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そばにいたい
出来ることならもっとアレンシカに近づきたかった。
アレンシカはいつもウィンノルを見ては悲しそうにしているのを誰にも悟らせないよう気丈に振る舞っている。
その心を気休めでもいいから少しでも晴れさせたかった。
しかし王立学園の勉強は一介の地方領の学校レベルで学んだ人間にはとてつもなく難しく、また貴族特有の学問は平民には分からないことだらけだったので、一緒のクラブに入って一緒に楽しむ夢はまだ諦めなくてはならなかった。
ウィンノルはクラブに入っていないのでアレンシカが傷つくことは少なかったが、それでも学園の庭園は見事なのでダシにして他の人とデートをしている姿が何回も見られ、その度にアレンシカは傷ついていた。早く入部してもっとガードしたくても、それでも勉強がそれを許してくれない。
今まで優秀だと言われ続けていてもそれが本当にただの驕りだったのだと知るのはすぐだった。
今までテスト前に勉強なんてしたこともなかったが、空いた時間のすべてを勉強に費やしてなんとか結果が実を結んだ。
それでも横でひどく顔を青褪めているアレンシカが気になった。
(何それ何それ何それ!)
エイリークは知らなかった。アレンシカがどれだけウィンノルに責められているか。まさかそれで傷つけているなんて。
「アレンシカは全然俺のレベルになっていないんだ。」
「えー、嘘お。ウィンノル様可哀想ー。」
「自分は王子だから、優秀な者が婚約者でないと俺の責任になってしまうのに。」
「確かにぃ、二位だったのって平民でしたよねぇ。平民にも負けてる婚約者なんてウィンノル様にふさわしくなーい。」
アレンシカのクラブが終わるまで教室で勉強しているとそんな声が聞こえた。忌々しいあの声だ。
窓から覗いて見ればあの王子が他の学生とベタベタとくっついて笑いあって話しているがその話は不快そのものだった。
(あのくっついてる相手!お前なんて下から数えたほうが早いだろーが!そうやってくっついてるけどお前がアレンシカ様より上だとでも思ってるのか!)
怒鳴りつけたかったが平民ひとりでは王族に立ち向かえない。
(お前だって自分の婚約者が悪く言われたら怒るもんだろ!一緒になって悪く言うんじゃねー!)
いつの間にか手のひらを強く握っていたせいか爪が刺さって血が出ている。
(お前のほうがアレンシカ様にふさわしくない!)
エイリークは急いでアレンシカの元へ走った。
アレンシカは花壇の前でぼんやりとしていた。それは悲しげでやってはいけないことをやってしまった時のような、取り返しのつかないことをやってしまった時のような表情だった。
何もなければそんな顔はしない。
(アイツが何か言ったんだ!)
それは確信だった。
(もしあいつがアレンシカ様を大切にしないなら、オレが大切にしたい。)
もうその時にはすでにエイリークはそう思っていた。
どうしてアレンシカのことをここまで考えているのか。
アレンシカをウィンノルから引き離したいのか。
アレンシカが傷つく姿が見たくないのか。
もうこの時にはとっくに気づいていた。
(アレンシカ様が好き。)
それでも平民が貴族の人間に想いを寄せたところで叶う訳がないことは百も承知だった。
現にアレンシカには肩書きだけは立派な婚約者がいるし、平民が隣りにいたところで誰も噂にしない。友人とすら思っていなかった人間も周りにはいた。そういう人たちにはせいぜい腰巾着くらいにしか見えなかっただろうありえないという考えは共通認識だった。
もちろんアレンシカの否になるようなことはしない。けして友人としての域が出ないように人付き合いをしたし、二人で密室に行くことは必ずしなかった。
公爵家にご厚意で遊びに行った時だって皆友人の学園生ということで優しかったが、必ず使用人の誰かが見ていたし訪問者への部屋は公爵家の方々の部屋とは遠く離れていた。万が一がないように配慮だろうが、それは公爵家の方々は自分には手が届かないことが改めて分かったことだった。
王家は雲の上の存在だが、公爵家だって平民にとって雲の上の存在。だから誰にも言えない想い。
だからせめて友人としてそばにいよう。
想いが遂げられないならせめてアレンシカが許す限り友人として。
たとえその友人関係が学園にいる間でしかいられないものだったとしても、遠くの端っこでアレンシカの幸せを願っていつか学園時代を思い出す時に「なんか平民の友達がいたな」とたまに思い出してくれるだけでいい。そう思っていたのに。
不相応にも恋したが、住む世界の違いに弱気になってそれでも一度は諦めかけてしまっていたが。
「……どうせ反抗するのなら限界までやってやる。」
エイリークは一言だけの手紙をまた丁寧にしまった。
アレンシカはいつもウィンノルを見ては悲しそうにしているのを誰にも悟らせないよう気丈に振る舞っている。
その心を気休めでもいいから少しでも晴れさせたかった。
しかし王立学園の勉強は一介の地方領の学校レベルで学んだ人間にはとてつもなく難しく、また貴族特有の学問は平民には分からないことだらけだったので、一緒のクラブに入って一緒に楽しむ夢はまだ諦めなくてはならなかった。
ウィンノルはクラブに入っていないのでアレンシカが傷つくことは少なかったが、それでも学園の庭園は見事なのでダシにして他の人とデートをしている姿が何回も見られ、その度にアレンシカは傷ついていた。早く入部してもっとガードしたくても、それでも勉強がそれを許してくれない。
今まで優秀だと言われ続けていてもそれが本当にただの驕りだったのだと知るのはすぐだった。
今までテスト前に勉強なんてしたこともなかったが、空いた時間のすべてを勉強に費やしてなんとか結果が実を結んだ。
それでも横でひどく顔を青褪めているアレンシカが気になった。
(何それ何それ何それ!)
