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更衣室へ
しおりを挟む「まあ、これからが勝負ってことかしら。取り合えず今日はアドレスだけでも…ね」
妙に愛ちゃんに力が入っている。
「そうと決まれば早く更衣室です!先輩急いで」
自分の机はそのままに、アタシの手首を引っ張って連行する。
「早く着替えちゃって下さい」
そう言うなり、愛ちゃんは自分のポーチをひっくり返した。大きめのポーチにはお化粧を落として、また最初からやり直せるだけの化粧品が詰まっていた。
この時間からまたやり直しなんてたまらない。急いで着替えたアタシを愛ちゃんが指先をくいっと持ち上げて呼んだ。
「なんと言っても時間がありません。仕方ないのでアイメイクだけでもきちんとします」
そしてビューラーでぐいぐいと睫毛を上げてきた。
「痛いよ、愛ちゃん」
「先輩のアイメイクは甘いです!いつかきちんとしてあげようと狙ってたんですから。諦めて大人しくして下さい」
ビューラーであげて、マスカラをつけ、アイラインを引いてくれる。慣れた手つきでアイメイクを終えて、アタシに鏡を貸してくれる。
普段、きっちりビューラーであげたり、マスカラを付けないアタシの目は確かにぱっちりした。
「わー1.5倍」
「先輩だって頑張ればこれくらいすぐです」
「んーでも朝の時間は貴重だからねー」
朝起きてブログをチェックする至福の時間を削ってまで、アイメイクへの情熱はない。
そこがアタシの残念ポイントだと思う。
「ダメですよう、これくらい常識の範囲です」
「いいの、いいの。回りが不快にならなければ」
約束の時間が迫っていたので、さっと席を立つ。バックを出して、ロッカーの鏡に顔を写してもう一度確認する。目のぱっちりした、見慣れないアタシが笑っていた。
「うん。メイクありがと」
「ああ…もうっ本っ当、しょうがない…」
顔を赤くした愛ちゃんがアタシをにらんだ。
「協力したんですから、明日報告お願いしますね」
「別に期待することもないよ」
更衣室を出ていきながら、背中にぽつりと言葉が聞こえた。
「本当、ズルイ。自分のことちっともわかってないんだから」
十分、わかってますよ。変な期待をしてるのは愛ちゃんだけだよ。
取り合えずアタシは待ち合わせをしたロビーに向かった。
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