言って許せるかと言えば許せない。

きっとこの旅は俺達にとって地獄の始まりだ。