Death Gods&Devil

last joker

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第二章

記憶の脳裏

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「松坂本部長が現世から帰ってこない?」
「はい。何か気配を感じると言って去ってしまいまして、そのまま戻ってきておりません。連絡をしようにも、連絡道具を置いて行ってしまって。」
死神達が住まう霊界の自分の仕事部屋で現世と同じような携帯電話で、光は松坂の部下から報告を聞いていた。

「また何か感じ取って、大方手柄を手に入れて、俺をぎゃふんと言わせようとしたんだろうね。変に勘はいいから。」
「どうされますか?」
「とりあえず、あと一時間しても戻らないようなら、俺が迎えに行くから。そっちは待機か帰還して。」
「かしこまりました。」
通話を切ると、光は携帯電話の電源を切り、背もたれに体を預け、軽く伸びをする。
「また変にドジ踏んでなきゃいいけどな。」

その後一時間もしない内に松坂の部下から連絡が来て、松坂がこれ以上のないくらい重傷で帰還したのを聞いたのは、もっと後のことだった。


「で?今回はどうしたんですか?松坂本部長。」
病室で体中にもはやミイラ状態で横になっている松坂に、光は見舞いの品を持ちながら、尋ねた。
「あんたに言う義理なんかないわよ。」
「あのね、勝手に飛び出して行って、連絡道具忘れて、おまけに重傷で帰ってきて部下に心配かけさせといて、それは無いでしょう?」
光の言葉に松坂は唸る。光ははあとため息を吐いて、見舞いの品を置くと、報告書を傍に置いた。
「とりあえず、今回の失態は自分のせいだってことくらい、自覚してくださいね。いつまでもそんなんじゃ、本当に自分の部下に飽きられるからね。報告書も書くようにね。」
光は松坂を見ずに、そう吐き捨てると、病室から出ようとする。
「勝手に私の部下を取ったあんたに、言われたくないわよ。」
「それは実力の差でしょう?今度のことだって、大方手柄上げるためでしょう?相手の実力も考えずに行動するからそうなるんですよ。」
「…最初は互角だったのよ。その後はこっちが有利だったわ。だけど、急に変なこと言い出して…」
「変なこと?」
「『君もかつては人間だったんだ。』とか言ったのよ。そしたら…」
松坂が言い終わる前に光は病室を出て行ってしまった。松坂はそれに気づいて顔を真っ赤にする。
「聞いといて最後まで聞かないなんて、何なのよ!!あいつ!!」


光は長い廊下を考え事をしながら歩いていた。
『君もかつては人間だったんだ。』か…
光は松坂の言葉を思い起こしていたら、悪魔のレイの顔を思い出していた。

「まさかね…?」
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