3 / 4
猫王子は南大陸に降り立つ
しおりを挟む自国よりも乾燥した空気を吸い込んでルイは南大陸の入り口、アデウス国の港に降り立った。
護衛らしく自分の半歩の距離に従うレオルーナに声をかける。
「この空気懐かしいなー前に来たのは2年前か」
「そうですね。前回は貴方がどこぞの国の姫君を誑たぶらかし、挙句に求婚を迫られ本国に慌てて逃げかえりましたから観光もろくに出来ませんでしたね」
懐かしいですね本当に。
と嘯く、なんでそんな余計なことを覚えているのか…折角記憶の彼方に追いやっていたものを……
「というか俺は誑かしてなんかな「ああ失礼しました、天然のタラシでした。」
見た目穏和そうなのにこの騎士はどうしてこうも口が悪いのか、口が悪いから釣り合いを取るのに神がこの顔にしたのだろうか…
「自国で1、2を争う腕があってもその口じゃな…」
「ルイ様なにか不満でもおありで?昔から貴方様を守ってきた私にあんまりではないですか。…そういえば、烏少年ノアはどこに行きましたか?」
「情報収集の為に先に降りて一仕事させてるんだが不都合でもあったか」
「あぁ、それでルイ様が大量の荷物をお持ちでしたか」
納得しました。てっきり筋力トレーニングの一環かと思いましたよ。
確かにノア分のカバンも自分の荷物と一緒に持って運んでいるのはそういう訳だが、わかってて聞いてきた気がするんだが…?
何となく俺の目線で察したのかは謎だが、俺の荷物だけ片手でかっ攫っていった。
ノアの分はそのまま持つ、俺がノアに仕事を頼んだからそこは責任持って運ぶよ。
ていう俺の気持ちを汲んだ訳じゃないのがこの騎士だ。多分、間違いなくだけど…
「なあレオ、もう少しノアを信じてやれないか?」
「その必要性がないですね。私は主である貴方の剣、そしてノアは貴方の目であり耳。役割が違いますし今一緒にいるからといって仲良くする必要性を感じませんので信頼関係は無理かと。」
「せめてその努力を、な?」
「命令なら聞きますよ?」
「じゃ命令。ノアと仲良くして信頼関係を作ること」
ルイが笑ってそう言えば、レオルーナは溜息をつく、呆れたというより諦めの顔、そんな顔をしても美形は絵になるから憎い。
そして一転して、
「承知致しました。少しだけ可愛がってあげますね。」
爽やかな笑顔でそう答えた。
嫌な予感しないないが何か間違えただろうか…?じっとレオルーナの顔を見るが笑顔が崩れることは無く、先導する様に前に進んでいく。
前を行く騎士を改めてじっと見てみた。
襟足にかかる位の茶金の髪、翠石を砕いて作った様な瞳に外面は爽やかで優しいという、女受けが良くとてもモテそうな宗教画の男神の様な見た目。
それなのに自国一・二の剣の腕をしていて、更に言うなら第二王子の乳兄弟兼近衛騎士。
というこれでもかというくらいにモテ要素を詰めに詰め込んで神が作った様な男それがこのレオルーナ・グレーファン、通称レオ。
俺に対して口が物凄く悪いという難点以外ほぼ完璧と言っていいと思う。乳兄弟の欲目とかじゃなくて、ホントに。
国にファンクラブ?とかいう女の子がキャーキャー言う集まりが出来てるとかそうじゃないとか…
本性を知らないって幸せだよね…………………
うん、脱線した。もう1人の同行者についても語ろうか。
もう一人の旅の同行者はノア。
髪も眼も夜空を溶かし込んだ様な黒色をしている少年。
とある事情で俺の従者になり今回の旅に同行することになった。
まだまだ好奇心旺盛な見た目10歳の子供なので従者としては見習いなのだが、まあ俺はほぼ1人で何でもやってきたから今まで従者は要らなかったんだけどね?
なので今現在ノアの仕事は癒し要因と簡単か情報手集が主となっている(本人は真面目に頑張っているのだがちょこちょこ動き回る様が大変和む)。
今までも俺とレオだけでも個性が強かったが、ノアも加わり一層に騒がしい旅になりそうだと思う。
まあぶっちゃけ観光に来たのではないので目立つ事は避けたいのだが。
あ、これフラグとかにならないかな…?
大丈夫だよね??
0
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる