142 / 154
貴族の手紙
「まだ読んでいないのにどうして……。」
中身は見てもらう予定ではあったが、その前からピタリと公爵は書いてある中身を的中させた。
「これはロスター伯爵東家で代々から使われる封蝋だ。それにこの封筒の端にある紋も一致する。」
「偽物かもしれないと思わないのですか?」
「見ただけで分かるこのしっかりした厚みの封筒はどこでも買えるものではない。この紙に混ざる草の繊維は、植物を専門に扱う商団を持つロスター伯爵家が、あえて見せるように作っているものに間違いない。自分たちの誇りを表す為に独自にロスター伯爵家が取り扱っているものだ。なんだ。そうそう手に入るものではないよ。」
「そんなこだわりが……。」
「家門でも封筒は違う。ロスター伯爵本家では緑色が使われるが、これは伯爵東家のさらに濃い緑色だ。」
「混乱しない為でしょうか。」
「ああ。貴族は場面に合わせて使い分けている。平民に出す用、友人に出す用、取引先に出す用、外国の貴族に出す用、そして親族に出す用。この手紙の様式を見るに民に出すものではないし、貴族用のものや仕事用のものは見たことがあるが、その中でこの繊維は他に出す用では見たことのない……親族に出すものだと仮定するのが妥当だろうね。」
いつの間にか落ち着きを取り戻し手の震えが止まった公爵は手紙をしげしげと興味深く見ている。
色々なことを考えて見た目ひとつからこだわりを持って作られている貴族の手紙はエイリークにとっても興味深いものだった。
「中身はもう読んだのだったね。私が見てもいいのかな。」
「ボクでは真実は判別がつきません。公爵様に確かめてもらう為にもどうかお願いします。」
「ありがとう、確かに今許可をもらったよ。」
公爵は机の上の手紙を丁寧に手に取ってゆっくりと封筒から手紙を取り出した。
「便箋の繊維は封筒よりも細かいけど、確かに外と同じものだね。紙も上質なものだ。」
「そうですか……。」
「確かにロスター伯爵家からの手紙で間違いない。」
「そんな……。」
「この字も以前に見たロスター東家当主のものと間違いないね。」
「じゃあエイリーク君はロスター伯爵家の子ってことなんですかー?」
「この手紙にもそう書いてあるね。」
公爵は全ての内容を全て読んで頷いた。書類仕事も多いリリーベル公爵には三枚の便箋程度は複雑な内容でもあっと言う間に読んでしまう。
便箋には父フォルマがロスター伯爵東家の次女であることと、母ミスミとの結婚を反対したことへの詫び、数年経って子の存在を知ったこと、一度会ってほしいことが丁寧に書かれていた。
「でも……これをボクは鵜呑みには出来ません。直接会ったこともない人に急に貴族の血が流れているなんて手紙が来たところで騙されているとしか思えません。ボクは生まれた時から平民なんです。」
「エイリーク君は慎重ですからねー。」
「それに、罠かもしれないことに飛びつけるほど飢えてません。何より親からはロスター伯爵家のことは何も聞いていないんです。この手紙を渡された時にだって一言もありませんでした。」
もしかしたらアレンシカと少しは隣りにいても大丈夫な地位は手に入るのかもしれない。だからといって手紙だけ渡されて信じる程馬鹿ではなかった。
むしろ何より両親が言葉で教えなかったことがこの手紙が嘘である証明とすら思えてくる。
「エイリーク君が何を選ぶか分からないからわざと教えなかったのかもですよー。」
「そうだね、急に言われても混乱してしまうだろうし。ご両親は会う気がなかったのかもしれないが、エイリーク君は会いたいかもと思って託したのかもしれないよ。」
「だとしても真偽を確かめてからでないと、少なくとも会えません。」
「そうだね。」
エイリークは毅然と答えると、公爵はエイリークの顔を見てひとつ頷く。
「では、エイリーク君が真偽を確かめるためのお手伝いをしよう。」
「いいんですか?」
「アレンシカの友人だからね。」
「ありがとうございます……。」
それだけを言うと手紙は丁重に封筒に戻されてエイリークに返された。
「君はロスター伯爵家について知っているかい?」
