その科学は魔法をも凌駕する。

神部 大

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Fluorine

第百九話 正義の采配

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 自分は一体此処で何をしているのだろうか。
 何の為に生きているのだろうか。
 此処に自分のやるべき事は……



 真は母神マーラのモニュメントが鎮座する教会の屋根からただ空を見上げていた。

 此処では肉眼で本物の星が見えるのだ。この星の中には自分の居場所であった地球があるのだろうか。それとも此処はやはり全くの異世界なのか。ふとそんな思考が過る。

 地球の科学者達は皆宇宙に夢を見ていた。地球外の星々にも生命は存在し、地球よりも文明の発達した星があるとそう信じそしてそれを幾つも発見してきた。
 後はどう移動するか、ただそれだけの話であった筈だ。
 そんな最中に開発された粒子分解移転装置。フォースハッカーの山本猛はそれを利用して次元転移、自ら作りだした時空転移プログラムを実現させようとした。

 その結果がこの今なのである。
 真は思うのだ。ここはやはり宇宙系内に存在する地球以外の星、その一つなのではないかと。

 そもそもあの地球でほぼ全ての経済を牛耳っていたのはフォラスグループと言う大手科学企業だった筈。それが少し日本を離れている間に巷で噂になっていたのはフォースハッカーだの、デスデバッカーだのと言った二つの組織だった。

 それは正にここで言うリトアニアと同じ。
 リトアニアから分岐するアニアリト、そしてギルド。

 どこの世界でもありそうな大企業の分裂。
 だとすればもしやフォースハッカーとデスデバッカーは、あのフォラスグループから派生しているモノなのではないか。


 そこまで思考が届き、もう一歩で何かを見つけられそうだったそんな刹那、背後に気配を感じた真は瞬時に身体を反転させて一歩半の距離を空け振り返る。



「……何か情報は手に入ったか?」


 そこには真と同じ灰色のフードケープを背に落とした黒髪の男。元アニアリト、ジギル。真はそれを瞬時に理解し何かしらの情報を集めに行っていたであろうジギルにそう尋ねていた。


「フォース、やはりダルネシオンが一枚噛んでいるようだ。ただ恐らくは個人的、ダルネシオンはリトアニアを利用して国盗りを行うつもりだ。それに利用されたのがサトポンとその配下、つまりはアニアリトと言った所だろう」
「そうか……何が何だか、って所だ」


 随分と大きな話になってきた事に思わず溜息が出る。そもそも自分は何の為に、何がしたかったのか。


「フォース。尋ねていいか?」
「何だ」

「アンタは何の為にアニアリトを潰したかったんだ。俺達を……解放する為に動こうとする前は組織を自滅させるのが目的だったんだろう」
「気付いていたのか。何の為……か。元々はそうだな、俺がアニアリトを殺したせいでシグエーが、仲間が危険な目に遭うと考えたからだ、だが何処が大元か解らない。だからこそ組織自体を潰してやろうと思った……だがどうにもそう言う細かい事は向いてないのかも知れないな」


 真は解らなくなっていた。
 仲間の為、自分の尻拭い、そして行きずりの頼み。
 それに必要な行動は一体何なのか。
 そんな纏まらない考えが、弱気となって真にしては珍しくも自分の情報をつい漏らしてしまっていた。

 情報は力、情報は命、にも関わらずそれを見ず知らずのしかも元アニアリトに話してしまう等当初の真には有り得ない事。


「そうか。俺達がアニアリトから足を洗いたいのは本当だ、あんたにそれだけの力があるのなら俺達はアンタに付く。俺達がアンタを裏切る時はフォース、アンタが死んだ時だろうな」
「ふ、そうか」


 それは自分を信頼しているとの証にも取れる言葉だった。
 この暗殺者達は恐らく真であればアニアリトに反抗し得るだけの力があると判断している、だからこそ今こちら側にいるのだ。
 それは真にも判っていた事だ。
 だからこそ自分がもし失敗した時の為にこの三人をアニアリトのまま活動させているのだから。


「なら聞く。俺はアニアリトを潰す為にまず何をしたらいい?」



 それは初めて真が口にする心から他人を頼る言葉だった。
 今迄も誰かに助けられた事はある。
 ここの世界に来てからも様々な人間に助けられた、だがそれは自分でもどうにかするつもりだった範疇の事でしかないのだ。

