Death Gods&Devil

last joker

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第二章

かつての記憶

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そろそろ日が暮れ、夜が来そうな頃、ある場所で金属音が鳴り響いていた。
普通の人では、ただの音でしかないが、そこでは打ち合いが行われている。
「あのさ、もうそろそろやめてもいい?僕お腹空いたんだけど?」
何度かの打ち合いの後、レイは赤い剣を軽く振って肩に担ぐ。長く戦っているはずなのに、レイは息切れひとつしていない。そんなレイをよそに松坂は薙刀を構えながら、肩で息をしていた。

何で…何で…当たらないの?
「何で当たらないって顔してるね?」
「!!」
突然目の前に迫ってきたレイに、松坂は体制を立て直してレイの赤い剣の剣先を回避する。
「君はさ、一直線過ぎるんだよ。攻撃も防御も丸見えだから。だからこうやってすぐ…」
「!!」
レイが呟いた瞬間、松坂は目を見開く。

「懐に入られる。」
レイは一瞬のスキをついて松坂の懐に入り、剣を下から振り上げる。これで勝負はついた。


…かのように見えた。
「あれ?」
レイは背中に衝撃を受ける。松坂はニヤリと笑う。

「私がそんな簡単にやられるとでも思うの?」
松坂はレイの背中に薙刀の柄の部分を突き刺していた。レイは背中から血を吹き出しながら、倒れる。
「私はね、伊達に本部長はやってないのよ。わざとスキを作らせて、背後から攻撃するのは得意なのよ。さすがの悪魔も後ろに目はついていなかったようね。」
松坂はスキを狙っていたのだ。なので、わざとレイに懐に入るように仕向けたのだ。松坂はそう言うとレイの背中に食い込ませた薙刀の柄を力任せに抜く。抜いた瞬間、先程より多い血が噴出した。しかし、レイはピクリとも動かない。
「悪魔でも血は赤いのね。でも、汚くてやんなるわ。」
でも仕事だから仕方ないわねと松坂はレイを足蹴にして、動かないようにすると、薙刀の刃先をレイの首に当てる。

「これだけの上等な悪魔なら、すぐに昇格できるわね。そしてあいつを引きずり下ろせるわ!!」
松坂はレイの首に薙刀の刃先を当てた後、薙刀を勢いよく振り上げ、振り落とす。

「おしゃべりはそれでいいかな…?」
静かな声と同時に松坂の薙刀が折れた。一瞬何が起きたのか、松坂にはわからない。

『あいつが死んだ?その原因が私達とでも言うの?冗談じゃないわ。え?遺書にそう書いてあった?バカじゃないの?!そういうのはね、弱い人間がするものなのよ!』
さっき松坂に刺された時に松坂の生前の記憶がレイに流れ込んできたのを、レイは感じていた。
「君もかつては人間だったんだね。でも、記憶を無くしてもそのままとは、不憫な奴だね。」
レイは松坂の薙刀を自分に振り落とされる前に、爪を生やして折ったのだ。そして先程まで倒れていたのが噓のように立ち上がる。立ち上がった瞬間に背中に羽を生やしたので、松坂はバランスを崩して、尻餅をつく。

「な…何で…?」
「君は僕を上等な悪魔だって言ったでしょう?その通りさ。でも、僕はあれくらいじゃ死なないんだ。」
レイの背中の傷はみるみるうちに治っていく。

『私にそんな口聞ける義理?!あんたなんかより、私の方が優れているんだからね?!』
「本当はさっさと終わらせて、帰るつもりだったけど、ちょっと遊んでもいいよね?」
レイはニヤリと笑いながら、仮面を外す。

「人を傷つけて楽しいような愚か者に、僕が遊んであげるよ。」
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