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やる気
新しい学年になって、いろいろ生活が変わった。
勉強ももっと難しいものになり、園芸部だってより責任ある学年になったからだ。最終学年である三年は家の仕事を手伝ったり、中にはもう家督を継ぐ準備に入る者もいて学校に来られない日が多い者もいる。その為に実質的な最終学年は二年だというほど責任ある立場になるからだ。
アレンシカも園芸部でまとめ役に任命されてから忙しい毎日を送っている。
クラスで休憩時間に園芸部で必要なものリストを纏めていた。プリムにぺったりと寄りかかられながら、プリントに欠品の数を記入している。
「あんまり欠品少ないですねー。」
「みんなが丁寧に使ってくれてるから壊れたものも少ないからね。」
「ふうん。」
ただじーっと見ているプリムに少しだけ照れくさくなりながらもプリントを纏めている。
全て書き終わってトントンと揃えて、提出しに行こうと思った時だった。
「ちょっと、まだこの課題が提出されてないんですけど?」
少し離れたところからかけられた声。見知った声だが、自分にかけられたものではなかった。
「……悪いんだけど公務で忙しくて提出期限を守れそうにないんだ。」
「王子殿下なのに、期限を守らないんですか?」
「……先生には許可をとってあるよ。」
アレンシカから離れたところで、エイリークがウィンノルを前に課題を催促していた。
エイリークは二年になってからクラスで学級委員長をしている。一年次には別の熱心な生徒が学級委員長をしていたからその役割のことは失念していたが、新しいクラスになってから自ら立候補して学級委員長になったエイリークは仕事をこなしていた。
だがひとつだけ、その仕事ぶりを妨げる者があった。
「本来なら全て期限通りに全員のものを纏めてから提出する決まりなんですけど。」
「どうしてもこちらのことで忙しくて。本当に申し訳ないんだけど。」
「……でも毎回ではないですか。こうも毎回出来ないものなんですか?」
「悪いことだとは思うが理解してほしい。」
「他のかたも家の仕事はありますが、みんな提出出来ていますよ?」
エイリークは誰から見ても綺麗な笑みで諭している。相手が王子であっても堂々としっかりと諌めることが出来ている。
ウィンノルは彼を前に困った微笑みを返しつつも穏やかにやり取りしていた。
(……すごい、エイリ。僕だったら殿下を諌めることなんて出来ない。不快な気持ちにさせてしまうし、そもそも僕の話なんて聞いてくれないだろうな。……エイリだから、出来ることだ。)
そんな二人をボーっと見ていたが、ふいに袖を緩やかに引っ張られた。
「アレンシカ様ー?アレンシカ様、行きましょー。」
「あ、うん……。でもプリムも一緒に行くの?」
「行きますよー。アレンシカ様とおんなじクラブでーお友達ですからー。」
「そっか……。」
緩く腕を捕まれたまま、未だにやり取りを続けている二人に後ろ髪を引かれながら教室を出た。
「アレンシカ様ー。」
「うん?」
「大丈夫、ですからねー。」
「何が?」
「大丈夫、大丈夫なんですよー。」
「……うん。」
プリムの何でもないような柔らかい声にトゲが丸くなるような気持ちになる。いつも分かってなさそうでいつも決定的に分かっている従者兼友人は日々助けられてばかりだ。
「……僕ちょっと頑張ってみようかな。」
元々ウィンノルと同じクラスになったのは、この冷えきった婚約者としての関係を少しでも修復出来るように、兄ユースが進言して成ったもの。だというのにそれが少しも果たせずこんなにウジウジしてどうするんだろう。
せっかく同じクラスなんだから、きちんと役目も期待も答えなくては。
「プリム、僕もちょっとやる気出ちゃった。」
「無理はしちゃ嫌ですよー。」
「頑張るよ。」
「うーん……?」
勉強ももっと難しいものになり、園芸部だってより責任ある学年になったからだ。最終学年である三年は家の仕事を手伝ったり、中にはもう家督を継ぐ準備に入る者もいて学校に来られない日が多い者もいる。その為に実質的な最終学年は二年だというほど責任ある立場になるからだ。
アレンシカも園芸部でまとめ役に任命されてから忙しい毎日を送っている。
クラスで休憩時間に園芸部で必要なものリストを纏めていた。プリムにぺったりと寄りかかられながら、プリントに欠品の数を記入している。
「あんまり欠品少ないですねー。」
「みんなが丁寧に使ってくれてるから壊れたものも少ないからね。」
「ふうん。」
ただじーっと見ているプリムに少しだけ照れくさくなりながらもプリントを纏めている。
全て書き終わってトントンと揃えて、提出しに行こうと思った時だった。
「ちょっと、まだこの課題が提出されてないんですけど?」
少し離れたところからかけられた声。見知った声だが、自分にかけられたものではなかった。
「……悪いんだけど公務で忙しくて提出期限を守れそうにないんだ。」
「王子殿下なのに、期限を守らないんですか?」
「……先生には許可をとってあるよ。」
アレンシカから離れたところで、エイリークがウィンノルを前に課題を催促していた。
エイリークは二年になってからクラスで学級委員長をしている。一年次には別の熱心な生徒が学級委員長をしていたからその役割のことは失念していたが、新しいクラスになってから自ら立候補して学級委員長になったエイリークは仕事をこなしていた。
だがひとつだけ、その仕事ぶりを妨げる者があった。
「本来なら全て期限通りに全員のものを纏めてから提出する決まりなんですけど。」
「どうしてもこちらのことで忙しくて。本当に申し訳ないんだけど。」
「……でも毎回ではないですか。こうも毎回出来ないものなんですか?」
「悪いことだとは思うが理解してほしい。」
「他のかたも家の仕事はありますが、みんな提出出来ていますよ?」
エイリークは誰から見ても綺麗な笑みで諭している。相手が王子であっても堂々としっかりと諌めることが出来ている。
ウィンノルは彼を前に困った微笑みを返しつつも穏やかにやり取りしていた。
(……すごい、エイリ。僕だったら殿下を諌めることなんて出来ない。不快な気持ちにさせてしまうし、そもそも僕の話なんて聞いてくれないだろうな。……エイリだから、出来ることだ。)
そんな二人をボーっと見ていたが、ふいに袖を緩やかに引っ張られた。
「アレンシカ様ー?アレンシカ様、行きましょー。」
「あ、うん……。でもプリムも一緒に行くの?」
「行きますよー。アレンシカ様とおんなじクラブでーお友達ですからー。」
「そっか……。」
緩く腕を捕まれたまま、未だにやり取りを続けている二人に後ろ髪を引かれながら教室を出た。
「アレンシカ様ー。」
「うん?」
「大丈夫、ですからねー。」
「何が?」
「大丈夫、大丈夫なんですよー。」
「……うん。」
プリムの何でもないような柔らかい声にトゲが丸くなるような気持ちになる。いつも分かってなさそうでいつも決定的に分かっている従者兼友人は日々助けられてばかりだ。
「……僕ちょっと頑張ってみようかな。」
元々ウィンノルと同じクラスになったのは、この冷えきった婚約者としての関係を少しでも修復出来るように、兄ユースが進言して成ったもの。だというのにそれが少しも果たせずこんなにウジウジしてどうするんだろう。
せっかく同じクラスなんだから、きちんと役目も期待も答えなくては。
「プリム、僕もちょっとやる気出ちゃった。」
「無理はしちゃ嫌ですよー。」
「頑張るよ。」
「うーん……?」
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