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出会い
しおりを挟む「突き飛ばされて車道まで出てきてる。撮影で道路を封鎖していなかったら、危なかったよ」
アタシがぼんやりしているのを、戸惑っているかと取ったようで、背中を見遣る。
「どこにでもファンはいるけど、酷い目にあったね」
言われて見れば、ストッキングは破れて膝から血が出ていたし、服もよれて汚れていた。かろうじて肩から下がっているショップバックも破れて中身がのぞいていた。
あまりにも酷い自分の姿に、かあっと頬に血がのぼってくる。
「…ごめんなさい」
「なんで謝るの。あなたは何も悪くないでしょ。もしかして緊張してる?」
緊張しないわけない!
こんなイケメンに見上げられて、靴を履かせてもらうなんて、アタシの人生に一度だってなかった!
緊張しない人なんていないと思う。
「未也」
聞き慣れた声に顔を上げると、取り乱した遥香が人混みから身を乗り出してアタシを見ていた。
その途端に、アタシのまわりに雑音が戻ってきた。
彼も不思議な名前を聞いたように、アタシの顔を見た。確かに友達にも居ない名前だし…変わってる。
ざわざわした雑踏を掻き分けて遥香がやって来ると、彼はにこっと笑って立ち上がった。
「足、心配だったけど友達がいるなら大丈夫だね」
「はい。ありがとうございました」
お礼を言うアタシに、いいよと手を振って、何事もなかったように去っていってしまった。
「もう…気がついたら居なくて、捜したのよ?」
まだぼんやり彼の後を見送っていたアタシのほうを見て、遥香が心配そうに眉を寄せる。
「運命の人だ!」
初めて会った人なのに、アタシの心の中は彼でいっぱいになっていた。
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