人類戦線

さむほーん

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人類戦線編

第三十二話 共同潜入

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「よう。久しぶりだな」

目の前には、本当に城崎が居た

(今まで寂しく思ってたけど、会ってみるとそこまででも無いな……)

再会したときの感動は思っていたよりも少なかった

それでも、少し言葉が口に出せない位には感動していた

「まず、こうなった経緯について少し説明してもらっても構わないか?」

「分かった」

そうして私は、自分がウラジオストクに拉致されてから今に至るまでのことを一つ一つ話していった

「……なるほど」

私の話を聞いて、城崎は黙り込んでいる

「ちなみに言っておくと、私は別にロシア政府やロシア軍に対してまともなパイプがある訳では無い。だから私を通して何か交渉をしようと思っても多分無駄足になる」

そのことを付け加えておいた

もし私とロシア政府の繋がりを利用して何か条約のようなものをまとめようとしているのなら、それは出来ないということを先に伝えておいた

「そうか。まあそれは最初から期待していないから問題無い」

城崎はそう言った

「そういえば、神柱や蒼井は?何処か別の場所に居るの?」

二人共見当たらない

城崎が単独で出かけることは珍しいからその理由も気になるけど、まずは蒼井(と神柱)の行方を確認してからそのことについて聞くことにしよう

「ああ、その二人についてなんだが……」

城崎は、自分も二人の行方が分からず、その手掛かりを探していることを私に伝えてきた

「そう……」

城崎もまだ詳しくは分かっていないみたい

「何処かに探しに行くの?」

「ああ。少しエルサレムまでな。もう一つ候補は有るがな」

エルサレム

確かイスラム、キリスト、ユダヤの聖地がある場所だ

「そこに蒼井達が居るの?」

「恐らくな」

軽く問答を繰り返した後に、私も行くことを決意する

「そこまで辿り着く手段は?」

「当ては有る。もう少し時間が経てば相手側から接触してくるはずだ」

誘い出すつもりなのだろうか?

「当てって、具体的には?」

どういうやり方で相手を引っ張り出すのだろう

「恐らくだが、この基地と例のテロ組織には深い繋がりが有る。もしかしたら、ロシア軍やロシア政府との関わりが深いだけかもしれないがな」

そうして城崎は続ける

「そのため、この基地が窮地に陥っていると判明すれば救援に来る可能性が高い。その際に相手が使うであろう移動手段を乗っ取るつもりだ」

(完全に相手頼み……な所はあるけど……)

私の聞いた話ではこの基地は移動中の飛行機を攻撃したとのことだ

多分それが城崎の乗っていた飛行機だから、城崎からすると突然攻撃されたようなものだろう

(その辺りを考慮に入れると、まともに作戦を組めている方)

「じゃあ、今の内に準備をしておいた方が良い?」

「……お前も来るか」

城崎は少し複雑そうな顔をした

「何でそこまで嫌そうにするの?何か不安なところでも……?」

「いや……まあ、そんなに気にしなくても構わない。俺個人として少しだけ気になることが有るだけだ」

気になること……

少しそのことについて話を聞いてみたいけど……

「待て。来たぞ」

城崎がそう言って、自分の後ろの方を見る

そこには真っ黒な空間が生まれていた

「……何、これ?」

思わずそう口に出す

城崎は意外そうな目でこちらを見つめ返す

「そうか……お前は見ていなかったのか……お前が誰に連れ去られたのかを考えると見ていそうなものなんだがな……」

城崎はそう言いながら、黒い空間の中に手を突っ込む

そうして暫くした後、黒い部分が少しずつ広がり始める

「?何……これ」

見ていて直感的に気味が悪いように思えてきた

「ああ、人の脳内を操るのに関しては少しずつ練習していたからな。その成果がやっと出てきたということだろう」

少し満足気な声でそう話している

「お前も入ってこい。ここから移動するぞ。三十秒以内に入ってこなかったらを閉じるからな」

そう言われて私も少し慌てて黒い空間の中に入る

中に入ってすぐに大きな壁が有った

(後ろには床以外特に何も無い空間が広がってる……)

そして、上を見上げても天井が見つからない

「どれだけ広い……?この場所、一体どうなってる?」

私は思わずそう呟く

「見たところ、高さは一キロは下らないようだな。少なくとも、この壁はそれだけの高さがある」

さらに、と城崎は付け加える

「これは厳密に言えば壁では無い。柱だ」

柱?

「……どう見ても真っ直ぐな壁に見えるけど」

「ああ、見た目にはそうだ。だが俺の手袋で触るとすぐに分かる。これは異常に大きく、そしてかなり傾いている柱だ」

傾き?

「この柱、傾いてるの?」

やっぱり見た目には全然わからない

「ああ。垂直面に対しておおよそ五・六度といったところか」

その角度が『かなり』傾いていると言えるのかどうかを私は知らないけど、少なくとも傾いているのは事実らしい

「これが柱ってことは、この広い空間の中にこれと似たようなものが何本か有るっていうこと?」

そう城崎に聞くと、口を塞がれる

「近い。誰か来ている。こいつに異常が有ったのを知られたのかもしれん」

何も言わずに私達の左に立っている人を見ながらそう言った

一言も声を出せない緊迫した時間が続く

そして、私達の視界の奥にある人間が見えた時

城崎は、私の口から手を離した

「……成程、そういう訳か」
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