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楽しみ
「アレンシカちゃんが帰ってきたらまずどうする?」
今日も今日とて執務室に篭りそんな雑談をしている。
すっかり自室のようにくつろぎながらフィラルは目の前の二人にそう尋ねた。
「どう……って?」
「だってもうすぐ帰ってくるでしょ?」
「そうだなあ……。」
ユースは腕を組んで考えてこんでいたがウィンノルはどこかぼんやりとして何かを考えている素振りはない。
「でもまずはしっかり注意しないといけないんじゃないか?ウィンノルと離れて勝手をしていたんだから。」
「それもそうだろうけど、それだけじゃあね。せっかく引き離されていた二人が一緒になれるようになるんだから。」
ユースの答えにフィラルはやれやれとした態度でそう言う。
「こんなに離れてるのも初めてだしさ。アレンシカちゃんも気分をリフレッシュできてまた頑張れるようになるでしょ?帰ってきたら盛り上がっちゃうかもよ?ねえウィンノル?」
ニヤニヤしながらウィンノルを見てもウィンノルはぼんやりとしたままだ。
「どうしたウィンノル。」
「どうせアレンシカちゃんが帰ってくるのを想像でもしてるんじゃないの?やっと帰ってくるんだからそりゃいろいろ想像しちゃうでしょ。」
「いや……。」
そこでやっとウィンノルは言葉を発するがまたすぐに黙ってしまう。
「どうしたのさ、ずっと今日そんな風で。」
「いやな予感がする……。」
「いやな予感?」
神妙な顔で言うウィンノル。もうすぐ元通りになれるのに何を馬鹿なことを言うのかフィラルもユースも分からなかった。
「アレンシカがやっとお前の元に帰れるんだぞ?なにが怒るというんだ。」
「そうだよ。もうどこにいるのかも分かっているし、リリーベル公爵ももう何もしないんじゃない?」
アレンシカはウィンノルのことが好きなのに過保護なリリーベル公爵によって無理やり引き離されていた。アレンシカもウィンノルもお互いに離れたくないのにリリーベル公爵によって従わざるを得なかったのだ。それがやっと終わる。
「もうすぐ学園も始まるでしょ?そうしたらやりたいことだってあるでしょ?俺もねーなくなっちゃった予定色々やりたいし。」
フィラルが言う予定はアレンシカが出ていくまでに計画されていた貴族を巻き込んだ社交パーティだ。レヴィリア家門の下位貴族を何人か巻き込みアレンシカを社交に慣れさせ、アレンシカをウィンノルの婚約者としての顔見せの予定だった。
「まああれも延期にしてかなりの損害はあったが、また計画してもいいな。」
「他の家に言っておくよ。学園が始まってからだと忙しくなりそうだけど、まあいいよね。」
楽しげにしている二人とは反対にウィンノルはまだ暗いまま。
「ウィンノル、せっかくアレンシカが帰ってくるのにそんなに暗くてどうする。そんなんじゃ示しがつかないだろう、しっかりしろ。」
「そうだよ、もっと堂々としないと。アレンシカちゃんが間違った方向に行きそうになったらビシッとして、アレンシカちゃんが頼りたい時にいつでも頼りたくなるような度量を見せないとね!」
「まあ、その辺りは今までも出来ていたから問題ないだろう。だが今のその雰囲気では駄目だな。」
目の前で仲睦まじく話しているがウィンノルはどうにも落ち着かなかった。
自分たちは今までアレンシカの行き先を探していた。リリーベル家の監視もしながらやっと見つけて早馬で迎えにで行っている。このままアレンシカが戻ってくれば全てが上手くいくはずなのに、何故かアレンシカが戻ってこないようなそのまま自分の元には来ないような気がしていたのだ。
なんとなく反論しようと思って口を開こうとしていたその時扉の向こうから慌ただしく誰かがやって来る気配を感じた。
「失礼いたします!」
ユースの部下が思い切り扉を開けて焦った顔で走り入って来た。
「ノックをしなさい!切られてもおかしくない行為ですよ!」
「申し訳ありません!ですが!」
「反論は不要!」
「お前がそこまで慌てて来るのは珍しい。何かあったんだろう。フィラル、叱るのはまた後でにしなさい。」
「……わかったよ。」
フィラルが引き下がったことで部下はユースの目の前にやって来て手元にある小さな紙を出し示した。