「いいえ、ボクは平民ですしこの国の貴族の方々すら数家知っている程度です。学園に入ってからは分かってきましたがそれでも関わりのある人の家くらいですし、隣国ともなるともう分かりません。ロスター伯爵家も今お話を聞いて初めて知りました。」
「そうだよね。」
「……すみません。」
「ああ、いや違うんだよ。一般的な民なら当然のことだからね。申し訳ない。」
公爵が本当にうっかりというように謝った。だが本当にこの知識の差については当然のことだ。平民には貴族の家について知り得ない。王族を除けば王宮で働く数人や自分の住む土地の領主や仕事で関わる家くらいしか知ることがない。
「エイリーク君エイリーク君。私も知らないのでー問題ないですよー。」
「君はもう少し侍従教育を増やそうね。」
プリムが慰めるもあまり良い慰めにはならなかった。
「ロスター伯爵家……この手紙を送った手紙ロスター伯爵家東家なんだが、領地の港地区を部分を治める家なんだ。」
ロスター伯爵家は商団の経営の他にも広い領地を所有し、そこを本家の代わりに領主として支える家門が伯爵東家と伯爵西家でありエイリークの両親に手紙を送ったのは東家であるという。
「でも港というと……フィルニース王国とは反対側といっていいくらい離れていますし……両親との関係に疑念を持たざるを得ないですね……。」
「だからこそ、私が手伝わないと真実に近づけないだろうね。」
「でも。……まさか……それではまるで公爵様を働かせるようなもので……!」
そんな恐れ多いことを平民である自分がしてしまうなんていけないことだと恐怖した。いくら貴族から手紙が来ようと生まれから平民のエイリークに、貴族になるかもしれないからなんて意識は生まれない。
「まあ、それだけで動く訳ではないからね。安心してほしい。」
ニコリと笑ってエイリークを見る公爵の目には、どこか含みのある意思を感じた。どこかエイリークを見透かしているような目にどこかいたたまれない気持ちになって来た。
それでもここまでしてくれるリリーベル公爵を前に堂々としなければならないと思う。
「君の両親にも話を聞かなければならない場面も出てくるかと思うが構わないかい?」
「はい、必要なら徹底的に調べていただいて構いません。むしろ両親にはボクが聞く立場なのに……申し訳ありません。」
「いや、いいんだよ。それに君は今あまり王都を離れない方がいいと思うからね。それはプリムに関しても同じだけど。」
「そうですねー。」
のほほんとクッキーを食べながらプリムは答える。
「……それは王家に関係がありますか?」
「ああ……プリムには色々と聞いているが、君も学園で被害があるようだね。」
「平民のボクから言えば、王家のなさることを被害と言っていいのかどうか……。」
学園でウィンノルと顔を合わせると、何故退学になっていないのかとプリムと共にしつこく聞かれる。周囲に学園生がいれば穏やかに問いかけるだけだが、いなければ怒りを滲ませて隠さない。最近では教師が見ている前でも態度が酷い。
そこにウィンノルの浮気相手が居合わせると最悪でしかない。
自分は平民だからと思えば迂闊に反論は出来ず歯痒い思いをしている。プリムは遠慮なく言い返していたが。
「いいんだよ。君たちにだって被害があれば訴える権利はある。実はね……正直に言えば、君に手を貸すのはその詫びもあるんだよ。」
エイリークもプリムもアレンシカの友人だから、何か一枚噛んでいるのだと思われていることは分かっていた。
どうやってフィルニース王国からアレンシカが離れたのかは分からないが、それでもレイシーラ領に逃げてきたことは知っている。多くは知らないがそれでも一時でも知っているなら関わっていることと同義だろうと、関係者のふりをして自分に突っかからせている。
アレンシカに手が及ばないならエイリークはそれでよかった。
「リリーベル家と王家との婚約問題で、関係のない純粋に学んでいる学生に被害が及ばせては貴族の風上にも置けないからね。」
中身は見てもらう予定ではあったが、その前からピタリと公爵は書いてある中身を的中させた。
「これはロスター伯爵東家で代々から使われる封蝋だ。それにこの封筒の端にある紋も一致する。」
「偽物かもしれないと思わないのですか?」
