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この場所で 裕也SIDE 1
しおりを挟む仕事は忙しかった。本当、嫌になるくらい。だけどその忙しさで、他に考えなくてはいけないことを締め出せた。
ほんの少しでも気を抜くと、自分の気持ちはさ迷い出して求めだす。
逃げられないように…腰が立たなくなるくらい、抱き潰しておけばよかった。
自分しか見えなくなるくらい、惚れさせておけばよかった。
ずっと側に居させることが出来るくらい自分に力があったら良かったのに。
彼女が、何もかも捨ててもいいくらい俺に溺れたら良かった。
それが出来なかった自分の魅力は、まだまだだったと言える。
だから俺は今、自分に出来る仕事を完璧にこなすことだけを考えていた。
それでも
気を抜くと浮かぶのは彼女の仕草や声で、胸を締め付ける。
何度も再生を繰り返しているDVDみたいに、自分の片隅に居座っている。
『大好き』
胸に染み渡るその言葉を呼び起こして目を閉じた。
「祐也、そろそろスタジオに入って下さい」
マネージャーの呼びかけに、台本を持って立ち上がった。
控室からスタジオに向かうと、隣のスタジオから出て来る人が視界に入り息を飲む。
さらりとしたボブも、華奢な体も変わらない。見つめていても気がつくことなく、背中を向けて歩きだした。
「……蓮見さん」
背後についていたマネージャーを見ることなく声をかける。視線をそらしたら、また消えてしまうと痛いくらいにわかっていた。
「5分くらいなら、なんとかごまかせます」
「ありがとう」
言いながらすでに走り出していた。角を曲がっていく彼女を追いかけて床を蹴る。
手を伸ばして腕を掴み、驚いた顔のまま抱き寄せて、腕の中に捕える。
何度も思い描いていたように、彼女が腕の中にいる。それでも間違いなくここにいるのか、抱きしめていても、煙りのように逃げてしまわないかと、抱く腕にきつく力を込める。
鼻を掠める髪の香りも、抱きしめた
「祐也、そろそろスタジオに入って下さい」
マネージャーの呼びかけに、台本を持って立ち上がった。
控室からスタジオに向かうと、隣のスタジオから出て来る人が視界に入り息を飲む。
さらりとしたボブも、華奢な体も変わらない。見つめていても気がつくことなく、背中を向けて歩きだした。
「……蓮見さん」
背後についていたマネージャーを見ることなく声をかける。視線をそらしたら、また消えてしまうと痛いくらいにわかっていた。
「5分くらいなら、なんとかごまかせます」
「ありがとう」
言いながらすでに走り出していた。角を曲がっていく彼女を追いかけて床を蹴る。
も柔らかくて、あたたかくて、切ないほど苦しくなる。
こんなに求めていたのに、どうして一年も離れていられたのかわからない…
「……高遠さん」
身じろぎした彼女が自分を見上げてくる。
「やっと捕まえた」
ぷっくりした唇がほんの僅かに開くのを見て、言葉よりも早く唇を重ねた。
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