その科学は魔法をも凌駕する。

神部 大

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Lithium

第十六話 ギルドの試験

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「――と、会員規約の説明は以上となりますが何かご不明な点はございますか?」

「あぁ、いや多分、大丈夫」
「シン、分からない事があったらどんどん聞いて良いんだぞ。ネイルは清ましてはいるがこう見えてシャイだからな」

「……ちょっ、ちょっと!」


 フレイの一言に今まで他人行儀に仕事ですと言った態度を崩して焦る様子を見せるネイル。
 ふとそんな姿に人間味を感じた。

 ギルドの規約とやらは真にとってそこまで難しい物でもなかった。
 ギルド員としての自覚や在り方、仕事の受注から報酬の支払いについて等が主で、ギルド員として登録されれば後は自分次第と言う自営業みたいな物だ。

 ただ税に関してギルド員はその対象にならないらしい。
 と言うより報酬にもともと課税が加味されているのだろう。

 国はそれぞれの街単位でその街の領主から税を徴収しているが、ここファンデル王都に限っては国に許可を経て行われる業務に従事する者のみに課税している様だ。
 要するに王都では仕事をすれば税が、しなければ何も徴収されないと言う事だ。

 まるで過去の日本にあった累進課税制度に近いと真は思っていた。


「こほんっ!え、えと、ええ、次にシン様の階級についてですが」
「はい」


 ギルド員には階級と言う制度があり、上に上がれば高い報酬が払われると言う物だ。
 と言うより報酬の高い危険な仕事を受けられると言うだけであり、そこは自分次第と言う事にもなる。
 崩壊した年功序列の様にのんびりと日々を過ごしながら良い報酬は貰えないと言う、実に分りやすい実力歩合制である。

 階級には上からA、B、C、D、E、Fとあり、その中で更に一から三級までの三段階に分けられる。
 例外的にS階級と言うのもあるらしいが、国に特比して貢献した者だけに与えられる階級と言う事で、過去にS階級に上がった者は国の重鎮と成っているらしい。

 して、その階級とはどの様に別けられるかと言えば。


「先程自己申告にて伺いましたが魔力結石の扱いは無し、武器の扱い、戦闘に置いてはご経験がお有りと言う事で宜しいですね?」

「はい、それで異論ありません」


 魔力結石を扱える者はそれだけで戦力があると見なされDの三級を与えられる。
 更に武器の扱い等にも長けていれば登録初回からDの一級、もしくはCの三級になれる事もあると言う。
 因みにフレイはBの二級ギルド員であるから、今までの説明からそれがいかに努力を積み重ねた物であるかが分かる。


「ではシン様にはこの後別室にて当ギルド官による武術試験を受けて頂き、その後正式な階級の決定がされます。階級が決まりましたらギルド員証を発行致しますのでそれまで暫くお待ちください」


 滞る事なく進んでいく話。
 真は一抹の不安を感じながらもとりあえずは流れに身を任せる事にした。

「あぁ、私が案内するから後は大丈夫だ」
「そ、そう……ですか、ではシン様ご健闘をお祈り致します」

 受付のネイルが試験部屋へと案内しようとしたのをフレイが阻止し、こっちだと真を誘導する。
 ネイルは一瞬戸惑った様子を見せたが、気心知れた中なのかフレイの提案を受け真にマニュアル通りの業務的な言葉を投げ掛け書類整理に戻った。



「魔力結石を扱えないのは痛いが、シンの実力ならまぁ武術は大丈夫だろ。後で魔力結石の使い方も私が教えてやってもいい」

 フレイは一階の奥にある廊下を進みながら真に楽しそうな笑みを浮かべながらそう耳打ちした。

「魔法ってやつか……納得いかないが興味はあるな」


 地球にいた頃、時空転移プログラムを開発したフォースハッカーのメンバーがよく言っていた魔法と言う不可思議な力。
 真はさほどそんな物に興味は無かったが、どんな原理なのかと言う面に置いては多少の関心はあった。