「見ただけで分かるこのしっかりした厚みの封筒はどこでも買えるものではない。この紙に混ざる草の繊維は、植物を専門に扱う商団を持つロスター伯爵家が、あえて見せるように作っているものに間違いない。自分たちの誇りを表す為に独自にロスター伯爵家が取り扱っているものだ。なんだ。そうそう手に入るものではないよ。」
「そんなこだわりが……。」
「家門でも封筒は違う。ロスター伯爵本家では緑色が使われるが、これは伯爵東家のさらに濃い緑色だ。」
「混乱しない為でしょうか。」
「ああ。貴族は場面に合わせて使い分けている。平民に出す用、友人に出す用、取引先に出す用、外国の貴族に出す用、そして親族に出す用。この手紙の様式を見るに民に出すものではないし、貴族用のものや仕事用のものは見たことがあるが、その中でこの繊維は他に出す用では見たことのない……親族に出すものだと仮定するのが妥当だろうね。」
いつの間にか落ち着きを取り戻し手の震えが止まった公爵は手紙をしげしげと興味深く見ている。
色々なことを考えて見た目ひとつからこだわりを持って作られている貴族の手紙はエイリークにとっても興味深いものだった。
「中身はもう読んだのだったね。私が見てもいいのかな。」
「ボクでは真実は判別がつきません。公爵様に確かめてもらう為にもどうかお願いします。」
「ありがとう、確かに今許可をもらったよ。」
公爵は机の上の手紙を丁寧に手に取ってゆっくりと封筒から手紙を取り出した。
「便箋の繊維は封筒よりも細かいけど、確かに外と同じものだね。紙も上質なものだ。」
「そうですか……。」
「確かにロスター伯爵家からの手紙で間違いない。」
「そんな……。」
「この字も以前に見たロスター東家当主のものと間違いないね。」
「じゃあエイリーク君はロスター伯爵家の子ってことなんですかー?」
「この手紙にもそう書いてあるね。」
公爵は全ての内容を全て読んで頷いた。書類仕事も多いリリーベル公爵には三枚の便箋程度は複雑な内容でもあっと言う間に読んでしまう。
便箋には父フォルマがロスター伯爵東家の次女であることと、母ミスミとの結婚を反対したことへの詫び、数年経って子の存在を知ったこと、一度会ってほしいことが丁寧に書かれていた。
「でも……これをボクは鵜呑みには出来ません。直接会ったこともない人に急に貴族の血が流れているなんて手紙が来たところで騙されているとしか思えません。ボクは生まれた時から平民なんです。」
「エイリーク君は慎重ですからねー。」
「それに、罠かもしれないことに飛びつけるほど飢えてません。何より親からはロスター伯爵家のことは何も聞いていないんです。この手紙を渡された時にだって一言もありませんでした。」
もしかしたらアレンシカと少しは隣りにいても大丈夫な地位は手に入るのかもしれない。だからといって手紙だけ渡されて信じる程馬鹿ではなかった。
むしろ何より両親が言葉で教えなかったことがこの手紙が嘘である証明とすら思えてくる。
「エイリーク君が何を選ぶか分からないからわざと教えなかったのかもですよー。」
「そうだね、急に言われても混乱してしまうだろうし。ご両親は会う気がなかったのかもしれないが、エイリーク君は会いたいかもと思って託したのかもしれないよ。」
「だとしても真偽を確かめてからでないと、少なくとも会えません。」
「そうだね。」
エイリークは毅然と答えると、公爵はエイリークの顔を見てひとつ頷く。
「では、エイリーク君が真偽を確かめるためのお手伝いをしよう。」
「いいんですか?」
「アレンシカの友人だからね。」
「ありがとうございます……。」
それだけを言うと手紙は丁重に封筒に戻されてエイリークに返された。
「君はロスター伯爵家について知っているかい?」
「いいえ、ボクは平民ですしこの国の貴族の方々すら数家知っている程度です。学園に入ってからは分かってきましたがそれでも関わりのある人の家くらいですし、隣国ともなるともう分かりません。ロスター伯爵家も今お話を聞いて初めて知りました。」
「そうだよね。」
「……すみません。」
「ああ、いや違うんだよ。一般的な民なら当然のことだからね。申し訳ない。」
