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夕焼け
しおりを挟む「本当、情けない。食事しただけなのに話題づくりに雑誌に載せられたことも、せっかくの製作発表なのに商品についてちっとも言及できなかったことも、自分の不甲斐なさに一番頭に来てる
だからあなたにも気をつけて欲しかったんだ
俺に関わると大変なことになる。なんで橘さんはそれをわかってくれないんだ!」
「よーくわかってると思いますよ。だって高遠さんは物凄く傷ついてるから、そばにいてもらえないかって言われたんですよ。
本当なら、橘さんが来たかったんだと思います。マネージャーさんを来させることも出来たはずです。
アタシにしたのは、仕事に関係ない人間なら、高遠さんも落ち着くだろうって配慮です」
高遠さんはアタシを見た。アタシも高遠さんをじっと見ていた。
「橘さんからの伝言です。悔しかったら、誰にも文句を言われないだけの仕事をしてこいって。ねじ伏せてこい、そう言ってました」
ゆらゆらと見つめあっていることで、伝えきれない言葉も伝わればいいのに。
「俺だけ子供みたいだ…」
ぽつりと高遠さんがこぼす。
「そんなことないですよ。高遠さんにとっては、とても大事な事だったんです。だから怒ったし、悔しい思いでいるんでしょう?
仕事にプライドがなかったらそう思いませんよ」
高遠さんとアタシのブランコは揺れている。勢いのよかった高遠さんのブランコはだんだんとゆっくりになりつつあった。
その揺れが高遠さんの気持ちと同じで、穏やかになっていったらいいのに。
「俺は自分以外の何者かに自分の人生をめちゃくちゃにされそうだって思ってた。
人のことを利用したり、足を引っ張ったり、絶えず駆け引きがされていて、気をつけていても簡単に足をすくわれてしまう。
芸能人は、話題づくりが必要かもしれないけど、無理にそんなことをしたくないんだ。
……それをわかって欲しい」
いつの間にか高遠さんとアタシのブランコの速さは同じになっていて、アタシ達は並んでブランコをこいでいた。
「俺はね大学在学中から劇団に足を突っ込んでて、大学の劇団と今の劇団を梯子してた。その頃は箱も小さくてね、小劇団だったよ。大学でも練習してたけど、ここでもよく練習してたんだ。
嫌なことがあった時もここに来て、我を忘れて稽古に励んだりした場所なんだ。そんなこと橘さんにはモロばれだったね」
そう言って高遠さんは笑った。高遠さんを取り巻く状況はなにも変わらないのかもしれないけれど、その声には迷いなどなかった。
アタシ達が並んでこいでいるブランコの前には、真っ赤な夕焼けが広がっていた。
空を焼き尽くすその朱は鮮やかで、たなびく雲の蒼がとてもキレイだった。
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