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第57話 ツグナールSIDE 善人なのか?
しおりを挟む嘘だろう。
彼奴、マジで善人なのか?
大体、人間でもエルフでも普通は裏表がある筈。
ツバサが率いるパーティ『スノードロップ』はツバサ以外、全員が女。
他の種族に嫌われている女の寄せ集めとはいえ、普通に考えてもハーレムパーティの筈だ。
耳長族がいるし、異世界人はエルフやダークエルフが大好きだから、ババアのエルフとダークエルフを奴隷としてやったんだ。
『あの二人は実力こそないが冒険者。こき使って金を吸い上げて生活する』
『性処理奴隷として使う』
普通に考えて、そのどちらか、もしくは両方の扱いをする。
そう思っていた。
同族が奴隷としてこき使われれば、誰しもが頭にくるだろう。
同族のそれも自分の婆さんに近い女を性処理奴隷として扱えば誰しもが良い目でみない。
同族から嫌われるように仕向ける為に奴隷として送った筈なのに……
『なんであいつ等幸せそうなの?』
うちのパーティメンバーから毎日、遊び惚けているってきくし。
綺麗な服を着て、美味しい物を食べ歩いている。
そんな話しか聞かない。
アイラもアウラも俺の母親どころか祖母よりババアだが、容姿は綺麗な方だ。
恐らく、性処理として使っているか、愛人にでもしているのか。
そう思って部下に調べさせたら……
『ツグナール様、見ていて凄く気持ち悪かったです。あんな年寄りがセクシーな下着専門店に入って、クネクネしながら、凄くエッチな下着を笑顔で選んでいました。若い男をその気させるのはどれが良いの? って紫や赤の下着を……すいません、気持ち悪かったです』
『「私は二人が抱いてくれないって」良く愚痴っているのを聞いたって話を沢山聞きました』
それだけじゃない。
冒険者ギルドで手をまわして聞いてみたら。
自分が殆どの討伐をしているのに、その多くのお金は仲間の口座に振り込み、自分の口座には余りお金を入れないそうだ。
こんな人間見た事が無い。
俺は信じない。
どんな人間にでも裏表がある。
まして、彼奴は一番薄汚い人族。
『善人』のわけねー。
だが、幾ら調べても悪い話は出て来ない。
だから、俺が直にこの目で調べる事にした。
敵対した時は……敵だから当たり前だが、敵対して無い時の彼奴は、周りの評判が凄く良い。
暇があれば俺はツバサを見ていたんだが……
彼奴、いったいなんなんだよ。
自分が身に着けている物は安い物ばかりだ。
装備も服装もどう見ても安物。
唯一の贅沢は食べ物だけで、他はお酒も飲まない。
自分は、そんな状態なのに。
奴隷たちは皆、それなりに良い物を身に着けているし、顔色も良く髪なんてつやつやしている。
高級な化粧水や手入れ用品も買っている。
それは、アイラやアウラも同じだ。
だからか。
だから、最近あの二人がおかしな行動をとっているのか。
流石に俺が直接会って確かめる事は出来ない。
同族の伝手を使ってアイラとアウラと話してきて貰ったのだが……
『二人とも凄く幸せそうでいい歳したおばさんなのにツバサをどうやって悩殺するか考えていました。あと、二人への態度があっての事か、熟年層のエルフやダークエルフにツバサは人気があるそうです』
はぁ~もうこれは、普通に付き合うしかないんじゃないかな。
嫌いな種族を3人パーティに入れている。
それ以外は自分は一切の贅沢をしないで仲間に尽くす良い奴じゃないか。
仮にハーレムパーティであっても自分をあそこまで犠牲にして尽くすなんて凄い奴じゃないか。
本当に友人になろうか……
つい、そんな事が頭に浮かんだ。
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