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第28話 魔王 孫悟空

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「なんだお前、自分の事が良く解らないのか?」

「まぁ、そんな所です」

俺の名前は、孫悟空だ!

それを名乗れば、前の世界だったら、『そうなんだ』と頭の弱い人に勘違いされそうだが…

この世界での立ち位置が今一解らない。

孫悟空は妖怪とも仏でもあり、人間になりたがっていた。

そんな話から考えると…さっぱり解らない。

「このマモン様と拳で殴りあったんだ『魔王』って名乗って良いぜ…なぁルシファード様?」

「あの戦闘力…まだ本気では無いのだろう? 魔王の中で余に次ぐ実力の持ち主、魔王四天王…その中で1番強いマモンとあそこ迄戦えたのだ…誰も『魔王』を名乗る事に文句は言わんよ」

そう言えば、孫悟空は舎弟に牛魔王を持っていた。

そこから考えても可笑しくは無いな。

「なんだ?! 魔族の頂点なんだぞ、何で浮かない顔をしているんだ!」

「ああっ、実は俺は他の世界から来たんだが…そこでは神(仏)の使いとして扱われていたし、おぼろげな記憶では人間にもなりたがっていた…そんな記憶もある。どう生きて良いか悩んでいるんだよ」

何故、俺はこんな事を話しているんだ…相手は魔王なのに…

「ハァ~お主難儀よの~…魔王の中にも元天使って言うのも居るし、魔王であることに疲れて人間として暮らしておる者もおる…自由にすればよいんじゃよ」

「そうだ、魔族は力が全てだからな、強い奴は自由に生きられる、知能のある魔物はお前を見、畏怖して従う…経験はあるだろう? 従わない奴は力で黙らせるか逆に黙らせれば良い…お前は自由に生きて良いんだ…魔王だからな」

「そういう物ですか?」

「「そういう物だ魔王だからな!」」

沢山のご馳走にお酒…そして歓迎。

どうして、この世界の人間は『魔王』を殺そうとするのだろうか?

聞いてみるべきか?

「それで、魔王と勇者は何故戦うのでしょうか?」

「なんで、そんな事聞くんだ?」

「いえ、なんとなく…」

そう言えば、俺…女神が嫌いで聖剣をぶっ壊しちゃったしな。

「そうだな、俺達魔王…まぁ上級魔族は魔族領から余りでない、そこにずかずかと踏み込んできて、仲間を殺しながら城に上がり込み王様を殺そうとする…そんな奴殺すのは当たり前だろう?」

確かに当たり前だ。

人間社会で大量殺人をして城に乗り込み王様を殺す。

うん、重犯罪だ…確実に死刑だな。

「そう考えると…当たり前ですね」

「だろう? 確かに魔物によっては人間を襲い攫うが、それは習性で必要だからだ…一番目の敵にされるオークやゴブリンは確かに女を攫い、人間も殺すが…繁殖に人間の雌が必要だからだ、同族の雌とは何故か子が生まれにくい…それにゴブリンは見つかれば基本殺され…オークは殺され食卓に肉としてあがる。どちらもどちらだとおもわないか?」

そう言われてしまえばどっちもどっちだな。

「そうですね」

「この世の中、どっちが正しいなんて事は無い…だから自分で決めるしかねーんだよ! お前は強いんだから自由に決めれば良いんだ」

「確かにそうですね…」

何だか、目上の立派な人と話している気分だ。

体は孫悟空でも中身は学生。

謙虚に学んだ方が良い。

そう言えば…

「勇者ってどの位強いんですか?」

「そこそこやるぞ…まぁそれでも魔王と戦ったらほぼ死ぬな」

勇者と魔王だと魔王の方が不利だと思っていたんだが…

「お主、事情を良く知らぬのかも知れぬが…人間が魔王と思っている者の多くは、魔王ではない」

「魔王でない?」

「ああっ、お前は空から来たから解らないのだろうが、此処にはそう簡単には来られない…実はこの遥か手前にも城がある…皆間違ってそこに攻めてくる。実は人間が魔王って騒いでいるのはそこの魔族の事だ…まぁ上流魔族だからそこそこ強い奴が主になっている…そいつらで勇者と互角位だな…」

凄い裏話だな。

そう言えば…

「聖剣を頭にきて壊したんですが…」

「なんと…ふははははっ、これであそこの魔族ももう死ぬことはないな」

まぁ、勇者はムカつく女神の手先だし、性格の悪い大樹だからどうでも良いか。

「色々教えてくれてありがとう」

「次からは気軽に遊びに来てくれ、魔王 孫悟空」

「また手合わせしような、孫悟空」

俺は手を振り、魔王城を去った。

あはははっ魔王になってしまった。




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