 あの日から、全てを失ったあの夕日が差し込む安い貸家で両親の終わりを見届けた時から。
 能動的に誰かを頼る等、真の記憶には一片の欠片も存在しなかった。


「ふ……はは。フォース、アンタを化物だったと思っていたが……どうやらこっち側の人間だったらしいな。あぁ、気に入ったよ。俺は最期までアンタに付いてもいい、他の二人は知らないがな」



 ジギル。
 裏の世界に身を染めた男、恐らくは過去に様々なモノを失い今をただ生きる者。
 同じ境遇にあった二人は今此処で、互いの中に自身の生き様をを見ているようだった。




















 あぁぅっっ!!
 ヤバイ、ヤバすぎる。これは最高だ、完全に癖になってしまった。

 並ぶ裸体、微かな呼吸と共に上下する四つの柔らかな弾球。
 それが今目の前で自由自在だなんて。
 信じられない、夢にも思わない。クラスの女子でさえ追いつかない巨乳はアニメでも漫画でもない、本物の、オッパイ!!


 脳血管が全て千切れてしまいそうな程の興奮に反応し、痛い程にズボンで抑えつけられる僕のアレは人生での初舞台を今か今かと待ち望み暴れ狂っている。

 僕はそれを悠然と開放してやった。
 今や周りを覆う皮はめくれきり、輪郭のはっきりとした僕の剣は涎を垂らしながらその時を待っている。


 だがそう簡単には僕もご褒美はやらない。
 僕の剣は僕の意志でのみ操作するものだ。
 そう言い聞かせるようにして僕は脱がした二人のヒロインの下着で思いっきり剣を磨いてやる。

 次はどちらかに引っ掛けてしまおうか、どちらにしようか。

 青髪の女の子はネイルと言うギルドの受付嬢だった。
 清楚だがツンドラ系と言った所、そんな女子を辱めるのも興奮する。
 だけどやっぱりここはメインヒロインのフレイちゃんだろうか、恐らく散々ラノベを読み漁った僕的にはクーデレだと思う。
 クーデレ巨乳にツンドラ程々巨乳、それが選び放題やり放題………アッ!


 そうこうしている間にまたもや下着に温かさが染み渡る。脱力感と賢者思考が脳内をクリアにしてしまう。



「あぁ……勿体無い。でもこの身体はやっぱり凄いな」


 この世界に来てからと言うもの、身体に一つの変化があった。
 それは何度事を為してもまだまだいけると言うそんな感覚。城ではエミールさんにメイドに王妃、一体何人をオカズにさせて貰ったか分からない。
 一日中やっていても痛くもならない自分はまさに神の絶倫と言った所だろうか。


「そうだ……ネイルにフレイ、二人共四つん這いになってお尻をこっちへ突き出すんだ」

「はい……」
「はぃぃ」


 意外といい声を出すのはネイルちゃんだった。
 ツンドラと見せて実は淫乱か、そう考えるだけで僕の剣はまた――!? 


 直後窓際で物音がし、そちらへふと振り向いた僕は驚いた。



「……フレイ」
「なっ、な、な、おま……え?え?」


 何が起きたというのか。
 気付けば部屋の窓が開き、そこに片足を掛ける黒髪の男が視界に飛び込んできたのだ。
 何処かで見た事のあるその男は確かザイールで何度か出会った、忘れもしない僕のフレイちゃん他二人の女子を侍らせていたビビリ野郎。


 でもそんな、窓には鍵が掛かっていたんじゃないのか。この世界は鍵も付いていないというのか。
 確認しなかった僕にも非はあるのだろうけど、そもそもここは七階建ての王都では最大限高級な高層ホテル。
 この部屋の窓から人が侵入するなど有り得なかった。


「お、お前どっから入ってきたっ!!」

「……?此処からだ、見れば分かるだろ」
「はぐっ……」

「そんな事よりフレイに何をした、そっちの女にも。お前は何者だ」

 くそ、そりゃそうだ。窓から入って来たんだ。
 僕は何を言ってるんだ、クソ。
 動揺して馬鹿にされた、こんな弱っちい奴に。

 ステータスにはシン=フォースと言う名前と相変わらずの低能力数値が示される。
 そう言えばまだ僕は仮面を被ったままだった、見せてやらなければ。この僕の新たなる姿を。

