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猫王子の旅の理由
しおりを挟む何度もあちこちの国内外に行くのは断じて観光でも一国の王子としての仕事ではない。
つまりとても個人的な訳がある。
その理由は15年程前に遡るーー
◇◇◇◇◇◇◇◇
その日は夏の日差しが強く、とても暑い昼下がりだった。
当時3歳児で遊びたい盛りの俺はお付の侍女達を撒いて庭の巨木に登っていた。
ふと下を覗き込むと、根元の所に見知らぬ女性が立っていた。
侍女に見つかったと思って隠れたが、その女性は木の上の子供に気付かずずっと遠くを見て何かを捜している様に見えた。
その顔は最近兄上に読んでもらった絵本の悪い魔女に捕まってしまったお姫様のように悲しそうだった。
燃えるような赤いドレスに夏の日差しにも負けない金色の髪に今にも涙が零れ落ちそうな赤い眼。それに惹かれる様に俺はその女性に声をかけた。
「ねえおひめさま、あなたはどちらからいらっしゃったのですか?ぼくでよければおちからになります!」
突然木の上から落ちてきた子供にびっくりしたのか女性は泣いてはいなかった。むしろとても嬉しそうな笑顔をかえされた。
「どうもありがとう坊や。とても困っていたから坊やが自分から出てきてくれてとても助かったわ」
「ぼくはぼうやじゃありません!るいどひゅーねですおひめさま」
「そうなのね?ごめんなさいルイドフューネ王子殿下?」
「おひめさまはなににこまってるんですか?」
「坊やに会いたかったのよ」
「ぼく?」
「そう。プレゼントをあげたくて」
「ぼくおいわいじゃないよ?」
「ふふ、プレゼントは今あげるけど受け取れるのは坊やが成人したらになったらだからちゃんと誕生日プレゼントなの」
「???」
「わからなくても良いのよ、すぐ分かるから」
すっ
と俺を真っ直ぐ立たせたまま、目を閉じて大人しくしている様に言い、女は手を翳し聞き慣れない言葉を紡いでいく。
『巡る周るは我が言ノ葉受けし身繋ぐ其の運命絶えぬ絆、消えぬ魂、癒すは互いの躯…』
その言葉を聞いているといつの間に俺は倒れていた。
そして目を覚ますと自分の部屋のベッドの上にいて、俺の頭に猫の耳が生えていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
こうして俺は猫の耳が生えた王子、猫王子と呼ばれるようになった。
どうやらあの女は魔女だったらしく、潜在魔力が高かった俺を気に入って産まれた時から狙っていたらしい。
あの時に女に違和感を感じて逃げていれば今が全く違う事になってたと思うけど当時3歳の子供に言葉の裏は読めないので後悔先になんとやら………
そんな訳で俺は猫化魔法を掛けた魔女を捜して解呪させる為に魔女が居そうな場所、似た様な魔女の目撃情報を元にして旅の目的地を決めている。
ので、今回はこの国の砂漠の中にある遺跡に魔女がいたという情報が手に入れた為に海を越えて来たという訳だ。
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