人類戦線

さむほーん

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人類戦線編

第四十三話 十年越し

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地面がめくれ上がって相手を挟む

僕はこの攻撃手段を見たことがあった

「え?え?……ちょっと!城崎?!何してるの?!」

話の途中でいきなり相手を攻撃し出した城崎に驚いて僕は大声を出した

「これ以上あいつの話を聞く理由は無い。それに、あの話が仮に本当ならあいつを放置しておくのは危険だろう」

「……あのさ」

地面に挟まれてぺしゃんこになった筈の相手の声が聞こえた

僕達は二人共驚いてそちらを見る

「人の話はさ、ちゃんと聞くべきだと思うよ。聞いておかないと分からないことも有るし、何よりも話してが悲しい。ちゃんと相手のことは考えないと駄目だよ」

「何をした……?少なくともお前がこの攻撃を防ぐための行動をとったような様子は無かったが……」

城崎が不思議そうに聞いた

「その辺りも含めて説明していく予定だったんだけど……まあ、君は無しを聞く気があんまり無さそうだから無視で良いかな?そっちの人。君は何か質問とかある?」

城崎を拒絶するようなことを言った後に僕に向かってそんなことを言ってきた

「まあ、特には思いつかないですけど……」

そう言ったら相手は少し嬉しそうにしながら頷いた

「うん♪それなら話を続けるね。じゃあ確か……僕がこの聖杯を使って具体的にどんな願いを叶えたのか、についての話だったよね?」

そう言って指先で髪をいじりながら長い長い話を再開する

「僕はこれを手に入れてすぐ、試しに不老不死を頼んでみた。大抵の人がこういうアイテムを手に入れたら願ってしまう、アレだ」

「そうして僕はまず不老不死になった。まあ、自分を殺したことはないから確実にそうなっているのかどうかは分からないんだけどね。その後も聖杯を使っていくつか願いを叶えたんだ」

「そうしていくうちに、僕はあることに気が付いたんだ」

「この聖杯は何でもかんでも無秩序に願いを叶える」

「願いというのは、何も僕の願いだけでは無い」

「最初は聖杯を持っている人間の願いだけを叶えていたんだ」

「でも、使っていくうちに少しずつだけど持ち主の周りに居る人間の願いも叶えるようになっていったんだ」

「それがどんどんエスカレートしていって、その内半径数キロメートル内に居る人間の願いなら叶えるようになった」

「この辺りで僕も少し怖くなったんだけどね、よくよく考えたらある意味世界を変えることに近いような僕の目標を達成するためにはその位の能力は無いと困るかな、とも思えるようになってからは割り切れたよ」

「そして、僕が割り切ったのを知ったのか、この聖杯は願いを叶える範囲をどんどん広げていった」

「それを見た僕はこの性質を新たな動力源を生み出す際に使えないかと考えたんだよ。この【無秩序に願いを叶える】という性質を利用できないか考えた、ってことだね」

「そうして僕が思いついたことはこうだ。【全世界の人々の願いを原動力に世界を変えよう】」

「そう思ってすぐに僕は行動を起こした」

「それが11月3日の深夜0時ことだったよ」

「そして、その日のうちに世界中にある特殊な物をばら撒くことにしたんだ」

その言葉を聞いて、僕はあの日のことを少し思い出した

「そうなんですね……装備を送り付けてきたのはあなただったと……」

僕はそう確認した

「まあ、僕が送ったというよりはこの聖杯が送ったんだけどね?それで、どうだった?楽しかったかな?」

「はい?」

突然楽しかったのか?などといった変なことを聞かれて僕は困惑してしまう

「いや、まあ……一つ聞きたいんだけど、君は毎日を退屈だと思ったことはあるかい?」

「まあ、それなりには……」

そんなこと、現代社会の中流階級……特に日本国内の人なら大抵の人は一度は思ったことがあるだろう

僕自身もそんな経験が何度も有るからそう答えた

「だったら、ちょっとくらいは僕に感謝しても良いんじゃないかな?だってさ、その退屈な世界を大きく変えちゃったんだよ?それも、君たち自身が望む形に」

「望む形が……少なくとも俺はこんなテロやら何やらが平然と起こる社会は臨んでいなかったが……」

城崎がそう割り込んでくる

「君には黙っていてほしいんだけど……君も今は僕の話を聞く気があるみたいだし、別に良いか……」

ブツブツと呟いてから城崎の質問に答える

「その問いに対する僕の答えはこうだ。『この聖杯は間違い無く君たちの望むものを与えた』僕が今まで話したことが全て本当だと仮定すればそう判断できるはずだよ。考えてごらん」

望むもの……聖杯……願い……吸い込む

少し考えれば僕でも分かった

城崎もなにか言おうとしていたが、僕はそれを手で制する

「僕が確認して良い?」

城崎は頷いた

「さあ、では回答の確認だ。君はどう予想した?」

僕は相手の目をしっかり見つめてこう答える

「その聖杯が僕達の願いを叶えてくれた、ってことですかね?」

ニタリと君の悪い笑みを浮かべてこう返す

「正解だ。最低限の知能は持ち合わせているみたいだね」

ここでライアンはやっと椅子から飛び降りた

「そして、ここから特別サービスだ。正解した君にご褒美としてもう一つだけ願いを叶えてあげよう」

そう言ってグラスを軽く振る

そのグラスから液体が流れ落ちたように幻視して、その流れていく先を目で追う

それは少しずつ人の形を作っていき……

「……梁?」

僕の知っている顔になった
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