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第47話 和也SIDE 過去~今へ
しおりを挟む俺のスーパーは思った以上に大きくなっていった。
俺は、どうしようも無い気持ちを、仕事にぶつけた。
スーパーに居て、美沙姉に逢える時。
美沙姉を見つめる事が出来る時間。
それ以外の時間は全て仕事にぶつけた。
そうしないと、自分が壊れてしまいそうになるから。
多分、一日16時間以上は働いていたと思う。
休んでも楽しめないから、休みなく働いた。
そんな俺を……
『今泉社長は凄いな……休みなく働いて』
『だから、こんな短期間で此処迄の会社が出来たんだよ』
皆が褒めてくれて評価してくれるが……違う。
俺は本当は、そんな良い人間じゃない。
俺は……復讐に憑りつかれた人間だ。
心が少し痛みを感じる。
俺は……
『俺が幸せになれないなら、美沙姉が幸せになれないなら、全員不幸になれ』
そう心の底から思っている。
そんな心の狭い人間だ。
今の俺は『自暴自棄』多分、それに近い。
それなのに、俺が思った以上に泉屋は大きくなっていく。
『自分の居場所』そう感じたからか、高橋さんを中心に社員が凄く頑張っていた。
俺がちょっと考え『スーパーの一角に薬店をつくったらどうだろうか?』そう、会議で発言したら高橋さんは田辺さんというお爺ちゃん薬剤師をスカウトしてきて……本当に泉屋の隅に薬のコーナーを作ってしまった。
診療所はそのまま薬もくれるから、あくまで市販薬の販売やドリンクの販売がメインだったが、そこから派生して気がつくと大人用おむつや介護用品を置くようになりまたもや泉屋は便利で大きくなった。
俺は仕事の傍ら……
『親の面倒や世話なんてしないんで良いんだ……幾ら大事にしても長男しか大切に思わない人たちだから』
そういう風に言いまくった。
同じ子供なのに可愛がりもせず財産一つ寄越さず、家の為に働かせる存在なんて……本当に碌なもんじゃない。
そう泉屋の社員の前で言いまくっていたら……
いつの間にか俺が『自分達を助ける為に泉屋を作ってくれたんだ』そう思われる様になった。
本当の俺はそんな優しくない。
美沙姉を虐めた世代の人間が困れば良い。
豪農の古馬本家が嫌いだから、その根本にある『農家』を壊したかっただけだ。
そして……それは現実になっていった。
しみな村の農家は数を減らした。
働き手の次男、三男を失ったせいか、農家を辞めるものが出始めた。
尤も、俺が思っていたのと違い『農業で食べて行くのが辛いから丁度良い』そう言って引退する家の方が多かったけどな。
恨まれるのを覚悟していたのに……誰にも恨まれていない気がする。
それ処か潰れた農家の人間も泉屋で働いている。
だけど……これが一体何になるんだ。
農家がどんだけ困ろうが……美沙姉は返ってこない。
スーパーが大きくなり、村が変わっても美沙姉と俺は幸せになれない。
だったら、これになんの意味があるんだよ。
美沙姉の生活は何も変わらない。
『なんの為に頑張っているんだ』
そんな時に、隣村の東条家と付き合いが始まり、芽瑠さんとお見合いをする事になった。
これは、半分政略結婚。
俺の愛した美沙姉と俺の結ばれる未来はない。
なら、これで良い……
誰でも良いんだ……よ美沙姉じゃないなら……
無邪気に笑う芽瑠さんを見て罪悪感が増した。
東条家は豪農。
権蔵と立場は同じ。
東条家に婿に入れば、なにか圧力をかけて美沙姉を解放する事も出来るかも知れない。
俺が傍にいれなくても美沙姉が幸せになれるならそれで良い。
◆◆◆
「今泉社長、随分とご機嫌ですね」
「解るか! 来週東京に行くんだよっ!」
「まさか……嘘ですよね! 私達とこの村を捨てて出て行くんですか? 頼みますから此処に居て下さい……」
「いや、違うって東京に行って美沙姉と挙式をするんだよっ! その後は憧れのハネムーンだ。良いだろう!」
「そう言う事ですか? それならおめでとうございます」
「ありがとう」
「ですが、社長水臭いですね、わざわざ東京で式を挙げなくても、此処ですれば良いじゃないですか?」
「此処でしたって意味が無いだろう……祝ってくれる人なんていないし」
「怒りますよ! 私達が居るじゃないですか? 」
「確かにそうだ……だが、此処で式を挙げるなら古馬の関係者も呼ばないと成らないからやっぱり無理だな」
「そうですね……戻ってきたら言って下さい。結婚式の二次会のノリで全員でどんちゃんしましょう」
「そうだな、戻ってきたら声を掛けるよ」
「社長……今凄く幸せでしょう」
「そうだけど!? 何故そんな事を聞くんだ?」
「いやぁ、すっかり顔から険が抜けましたね……これも美沙さんのおかげですね」
「そうだな」
あの日、奇跡的に美沙姉を取り戻す事が出来た。
あれ程頑張っても無理で、諦めかけていたのに美沙姉を取り戻せた。
未だに『権蔵さん』は許せないが、もう復讐なんてしなくて良い。
今の俺は幸せだ。
そして美沙姉もきっと幸せだ。
もし、俺も美沙姉も不幸だったら、きっと未だに殺したい。
そう想っていたかもしれない。
今が幸せだから……もう良い。
復讐なんて考えず。
美沙姉が楽しく暮せる村にしていけばよいだけだ。
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