エイリークは知らなかった。アレンシカがどれだけウィンノルに責められているか。まさかそれで傷つけているなんて。
「アレンシカは全然俺のレベルになっていないんだ。」
「えー、嘘お。ウィンノル様可哀想ー。」
「自分は王子だから、優秀な者が婚約者でないと俺の責任になってしまうのに。」
「確かにぃ、二位だったのって平民でしたよねぇ。平民にも負けてる婚約者なんてウィンノル様にふさわしくなーい。」
アレンシカのクラブが終わるまで教室で勉強しているとそんな声が聞こえた。忌々しいあの声だ。
窓から覗いて見ればあの王子が他の学生とベタベタとくっついて笑いあって話しているがその話は不快そのものだった。
(あのくっついてる相手!お前なんて下から数えたほうが早いだろーが!そうやってくっついてるけどお前がアレンシカ様より上だとでも思ってるのか!)
怒鳴りつけたかったが平民ひとりでは王族に立ち向かえない。
(お前だって自分の婚約者が悪く言われたら怒るもんだろ!一緒になって悪く言うんじゃねー!)
いつの間にか手のひらを強く握っていたせいか爪が刺さって血が出ている。
(お前のほうがアレンシカ様にふさわしくない!)
エイリークは急いでアレンシカの元へ走った。
アレンシカは花壇の前でぼんやりとしていた。それは悲しげでやってはいけないことをやってしまった時のような、取り返しのつかないことをやってしまった時のような表情だった。
何もなければそんな顔はしない。
(アイツが何か言ったんだ!)
それは確信だった。
(もしあいつがアレンシカ様を大切にしないなら、オレが大切にしたい。)
もうその時にはすでにエイリークはそう思っていた。
どうしてアレンシカのことをここまで考えているのか。
アレンシカをウィンノルから引き離したいのか。
アレンシカが傷つく姿が見たくないのか。
もうこの時にはとっくに気づいていた。
(アレンシカ様が好き。)
それでも平民が貴族の人間に想いを寄せたところで叶う訳がないことは百も承知だった。
現にアレンシカには肩書きだけは立派な婚約者がいるし、平民が隣りにいたところで誰も噂にしない。友人とすら思っていなかった人間も周りにはいた。そういう人たちにはせいぜい腰巾着くらいにしか見えなかっただろうありえないという考えは共通認識だった。
もちろんアレンシカの否になるようなことはしない。けして友人としての域が出ないように人付き合いをしたし、二人で密室に行くことは必ずしなかった。
公爵家にご厚意で遊びに行った時だって皆友人の学園生ということで優しかったが、必ず使用人の誰かが見ていたし訪問者への部屋は公爵家の方々の部屋とは遠く離れていた。万が一がないように配慮だろうが、それは公爵家の方々は自分には手が届かないことが改めて分かったことだった。
王家は雲の上の存在だが、公爵家だって平民にとって雲の上の存在。だから誰にも言えない想い。
だからせめて友人としてそばにいよう。
想いが遂げられないならせめてアレンシカが許す限り友人として。
たとえその友人関係が学園にいる間でしかいられないものだったとしても、遠くの端っこでアレンシカの幸せを願っていつか学園時代を思い出す時に「なんか平民の友達がいたな」とたまに思い出してくれるだけでいい。そう思っていたのに。
不相応にも恋したが、住む世界の違いに弱気になってそれでも一度は諦めかけてしまっていたが。
「……どうせ反抗するのなら限界までやってやる。」
エイリークは一言だけの手紙をまた丁寧にしまった。
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