君までの距離

高遠 加奈

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走り出す

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思いきりよく走り出て、狭い路地に入り込み、くねくねと走った。



もうこれで安心。

そう思った時には、自分がどこにいるのかわからなかった。



まだ息が荒い…

よくコケる、と言われたヒールで迷子になるほど走れたものだ……

いや、一回目もさっきも意識してコケた訳じゃないし!




でも、どっと疲れが襲ってきた……

もぉ…どっかに座りたい。



目を上げた先の貼紙が呼んでいる。



『ランチはじめました』

アタシは迷うことなく暖簾を潜った。


引き戸を開けると、こじんまりとした和風の食事屋さんだった。

座席はカウンターと、四人掛けのテーブル二つ。奥に階段があり、二階には個室があるらしい。

入り口で、お店の人と視線が合う。



あれっと驚いて目をみはったものの、アタシを見て席をすすめてくれる。

「なんだかお疲れだね。ここ座るといいよ」

包丁を研ぎながら、カウンター席をさした。



言葉に甘えて、ふらふらと席につくと、すぐにお冷やが出てきた。

「ありがとうございます」

一気にグラスを空けると、笑いながらお代わりをくれた。

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