「弱い癖に……生意気だね、ヒロインは勇者の下にいるべきだ。君みたいなモブには必要ない!」

 僕は仮面を取り払い、イービルアイと融合したおぞましい素顔をその男に晒してやる。


「おい……フォース、ふう。やはり前言は撤回する。何だ今のは?魔力機か、この速さならあの時俺がやられる訳だな」


 っておい!何だ、今大事なシーンなのに!
 今度は別の男まで窓から入って来やがった。しかも僕が決め台詞を言った時に限って。

 そう言えばあの時もそうだった。
 ザイールの安い居酒屋で初めてこのシン=フォースと言う男に会った時、その時も尽く僕の台詞を無視して……まるでこっちがモブだとでも言わんばかりに。
 思い出すだけでも苛々する。


「ああ、すまない。お前が大事な話を後回しにするからだ」
「そうは言ってもな、こっちもアンタとあの土竜が旧知の仲だなんて聞いていない。それにてっきりネイル=フレグランスの趣味かとばかり……で、どうするんだ?そこの……ってなんだあの目。本当に人間か」

「……そうだな、消すから適当なシナリオを付けておいてくれ」
「おいおい。全く……厄介な大将についちまった」




 何だ、何の話をしている。
 くそ、除け者にしやがって、分かるぞ。この感じは間違いない、よくモブが消される前に正義側にいる主人公達が仲良く出陣する時のそんな感じだ。

 てことは……僕が脇役!?いや有り得ない、絶対に無い。
 僕は異世界から召喚された勇者なんだ。その僕が死んだらこの世界はどうなる?
 僕がいなきゃこの世界は回らない。


 そうか、これはコイツらの死にフラグか。
 僕に殺され……いや、待てよ。
 フフ、最高のショーを考えたぞ。


「君達は何か勘違いをしているようだね、この二人は僕が好きなんだ。ね、フレイちゃん、ネイルちゃん!」


「はい……飛翔様」
「好きです、飛翔君」


 ふふ、そうだ。僕には全てを統べる神の力がある。このモブ野郎共を操るのもいいが、それよりこのヒロインが僕の物だと教えてやらないと。


「これは一体……裏ルートで手に入る媚薬類か」
「さぁな。ただ判ることは、フレイはそんな女らしい喋り方はしない……それと。ガキ、そろそろそのみっともないモノを仕舞え。俺も、いつまでも丁寧にはいられない」


「なっ、何だ、よ……その、目は」


 脅してるつもりなのか。
 そんなものに……僕は勇者だ、こんな不良みたいな奴より強いのは間違いない。
 くそっ!なのに何で足が震えるんだよ!くそっ!この役立たず!

 いつかに街の屑に絡まれた時……あの時に味わった感覚。
 昔は悪だったとか将来言って武勇伝を語る事しか出来ないようなそんな奴ら。
 でも今は僕が上だ、ビビる必要なんて無い。


「大将……やっぱりアンタはこっち側だ。いい目をする……俺まで久し振りに震えが来る。敵には回したくないものだ」

「ちっ……ジギル、後でラベール花を貰ってきてくれ。最近感情が抑えられないんだ」
「ん?ラベール花……あ、ああ。まあいいが兎に角此処を片付けよう、見つかると厄介だろ?」

「いや、派手にやる。俺を指名手配させてアニアリトを全員呼び出すんだ……シナリオは、作れるだろ?」
「なっ!まさか……だがしかし……ち、まあいい。乗り掛かった船は泥船って訳じゃない事を祈る」


 この、この、くそ、くそぉっ!!


「僕を無視するなァァァ!!行け、ヒロイン共!この男達をぶっ潰せ!」




 裸体のヒロイン達へ僕はそれぞれ武器を適当に投げ渡す。
 それを持つなり窓から侵入したモブへ、ヒロインであるフレイとネイルは襲いかかった。

 僕はその間にズボンを履く。服を着る。

 みてろ、みてろよ、ぶっ殺してやる。
 このDQN共が。正義は僕にあるんだ!!

 勇者である、この僕に!
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