親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語

石のやっさん

文字の大きさ
6 / 65

第6話 月明かりの道で

しおりを挟む
暫くすると、古馬家の使用人が美沙姉を連れてきた。

「美沙を連れて参りました」

使用人が『美沙』と呼び捨てにしている事で、如何に古馬家が美沙姉を酷い扱いをしているかが解る。

形上は権蔵の妻だが、実質は使用人以下の扱いに違いない。

「あの……旦那様、これは一体どう言う事なのでしょうか? 」

「ああっ、美沙お前とは離婚する事になった。たった今から、お前は今泉和也の物だ! 荷物を纏めなさい」

「旦那様、それはどういう事でしょうか? 私が一体……」

「ふん、もうお前は私の妻でも何でもない。 どうしてこうなったかはそこに居る今泉に聞け」

「旦那様……」

「くどいぞ! お前に話す事は何もないわ! 今泉、これで良かろう! 釣り合わない分は金で払う! これで構わないな!」

「構いません」

「そうか、正一いつまで惚けておるんだ! 許してくれるそうだ! 頭を下げい」

「和也、すまなかった。この通りだ」

和也が土下座をしている。

「ああっ、友達だろう……もう良いよ」

「ありがとうな……」

「それで、和也くん、芽瑠の事は許してくれるんだよな」

「ねぇ、良いわよね」

「構いませんよ……普通の相場の慰謝料で良いです。それでメロンの販売はどうします? そちらの事業の方をどうするかは海人さんに任せます」

「ありがとう……」

「ありがとうございます」

「ゴメンなさい……本当にゴメンなさい」

芽瑠もこちらに来て頭を下げている。

「芽瑠ももう良いから」

俺は確かに不貞はしていない。

だが、心の中に美沙姉が居た。

心という意味なら俺が先に、芽瑠を裏切っていたのかもしれない。

謝罪なんて本当は必要ない。

だが……どちらが悪いかだけは決めないといけない。

「あの、それじゃ正一くんとの結婚も良いのよね」

「もう話は終わりましたから、別に構いませんが、さっき言いましたが、正一の相手は芽瑠だけじゃないですよ? 南条真理愛さんに北条恵子さんとも関係があるみたいです。まぁそこは俺には関係ない話なので皆さんでお話くださいね」

「なっ、それは本当なのか! 正一君、婚約前の芽瑠を傷物にした上に他の女にまで……あんたって人はどう責任をとるつもりだ」

「どうするのよ……」

「正一、お前、そこになおれ!」

「権蔵さん、東条さん、それと重鎮の皆さん……俺の方の話はもう終わりました。後は関係のない話なので、これで俺達は席を外させて頂きます……良いですよね? 美沙姉、経緯は後で話すから行こうか」

「うん」

美沙姉の荷物は鞄一つで終わりだった。

本当に酷い扱いだったんだな。

煩く怒声が飛ぶ中、村の重鎮の一人長谷川さんがもう帰って良いという感じに手を振ってくれたのでお言葉に甘えてその場を去った。

◆◆◆

帰り道、道すがら美沙姉と歩いている。

月明かりで見る美沙姉は綺麗だったが、よく見ると窶れていた。

この時期にあわない長袖のシャツを着ているが、見えにくい場所に痣があった。

「美沙姉……」

「和也くん、一体なにがあったの? いきなりの事で私解らないんだけど? 旦那様と揉めたの?」

「だけど、もう全て終わったから、もう大丈夫だから」

「何があったか教えてくれる!」

俺は今迄の経緯を美沙姉に話した。

「そんな事があったんだ! だけど、本当にこれで良かったの? 芽瑠ちゃんは私と違って若くて可愛い子じゃない? 芽瑠ちゃんを許せなくても他に可愛い子いるじゃない」

「俺は美沙姉が良い」

「だけど、私は5つも年上だし、他の男に散々抱かれた汚い女だよ。本当によいの?」

「確かに最初に出会った時は俺は12歳で美沙姉が17歳。まるで子供と大人に思えたけど、今じゃ25歳と30歳だから、そんなに差を感じないと思うけど?」

「そうかな? だけど、この村じゃ『女房とわらじは新しい方が良い』なんて教訓があるじゃない? 男が年上の夫婦ばかりだよ。稀に姉さん女房の夫婦が居てもせいぜいが1~2歳、五つも年上の女房を持つ家なんてないわ」

「それは俺には関係ないよ。好きだった人が偶々年上だっただけだから」

「本当に和也くんはブレないね。どれだけ私が好きなのよ……」

「俺、子供の頃から美沙姉が好きで、しっかりプロポーズしたじゃない? 指輪じゃなくブローチだけどあれお小遣い3か月分だし、ちゃんと『大きくなったら美沙姉と結婚したいな』って気持ちを伝えたよ」

あの時は子供だった。

だけど、美沙姉の事はあの時から真剣に好きだった。

「あの時からかぁ~確かあの時って和也くん12歳じゃない?」

「そうだけど……子供なりに真剣だったんだ」

「そうだよね。真剣さに私も『和也くんが大きくなったらね』って返したのよね」

「うん」

美沙姉はポケットに手を突っ込んだ。

「あの時のブローチは今でも持っているわ。私の宝物なんだ」

「美沙姉……持っていてくれたんだ」

「うん……だって、私にプレゼントをくれた人なんて両親以外じゃ和也くんだけだからね」

「そう……あの、美沙姉、手を繋いで良いかな?」

「和也くん、手を繋ぐの……久しぶりだね。はい」

手を差し出した美沙姉の手を俺はしっかりと握った。

ただ歩くだけ……それでも美沙姉と一緒なら楽しい。





しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。 聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。 暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!? 一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...