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勝次さんの気持ち
しおりを挟む若鮎を載せた皿を下に置いて、障子の前でおとないを入れる。
「どうぞ。勝次さん」
からりと障子を開けると、裕也と髪の綺麗な女性が食卓を挟んでこちらを見た。
「やっぱ勝次さんの飯、最高」
上機嫌の裕也の前に鮎の皿を置くと、手の平を合わせて舌なめずりをした。
「……それはどうも。裕也、お前とは長い付き合いだけど、こういう使い方は止してくれ」
鮎に伸ばした裕也の手が止まる。
「なんで、いきなり」
「話題づくりか本気かは知らないが、女性がらみでこの店を利用するのは止してくれ。写真や取材は困るんでね」
「ひどいよ勝次さん…」
鮎に伸びた手が力無く下がる。
「勝次さんとはこの店を構えた時、俺が大学生の頃からの付き合いだし、今までそんなこと言わなかったじゃないか」
「大学で演劇をかじってるガキとは違う。お前、テレビにも顔出してるじゃないか」
あいた皿を手に下がろうとすれば、今まで口をつぐんでいた女が言葉をはっした。
「大将のお気持ちもよく解りますが、彼のプライベートなことですからお許しいただけませんか。芸能人になったことは仕方ないことですし、今もこのお店を大事にして贔屓にしている訳ですから」
「俺はね、裕也のことは弟分くらいに思ってるよ。個人的なことだから敢えて言ったのさ」
くるりと部屋に向き直り、お辞儀をしてから障子を閉める。
「…俺もヤキが回ったもんだ」
階段を下りると、未也ちゃんの横顔が視界に入った。
つい裕也に対して、八つ当たりめいたことをしてしまった。
芸能界という世界を知らない者には理解出来ないこともある。
芸能人だからと言って、簡単に人を傷つけていい訳じゃない。
立ちつくした俺を見つけて、にっこり笑った顔がある。
何にも知らないこの娘が、傷を負う前に早く忘れてしまえばいい。
笑顔をつくりながら、俺はそう願っていた。
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