 フレイに付いて横を歩きながら重厚そうな扉の前に着くと、私はここまでだと言ってフレイは扉に向かって顎をしゃくる。
 どうやらこの扉の先が試験会場の様だった。


「試験者以外は入れないからな、また後で。健闘を祈る」

「ああ、精々やってみる」


 真はそう言うと片手を上げてフレイの元を後にした。













 室内は広く、床も同じ様に白で統一された石を研磨したような造りでぼんやりと自分の姿が鏡の様に映り込む。

 先客か、部屋には一人の少女が何やら杖を持ち佇んでいる。
 ネイルと同じ青色の髪は肩口まで届く位、背丈は真の胸元位であることから150センチあるかどうかと言った所だ。

 少女がおどおどした様子でその場にただ立ち竦んでいるのを見るや否や、正面のもう一つの扉から飄々とした緑色の髪を持ち、ネイルと同じ様な朱色の制服に身を包む整った顔立ちの青年が姿を現した。


「おっと、待たせちゃったかな。こんな可愛い子を待たせる何て僕は罪だね……えと、ルナ=ランフォート、ルナちゃんは魔導士だっけ?」

「え、えと、はい!そうですっ、宜しくお願いしますっ」
「はは、そんな畏まらなくていいよ。僕は試験官のハイライト=シグエー、これから君の実力を見せて貰うだけだから。武器とかの扱いは無しでいいんだね?」

「は、はい!えと、魔力マナを体に巡らせてですね……その発現させて」
「ああ、大丈夫。よく知っているよ」


 何やら浮き立った様子で慌ててそうしゃべる少女、ルナ=ランフォート。
 自分が魔導士でそれがどの様な力なのか試験官に説明しようとした物の、それは試験官のハイライトと言う男によってあっさりと制止された。

 彼女もまたこれからギルドに登録する一人なのだろうが、どうやらあまり世間を知らない様に見えた。
 魔導士とは珍しいが、それでも魔力結石の扱いが広く浸透したこの時代ではそれほど大層な物でもない。
 それを必死に説明しようとするあたり、もしかしたらこの少女も自分と同じ所謂田舎者なのだろうかと真は思っていた。
 と言っても真は異界者だが。


(まとめて試験するわけでも無いのか)


「じゃあ、力を見せて貰おうかな?得意なやつで構わないよ」
「え、でも……」


 そうあっさりと言ってのけるハイライトにルナは動揺を見せた。
 それはそうだろう、魔導士がどれ程のものかは分からないがその能力をいきなりぶつけられてどうするつもりなのか。
 ルナも恐らくそう考えた筈だからである。

 だがそう簡単に言える辺り、この試験官のハイライトにはそれをいなすだけの力と自信があるのだ。

「大丈夫、何でもいいよ。やってごらん」

「は、はい。じゃあ一番得意の水の魔力を使います」
「あらら、それは言わなくていいのに。実戦で自分の情報を漏らすのは命取りだよ、まぁ仲間には教えておくのも良いけどね。まぁいいや、さあどうぞ」


 ハイライトの意見には同意できた。
 獣や言葉の通じない相手なら未だしも人間相手に自分の力を知らせるのは自殺行為に等しい。
 真自身も情報が交錯する地球で嫌と言うほどそれを肌で感じてきた身だ。
 情報は力であり、最も重要な物だ。

 そんな所を突っ込まれ佇まいを崩したルナだったが、気を取り直したのか動きを止め何かに集中している様子だった。

「#魔力_マナ_#よ…………水の光矢ウォーターレイっ!」


 刹那、ハイライトの頭上に水の塊が収束し、それは幾本の矢の様な形と成ってハイライトに降り注いだ。



 ワイドの街で男達が放った水の矢、それを一人で幾つも出現させた事に真はこれが魔導士と言う者なのかと驚いたが、それ以上に驚愕する光景を目にしていた。

「え、そん、な、どうやって……」


 そう、どうやって。
 試験官のハイライトは頭上に水の塊があるのを見向きもせずに手を頭上へ掲げたかと思えば、その水矢が急速落下すると同時にそれを消しさったのだ。

 消えたと言うより、何かハイライトの掌に吸い込まれた様にも見えたその事態に、真だけでなくルナと言う少女もまた同じ気持ちだった様でただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
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