猫王子は災難を呼ぶ

侍魂

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猫王子は南大陸に降り立つ

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    自国よりも乾燥した空気を吸い込んでルイは南大陸の入り口、アデウス国の港に降り立った。



護衛らしく自分の半歩の距離に従うレオルーナに声をかける。



「この空気懐かしいなー前に来たのは2年前か」



「そうですね。前回は貴方がどこぞの国の姫君を誑たぶらかし、挙句に求婚を迫られ本国に慌てて逃げかえりましたから観光もろくに出来ませんでしたね」



懐かしいですね本当に。



嘯くうそぶく、なんでそんな余計なことを覚えているのか…折角記憶の彼方に追いやっていたものを……



「というか俺は誑かしてなんかな「ああ失礼しました、天然のタラシでした。」



    見た目穏和そうなのにこの騎士はどうしてこうも口が悪いのか、口が悪いから釣り合いを取るのに神がこの顔にしたのだろうか…



「自国で1、2を争う腕があってもその口じゃな…」



「ルイ様なにか不満でもおありで?昔から貴方様を守ってきた私にあんまりではないですか。…そういえば、烏少年ノアはどこに行きましたか?」




「情報収集の為に先に降りて一仕事させてるんだが不都合でもあったか」



「あぁ、それでルイ様が大量の荷物をお持ちでしたか」



納得しました。てっきり筋力トレーニングの一環かと思いましたよ。



    確かにノア分のカバンも自分の荷物と一緒に持って運んでいるのはそういう訳だが、わかってて聞いてきた気がするんだが…?



    何となく俺の目線で察したのかは謎だが、俺の荷物だけ片手でかっ攫っていった。



ノアの分はそのまま持つ、俺がノアに仕事を頼んだからそこは責任持って運ぶよ。



ていう俺の気持ちを汲んだ訳じゃないのがこの騎士だ。多分、間違いなくだけど…



「なあレオ、もう少しノアを信じてやれないか?」



「その必要性がないですね。私は主である貴方の剣、そしてノアは貴方の目であり耳。役割が違いますし今一緒にいるからといって仲良くする必要性を感じませんので信頼関係は無理かと。」



「せめてその努力を、な?」



「命令なら聞きますよ?」



「じゃ命令。ノアと仲良くして信頼関係を作ること」



ルイが笑ってそう言えば、レオルーナは溜息をつく、呆れたというより諦めの顔、そんな顔をしても美形は絵になるから憎い。



そして一転して、



「承知致しました。少しだけ可愛がってあげますね。」



 爽やかな笑顔でそう答えた。



嫌な予感しないないが何か間違えただろうか…?じっとレオルーナの顔を見るが笑顔が崩れることは無く、先導する様に前に進んでいく。



前を行く騎士を改めてじっと見てみた。



    襟足にかかる位の茶金の髪、翠石を砕いて作った様な瞳に外面は爽やかで優しいという、女受けが良くとてもモテそうな宗教画の男神の様な見た目。



それなのに自国一・二の剣の腕をしていて、更に言うなら第二王子の乳兄弟兼近衛騎士。



というこれでもかというくらいにモテ要素を詰めに詰め込んで神が作った様な男それがこのレオルーナ・グレーファン、通称レオ。



    俺に対して口が物凄く悪いという難点以外ほぼ完璧と言っていいと思う。乳兄弟の欲目とかじゃなくて、ホントに。



国にファンクラブ?とかいう女の子がキャーキャー言う集まりが出来てるとかそうじゃないとか…




本性を知らないって幸せだよね…………………



うん、脱線した。もう1人の同行者についても語ろうか。



    もう一人の旅の同行者はノア。



    髪も眼も夜空を溶かし込んだ様な黒色をしている少年。



とある事情で俺の従者になり今回の旅に同行することになった。


まだまだ好奇心旺盛な見た目10歳の子供なので従者としては見習いなのだが、まあ俺はほぼ1人で何でもやってきたから今まで従者は要らなかったんだけどね?



    なので今現在ノアの仕事は癒し要因と簡単か情報手集が主となっている(本人は真面目に頑張っているのだがちょこちょこ動き回る様が大変和む)。



今までも俺とレオだけでも個性が強かったが、ノアも加わり一層に騒がしい旅になりそうだと思う。



 まあぶっちゃけ観光に来たのではないので目立つ事は避けたいのだが。



あ、これフラグとかにならないかな…?



大丈夫だよね??

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