「アレンシカ様がいなくなりました!」
今日も今日とて執務室に篭りそんな雑談をしている。
すっかり自室のようにくつろぎながらフィラルは目の前の二人にそう尋ねた。
「どう……って?」
「だってもうすぐ帰ってくるでしょ?」
「そうだなあ……。」
ユースは腕を組んで考えてこんでいたがウィンノルはどこかぼんやりとして何かを考えている素振りはない。
「でもまずはしっかり注意しないといけないんじゃないか?ウィンノルと離れて勝手をしていたんだから。」
「それもそうだろうけど、それだけじゃあね。せっかく引き離されていた二人が一緒になれるようになるんだから。」
ユースの答えにフィラルはやれやれとした態度でそう言う。
「こんなに離れてるのも初めてだしさ。アレンシカちゃんも気分をリフレッシュできてまた頑張れるようになるでしょ?帰ってきたら盛り上がっちゃうかもよ?ねえウィンノル?」
ニヤニヤしながらウィンノルを見てもウィンノルはぼんやりとしたままだ。
「どうしたウィンノル。」
「どうせアレンシカちゃんが帰ってくるのを想像でもしてるんじゃないの?やっと帰ってくるんだからそりゃいろいろ想像しちゃうでしょ。」
「いや……。」
そこでやっとウィンノルは言葉を発するがまたすぐに黙ってしまう。
「どうしたのさ、ずっと今日そんな風で。」
「いやな予感がする……。」
「いやな予感?」
神妙な顔で言うウィンノル。もうすぐ元通りになれるのに何を馬鹿なことを言うのかフィラルもユースも分からなかった。
「アレンシカがやっとお前の元に帰れるんだぞ?なにが怒るというんだ。」
「そうだよ。もうどこにいるのかも分かっているし、リリーベル公爵ももう何もしないんじゃない?」
アレンシカはウィンノルのことが好きなのに過保護なリリーベル公爵によって無理やり引き離されていた。アレンシカもウィンノルもお互いに離れたくないのにリリーベル公爵によって従わざるを得なかったのだ。それがやっと終わる。
「もうすぐ学園も始まるでしょ?そうしたらやりたいことだってあるでしょ?俺もねーなくなっちゃった予定色々やりたいし。」
フィラルが言う予定はアレンシカが出ていくまでに計画されていた貴族を巻き込んだ社交パーティだ。レヴィリア家門の下位貴族を何人か巻き込みアレンシカを社交に慣れさせ、アレンシカをウィンノルの婚約者としての顔見せの予定だった。
「まああれも延期にしてかなりの損害はあったが、また計画してもいいな。」
「他の家に言っておくよ。学園が始まってからだと忙しくなりそうだけど、まあいいよね。」
楽しげにしている二人とは反対にウィンノルはまだ暗いまま。
「ウィンノル、せっかくアレンシカが帰ってくるのにそんなに暗くてどうする。そんなんじゃ示しがつかないだろう、しっかりしろ。」
「そうだよ、もっと堂々としないと。アレンシカちゃんが間違った方向に行きそうになったらビシッとして、アレンシカちゃんが頼りたい時にいつでも頼りたくなるような度量を見せないとね!」
「まあ、その辺りは今までも出来ていたから問題ないだろう。だが今のその雰囲気では駄目だな。」
目の前で仲睦まじく話しているがウィンノルはどうにも落ち着かなかった。
自分たちは今までアレンシカの行き先を探していた。リリーベル家の監視もしながらやっと見つけて早馬で迎えにで行っている。このままアレンシカが戻ってくれば全てが上手くいくはずなのに、何故かアレンシカが戻ってこないようなそのまま自分の元には来ないような気がしていたのだ。
なんとなく反論しようと思って口を開こうとしていたその時扉の向こうから慌ただしく誰かがやって来る気配を感じた。
「失礼いたします!」
ユースの部下が思い切り扉を開けて焦った顔で走り入って来た。
「ノックをしなさい!切られてもおかしくない行為ですよ!」
「申し訳ありません!ですが!」
「反論は不要!」
「お前がそこまで慌てて来るのは珍しい。何かあったんだろう。フィラル、叱るのはまた後でにしなさい。」
「……わかったよ。」
フィラルが引き下がったことで部下はユースの目の前にやって来て手元にある小さな紙を出し示した。
「アレンシカ様がいなくなりました!」
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