公爵が本当にうっかりというように謝った。だが本当にこの知識の差については当然のことだ。平民には貴族の家について知り得ない。王族を除けば王宮で働く数人や自分の住む土地の領主や仕事で関わる家くらいしか知ることがない。
「エイリーク君エイリーク君。私も知らないのでー問題ないですよー。」
「君はもう少し侍従教育を増やそうね。」
プリムが慰めるもあまり良い慰めにはならなかった。
「ロスター伯爵家……この手紙を送った手紙ロスター伯爵家東家なんだが、領地の港地区を部分を治める家なんだ。」
ロスター伯爵家は商団の経営の他にも広い領地を所有し、そこを本家の代わりに領主として支える家門が伯爵東家と伯爵西家でありエイリークの両親に手紙を送ったのは東家であるという。
「でも港というと……フィルニース王国とは反対側といっていいくらい離れていますし……両親との関係に疑念を持たざるを得ないですね……。」
「だからこそ、私が手伝わないと真実に近づけないだろうね。」
「でも。……まさか……それではまるで公爵様を働かせるようなもので……!」
そんな恐れ多いことを平民である自分がしてしまうなんていけないことだと恐怖した。いくら貴族から手紙が来ようと生まれから平民のエイリークに、貴族になるかもしれないからなんて意識は生まれない。
「まあ、それだけで動く訳ではないからね。安心してほしい。」
ニコリと笑ってエイリークを見る公爵の目には、どこか含みのある意思を感じた。どこかエイリークを見透かしているような目にどこかいたたまれない気持ちになって来た。
それでもここまでしてくれるリリーベル公爵を前に堂々としなければならないと思う。
「君の両親にも話を聞かなければならない場面も出てくるかと思うが構わないかい?」
「はい、必要なら徹底的に調べていただいて構いません。むしろ両親にはボクが聞く立場なのに……申し訳ありません。」
「いや、いいんだよ。それに君は今あまり王都を離れない方がいいと思うからね。それはプリムに関しても同じだけど。」
「そうですねー。」
のほほんとクッキーを食べながらプリムは答える。
「……それは王家に関係がありますか?」
「ああ……プリムには色々と聞いているが、君も学園で被害があるようだね。」
「平民のボクから言えば、王家のなさることを被害と言っていいのかどうか……。」
学園でウィンノルと顔を合わせると、何故退学になっていないのかとプリムと共にしつこく聞かれる。周囲に学園生がいれば穏やかに問いかけるだけだが、いなければ怒りを滲ませて隠さない。最近では教師が見ている前でも態度が酷い。
そこにウィンノルの浮気相手が居合わせると最悪でしかない。
自分は平民だからと思えば迂闊に反論は出来ず歯痒い思いをしている。プリムは遠慮なく言い返していたが。
「いいんだよ。君たちにだって被害があれば訴える権利はある。実はね……正直に言えば、君に手を貸すのはその詫びもあるんだよ。」
エイリークもプリムもアレンシカの友人だから、何か一枚噛んでいるのだと思われていることは分かっていた。
どうやってフィルニース王国からアレンシカが離れたのかは分からないが、それでもレイシーラ領に逃げてきたことは知っている。多くは知らないがそれでも一時でも知っているなら関わっていることと同義だろうと、関係者のふりをして自分に突っかからせている。
アレンシカに手が及ばないならエイリークはそれでよかった。
「リリーベル家と王家との婚約問題で、関係のない純粋に学んでいる学生に被害が及ばせては貴族の風上にも置けないからね。」
あなたにおすすめの小説
愛され方を教えて
あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。
次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。
そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…
あなたの愛したご令嬢は俺なんです
久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」
没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!