44 / 80
山の中
しおりを挟むドアを開けて外に出るとそこは山の中腹にあるコンビニだった。
声がした方を見ると、尾上さんがミニバンがバックするのを『オーライ、オーライ』と先導していた。
白線の内側に止まったバンからは、ばらばらと人が出てきた。
カメラやその他、見たことのない機材を抱えた人が慌ただしく動きはじめる。
その中、尾上さんは綺麗な女性と話しはじめた。
「おはようございます。晴れてよかったわ。こうみえても私、晴れ女なんですよ」
「湯山さんに逆らえるものなんてありませんよ。みんなそんな恐ろしいことはしませんからね」
「言ったなー。よーし経費を上乗せして請求するからね」
あははっと笑いがおきる。明るい人だなー。見ていたら尾上さんと視線があい、手招きされる。
「湯山さん同僚の渡辺です。渡辺、ご挨拶をして」
「はじめまして渡辺です。今日は見学させていただきますが、よろしくお願いします」
「あらいいのよ。こちらこそよろしくね。白蓉堂の湯山です」
にっこりと業界スマイルだ。眩しいくらい綺麗っ。
ゆるふわな髪はきちんとカットに行った計算された形だし、羽織っている鮮やかなオレンジのシャツも見るからに上質なもの。首に巻かれたストールでさえ繊細な織物だった。
まじまじと観察してしまったけれど、間近で足元まで見るのは失礼だと我慢する。
「ほら湯山さんに圧倒されて固まってますよ。普通の人間じゃ湯山さんと渡り合うなんて無理ですからね」
にっこり笑って尾上さんを見た高遠さんが、隣にいるアタシを見てびっくりしたように目を見開いた。
あ、気がついてくれた?
アタシを見て悪戯っぽく笑うと、お辞儀をして動き出した人の流れについて行く。
湯山さん、尾上さんがCMのイメージについて話しながら動いて行く。マネージャーも話には加わらないものの、どんなことを要求されるのか耳をそばだてて湯山さんと尾上さんに続いていく。その後に高遠さんが続き、最後尾がアタシだった。
すでにスタッフは撮影場所まで移動しているらしく、あたりには誰も居ない。
コンビニの駐車場から脇にそれて山に分け入ると、途端に寒い程の山の涼しさに見舞われる。
山の斜面にあるのは人一人やっと歩けるような道で、土を固めただけだった。
さすがにヒールの高い靴ではなく、スニーカーを履いて来ていたけれど歩き慣れない山道は早く進めない。
男の人である尾上さんやマネージャーならともかく、なんで湯山さんは早く歩けるんだろ。
0
あなたにおすすめの小説
恋は、やさしく
美凪ましろ
恋愛
失恋したばかりの彼女はひょんなことから新橋の街中で上司にお姫様抱っこされ……!? ――俺様な美形上司と彼女とのじんわりとした恋物語。
性描写の入る章には*マークをつけています。
完結*三年も付き合った恋人に、家柄を理由に騙されて捨てられたのに、名家の婚約者のいる御曹司から溺愛されました。
恩田璃星
恋愛
清永凛(きよなが りん)は平日はごく普通のOL、土日のいずれかは交通整理の副業に励む働き者。
副業先の上司である夏目仁希(なつめ にき)から、会う度に嫌味を言われたって気にしたことなどなかった。
なぜなら、凛には付き合って三年になる恋人がいるからだ。
しかし、そろそろプロポーズされるかも?と期待していたある日、彼から一方的に別れを告げられてしまいー!?
それを機に、凛の運命は思いも寄らない方向に引っ張られていく。
果たして凛は、両親のように、愛の溢れる家庭を築けるのか!?
*この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
*不定期更新になることがあります。
かりそめ婚のはずなのに、旦那様が甘すぎて困ります ~せっかちな社長は、最短ルートで最愛を囲う~
入海月子
恋愛
セレブの街のブティックG.rowで働く西原望晴(にしはらみはる)は、IT企業社長の由井拓斗(ゆいたくと)の私服のコーディネートをしている。彼のファッションセンスが壊滅的だからだ。
ただの客だったはずなのに、彼といきなりの同居。そして、親を安心させるために入籍することに。
拓斗のほうも結婚圧力がわずらわしかったから、ちょうどいいと言う。
書類上の夫婦と思ったのに、なぜか拓斗は甘々で――。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
最後の男
深冬 芽以
恋愛
バツイチで二児の母、アラフォーでパートタイマー。
恋の仕方なんて、とうに忘れた……はずだった。
元夫との結婚生活がトラウマで、男なんてこりごりだと思っていた彩《あや》は、二歳年下の上司・智也《ともや》からある提案をされる。
「別れた夫が最後の男でいいのか__?」
智也の一言に気持ちが揺れ、提案を受け入れてしまう。
智也との関係を楽しみ始めた頃、彩は五歳年下の上司・隼《はやと》から告白される。
智也とは違い、子供っぽさを隠さずに甘えてくる隼に、彩は母性本能をくすぐられる。
子供がいれば幸せだと思っていた。
子供の幸せが自分の幸せだと思っていた。
けれど、二人の年下上司に愛されて、自分が『女』であることを思いだしてしまった。
愛されたい。愛したい。もう一度……。
バツイチで、母親で、四十歳間近の私でも、もう一度『恋』してもいいですか__?
19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】
その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。
片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。
でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。
なのに、この呼び出しは一体、なんですか……?
笹岡花重
24歳、食品卸会社営業部勤務。
真面目で頑張り屋さん。
嫌と言えない性格。
あとは平凡な女子。
×
片桐樹馬
29歳、食品卸会社勤務。
3課課長兼部長代理
高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。
もちろん、仕事できる。
ただし、俺様。
俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる